【溶鉄のマルフーシャ】レビュー: 救いのないディストピアと重火器を持った可憐な少女の組み合わせは良いが、ゲーム性は大いに改善の余地あり

点数評価70点
プレイ状況2キャラ+Goodエンドでクリア
チャレンジモードを何回か
プレイ時間約3時間
発売日Steam:2021年8月27日
家庭用:2023年4月6日
対応機種Steam
PS4/PS5/Xbox/Switch
プレイ機種Steam
開発元hinyari9
発売元Steam:hinyari9
家庭用:PLAYISM
ジャンルハイテンポシューティング
ジャンルの考え方
総評/評判/感想

溶鉄のマルフーシャは繰り返し長時間遊ぶようなゲームではないが、短いプレイ時間の割には印象深いゲームである。救いのないディストピアの設定や、可愛い少女のドット絵が好きな人はプレイしても良いだろう。肝心のシューティング部分は爽快感はあるものの、繰り返し遊びたくなるような作りかというとそうではない。戦闘パートをもう少し遊べるように作りこめば大きく評価は伸びそうである。後は、DLCで救いをくれませんかね・・・。

総合評価
 (3.5)
革新性
 (4)
ユーザビリティ
 (4)
ビジュアル
 (4.5)
サウンド
 (2.5)
プレイ継続性
 (1)
コストパフォーマンス
 (3.5)

迫りくる機械兵を黙々と倒し続けるシューティング

溶鉄のマルフーシャは、ディストピアを舞台に可憐な少女たちを操作し、過酷な防衛任務を生き抜くディフェンス系のシューティングゲームだ。

戦闘パートにはサイドビューのシューティングゲームが採用されており、敵の機械兵が画面右端から襲来し、主人公マルフーシャには目もくれず、ひたすらに画面左の防衛対象であるゲートを攻撃する。

プレイ中にマルフーシャが倒れることは無く、ゲートの耐久値が無くなるとゲームオーバーとなる。クリア条件は規定の日数を生き延びることであり、戦績と途中で雇用した仲間によってエンディングが分岐する。

溶鉄のマルフーシャ 戦闘画面
画面右から無数に襲来する機械兵を倒すゲーム。
溶鉄のマルフーシャ ゲームオーバー
ゲートの耐久値がゼロになるとゲームオーバー。

戦闘内容はシンプルで、要求されるボタン操作は、射撃,リロード,左右移動,アイテム使用の4種類のみ。残弾数がゼロになると自動リロードされるので、リロードを手動で行う機会は少ないだろう。

敵の出現はWave制となっており、Waveを殲滅する度に給与が支給される。また、ランダムに3枚のステータスアップのカードが提示されるので、給与を消費することで1枚を選んで購入することで、wave毎にマルフーシャを強化できる。出現するカードには、ステータスアップ,仲間の雇用,新しい武器,消費アイテムがあり、基本はステータスアップを選びつつ、武器の耐久力が低下すると新しい武器を調達することになる

溶鉄のマルフーシャ カード選択
ランダムな3択から強化を選ぶ。偶に有給休暇が出るが・・・
溶鉄のマルフーシャ 武器の選択
武器の耐久力がゼロになると、弱いハンドガンで戦うことになる。
溶鉄のマルフーシャ 仲間のレベルアップ
同じ仲間のカードを取得すると、仲間のレベルが上がる。

仕様を見ればローグライクゲームにも該当する

溶鉄のマルフーシャは、広義ではローグライクゲームに属するのだろう。ゲームオーバーになれば完全に最初からやり直しとなり、ランダムに提示されるカードによる3択は構築型カードゲームのような見た目だ。

また、武器毎の特性の違いは顕著で、明確に得意・不得意が設定されているため、伸ばしたステータスと武器の相性でシナジーを考えることも可能だ。例えばリロードと攻撃力を伸ばしたのであれば、隙が改善された高火力のショットガンで敵を瞬殺、マガジン容量と連射速度を伸ばしたのであれば、軽機関銃で弾幕を張り続けるなど、ステータスと武器の相性を考える遊びが用意されている。

ただし、溶鉄のマルフーシャは簡単なゲームだ。初回プレイであれば仕組みの不理解からゲームオーバーになるかもしれないが、一通り武器やアイテムの特性を理解すると負けることはまず無くなる。前述の相性を考えなくともクリアに困ることは無いし、クリア目前にはステータスの多くの項目がカンストするので、武器選択に悩むこともない。多少の位置取りをしながら、何も考えずに射撃ボタンを押し続けているだけでクリア出来てしまうので、最初こそ爽快感があって楽しいのだが、直ぐに飽きが来るだろう。

