【Fit Boxing feat. 初音ミク -ミクといっしょにエクササイズ-】レビュー: 実質的には早見沙織といっしょにエクササイズ – フィットボクシング初音ミク

点数評価70点
クリア時間
プレイ状況10日プレイ
プレイ時間1週間
発売日2024年3月7日
対応機種Switch
プレイ機種Switch
開発元イマジニア
発売元イマジニア
ジャンルリズム&エクササイズ
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総評/評判/感想

『Fit Boxing feat. 初音ミク -ミクといっしょにエクササイズ-』は、ボーカロイドである初音ミクを全面に押し出した、ボクシングベースのエクササイズゲームである。見た目こそ可愛いボーカロイドが採用されて大きく変わっているが、基本的な部分は『Fit Boxing 2 -リズム&エクササイズ-』から殆ど変わっておらず、マイン―チェンジ版と言った印象だ。肝心のボーカロイド達のセリフは非常に少なく、早見沙織が演じるインストラクターの方が出番が多く、更には肝心のボーカル曲を使ったエクササイズであるミクササイズは左右のバランスが取れていなかったり、不自然なアクションが無い期間があったりと調整不足だ。フィットボクシング2を流用した、やや手抜きな仕上がりに感じる。

【総合評価】
革新性
ユーザビリティ
ビジュアル
サウンド
プレイ継続性
コストパフォーマンス

ミクより早見沙織が目立つ

『Fit Boxing feat. 初音ミク』は簡単に言えば、2020年12月2日に発売された『Fit Boxing 2 -リズム&エクササイズ-』のマイナーチェンジ版だ。

Fit Boxingシリーズは、そのタイトルから分かる通り、ボクシングの動作を通じて健康的な運動習慣を身に着けるエクササイズゲームだ。有名声優が演じる好みのインストラクターを選んで、インストラクターのお手本動作を参考にしながら、掛け声に合わせて種々のパンチの動作を繰り出すことでお手軽にボクササイズを楽しむことができるシリーズである。

そしてシリーズ最新作である『Fit Boxing feat. 初音ミク』は、ヤマハが開発した音声合成技術であるボーカロイドを取り扱った作品である。初音ミクと合わせて4人のボーカロイドと共に、有名な「メルト」を筆頭に24曲のボーカロイド曲が収録されており、エクササイズを通じてポイントを貯めることで新しい楽曲を開放することができる。

Fit Boxing feat. 初音ミク リザルト画面
エクササイズのリザルトに応じてFitポイントを入手。
Fit Boxing feat. 初音ミク 曲の解放
貯まったFitポイントで楽曲を開放。

ここまでであれば、ボーカロイドを上手く使ったFit Boxingシリーズの最新作のように見えるが、残念なことに本作のボーカロイド達の立ち位置はインストラクターではない。インストラクターは早見沙織が演じるリンであり、動作時の意識するポイントのレクチャーや掛け声などは殆どをリンが担当する。

Fit Boxing feat. 初音ミク 運動風景

ボーカロイド達はパートナーという良く分からない立ち位置に設定されており、たまにプレイヤーのアクションに合わせて『いいね』などと声を発するのだが、リン:ボーカロイドの発生の比率は8:2ぐらいだろう。つまり、“ミクといっしょにエクササイズ”などと謳ってはいるものの、事実上は“早見沙織といっしょにエクササイズ”なのだ。

Sara
Sara

インストラクターは中村悠一が演じるエヴァンに変更可能だが、そんなことはどうでも良い。変えたところで肝心のボーカロイドが目立つことはない。

多くのプレイヤーはボーカロイド達と一緒にエクササイズができることを期待しただろう。確かに目の前には楽しそうにエクササイズに励む初音ミク達が映し出されるが、実際に声を発するのは画面の左上に表示されるインストラクターのリンであり、しかもリンのセリフは前作からそのまま流用されたものが大半なので新鮮味も無くガッカリだ。

演技の収録に金の掛かる声優が担当する部分は使い回し、チューニングが面倒なボーカロイドには短文しか発声させないという仕様から、プレイした瞬間に低予算で金を掛けずに作られた作品であることが伝わってくるだろう。単にチューニングが難しいだけであれば、有名なボカロPに発注するという解決策があったはずだ。しかしそれが実行されていないことからも、予算的な都合がつかなかったことが推測される。

FitBoxing2のDLCで十分な内容

『Fit Boxing feat. 初音ミク』は、ボーカロイド曲が採用された以外にも、『Fit Boxing 2 -リズム&エクササイズ-』から幾つかの変更が加えられている。

まず、楽曲に関してはボーカロイド以外にも、前作のエクササイズと同様にオリジナル曲が用意されている。そしてボーカロイド曲が採用された代わりに著名な楽曲の借用が無くなっている。『Fit Boxing 2 -リズム&エクササイズ-』においては著名な楽曲が流れている間は録画機能が制限されていたが、本作ではそのような楽曲が無くなったことで全エクササイズにて録画可能となった。

