点数評価 | 60点 |
クリア時間 | 約29.5時間 |
プレイ時間 プレイ状況 | 約35時間(裏ボスまで) クリア(マスターズ版) |
発売日 | 2023年12月1日 |
対応機種 プレイ機種 | Switch Switch |
開発元 発売元 | トーセ スクウェア・エニックス |
ジャンル | RPG ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 軽度に含む |
『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』は、一言で表現すれば低品質な作品だ。シナリオの外注も虚しくストーリーとキャラクターはツッコミどころしか無い。挙げだすとキリがない不満の数々は、過去のIPに頼り切った企業の末路を象徴していると言えるだろう。幸いにも配合と戦闘だけは面白かったのでクソゲーではないものの、それら以外に何一つ褒めることができない作品である。ドラゴンクエストのモンスターを取り扱った作品だから救われているだけであり、これがオリジナル作品であれば間違いなくクソゲー認定されているだろう。
【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』は、ドラゴンクエストモンスターズシリーズ22年ぶりのナンバリング作品だ。主人公にはドラゴンクエストⅣで勇者ソロ一行の宿敵として立ち塞がったデスピサロを採用し、シナリオの製作はドラゴンクエストⅩで脚光を浴びた藤澤仁が代表を務める株式会社ストーリーノートが担当する。待望のナンバリングであることに加え、人気キャラクターの主人公抜擢や専門業者へのシナリオの外注と、発売前から期待が高まっていた作品だ。しかし、蓋を開けてみると配合そのものは面白いものの、理解に苦しむ仕様の数々が採用されたことに加え、折角のシナリオを台無しにするようなストーリーとなっており、期待外れな内容となってしまった。
ツッコミどころしか無いストーリーとキャラクター
『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』の最大の魅力は、多種多様なモンスターを配合で生み出せることだが、本作はドラゴンクエストⅣのアナザーストーリーが展開されるという前情報から、その内容に期待していたプレイヤーが多いことだろう。しかしながら、ストーリーについては落胆する結果となった。
本作のピサロは、魔界の統治者であり父でもあるランディオル大帝から“魔物を直接攻撃することができない呪い”が掛けられている。そして、その呪いを解くことは容易では無いため、対抗策として魔物を使役するモンスターマスターとして腕を磨くことになる。このモンスターマスターとしてのピサロという設定を上手く活かし、ドラゴンクエストⅣにて勇者ソロやその仲間達の前に立ちふさがった、ピサロの手先やピサロナイトといったモンスターが、名を変えてピサロの配下に加わる経緯が描かれることになる。
また、エルフが流すとされるルビーの涙を巡って非業の死を遂げるロザリーはピサロによって救わる。そして、魔界の行く先々で困っている魔物を救済して回る展開から、本作におけるピサロは全面的に善人として描かれることになる。
ただし、ピサロを善人として描いてしまうと、ドラゴンクエストⅣの第5章の冒頭シーンで、ピサロが勇者ソロの住む村を襲撃するという残酷なシーンと大きな矛盾が生じてしまう。それについては、勇者ソロとピサロを敵対させるために、ピサロの兄である暴将ディオロスが仕組んだ策略であったとして上手く改変されている。
ifストーリーであることを活かし、モンスターマスターとしてのピサロ,善人であるピサロを作り上げて、それを活かせるようなイベントが用意されている点は評価できるだろう。しかし断言したい。本作のストーリーはクソである。
幾つかのイベントシーンと、それらをとりまくシナリオや設定だけを切り取って見ると、各々は興味深いものであり続きが知りたくなるのだが、これらを繋ぐものが何もなく、ストーリー全体としてみると違和感だらけだ。
例えば本作の終盤では、復讐に燃える勇者ソロが窮地に落ちったピサロを助け、「ピサロを倒すのは自分自身だ」と宣言するシーンがある。勇者ソロのキャラクター付けが強引に感じるかもしれないが、これはこれで意外な展開であり興味をそそるだろう。しかし、何故そのタイミングで勇者一行が魔界に現れたのか説明は無く、また助けて去った後は一切の出番が無い。クリア後の後日談で登場するのかと思いきやそのようなことも無い。そのため、本作ではピサロが善人であるように改変したにもかかわらず、勇者ソロはピサロに対して遺恨を残したままという歪な作りとなっている。
