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総評/評判/感想
RPGタイム!~ライトの伝説~は、引くほどに描き込まれた鉛筆風の世界観が素晴らしい作品。手作りゲームをロールプレイする小学生をロールプレイするゲームであり、今までに経験したことの無いプレイ感が待ち受けているだろう。小学生が同士が遊んでいるという状況のロールプレイなので、大人からすれば面白味の無いお手製の遊びが連続する。しかし、どのようなアイデアが詰まっているのだろうかという点は最高に楽しみだ。それは育児において子供の作った迷路やスゴロクを遊ぶ感覚に近い。ここに、面白く無い神ゲーが爆誕した。
点数評価 | – (プレイヤーが小学生低学年なら100点) |
プレイ状況 | 魔女を倒すまで |
プレイ時間 | 約4時間 |
発売日 | 2022年3月10日 |
対応機種 | Xbox |
プレイ機種 | Xbox Series X |
開発元 | デスクワークス |
発売元 | アニプレックス |
ジャンル | 手作りノートアドベンチャー (ジャンルの考え方はコチラ) |
RPGタイム!~ライトの伝説~は、構想15年製作9年という途方もない時間を掛けて作られた、鉛筆描きの世界が目を引く手作り風ゲームだ。
プレイヤーは小学生のケンタ君が手作りしたゲーム“ライトの伝説”を遊ぶ友人であり、ライトとは手作りゲームの主人公の名前だ。つまり、勇者ライトをロールプレイするケンタ君の友人をロールプレイするゲームなのである。ライトの伝説はJRPGという訳では無く、ゲームマスターであるケンタ君による進行と共に、数々のミニゲームをクリアしていくスタイルだ。
間違いなく神ゲーであるが、今回は点数評価をしていない。何故なら、ゲームとして面白い・面白くないを評価するのではなく、アイデアや芸術点で勝負するタイプの作品だからだ。
ギチギチに詰め込まれたアイデアの数々は、凄いを通り越して異常な執念を感じる
RPGタイム!~ライトの伝説~は、小学生のケンタ君が手作りしたRPGだ。ゲームと言っても、デジタルゲームでは無くアナログゲームなので、机の上に広げたノートの上で冒険が繰り広げられる。ゲームに使われるのはノートだけではなく、その周囲にはアイロンビーズで作られた勇者のステータスや、HPメーター代わりのメジャーなどが所狭しと置かれている。また、呼び鈴を押せば回復アイテム欄が開き、クエスト一覧はポストイットで管理するなど、様々な小学生らしいアイデアが散りばめられている。さらに、メニューボタンを押せば、段ボール工作が所狭しと並ぶ別の机に案内され、そちらでも様々なアイデアがプレイヤーを待ち構えている。
ゲームの進行はゲームマスターであるケンタ君が担う。そのため、ケンタ君はあらゆる登場人物のお面をかぶりながら、全てのセリフを読み上げてくれる。また、章と章の合間には紙芝居による物語の進行が挟まれ、イベント発生時には4コママンガが挿入されるなど、趣向を凝らしてケンタ君が盛り上げようとしてくれる。
さて、そんな手作り感満載のアナログゲームだが、プレイヤーはオープニングから手描き演出に度肝を抜かれることだろう。そして、この演出のクオリティの高さは何もオープングだから気合を入れて作られている訳では無い。当レビューは約4時間プレイした時点で投稿しているが、オープニングからクオリティ低下は全くの見られないうえに、一切の使い回しも無い。
このゲーム何が凄いって、手描き演出のクオリティがオープニングからずっと衰えないこと。製作に9年かかるわけだよ。 #RPGタイムライトの伝説 #XboxShare pic.twitter.com/WiroClHSbH
— Sara@ゲームの話が7割ぐらい (@mig60_net) March 19, 2022
製作に9年かかったらしいが、それにも納得の作り込みである。一体何がここまで開発者を突き動かしたのだろうか。途中で折れずに作り終えたことに敬意を表したくなる出来栄えだ。
そんな凝りに凝ったゲームを、クリア後でなく約4時間の時点でレビューしたことには明確な理由がある。それは、1日1時間も遊ぶと疲れて来るからだ。RPGタイム!~ライトの伝説~は神ゲーだが、長期間連続して遊ぶことは難しいゲームなのである。
ああ、これは育児で経験したことが在る感覚・・・
何故1時間も遊ぶと疲れて来るのか?
