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【Patrick’s Parabox】レビュー: パズルゲームとしての美しさが際立つ、再帰的な要素を完璧なまでに取り込んだ次世代の倉庫番 – パトリックスパラボックス

点数評価100点
クリア時間約7時間
プレイ状況クリア
プレイ時間約8時間
発売日2022年3月30日
対応機種Switch/PS5/Steam
プレイ機種Steam
開発元Patrick Traynor
発売元Patrick Traynor
ジャンル再帰的パズルゲーム
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総評/評判/感想

Patrick’s Parabox(パトリックスパラボックス)は、シンプルな箱押しパズルゲームである倉庫番に、複雑な再帰性を加えたような作品である。エリア毎に惜しげも無く投入される新しい再帰性を持ったギミックの数々と、それらを活用した350以上のステージは美しさを感じる程に洗練されており、クリアまで遊べば開発者に畏敬の念を覚えるだろう。“頭がバグってくる”ような感覚と、奇怪な再帰性を乗り越えて箱を押す正しい手順を見つけることができた達成感は、パズルゲーム好きであれば絶対に味わってもらいたい。

【総合評価】
革新性
ユーザビリティ
ビジュアル
サウンド
プレイ継続性
コストパフォーマンス

再帰的な要素が加わった倉庫番

箱の中で箱を動かすために、その箱の中でさらに箱を動かす

マイニンテンドーストアより

この一見では意味の分からない文言は、『Patrick’s Parabox』のストアページに記載された本作の説明文である。本作は箱を所定の場所まで動かすことを目的とした、いわゆる倉庫番系のパズルゲームだ。倉庫番を知らない人のために補足をしておくと、倉庫番は押すことだけしかできない複数の箱を、比較的に自由度の低いエリア内で動かして、手詰まりにならないような手順を見つけ出すことを目的としたパズルゲームである。

Sara
Sara

想像が付かない人は、Wikipediaに掲載された画像を見れば一発で分かるだろう。

簡単に表現すれば『Patrick’s Parabox』は、シンプルな倉庫番に、複雑な“再帰的要素”をミックスした作品である。再帰的とは、自身を説明するために自身を参照するという、一種のループのような状態を表す言葉であることから、本作は“自己参照を持ったループ構造の倉庫番”であると表現できるのだが、これだけでは意味が分からないだろう。従って、まずは次のスクリーンショットを見てもらいたい。

Patrick's Parabox ゲーム説明
これが基本の再帰性。

このスクリーンショットがどのような状態なのかを説明すると、まず、赤色箱に黒い目が付いた物体が主人公だ。主人公の右側の箱が運搬対象であり、このステージの場合は左下の枠線の上まで箱を押すことができればステージクリアとなる。これだけであれば“ただの倉庫番”なのだが、本作は再帰性を持っている。そのため、押している箱自体が主人公が今居る部屋であり、部屋の外を見ると箱に隣接する主人公が見えているという状況になっている。

そしてこの画像を見ると、多くの人は奇妙な違和感を覚えるだろう。そう、運搬対象の箱の上面が壁に接しているため、“引く動作が存在しないなら箱を下方に移動させることができない”ように見えることが違和感の正体だ。しかし、本作には再帰性が存在するので、主人公が部屋の上部の出口から外に出ると運搬対象の箱の上部から出て来ることになり、一か所凹んだ場所を使えば下方に押すことができるのだ。

Sara
Sara

無限に続く入れ子構造を利用すれば解ける倉庫番だと理解しよう。

また、再帰的な移動は、主人公だけでは無く全ての運搬対象に適用される。次のスクリーンショットでは、道幅が箱を同じだけしかなく、常識的に考えると枠線に箱を押し込めない状況にある。しかし、再帰性を利用することで部屋の外に箱を押しだすことで枠に無い配置可能だ。

Patrick's Parabox 例題
箱を枠線の隣まで押してから、黄色の箱を右へ押せば良い。

なお、再帰性以外には基本的なギミックとして、細い通路や一部の辺が開いた中空の箱が用意されている。前者であれば、箱を壁に押し付ければ主人公はその通路に入ることができ、後者であれば箱を箱の中に押し込んでいく多層構造を取り扱うことができる。

Patrick's Parabox 細い通路
壁を使って通路を通ればL字の先に移動できる。
Patrick's Parabox 多重構造
箱を3重に収納すればクリアできる。

ここまでの説明を読んで、「全く意味が分からない」という人は次の動画を見てもらいたい。基礎的なギミックのイメージを掴みやすいだろう。32秒の短い動画だが、敢えて最初に押し方を失敗した例も入れてあるので分かりやすいはずだ。

一方で、勘の良い人や直ぐに無茶をやってみたくなる人であれば、意図的に出口と出口を繋いだり、入り口と入り口を繋ぐことで何が起こるのか気になるのではないだろうか。それをやってしまうと、延々と再帰し続ける無限ループが発生することになり、虚無な空間に飛ばされてゲームオーバーになる。

Patrick's Parabox ゲームオーバー
ゲームオーバーのシーン。∞でループを発生させてしまったことが示されている。

ちなみに、このような無限ループの状態は、本作を遊んでいると意図しなくとも頻繁に陥ってしまうだろう。幸いにもボタン一つで何手でも動作を戻す機能が用意されているので、途中まで上手く行っていた場合の状況再現は容易である。

圧倒的なギミックの多さ

『Patrick’s Parabox』の特徴は、何と言ってもギミックの豊富さだ。ベースとなる倉庫番的な箱の運搬動作こそシンプルだが、ステージが進むにつれて次から次へと新しいギミックが追加されていく。そのため、本作は倉庫番ライクでありながらも、シンプルさとは全く無縁の非常に複雑なパズルゲームに仕上がっている。

