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【SCARLET NEXUS】レビュー: アニメ調アクションゲームとしては最高峰であるが、日本におけるメディアミックス戦略の悪しき風習が足を引っ張る – スカーレットネクサス

点数評価75点
プレイ状況カサネ編クリア
トロフィー45%
クリア時間約20時間
プレイ時間約20時間
発売日2021年6月24日
対応機種PS4/PS5/Steam
Xbox (Gamepass)
プレイ機種PS5
開発元バンダイナムコスタジオ
トーセ
発売元バンダイナムコエンターテインメント
ジャンルブレインパンク・アクションRPG
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総評/評判/感想

プレイアブルキャラクターは主人公のみだが、SASによる連携攻撃はソロプレイながらもチームワークを感じることもできる。念力によるオブジェクト操作も痛快。また、各キャラクターのカットインは、如何にもバンナムのゲームらしい優れた演出。操作・演出ともにアクション面では満足度の高く、凛々しいフィニッシュムーブは癖になる。一方で、メディアミックス前提で、全方位に媚びたキャラクター設定群は、和ゲーの悪い部分を煮詰めて凝縮したような仕上がりで、バンナムお得意の拝金主義の塊だ。ディレクションレベルまでは有能なのだろうが、会社体質のお陰で星を減らした惜しい作品。

総合評価
 (3.5)
革新性
 (4)
ユーザビリティ
 (4.5)
ビジュアル
 (5)
サウンド
 (4.5)
プレイ継続性
 (3)
コストパフォーマンス
 (2)

SCARLET NEXUS(スカーレットネクサス)の舞台は、多かれ少なかれ人々が“超脳力”を持ち、それの活用が当たり前になっている近未来都市ニューヒムカ。主人公“ユイト”と“カサネ”は、人間の脳を捕食するために襲来する「怪異」から人々を守る怪伐軍のメンバーだ。主人公と仲間達が怪異と戦いを通じて、世界の真実に迫って行くというストーリー。

ゲームのジャンルとしては、「ブレインパンク・アクションRPG」を謳っており、ブレインが示す通りに“脳”が一つのテーマ。ゲーム内で操作可能なキャラクターは主人公1人だけだが、様々な”超脳力”を持った仲間と臨機応変に連携し、状況に対応していくアクションがウリとなっている。

プレイした感想としては、当記事のタイトル通り、“アニメ調ゲームとしては最高峰”だが、“アニメとのメディアミックスが大きく足を引っ張っている”と言わざるを得ない。恐らく、元からアニメ調のゲームをメインに遊んでいるゲーマーであれば特に不満も無く★4や★5を付けるだろう。しかし、ゲーム業界を席巻する海外産のビッグタイトルや、小粒ながらも制約から解放され自由に作られたインディーゲームを好むようなハードゲーマーには、少々厳しい評価になると思われる。

操作キャラは一人だが、チームの“絆を感じるアクション

スカーレットネクサスの面白さの大半を占めるのは戦闘パートである。

コントローラーの感覚を活かした念力アクション

主人公“ユイト”と“カサネ”は“念力”を操る“超脳力者”だ。ユイトは刀、カサネは浮遊する複数の刃物を用いて近距離攻撃を行いつつ、戦闘フィールドに落ちているオブジェクトを念力で操作し、敵にぶつけて攻めたてる。念力操作できるオブジェクトの種類は豊富で、コンクリート片、鉄骨、車など、ビジュアル的に当たると“痛いそう”な物が多数用意されている。ドラム缶をぶつけてから、中に入っているオイルを塊にして敵の頭上から落としたり、大型のコンテナをぶつけてからボタン連打で圧潰させたりと、単に投擲するだけでは無く、追加でワンアクション入力することで更なるダメージを発生させる特殊なオブジェクトも用意されている。

敵にオイルをぶつければ炎上耐性ダウンのデバフ付与。
指示されたコマンドを入力すれば追加ダメージ。

時には電車を走らせて、敵を一気に轢いて一網打尽にもできる。巨大な重機を走らせて敵にぶつけたり、大きな鉄板に乗ってサーフィンのように移動して敵に突進したりと、敵を粉砕した後に清々しさが残るような仕掛けが多い。

また、これらの念力による攻撃は、デュアルセンスのアダプティブトリガーとハプティックフィードバックに対応しており、プレイヤーは“物理でなぎ倒す”という感覚をコントローラーを通じて得ることが出来る。コントローラーの感覚を活かした念力アクションからの、アニメ調を活かしたフィニッシュ演出は目を見張るものがあり、PS5の高フレームレートで動くキャラクターとの相乗効果で、次世代機のアニメ調ゲームが持つ可能性を大いに感じることが出来た。