アクションとしては、一定期間内に連打を行うラッシュが追加されているが基本的には前作と同じであり、オリジナル曲が増えた分だけノーツの流れ方にバリエーションが増えている。

Fit Boxing feat. 初音ミク ラッシュ
赤い連続したエリアが出ている間だけ連打する。
Fit Boxing feat. 初音ミク ラッシュの解説
ラッシュは連打時でも姿勢を保つ訓練となっている。

次に、前作であればインストラクターのウェアやアクセサリー類のカスタマイズ機能が用意されていたが、その機能は廃止されており、ボーカロイドの見た目の変更は服を4種類から選べるだけになっている。折角可愛いボーカロイドを採用したにもかかわらず、細部のカスタマイズ機能が廃止されてしまったのは理解できない。

Fit Boxing feat. 初音ミク 衣装選択
今後のアップデートで4種類以上に増えるかもしれないが物足りない。

細かい所で言うと、背景の映像が新しくなったり、一部のアクションのアイコンが変更されている。また、ボーカル曲の尺の関係で、1回のデイリーエクササイズでプレイする曲数が増えたりもしているが、それらは些細な変更点だろう。

正直なところこの程度の内容であれば、本作を『Fit Boxing 2 -リズム&エクササイズ-』から独立したゲームソフトとして販売する必要などなく、『Fit Boxing 2 -リズム&エクササイズ-』のDLCの範疇に収めても良かったのでは無いだろうか。『Fit Boxing 2 -リズム&エクササイズ-』を購入済みの場合、かなりのボーカロイドファンでない限りは割高に感じてしまうだろう。

逆に基礎は『Fit Boxing 2 -リズム&エクササイズ-』と全く同じなので、前作を持っておらずエクササイズゲームが欲しいと考えているのであれば購入しても損はないはずだ。運動効果の面では前作に劣る部分は一切ない。繰り返し遊べば十分な効果を得ることができるだろう。

Sara
Sara

コストパフォーマンスの項目で★3の評価は、前作の経験者目線。

音楽ゲームを意識したミクササイズ

さて、色々と不満の多い『Fit Boxing feat. 初音ミク』だが、肝心のボーカロイド曲を利用したエクササイズであるミクササイズもイマイチだ。これの出来栄えさえ良ければ、種々の不満点にも目を瞑れるのだが賛否両論と言ったところだろう。

まず、Fit Boxingシリーズのエクササイズは、インストラクターの説明に合わせて簡単なアクションを繰り返していき、一定回数の繰り返しごとに新たなアクションが追加されていくという流れが基本だ。レッスンの終盤にはアクションの組み合わせで出来上がった複雑なコンビネーションのおさらいをしてから、連続アクションに挑むことになる。

しかし本作のミクササイズでは一切の練習の積み上げは行われず、最初から複雑なコンビネーションに挑むことになる。特に初回プレイでは、ノーツが何処に流れて来るか分かっていない状態で、それに対して体を使ったパンチで反応することになるため、難易度はかなり高くなっている。

Sara
Sara

そのような難しいプレイに集中させるためか、次の動画のようにインストラクターは表示されず、ボーカロイドだけが中央に表示される。

このような仕組みは、体を使った音楽ゲームだと思えば良いのかもしれないが、エクササイズとしては懐疑的だ。本作はあくまでエクササイズゲームなので、多くのプレイヤーは、突発的に流れて来るノーツに対する反射神経を鍛えたいのではなく、正しいボクシング動作を通じて体を鍛えたいはずだ。咄嗟の反応が必要となるミクササイズはどうしてもフォームが崩れるため、本来の趣旨とは外れたプレイフィールとなってしまっている。

また、ミクササイズに使われる楽曲は、エクササイズ用に最適化が行われている訳ではない。そのため、楽曲の長さによってはオーソドックスとサウスポーの構えでアクション回数に不均等が生じており、左右のバランスが取れていない運動となってしまう。楽曲単体で調整が効かないのであれば、その日のプレイリストで左右のバランスが取れるような仕組みが欲しかったが、そのような配慮はされていない。そのため、ミクササイズで遊べば遊ぶほど、オーソドックスの構えで運動する回数が増えていくので、トレーニングとしてバランスが悪いとしか言いようがない。

Fit Boxing feat. 初音ミク 選曲

加えて、ボーカルに対して適当にノーツを配置したのだろうか、アクションが曲調に合っていないものが散見される。更には、間奏や曲の終わりで不自然に、20秒~30秒程度に渡ってアクションもインストラクターの指示も無い待機時間が発生するなど、明らかに調整不足な部分が目に付いて残念な仕上がりである。

評価ポイントのまとめ

初音ミクなどのボーカロイドが好きであるか、『Fit Boxing 2 -リズム&エクササイズ-』を持っていなければ買えば良い。特にボーカロイドファンでも無く、前作も持っているのであれば、悪い所ばかりに目が付いてしまうので買う意味は余りないだろう。

長所

  • ボーカロイドの曲を楽しめる

短所

  • ボーカロイドは殆ど喋らない
  • 左右非対称の運動になる
  • 無駄な待機時間が発生する
  • 細かいアクセサリー類無し
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