例えば、次のスクリーンショットであれば、オレンジ色の箱が部屋と再帰性の関係を持っていることは直ぐに分かるだろう。一方で中央の主人公を良く見ると、そこにも何やら縦穴と空洞が用意されており、さらにそこに箱を設置する枠線が用意されている。この状態は、主人公が壁に向かって箱を押し付けることで、体内に箱を収納できることを意味している。しかも、そこに箱を設置する枠線があるということは、何とか再帰性を活用して自身の体内に移動する術を見つけなければならないことを意味している。

Patrick's Parabox 自身に入る。
再帰性を使うには外に出るしかないことをヒントに手順を詰める。

ちなみに、自身の中に入り込むパターンを実際にクリアする動画は次の通りだ。クリアするだけなら実に15秒であっと言う間なのだが、この発想に至るまでが難しい。

また、次のスクリーンショットであれば、主人公そのものが再帰性を持っており、縦5個×横5個で合計25個の箱を内包している。25個の一つに自身が収まればクリアとなる箱が含まれているので、自身の中からその箱をどうにかして取り出してから、そこに自身が収まればステージクリアとなる。

Patrick's Parabox 自身が再帰性を持つ
自身がさらに大きな25分割のブロックの1つである。

このように、ステージの説明を文面だけで見ると支離滅裂な説明のように見えるかもしれないが、再帰性を持った構造においてはこれら全てが成り立つのだ。前項で紹介したようなチュートリアル的な簡単なステージであれば、適当に箱を動かしていれば偶然に解けることもあるが、難易度の上がってくるゲーム中盤からは直感的に解くことはまずできない。

本作をクリアするためには、一手ずつ間違った手順を潰し込んでゴールから逆順で考えれば良さそうだが、そこに再帰性の壁が立ちはだかる。普段の生活ではまず体験することの無い再帰性を活用することを前提に、箱を動かす手順を頭の中で逆再生することは非常に難易度が高く、多くのプレイヤーが“頭がバグってくる”という感覚に陥ることだろう。

特に終盤になってくると、新旧のギミックが揃い踏みとなり複雑怪奇な様相となってくる。複合型の高難易度ステージに遭遇すると、面喰って適当に動かしまくった後に途方に暮れ、しばらくは操作の手が止まってしまうこと間違い無しだ。

Patrick's Parabox 終盤ステージ
途方に暮れるが諦めてはいけない。

最終的にはゲームオーバー条件であったはずの無限ループさえギミックに採用されることになり、更には無限ループの中に無限ループを入れ込んだ、無限ループの多重構造といったステージも登場することになる。

Patrick's Parabox 無限ループの活用。
∞の記号が書かれた箱は、無限ループを意図的に作った際に活用できる。

なお、次の動画のように“頭をバグらせる”ことに特化したステージまで用意されており、本作を遊べば浴びる程に再帰性を体験できるだろう。

大満足のステージ数と達成感

『Patrick’s Parabox』はギミックの引き出しの多さに加えて、ステージ数も何と350以上が用意されておりボリューム満点だ。ギミックが追加される度にチュートリアル的な簡単なステージが用意されているものの、そのような簡単なものを除いたとしても330以上のステージが用意されている。

ちなみに、ステージは順番にクリアする必要は無く、お題(優先的に使わされるギミック)毎にエリア分けされた単位でステージ選択制となっており、エリア内で既定数のステージをクリアすることで次のエリアに進むことができる。難易度が高いステージも無数に用意されているが、クリアだけであれば多くの人が何とかなるのではないだろか。

Patrick's Parabox ステージ選択
赤枠は高難易度。スルーすることも可能。

ちなみに、筆者の場合はエンディング到達時点で250ステージをクリアした。基本的には全てのステージにチャレンジしたが、苦手なお題が採用されているエリアには不得意なステージが集中することになるので、そのようなエリアでは高難易度ステージには挑んでいない。特に次のスクリーンショットのような、構造物が抽象的な記号に置き換えられた特殊ステージと、苦手なお題が重なった際にはクリアは絶望的だった。

Patrick's Parabox 記号化されたステージ
記号化されたステージ。

クリア後には超高難易度なスペシャルなステージも解禁され、さらに頭の中がぐちゃぐちゃに混乱するような体験が待ち構えている。しかし、そのような超高難易度ステージをクリアできると、数学の証明問題で式を延々と変形させて悩み続けた結果、ようやく解けた時のような達成感が湧いてくるだろう。

いずれのエリアにも言えることだが、ギミックを扱うコツが掴めるとステージのクリア速度がたちまち加速していき、難解で理不尽に見えていたステージにも愛着が沸き、もはや形容し難い美しさすら感じるようになってくる。そして最終的には、このような遊びを350ステージも考えることができた開発者に尊敬の念を抱くはずだ。

Sara
Sara

筆者は全ステージを独力でクリアすることは叶わなかったが、本作を遊んで満ち足りた気持になった。

評価ポイントのまとめ

『Patrick’s Parabox』は、ギミックが満載された倉庫番のようなゲームであり、ステージのボリュームも満点だ。そしてパズルゲームとしての美しさも文句無し。知的なパズルゲームが好きであればプレイして損なし。

長所

  • シンプルな倉庫番スタイルと、複雑な再帰性の融合
  • 350ステージもの大ボリューム
  • 知的な満足度の高さ

短所

  • 無し
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