仲間との共闘を感じることができる演出

スカーレットネクサスの戦闘は、主人公+2名の3人パーティで行われる。仲間の2名については、ストーリーが進むことで最終的に9人から自由に編成可能だ。主人公を含めて仲間は総勢10名用意されており、ユイト・カサネの“念力”を除いて、“超脳力”は8種類用意されている。使用する武器と超脳力が違う仲間を切り替えながら操作できることを期待していたが、残念ながら操作可能なキャラクターは“念力”を使う主人公達だけだ。

しかし、SASというコマンドで仲間の“超脳力”を借りて主人公にバフを付与したり、コンビネーションビジョンというコマンドで、一時的に仲間が主人公と入れ替わって攻撃をしてくれる。特にSASを発動した際には、和ゲーではお馴染みのカットイン演出が画面狭しと挿入される。特にこのカットイン演出は秀逸で、画面の6割ぐらいを覆いつつも、中央には操作している主人公を捉えて視界を完全に遮らない。そのため、激しいアクションを途切れさせることなく楽しむことが出来る。

中央には主人公とターゲットを捉えたまま。

SASには、電気による感電、炎による炎上のような攻撃系のバフや、透明や速度アップのような移動系のバフ、投擲物や自身を複製させるなど様々。討伐対象である怪異は全体的に硬めに設定されており、通常攻撃と念力だけで倒すには時間が掛かるため、状況に合わせてSASを切り替えたり、コンビネーションを発動させて対応していく必要がある。

スカーレットネクサスは主人公しか操作できないという欠点があるが、SASとコンビネーションを活用することで、常に仲間との“絆”や“チームとしての一体感”を得ることが出来る。

次の動画は、ストーリーの終盤にフルメンバーになってから、SASとコンビネーションを最大限に活かして敵を圧倒しているシーンだ。大型の怪異でも上手く立ち回れば完全にノーダメージで撃破出来て、更には最後に凛々しいフィニッシュムーブが決まるので実に爽快である。

戦闘中には頻繁に仲間とのブレイントーク(このゲームにおける、脳内会話的なコミュニケーション手段)が発生し、豪華声優陣が戦闘を盛り上げてくれる。また、途中からはブレインフィールド(脳内空間)という特殊な空間を展開し、プレイヤーに圧倒的に有利な状況で戦闘を進めることができる、超必殺技的なアクションも追加される。

ブレインフィールドでは視覚的にも異質。元々キツめな性格のカサネだが、この空間内では更に苛烈に。

2週目を遊びたくなる魅力が用意されていない

戦闘シーンだけにフォーカスすると良いことばかりのように見えるが、操作キャラクターが主人公のみという点が辛い。

スカーレットネクサスは1周が約20時間ほどのゲームだ。2周することで終盤まで別動していたもう一人の主人公のストーリーを知り、事件の真相を全て把握できる仕組みである。しかし、ストーリー展開上、両主人公は同じ“念力使い”である必要性が生じているので、近接攻撃手段は異なるものの“超脳力”のプレイフィールは全く同じ。そのため余程本作に思い入れが無ければ、2週目を遊びたいとは思わないだろう。

Sara
Sara

1周目だけでアクションの面白さは味わい尽くせる

また、スキルマップにて、レベルアップで獲得したポイントを消費することでスキルを取得できるが、主人公が変われどベースとなる攻撃手段や“超脳力”に大きな変化が無く、追撃や攻撃回数が強化される程度だ。よって、育成要素による差別化を図ることも難しく、2週目を遊ぶ同機にはならなかった。

スキルマップがあり育成を楽しむこともできるが・・・

戦闘と戦闘を繋ぐ探索部分は殆ど一本道で、時々分かれ道が用意されている程度。別れた一方はストーリー進行で、もう一方はザコ敵が配置されており倒せばアイテムが貰えるというパターンしかなく、探索に魅力を見出すことも難しい。美しいグラフィックが用意されているので、もっと探索させる作りにしても良かったのではないだろうか。

美しいマップの持ち腐れ。

このように、アクションそのものは高いレベルで仕上がっているが、存分に楽しむのは1周が限界で、2周遊ぶのはハッキリ言って辛い。難易度を上げることもできるが、戦闘が長引くだけでどうしても作業感が拭えないだろう。また、作業感が生まれたとしても、アクション以外を楽しみに出来れば良いのだが、そこには後述のメディアミックスの弊害が立ち塞がっている。

なお、グラフィックはどのエリアも美麗なことに加えて、登場する怪異は生物的でありながらも、機械的な部分を併せ持った独特な雰囲気を持っていたり、仲間はドレスアップのバリエーションが豊富だったりするので、フォトモードがあればまだ撮影をモチベーションに2周目も頑張れたかもしれない。