他の例を挙げると、魔物達の地上の拠点であるデスパレスは、ザガンギエルという老い先の短い魔王がランディオル大帝に対抗するための拠点であり、ピサロを王として迎えて献上することを目的に作られたという設定が用意されている。ザガンギエルの死から埋葬の流れは、オリジナル版のドラゴンクエストⅣの時点からデスパレスに存在した謎の墓に通じるものであり、本編の謎を上手く活かしているように見える。しかし実際には、ザガンギエルがピサロの前に姿を現したと思ったら、5分もしない内に勝手に息絶えるという感慨もクソも無い、余りにも急すぎる雑な展開となっている。
「その状況で城を引き継げる神経がおかしい」というツッコミを入れたくなる展開。
上記の例の他にも、本作はありとあらゆる展開が雑であり、伏線回収という概念が存在しないようなお粗末な作りとなっている。これはシナリオ製作を引き受けた株式会社ストーリーノートの責任なのか、用意されたシナリオを繋ぎ合わせて上手くストーリーを作れなかったスクウェア・エニックスの責任なのかは分からないが、いずれにせよ両社の評価を下げる結果になったことは間違いないだろう。
“トルネコはノータイムでガーデンブルグの牢屋送り”という、ドラゴンクエストⅣのファンの間では通説となっているネタまで積極的に拾った点は評価したい。(次の動画参照)
本作は前項で述べた通りストーリーの出来栄えが酷いのだが、キャラクター設定も輪を掛けて酷い。
まず、わたぼうをギャル化したような設定を引っ提げて、鳴り物入りでマスコットキャラクターの座に就いたアゲぴぴだが、コイツは最序盤のチュートリアル以降はストーリーに絡まない。プレイヤーに同行しないだけでは無く、拠点における通信窓口以外に役割は無く、ストーリーに関係する会話は存在しない。一体何のために声優まで付けて、大多数のプレイヤーに不快感を与えるギャルのような喋り方を採用したのか理解できない。
次に、ストーリーの核になるはずのロザリーについては、まさかの何一つの掘り下げも行われない。“悪い人間から助けてくれたピサロを慕う”のは結構だが、何故捕まるような人里に降りて来たかは不明だし、肝心のルビーの涙が何かのキーアイテムになることも無い。そのため、DQライバルズやDQウォークのイラストから顔面の下方修正を受けた以外に話題性に乏しい。ゲーム開始直後に喋りの訛りが酷いという設定が披露されるものの、開発者が途中で設定を忘れてしまったのか、その後は一度も披露されることは無い。良く分からないダンスを踊ると、何故か住んでいるロザリーの塔そのものが各魔界へワープするという、説得力の無い設定にも首を傾げるばかりである。
その他にも、“アチアチだぜ”という絶対に流行らない決めセリフを吐き続けるだけで、自称魔法研究家という設定が何一つ活きず、盗賊紛いの不快キャラクターでしかないベネット,男の娘という概念を本作に持ち込みたいという欲望だけが先行した結果、出オチが全てで活躍の場が全く用意されていないホイミンなどなど、キャラクターの設定は目を覆いたくなるような惨状である。
本作は、シリアス路線で行きたいのかギャグ路線で行きたいのか、整合が取れていない点も目に余る。例えば、本作では地獄の帝王エスタークの掘り下げが行われ、ドラゴンクエストⅩの神話編で登場した厄災の王がエスタークであることが確定する。本作においては地獄の帝王とは3体のエスターク(クーク,イスナ,ジュマ)をまとめた総称となっており、従来の英雄が転じた魔王では無く、天界から追放された「イシュカ」という人物が世界を滅ぼすために産み落とした生物とされている。
地上進行を目論むランディオル大帝以外にも、地上も魔界も全てを滅ぼす脅威であるエスタークが複数体存在したり、マスタードラゴンですら封印が限界な程に強大な力を持っているイシュカの存在など、本作は要所要所でシリアスな路線であることを匂わせてくる。しかし、その一方で頻繁にギャグ路線のセリフが出てくる。これはシリアスとギャグのギャップを楽しめと言うことなのかもしれないが、度が過ぎるために白けてしまうこと間違い無しだ。
ストーリーとキャラクター以外も不満のオンパレード
ストーリーとキャラクターが最悪なことは前述の通りだが、それら以外にも本作は不満点が山盛りだ。不満点を片っ端から挙げていくとキリがないので、当項目では特に致命的な3つについて言及する。
