【Backpack Hero】レビュー: 戦闘開始前に勝敗は殆ど確定している。事前のアイテム整理で運命が決まるRPG – バックパックヒーロー

点数評価80点
クリア時間約3時間
(1キャラ目のクリア時間)
プレイ状況全キャラでスタンダードクリア
2023/9/17版アーリーアクセス
プレイ時間約9時間
発売日2022年8月16日
対応機種Steam/Switch
プレイ機種Steam
開発元Jaspel
発売元Jaspel, IndieArk, Different Tales
ジャンルローグライクRPG
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総評/評判/感想

Backpack Hero(バックパックヒーロー)は、デッキ構築型ローグライクの新しい形だ。デッキ構築をバックパック内のアイテム整理が担っている、手札の概念が無くなったデッキ構築型ローグライクと言った所だろう。バックパック内のアイテム配置で大きく変わるシナジーを調整するのは大変だが、絶大なシナジー効果を発揮できた時の達成感は大きく、長考して最適解に辿り着くことが得意なプレイヤーの評価は高くなるはずだ。また、敵を仲間にできたり、従来のデッキ構築とバックパック整理のミックスルールだったりと、キャラクター毎にゲーム性が大きく異なる点も評価したい。覚えることは多いが奥深い作品である。

【総合評価】
革新性
ユーザビリティ
ビジュアル
サウンド
プレイ継続性
コストパフォーマンス

デッキ構築の代わりにバックパックの中身を整理整頓

Backpack Hero(バックパックヒーロー)は、ターン制バトルにデッキ構築に見立てたバックパックの整理要素を盛り込んだローグライクRPGだ。今回プレイした2023年9月17日時点のアーリーアクセス版にはストーリーは存在せず、プレイヤーは黙々とダンジョンを潜っていき、最深部に待ち構えるボスを倒せばゲームクリアとなる。正式リリース時はストーリーも追加されるようだが、現状では3フロアで構成される3つのダンジョンを踏破すればクリアとなる。

本作はダンジョン探索タイプのローグライクRPGであり、ダンジョンは次のスクリーンショットに示すような地図で示される。ドクロマークは敵との戦闘,コインのマークはショップ,金床のマークは鍛冶屋など、発生するイベントは告知されているので必要な場所を自由に巡ってから階段へ向かうことになる。ドクロマークは必ず立ち止まって戦闘になったり、分岐で道を選ぶと片方の道が封鎖されるなど簡単なルールはあるものの、基本的には往来は自由であり、リソースの管理がある訳でも無い。“ダンジョン探索タイプ”と言ってもキャラクターの移動に関する部分は極めてシンプルだ。

Backpack Hero マップ
地図をクリックするとイベントが発生する。探索と言ってもシンプル。

ダンジョンの探索部分は単純だが、その代わりに本作の核となる“バックパックの整理要素”は中々に複雑だ。本作の戦闘にはSlay the Spireのような、敵の攻撃内容が全て事前に告知されているタイプのターン制バトルが採用されており、プレイヤーはキャラクターに設定されたエナジーの範囲内で攻撃や防御を選択することになる。

Slay the Spireの場合はプレイヤーが自身で構築したデッキから配られた手札を確認し、所持しているエナジーの範囲内で攻撃や防御を選択する。それに対してBackpack Heroの場合は、バックパックの中身がデッキに相当し、プレイヤーは戦闘の前にバックパックの中身を整理整頓(=構築)し、戦闘中はバックパックの中身をエナジーの範囲内で自由に使うことが出来る。

“デッキから手札が配られる”という概念が無い点がSlay the Spireと大きく異なっており、Backpack Heroの場合はバックパック(=デッキ)の中身が常に全て機能し、全てが選択対象になっている。勿論、自動的に効果を発揮する“パッシブ”的なアイテムと、プレイヤーが選択して初めて効果を発揮する“アクティブ”的なアイテムがあるのだが、戦闘開始と同時にパッシブ効果を持った全アイテムが一気に効果を発動すると捉えると理解が早いだろう。