グロテスクながらも機械っぽさも持ち合わせる怪異達。
ビジュアル変更アイテムの種類は多く、イベントシーンにも反映される。

メディアミックス前提の歪な設定群

スカーレットネクサスは、メディアミックスありきの作品なので、そちらに引っ張られて考えたであろう設定が散見される。

無駄に多い人物属性

その最もたる例は登場キャラクターの多さだ。ロリ、巨乳、コミュ障、クール、一途、チャラ男、ショタ、マッチョなどなど、男性向け・女性向け共に狙いが露骨。これだけ性癖を並べれば、どれかが刺さるだろうという安易な狙いが透けて見える。

メディアミックス作品は組み立てられる予算が大きい代わりに、誰でも無料で視聴できるアニメを入り口に、ゲーム及び関連商品の売り上げを伸ばす必要がある。そのために、好みの間口を広げて豪華声優で釣るという手段が用いられる。ゲームの企画自体は少人数のアイデアから始まったのかもしれないが、メディアミックス前提で企画が走り出したら最後、必ずこの仕様に辿りつく。

設定が完全に破綻する絆エピソード

次に、キャラクターが無駄に増えたことによって何が起こったかというと、“絆エピソード”の捻じ込みだ。絆エピソードとは、章(フェイズ)と章の間のスタンバイフェイズに、拠点(アジト)で任意に起動できる主人公が仲間と1on1で対話するイベントだが、これが大きな問題を抱えている。

アジトにて仲間にプレゼントを贈り、絆が深まれば絆エピソードを閲覧可能。

まず、前述の通り、スカーレットネクサスはアニメからのプレイヤー獲得も狙った作品だ。一方でゲームはユイト編、カサネ編に分かれており、主要メンバーが2チームに分かれて終盤まではお互いに敵対した状態でストーリーは進行する。アニメを経て“推しキャラ”狙いでプレイを始めたものの、1/2の確率で(カサネとユイトの2択)推しが一向に仲間にならず、出て来ても敵対関係ということになる。

そうなると、

アクションは面白かったものの、〇〇編では終盤まで推しキャラが仲間にならなかったので★1です!

なんて評価をアマゾンで付けられかねない。

カサネとユイトで合計2周すればこの問題は解決するが、両ルートをプレイするには35~40時間を要する。アニメからゲームに入るライト層が2周プレイするかは疑問だ。開発陣もその懸念があったのだろう。苦肉の対応策で生み出された仕組みが絆エピソードだと推測する。

スタンバイフェイズでは、選んだ主人公のチームの仲間と直接会話ができる以外に、ゲーム内の会話ツール“ブレイントーク”を通じて、敵対しているチームメンバーともコミュニケーションを取り、絆エピソードを起動することが出来る。つまり、敵対チームに組み込まれた“推しキャラ”と親睦を深める手段が用意されているのだ。

しかし、敵チームはついさっきまで本気でバトルをしていた相手である。それに対して平然とした態度でメッセージを送り、対面で合う約束をして世間話をする様は違和感しかない。

さらに、スカーレットネクサスの世界はディストピア気味なので、監視の目が至る所にあるはずだ。しかも、“敵に情報開示は厳禁だ”と、上官から言われるシーンがあるにも関わらず、敵チームメンバーとカフェで話し込んだりと、完全に設定が破綻している。

メディアミックスのお陰で、敵対勢力と呑気にお茶をするという、実に滑稽な展開が繰り広げられるのだ。

Sara
Sara

コンクリート片を投げつけ、刀で切り付けた相手と仲良く会話する異常な光景には眩暈がしてくる。

では、チームメンバーとの絆エピソードはアリなのかというと、和ゲーの悪いところを凝縮したテンポロスの塊の様な“贈り物システム”から派生する必要があるのでナシだ。仮に絆エピソードの出来が良かったとしても、アイテム交換とプレゼント贈りという無駄工程のお陰で、絆レベル上げが億劫になってくる。また、贈り物で汚部屋化していくアジトが面白いだろ?という、開発陣の価値観の押し付けが見え隠れする点もあまり好ましくない。

ドロップ品を贈り物と交換し、仲間にプレゼントすれば好感度アップで絆エピソード発動。
親睦を深めるゲーム大会イベントは特に出来が良かったが、任意発動イベントで勿体無い。
贈り物をすればするほど雑然としていくアジト。

キャラクターを増やした弊害が紙芝居

属性(キャラクター)を無駄に増やした弊害は、強引な絆エピソードに止まらない。キャラクターが多くなると、全てのキャラクターに操作設定を施してスキルマップを用意することが難しくなるし、イベントシーンで3Dモデルを動かす労力も一気に増大する。その解決策が、“操作は主人公のみ”&“イベント進行の大半が紙芝居”なのだ。