多くのプレイヤーが本作に対して不信感を抱く理由の一つが魔界の構成だろう。モンスター配合をメインに据えた作品である以上、炎や水といった属性を象徴するような魔界が用意されていることは何ら問題なく、物質系という括りがある以上は機械的な魔界があっても良いだろう。しかし、お菓子の魔界とは一体何なのだ。スイーツに由来する強力な魔物が偶然生み出され、それが原因でファンシーな魔界に変わってしまったという理由付けでもされているならまだ許せるかもしれないが、ただただ当たり前のようにお菓子の魔界が存在することは狂っているとしか言いようがない。
また、各魔界は初級,中級,上級に分かれておりストーリーの進行に合わせて解放されていく。それだけなら良いのだが、このような等級はプレイヤー視点の言わばメタ的な要素なはずだが、ゲーム内の登場人物が当たり前のように初級の魔界などと口走るのも違和感しかない。もっと世界観を大切にしてもらいたい。
本作の魔界には季節として四季が用意されており、時間経過と共に季節が移ろい地形が変化し、季節に合わせて出現するモンスターが変化する。これについてもお菓子の魔界と同様に、何故魔界に四季が存在し、何故短期間で四季が変化していくのかといった設定は一切語られることは無い。
プレイヤーを繋ぎ止める時間稼ぎを目的に、時間経過と共にモンスターの配置を変えたいという考えが先行した結果、何の考えも無しに四季が導入されたと推測する。
説得力が皆無の設定の押し付けであることに加えて、クリア後の後日談も最後まで進めなければプレイヤーが任意に四季を操るアイテムは手に入らないので、開発者の都合でプレイヤーが不便を強いられているという悪い印象しかない。
本作は低性能なニンテンドーSwitchで発売されていることから、読み込み速度に難を抱えており、何をするにしても頻繁に10秒程度の読み込みが発生する。これについては事前に想像できたことではあるが、そうであればせめてモンスター配合所,モンスター牧場,ワープ施設などの拠点機能の配置は工夫して欲しかったところだ。
ロザリーの塔を拠点にすることに固執した結果、最も頻繁にアクセスするモンスター配合所が、ロザリーの塔の地下という動線が最悪な位置に押し込まれており、移動の手間や視点の変更によるストレスが尋常ではない。加えて、マスターズ版の購入者であれば、モンスター配合所に次いで頻繁にアクセスすることになる、時の無限ボックスやモグダンジョンが塔の地下に集約されていないことも残念でならない。
拠点の構造の問題は、1時間でもテストプレイをすれば誰でも指摘できるレベルである。このようなユーザビリティが全く考慮されていない製品を平気で世の中に送り出せる神経が理解できない。本来であれば品質管理を担当する部門がストップをかけるべきであるが、スクウェア・エニックスのそれに類する部門は機能不全に陥っているのだろう。
いちいち説明するまでも無いと思うが補足しておくと、通常版は不完全版。ぼったくのマスターズ版が本来の通常版である。
配合と戦闘の面白さは救い
あらゆる面で不満が多い本作だが、手持ちのモンスターを配合すれば一体何が生まれるのか?というワクワク感は格別であり、様々な特性を考慮したバトルの奥深さは確かなものだ。
本作においては、モンスターズジョーカーシリーズにて無駄に増やされ続けた、スライダーヒーローのようなセンスの無いモンスター群の多くはリストラされ、ドラゴンクエスト本編で見かけたモンスターが比較的多く採用されている。そして、モンスターサイズは4等級が廃止されSとLの2等級に簡素化され、さらにモンスターにライドするような機能も廃止されている。これらのお陰でモンスター周りの仕組みはシンプルになり遊びやすくなっている。
また、本作には検索配合という機能が用意されているのだが、それが新しいモンスターを産み出すという点において実に使い勝手が良くワクワク感を加速させている。
検索配合は名前の通り、モンスターのランクや所持の有無など、幾つかの条件を指定して検索し、モンスターの配合候補を表示する機能だ。条件指定の中でも、ライブラリーからの検索機能を使うことで、仲間にしたかどうかに関係なく、今までに出会ったモンスター(=ライブラリーに登録された)から様々なモンスターの組み合わせを見つけることが可能となっている。
手持ちのモンスターで一体何を産み出すことができるのか、あるいは特定のモンスターを産み出すためには、どのモンスターは足りないのかといった情報の整理が非常に容易になっている。そのため、従来作品と比べると配合の検討に費やす時間は圧倒的に短くなっており、次から次へと短いサイクルで驚きのモンスター達に出会う感動を味わうことができる。