正直なところ、溶鉄のマルフーシャは、シューティングあるいはローグライクとしてのゲーム性は浅い。一方で全エンディングを見るには繰り返しプレイが必要となっており、苦行というほどではないが、率先してエンディングを回収しようという気にならない、冗長な構造のゲームである。

Sara
Sara

プレイに工夫の余地が無く、周回プレイは消化試合の繰り返しのようなイメージ。

トラップやバリケード、特殊兵器などの消費アイテムも用意されているが、設置系であればさっさと早めに使っておく、攻撃系であれば敵が密集したら使う程度しか選択肢はない。多少の効率アップはあるが、使わなければクリアできないこともない。

溶鉄のマルフーシャ 特殊攻撃
消費アイテムは強力だが、そもそも使わなくても勝てる。

また、やりこみ要素として、エンドレスに戦い続けるチャレンジモードが用意されているが、カードの3択で早めに上級兵を引けるか、金が無くなる前にカード引き直しで上級武器を引けるかどうかの運ゲーに陥りがちだ。余ほど超人的なエイミング能力を持っていない限り、運が向かなかった時点でゲームオーバーになるので、そこまで熱中してプレイ出来る内容でもなかった。

溶鉄のマルフーシャ ボス戦
絵面は良いのだが、完全に消化試合。

プレイヤーの心に爪痕を残すディストピア感

溶鉄のマルフーシャは、前項に示した通りゲーム性はイマイチだが、その世界観からはプレイヤーに爪痕を残そうという強い意志を感じるゲームだ。

まず、ゲームはマルフーシャに防衛任務の辞令が下るところから始まるのだが、その内容は“低級国民を強制的に国に貢献させる”というものであり、開始早々に何とも悲惨な境遇が伝わってくる。当然ながら途中で仲間になる他のキャラクター達も低級国民だ。

溶鉄のマルフーシャ 監督官
威圧的な監督官に命じられて戦場へ。
溶鉄のマルフーシャ 仲間一覧
低級国民の仲間一覧。チャレンジモードでは特性を持った仲間を操作できる。

前項に記載した通り、敵の襲撃Waveを乗り越えると給与が手に入る。ここでもまた辛い現実が待ち受けており、給与支給明細書を確認すると、基本給から様々な控除が行われていることが分かる。必死に戦ったにもかかわらず、総支給額がプラスマイナスでゼロになることもある。

溶鉄のマルフーシャ 給与支給明細書
衝撃の総支給額ゼロ。

そして、ゲームを進めると基本給がアップするのだが、実際には総支給額はさほど変わらない。何故なら、Wave開始時に時折、新しい税制度が追加されて控除項目が増えるからだ。これらは世界観を構築するための確定演出であり、何をどのようにプレイしても、戦えど戦えど金が溜まることは無い。そして手に入れた僅かばかりの給与は、ステータスアップと新しい武器の調達で消えていく運命だ。

溶鉄のマルフーシャ 介護保険料導入
何がおめでとうなのか分からないが、控除が増える。
溶鉄のマルフーシャ 消費税導入
消費する前から定額控除という狂気の消費税。

少女たちの宿舎はボロボロで、大した娯楽もなく粗末なディストピア飯を食べて寝るしかやることが無い。そんな悲壮感に溢れる居住空間がドット絵で表現されており、なんとも物悲しく、それでいて存在する少女は可愛らしく描かれており、それらのアンバランスさが絶妙である。

溶鉄のマルフーシャ 食事風景
食事をするとランダムなステータスがアップする。
溶鉄のマルフーシャ 質素な食事
偶にパンが出現するとステータスが2項目上昇する。カプセルだけの場合は上昇無し。

評価ポイントのまとめ

溶鉄のマルフーシャは、ゲーム性という部分では満足度は低いものの、その世界観は目を引くものがある。ちなみに、エンディングは10種類用意されているが、いずれにも救いは用意されていない。低価格なインディーゲームなので、そのディストピア感が気になれば、数回遊んでみるだけと割り切って購入しても良いだろう。

長所

  • 宿舎のドット絵
  • 救いのない世界観

短所

  • ゲームとしてやや単純
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