具体例を挙げてみると、次のスクリーンショットでフォーカスしているのは、ターン開始時にブロックを手に入れることができる『革のブーツ』だ。革のブーツには、このアイテムの上にあるマス目の分だけブロックを加算するパッシブ効果が設定されているので、このバックパックの配置状態ではブロックを+4得ることができる。更に斜め右上の『戦士の盾』が周囲の鎧属性のアイテムにブロック+1を追加するパッシブ効果を持っているので、最終的にこの革のブーツは毎ターンブロックを+5獲得することが出来る。また、バックパックの左端にはもう一つ革のブーツが入っており、こちらは戦士の盾とは隣接していないのでブロックは+4となる。つまり、プレイヤーは毎ターンの開始時にトータルでブロックを+9得ることができる。

Backpack Hero 革のブーツ
全パッシブ効果が同時に発動する。

この状態から敵の攻撃予告を見てブロック数が足りないと思えば、プレイヤーはエナジーを消費して戦士の盾のアクティブ効果を発動し、ブロックを積み上げても良い。ブロックが十分であれば次は攻撃となるが、バックパックの中の武器は設定されたエナジーを消費すれば何回でも使用できることが出来る。

次のスクリーンショットでは、消費エナジー1の『氷漬けの大槌』にフォーカスしている。基礎効果,シナジー効果,鍛冶効果が合わさった結果、1回の攻撃でダメージを10与えた上に、凍結と猛毒のデバフを敵に蓄積する性能になっていることが分かるだろう。そして、左下のキャラクターの頭の上には現在のエナジーが表示されており、このスクリーンショットでは5となっているので、この氷漬けの大槌であれば5回攻撃することが出来る。

Backpack Hero 氷漬けの大槌
 武器はバックパックから自由に選べる。
Sara
Sara

武器によっては1ターン内の使用回数制限有り。武器の使用回数を復活させるアイテムもあるので、バックパックの中で上手く配置して最大効率のダメージを出せるように工夫したい。

ちなみに、アイテムはバックパックの中で占有するマスが多い程に効果が高くなる傾向がある。逆に1マスしか占有しないダガーのようなアイテムは貧弱な上に1ターンにつき1回しか使えないが、消費エナジー無しで使用できるという強みも持っている。隣接する武器を強化するアイテムを複数回利用できる武器に隣接させるのか、1ターン1回しか使えないが消費エナジー無しで使用できる武器に隣接させるのかは判断が悩ましい。敵の攻撃が厳しくブロックの積み立てで精一杯な局面であれば、消費エナジー無しの武器を選択した方が良いだろうし、毒や炎上などのデバフで苦しめてくる敵を一気に倒したいのであれば複数回利用できる武器に隣接させて、短期決戦を挑んだ方が良いこともある。どのアイテムでシナジー発揮するか考えること自体が、本作のメインコンテンツと言っても過言では無いだろう。

Backpack Hero ルビー
隣接する武器の攻撃力を+4するルビーに、ダガーを2本隣接させた様子。

なお、戦闘に勝利して経験値を積むことでプレイヤーはレベルアップし、そのタイミングでバックパックの容量を増やすことができる。レベルアップではキャラクターの性能は特に変化しないが、バックパックのサイズアップによって沢山アイテムを詰めることができるようになり、多くのシナジー効果を発揮して強くなるという仕組みだ。

Backpack Hero レベルアップ
バックパックのマス目を拡張する様子。既存のマスに隣接している場所を任意に選べる。

逆に言えば、バックパックが大きくなったとしても効果的なアイテムの配置が出来ていない場合は強くならないので、直感的なゲーム性を求めている人には向かないと言えるだろう。しっかりと考え抜いて効果的なアイテムの配置ができれば、一つレベルが上がっただけでも相当に強くなることが可能なので、長考の末にアイテム間のシナジーを最大まで高めることに達成感を覚える人にとっては、神ゲーとなり得るだろう。

Sara
Sara

バックパックが大きくなる度に、“ああでもない、こうでもない”と、中身をひっくり返して配置変えする作業に楽しさを見出すことができるかどうかが、本作にハマるカギとなる。