最初から攻略情報に頼って新たな出会いに感動することを放棄しているプレイヤーには恩恵は少ないだろうが、自らの力で新しい発見を楽しみたいプレイヤーには有難い仕様変更だ。
ただし、モンスター周りの仕様については幾つかの不満も残る。筆者が一番不満だったのはモンスターのサイズ値だ。折角モンスターのサイズをSとLに絞ってシンプルにしたにもかかわらず、同じサイズの中でもサイズ値による大きさの違いが用意され、守備力と素早さのステータスに影響を及ぼしている。そのため結局は厳選という無駄な作業を強いられることになる。さらにサイズ値が見た目に及ぼす影響が極端すぎて、Sランクの魔王クラスでも主人公より小さいなど異常な光景が生まれてしまっている。
その他にも、手間が掛かる4体合成が廃止されていなかったり、特定のモンスターはフィールド上に偶に落ちているタマゴからしか手に入らないなど、何一つ面白く無い時間稼ぎの要素が含まれている点は残念である。
煩雑なジョーカーシリーズを否定した引き算の美学と、開発者が爪痕を残そうとした愚かな足し算思考が共存する。
戦闘に関しては、モンスターズジョーカー3であればプロフェッショナル版でしか使えなかった倍速機能が標準で用意されており、AIによるお任せ行動と合わせて高速でバトルを楽しむことができる。AI特技の使用頻度も細かく調整ができ、一部のモンスターにだけ命令を出して残りはお任せにするなども出来るので、非常に遊びやすくなっている。
本作の戦闘の難易度については、仲間にしているモンスターによって大きく左右するため、一概にバランスの良し悪しを語ることは難しい。しかし、編成によって乱高下する難易度こそが、ドラゴンクエストモンスターズらしさだ。ボスモンスターが豊富に用意されているので、強いパーティが出来たと考えていても、想定外の特性と特技の組み合わせに出会って大苦戦してパーティの再検討が必要になる展開に何度か遭遇するだろう。そのようなパーティ再検討の作業こそが、ドラゴンクエストモンスターズの醍醐味であり、まさに期待していたシーンを体験できたと捉えているプレイヤーも多いことだろう。
評価ポイントのまとめ
『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』は、配合と戦闘こそ面白いが、それらをとりまく全ての要素が低レベルだ。どうしてもプレイするのであれば、Steam版の発売を待った方が良いだろう。低評価なドラゴンクエストトレジャーズがSteamに移植されたように、本作も低評価が確定しているので移植される可能性が高い。
長所
- 配合のワクワク感
- 戦闘の楽しさ
短所
- 意味不明なストーリー
- 掘り下げの無いキャラクター
- 面倒なだけの季節ギミック
- 魔界の構造の酷さ
- 拠点の構造の酷さ
- 読み込みの遅さ
- 誠意の欠片も無い、集金目的のDLC
【追記】限定モンスターを後から配布決定
2024年1月10日に、2023年12月1日から開始している「マックデリバリー」における本作とのコラボキャンペーン限定配布のモンスターを、後から配布する可能性を示唆する投稿がXのドラゴンクエスト宣伝アカウントより行われた。
当キャンペーンは、送料込みの最低利用金額が1800円と高額なマックデリバリーを利用する代わりに、限定デザインのモンスターを手に入れることができるといったものだ。限定デザインのモンスターは3種類用意されているため、図鑑コンプリートを目指すと最低でも5400円の出費を強いられることになる。
食べたくも無いジャンクフードを3回も注文し、しかも5400円も支払わなければならないうえに、地域も限られるために大不評のキャンペーンだった訳だが、キャンペーン終了間際になって更に利用者をあざ笑うかのような仕様変更が加えられている。キャンペーン限定ということで、図鑑コンプリートのために渋々利用したプレイヤーも多いことだろう。このような重要な告知をキャンペーン開始前に行わないスクウェア・エニックスは実に誠意に欠けたメーカーであると言わざるを得ない。
当レビュー記事では総合評価にて★3を付けているが、紛うことなきクソストーリーとマスターズ版及びマックデリバリーコラボという消費者をバカにしたDLCによって、クソゲー・オブ・ザ・イヤー2024の有力候補に躍り出た形となった。集計期間は12月1日〜翌年の11月30日なので、2024年11月末に公開される予定の、2024年度版ゲーム・オブ・ザ・イヤー及びクソゲー・オブ・ザ・イヤー選出の記事を楽しみに待ってもらいたい。
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