その理由を誤解を招くことを承知で書くと、
RPGタイム!~ライトの伝説~は、ゲームとしてはそこまで面白く無い。
からである。
面白く無いし、ユーザビリティが低く続けて遊べばしんどくなり、1時間も遊べば一旦終わろうという気分になる。しかし、それでもRPGタイム!~ライトの伝説~は神ゲーだ。神ゲーだからこそ、面白く無いのだ。
まず、このゲームは冒頭に記載した通り、ロールプレイする小学生をロールプレイするという構造である。当ゲームはXbox向けに発売されたゲームであり、日本のゲーム市場のシェアを考えると、Xboxユーザーの小学生が占める割合は間違いなく1%未満だ。従って、ケンタ君の同級生としてロールプレイに興じるのは、大半が良い歳の大人のはずである。大人が子供の役(ロール)を演じ(プレイ)ているのだ。
次に、何度も言うがRPGタイム!~ライトの伝説~は神ゲーである。これは紛れもない事実だ。ゲームと工作が好きだった子供達が、様々な理由で到達することが出来なかった、理想の姿(オーバースペックなのも理想の内)がケンタ君なのだが、神ゲーであるからこそスーパー小学生の再現度は完璧である。
つまりこのゲームは、大の大人(プレイヤー)が、完璧に再現された小学生(ゲームマスター)と遊んでいるという状況である。互いの認識は、大人からすれば“遊んであげている”であり、ケンタ君からすれば“遊ばせてあげている”なのだが、この構図はズバリ育児と同じである。
異常に難しく果てしなく続く迷路、理不尽にスタートに戻されて終わりの無いスゴロク、初見殺し満載のスクラッチ製のゲームなどを、育児経験者の大半は経験したことが在るはずだ。そして、作った子供本人の思考は確実に“遊んで貰っている”ではなく、“遊ばせてあげている”である。逆に大人たち、つまり“遊んであげている”側は、接待感覚で我慢強く耐え続けるというアレだ。
育児におけるあの構図の超絶なパワーアップ版、あるいは破綻せずにゲームとして成立しているものが、RPGタイム!~ライトの伝説~なのである。基本的に大人は、この手の子供の手製の遊びを心から面白いとは感じていない。一方で、発想の着眼点や閃きには感心することは多々あるので、どのような奇抜なアイデアが飛び出るかに期待して、根気強く付き合うものである。ただし、付き合うにも限界がある。このような手製の遊びに付き合うのは想像以上に疲れて長くは続かないのだ。
下の動画は序盤の落石を避けるシーンだ。ここではケンタ君が盤外から本物の石をノートの上に投入して、理不尽にプレイヤーをゲームオーバーに追い込む。子供はこの手の展開が間違いなく大好きだ。ゲームオーバーになった後は、親切にヒントを用意してくれた上に防具を簡単に取らせてくれる。困らせたと思ったら答えを教えたがり、こちらが考える暇も無くクリアに導いて来るムーブは、間違いなく子供の遊びあるあるだろう。
唐突なイベント追加からの理不尽な死。そして直ぐに答えを教えてくれるという展開は、まさに子供の遊びあるある。 #RPGタイムライトの伝説 #XboxShare pic.twitter.com/gMefc4KwOs
— Sara@ゲームの話が7割ぐらい (@mig60_net) March 19, 2022
RPGタイム!~ライトの伝説~は、アイデアが光るミニゲームの詰め合わせのような造りをしている。例えば下の動画は、ゆっくりと落ちて来るイガグリを避けて指定のアイテムを拾うミニゲームだ。ミニゲームだけであれば子供でも難なくクリアできるイージーなものであり特に面白くは無い。しかし、ユーモア溢れる展開が用意されているので、それを確認したいがために進めたくなる。なんせケンタ君は前述の通り子供達がなりたかった理想形だ。期待を裏切らない展開が用意されていることは確定している。