アイテムが高いシナジーを発揮する整理整頓ができたとしても、決して安定しないのが本作の面白い所だ。戦闘中に敵が繰り出してくる攻撃は、キャラクターに直接影響する攻撃やデバフの他に、バックパックに悪影響を及ぼすものが多数用意されている。バックパックのアイテムを“災い”というカテゴリーのアイテムで、一時的ながら強制的に上書きされることがあり、災いの対象となったアイテムは無効化される。無効化されたアイテムは戦闘中に使用できないだけでは無く、他のアイテムとのシナジーも失われてしまうので、複雑なシナジーを発揮しているほどにステータスダウンが激しくなる。災いを取り除くには、キャラクターのエナジーを消費したりキャラクターがダメージを負うなど、何かしらのデメリットが発生する。計算が狂って思わぬ大ダメージを受けることがあるので、緊張感のある戦闘を楽しむことができるはずだ。

Backpack Hero アイスブロック
4マスを防ぐアイスブロックが設置された様子。指定回数だけ使えば消すことができるが、エナジーを無駄に使うことになる。

その他にも、バックパック内の配置禁則に触れると、重要なアイテムがバックパックから飛び出してしまうことがある。戦闘中にアイテムが変化して配置禁則に触れると、エナジーを消費してアイテムの整理整頓をする必要があるのだが、エナジーが無かった場合はアイテムを完全にロストしてしまうことになるので注意が必要だ。

以上のように、Backpack Heroにおける戦闘の勝敗を分かつのは、戦闘内容よりも戦闘開始前のバックパックの整理整頓である。本作は前準備で運命が決まるRPGであると言っても過言では無く、パズル的な要素を含んだ長考を好むプレイヤーなら間違いなく楽しめるはずだ。

個性的でゲーム性が大きく変わるキャラクター達

Backpack Heroには5人のプレイアブルキャラクターが用意されている。スタンダードなキャラクターである『パース』をクリアした後は、全く異なった性能を持った4人のキャラクターを楽しむことができる。

例えば『サッチェル』というキャラクターは、レベルアップ時のバックパックの拡張が特徴的で、任意の隣接するマスを拡張するのではなく、テトリスで降ってくるテトリミノのようなマスの塊を追加することになる。適当にマスの塊を設置しているとデッドスペースが出来てしまうというデメリットを抱えるものの、敢えて離れ小島のようなところにマスの塊を追加することで、周りに悪影響を及ぼす災いのカテゴリーのアイテムの被害を最小限に抑えることができる。また、このキャラクターは敵を倒すことに主眼を置いておらず、魅了というデバフを敵に積み上げることで敵を一時的に仲間にするという戦闘スタイルが採用されている。

Backpack Hero サッチェル
離れ小島の数を参照するアイテムがあったり奥が深い。

次に『トート』というキャラクターでは、バックパックの整理にSlay the Spireのようなデッキからのドロー要素を組み合わせた戦闘が用意されている。バックパックは普段通り拡張していくが、毎ターン『彫刻』と呼ばれるSlay the Spireのカードに相当するアイテムを、バックパックとは別のインベントリから複数個ドローする。それをターン開始時にシナジーを発揮するようにバックパック内に配置していくことになる。バックパック整理とデッキ構築のミックスルールのような、異次元のプレイフィールを楽しむことができるだろう。

Backpack Hero デッキ構築型
左下の数字がデッキ内の残り彫刻数。
Sara
Sara

膨らんだデッキをショップで圧縮できたり、次の戦闘まで彫刻(=カード)をデッキから完全に削除するような、カードゲームではお馴染みのシステムを堪能できる。

デッキ内から彫刻をバックパック内に配置し続ければ、当然ながら数ターン後にはバックパックが一杯になってしまうが、トートはエナジーを消費することで、バックパックの中身を敵に投げつけることができる。投げつけられた中身は敵へダメージを与え、バックパックの中身はリセットされるという仕組みだ。リセットするとアイテムによるシナジーは失われるので、投げつけるタイミングも重要となる。