重要イベントのみ、3Dモデルが動く。
止め絵に会話キャラクターのバストアップを差し込む紙芝居がメイン。

設定の歪さは街のビジュアルにも現れている。

生命が脅かされる異常事態なのに、妙に小綺麗でライフラインがしっかりと確保され、ゆとりのある生活が見られる

という、和ゲーあるあるだ。怪異の設定的に、パンデミック系のゾンビ物風でも通用するはずなのだが、それでは食いつきが悪いのだろう。

頻繁に戦闘が行われているはずだが、細部まで整備された綺麗な街並み。

また、メディアミックス作品として日本で成功するためには、どうしても登場人物は若い美男美女に制限される。それでは何かと不都合が生じてしまうので、登場人物は“脳力”の劣化を抑えるために、成長を抑える矮化剤という薬を飲んでおり、見かけとはかけ離れた年齢という強引な設定が用意されている。

合法ロリのアラシが恐らく人気ナンバーワン

そして、キャラクターを増やし過ぎた結果、メインストーリーにフォーカスしきれなかったゲームにありがちなのが、性急な話のスケールアップだ。本来であれば段階を追って話の規模を大きくしていくべきだが、絆エピソードに時間を割かせる前提なので、どうしてもメインの展開が唐突になっておりやや不満を感じる。

怪異は月から来た上に、歴史改変が狙われているんだよ!な、なんだってー!という中盤

スカーレットネクサスが真に面白いゲームになるためには、登場人物を最小限に抑え、プレイアブルキャラクターを増やすことによる“飽きの来ないアクションパートの提供”が必要だった。そして、少人数ながらも“キャラクターモデルを動かした見応えのあるイベント進行”も必要である。

曲がりなりにも今の人数でストーリーは完成しているので、そこから誰を削るべきだったか?という検討は少々難しいのだが、一人上げるとすれば間違いなくハナビである。主人公ユイトに思いを寄せるポジションは、カサネの姉であるナオミが居るので十分だ。ユイトに思いが伝わる前にナオミが死に、カサネはハナビを応援するという展開になる訳だが、この重要な展開が任意で起動させる絆エピソードに収録されてしまっている。それであれば、ナオミの想いは死ぬ前にユイトに伝わっており、ユイトは結論を出す前にナオミを失い、決意を新たに事態の収束に尽力するという展開の方が自然だろう。

他には、オペレーター2名、ツグミ、ルカ、アラシは話の展開と脳力を組み換えて削っても支障はないだろう。オペレーターはツグミの能力を拡張して代用できそうだし、ルカやアラシの移動系超脳力は、カゲロウのステルス超脳力に集約出来たはずだ。また、シデンを裏切り者として離脱させても良かった。

不満は残るが素材は良い

前項で何かと不満点を述べたが、スカーレットネクサスは、“面白くない”とか“つまらない”訳では無い。各素材を上手く料理すれば、もっと面白くなったのではないか?と言う残念な気持ちが強い。

アクション、グラフィック、音楽どれも良く出来ており、そこに和ゲーが得意なアニメ調キャラクターを活かした演出が華を添えている。スカーレットネクサスは元々十分に優れたゲームであるにも関わらず、“ゲームの本質以外の部分でユーザーを獲得を試みる”という和ゲーの悪癖に振り回されて評価を下げた惜しい作品だ。

9020円という強気の価格設定も、キャラクターが無駄に増えた結果として起用する声優が増え、サイドストーリーが増量し、費用と工数が膨らみゲーム価格へ跳ね返ってきた結果だ。姑息な手段でユーザー獲得を狙った尻拭いはユーザーの財布が行うという、和ゲーのいつもの駄目ムーブである。

バンダイナムコという時点で、メディアミックス前提の制約が足を引っ張り、成長限界が★3の75点程度だと事前に予想できたことも悲しい。これがインディーゲームなら制約に縛られずに、本当に面白いゲームを追求できたのだろう。和ゲーがゲーム業界を捲土重来する日はまだまだ遠そうだ。

なお、2021年10月1日からはXbox GamePassUltimateに対応している。追加料金なしであれば文句なしのクオリティだろう。Xboxユーザーはプレイして損は無い。

バンダイナムコエンターテインメント
バンダイナムコエンターテインメント

フォトモードが追加される

2022年2月8日のアップデートにて、待望のフォトモードが追加され、さらにベリーハードモードも追加された。

元々が非常に綺麗で、フォトモードが無くても絵になった作品なので、フォトモードは相当に遊べそうだ。最初からフォトモードがあれば★4だったかもしれない。

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