ミニゲーム的なバトルが殆ど。タイトルのRPGとはJRPG的な意味ではなく、勇者をロールプレイするケンタ君の友人という役割を、プレイヤーがロールプレイするという意味かな。 #RPGタイムライトの伝説 #XboxShare pic.twitter.com/VIRzq1iABC
— Sara@ゲームの話が7割ぐらい (@mig60_net) March 19, 2022
鎧に身を固めた騎士が登場するシーンでは、騎士は脚にだけ防具をつけ忘れており、脛を叩けば大ダメージで撤退するという滑稽な展開。冷静に大人の一ゲーマーとしてプレイすれば、単純な子供騙しのような展開の訳だが、子供を見守る親の視線であればこの手の発想は実に微笑ましい。
更にノートの中に気になる場所があれば、そこをインタラクトすることでケンタ君が解説をしてくれる。インタラクトするポイントはプレイヤーが探すのではなく、ケンタ君が解説したい場所に、最初からビックリマークを付けてくれている。解説したがりなケンタ君を無視して次に進むことは出来ないので、ついつい他愛のない解説を読んでしまう。
ちなみに、RPGタイム!~ライトの伝説~はユーザビリィが低い。キャラクター操作とインタラクトが、十字キー操作とスティック操作で統一されていない点など、最もユーザビリティを下げる要素だろう。しかし、これが統一されるゲームとしては不自然である。まず、キャラクターは十字キー(画面左下)で操作するように、ゲームマスターのケンタ君から指示されるので、十字キーで動かすしかない。それに対して、インタラクトはケンタ君の友人(=プレイヤー)が、ケンタ君に解説を求めることを意味している。机を挟んだケンタ君に一体どのように解説を求めるか想像して欲しい。当然、自由度高く指を動かし対象物を示して解説を求めるだろう。その動きはスティック操作が近いはずだ。
つまり、意図的に操作を統一せずにユーザービリティを下げることで、ロールプレイとしての演出度合い(芸術点)を上げているのである。
以上のように、RPGタイム!~ライトの伝説~は、意図してユーザビリティが低く、ミニゲームそのものは大人目線では面白く無く、育児のような労働に近いものがあるので、連続した長時間プレイに適さない訳である。そして、ゲームのプレイフィールでは無く、次から次へと溢れ出て来る素晴らしいアイデア群を楽しむという芸術性の高い作品である。あるいは、大人が小学生をロールプレイして作ったゲームを、大人が小学生をロールプレイして楽しむというアートなのだ。
仮にミニゲームの部分を大人でも楽しめるように本格的に仕上げて、操作性をはじめとするユーザビリティを向上させた場合、それは単に面白いミニゲーム集であり芸術性の一部が失われてしまうことだろう。
Xboxでは無くSwitchで発売するべき作品
“遊んであげている”大人vs“遊ばせてあげている”小学生という構図。あるいは、開発者・プレイヤーともに小学生をロールプレイしているゲームであることは前項で理解して頂けただろう。では、プレイヤーがケンタと同様に小学生だった場合はどうなるだろうか。
つまり、小学生が小学生をロールプレイする、すなわちプレイヤーの精神年齢がケンタ君と同レベルの状況だ。その場合は、ゲームを芸術点で評価するのではなく純粋に楽しむことが出来るようになるだろう。実際に筆者は小学校低学年の子供に当ゲームをプレイさせてみたが、大人であれば”遊んであげている感”で疲れてプレイ止めるシーンでも、黙々とプレイを継続していた。また、子供向けなギャグ展開では大いに受けて心から笑っていた。ことことから、RPGタイム!~ライトの伝説~を子供が遊べば、純粋にゲームとして高く評価する可能性が高い。
RPGタイム!~ライトの伝説~はSwitch向けにもリリースして、小学生vs小学生の構図で楽しめても良かったかもしれない。