その他にも、バックパックの中からモンスターを召喚して戦う『ポシェット』と、バックパックの中に回路を構築して回路に触れるアイテムを全て同時に発動する『CR-8』というキャラクターが用意されている。現在はアーリーアクセスということで全5キャラクターだが、正式リリース時には更にキャラクターが追加されるようである。

Backpack Hero 仲間モンスター
仲間モンスターは最大で3人まで展開可能。

なお、筆者はモンスターを召喚して戦うポシェットがお気に入りだ。ポシェットは基本のバックパック以外にも、モンスターに個別のバックパックが用意されており、そこにはモンスター専用の装備品を収納して性能を変化させることが出来る。行動用のエナジーも各々のモンスターに設定されているが、ポシェットのエナジーを消費することでモンスターに追加で行動させることも可能だ。所持アイテムが多くなる分だけ思考の時間が長くなりがちだが、しっかりと考えられたポシェットとモンスターの行動で敵を完封できた際の満足感を味わってもらいたい。

ユーザビリティの改善に期待したい

バックパックヒーローは独創的で面白いローグライクRPGには違いないが、ユーザビリティに関してはもう一歩だ。

まず、戦闘時には複数の敵が出現し、それぞれが攻撃を仕掛けて来る。全ての行動は事前に予告されているものの、合計でどれだけのダメージを喰らうのかまでは表示されていないので、毎ターン敵の数だけ足し算をしなければならない。小学生レベルの足し算とはいえ、ゲーム外の足し算を繰り返しやらされるのは面倒である。特に多段ヒット攻撃をしてくる敵が複数出た際には、計算が面倒臭くなって『取り合えず多めに防御を盛っておけば良いだろう』といった雑なプレイに発展しがちだ。

計算を放棄して雑に防御を積んでも、スタンダードの難易度であればクリアできるが、この手のローグライクゲームはクリア後の高難易度モードが本番となる。そのようなモードでは流石に計算を放棄する訳にはいかない。従って、正式リリース時には敵の攻撃力の合計値を表示する機能は欲しい。

また、肝心のアイテムの整理整頓についても改善の余地がある。何よりも欲しいのは、空きスペースにアイテムを詰め込めるだけ自動で詰めるようなコマンドだ。現状ではアイテムを1個ずつドラッグ&ドロップでバックパックに入れるしかなく、ポーションのような周囲に影響を与えないアイテムであれば、バックパックに余裕があれば自動で拾いたい。

同じ種類のアイテムを並べることが出来ないデメリットを受ける代わりに、毎ターンのエナジーが増えるようなレリックも存在するので、厳密に言えば周囲に影響を与えないアイテムは存在しないのだが、配置禁則に触れない範囲でアイテムを詰め込むようなコマンドがあれば飛躍的に遊びやすくなるだろう。

Sara
Sara

うっかり間違った場所にドロップすると、配置済みのアイテムがバックパックから飛び出てしまい再配置が面倒くさい。そのようなミスの確率を下げるためにも小物を空きスペースに自動で詰め込みたい。

本作には辞書機能が用意されており、分からないことがあれば直ぐに解説を確認できるのだが、解説文が解説として機能していない項目が散見される。おかしな翻訳はアーリーアクセスのインディーゲームには在りがちだが、アーリーアクセスを実施している期間の割には、ゲームの基礎となる解説でも怪しい部分があり、正式リリース時に修正されるか不安である。

Backpack Hero 辞典機能
辞書機能自体は有難いのだが・・・。

評価ポイントのまとめ

Backpack Heroは、“アイテム整理”という概念をローグライク界隈にもたらした革命的な作品である。プレイ開始直後は覚えることがとにかく多く疲れるかもしれないが、慣れてくるとその魅力の虜となるだろう。

長所

  • アイテム整理でシナジーを発揮するという新しさ
  • 考えるほどに楽しくなるアイテム配置の妙
  • ゲーム性の全く異なるプレイアブルキャラクター

短所

  • 毎ターンの足し算が面倒くさくなる
  • ドラッグ&ドロップが面倒くさくなる
  • 一部の日本語訳が怪しい
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