【機動戦士ZガンダムAWAY TO THE NEWTYPE】レビュー: ジャンルが闇鍋状態で、混ぜるな危険と言いたくなる

クリア時間
プレイ状況途中まで
プレイ時間約4時間
発売日1996年3月1日
対応機種SFC
プレイ機種レトロフリーク
開発元バンダイ
発売元バンダイ
ジャンルウォー・シミュレーションゲーム
ジャンルの考え方
ネタバレ無し

機動戦士ZガンダムAWAY TO THE NEWTYPEは、1996年3月1日に発売されたZガンダムを題材にしたゲームだ。

このゲームをプレイした理由は、作曲・編曲担当が、ミスティックアークやワンダープロジェクトJの作曲で有名な、故・森彰彦である事を知ったからである。残念ながら収録曲は音盤化されておらず、動画サイトで検索すれば音楽を見つけることは出来るが、折角なのでゲームと音楽のマッチ具合も確認しようと思い立ってプレイした。

結論から言うと、“ネットで音楽を聴くだけで十分だった”なのだが、折角箱と説明書付きを買ってプレイしたので、レビューをアップしておく。

音楽は名曲揃い

機動戦士ZガンダムAWAY TO THE NEWTYPEに収録されている、森彰彦が作曲・編曲した曲は、氏が生前に残した名盤の数々と同様に素晴らしい出来栄えだ。サントラが発売されていない事が本当に悔やまれる。

特に、上の動画の5分22秒ぐらいから始まる曲は必聴だ。最初は如何にも戦闘開始直前を表現した緊張感のある曲調なのだが、途中から「水の星に愛をこめて」のサビ部分のアレンジに違和感なく繋がるという不思議な名曲。その他の曲も作業用BGMとして使える物ばかりとなっている。

ゲームのジャンルとターゲットを絞って欲しい

ガンダムのゲームは古今東西、様々なジャンルで発売されており、本作は公式ではシミュレーションゲームに分類されている。シミュレーションゲームとしての出来は、お世辞にも良い出来とは言えないが、当時の水準から考えれば70点ぐらいは付けることが出来る内容だ。

UIが分かり難いのだが、動かしたいユニットの上でAを押すと、MOVEやATTACKなどのメニューが出て来るので、それを選んで攻撃や移動の命令を出していく。攻撃したい場合はATTACKから武器を選択すると、4マスの攻撃範囲が出るのでそれをターゲットに合わせて決定すれば攻撃開始だ。

遠距離ならライフル、移動して接近すればサーベルで攻撃も可能であり、一般的なシミュレーションゲームの感覚で遊べる。ここまでは良いのだが、問題は本作の目玉である、Zガンダムのハイスピードバトルを再現した、3D(奥行き方向)シューティングバトルである。

シューティングパートでは、攻撃と防御を敵と味方で交互に行う。防御側では敵が画面奥から弾を撃って来るので、中央の白枠内にそれが入らない様に、左右に動かすだけで良い。攻撃は防御の逆で、敵を白枠内に捉えてロックオンすれば選んだ武器で攻撃となる。

そしてこの攻撃が異常なまでに難しい。ハイスピードバトルを再現という事なのか、序盤のハイザックですら、マクロスのバルキリーのマニューバかよ!と言いたくなるような絶妙な回避をしてくる。

加えて、ようやくロックオンしたかと思うと、

ビームライフルを撃つだけで、スクリューパイルドライバーのコマンドを要求される

上記の画像を良く見てもらいたいのだが、ATTACK!!の上にコマンドが出ているのが分かるだろうか。全てのコマンドを入力できなくても攻撃は実行されるのだが、表示されたコマンドをどの程度まで入力出来たかで、攻撃の威力が変わる仕様となっている。

ステージが進んで敵の耐久値が上ってくると、コマンド入力をミスして成功率が低い場合、ビームライフルが4発も当たっているにもかかわらず量産機でさえ落とせない。しかも、コマンドにもたついていると、0%の攻撃すら出来なくなるので、途中から面倒くさくなってくる。毎回毎回、攻撃の度にスクリューパイルドライバーなど入力したくないので、コマンドが不要なバルカンで攻撃しがちだ。

ハイスピードバトルそのものは散々だが、各機体に受けのモーションが用意されていたりと、グラフィック班はしっかりと仕事をしている。この苦行のシューティングパートを3回ほど繰り返せば、ようやくシミュレーションパートが始まる。

ちなみに、シューティングパートで受けたダメージは、シミュレーションパートに引き継がれるため、面白くなくても適当にプレイする事は許されない。戦闘前の準備画面で消費アイテムとしてE-PACを設定していれば、シミュレーションパートのメニューからアイテムを選んでHPを回復可能。MAGはマガジンの略で、ライフルの残弾も回復可能だ。

何だかんだで面白くないシミュレーションパートを進めて敵機を撃破していくと、唐突にRPGの如くレベルアップし、まさかのスキルポイント振りが始まる。

上のスクリーンショットの画面では接近戦(CLOSE)や射撃戦(GUNSHOT)という、主に攻防に関するステータス強化が可能だ。他のページに移動すると、移動速度や命中率、持てるアイテムの数を成長させる事も出来て、育成要素の自由度は無駄に高くなっている。

このゲームの難易度は全体的に高めだが、ゲームオーバーになったとしても、そのステージで獲得した経験値を引き継いでリトライ可能だ。そのため、根気強くプレイを繰り返してモビルスーツをレベルアップをさせれば、必ずクリア出来るようになっている。

ロボットシミュレーションかと思いきや、シューティングからの格ゲーコマンド、そしてモビルスーツ育成と、様々なジャンルに手を出した実に欲張りな仕様となっている。そのように言えば聞こえが良いかもしれないが、どれも中途半端でターゲット層がぼやけた駄作になってしまっている。

丁寧な原作再現が傷口を広げる

機動戦士ZガンダムAWAY TO THE NEWTYPEの、ゲームパート全般がプレイに値しないのだが、原作再現に関しては努力が伝わってくる。

例えば、ゲーム最序盤のカミーユがジェリドに名前をバカにする定番の展開の後には、ブライトがバスクにシバかれるシーンも用意されており、しっかりとカクリコンにもシバかれる。

Zガンダムのシナリオ的にはさほど重要では無い、カミーユの両親の人質カプセルを運ぶシーンにわざわざ1枚絵が用意されていたりと、イベントの再現度は高い。

また、ライラ戦で2ステージ(撤退と撃破)も用意されていたり、リックディアスのカラー統一に対してロベルトがコメントしたり、細かい部分まで原作を拾って丁寧に作られているという印象を受けるだろう。

しかし、ライラ程度のネームドキャラクターであれば1ステージで撃破されてくれないとテンポが悪く、丁寧な作りが返って仇となっている。

ステージ間のやり取りや1枚絵が豊富なことは評価に値するが、戦闘ステージの多さが難点だ。ゲームの土台となる部分の出来が悪いばかりに、戦闘シーンを再現される程に苦行が積み重なって行く。

以上のように、機動戦士ZガンダムAWAY TO THE NEWTYPEは音楽以外に何一つ褒めるところが無い。以前レビューした、SDガンダムの様なコレクションアイテム的な要素も無く、残念ながら“ガンダム作品”という符号を持っているだけである。

ちなみに、本作の後には次回作として逆襲のシャア編の製作が決まっていたようだが、本作の評判の悪さから開発はキャンセルされたようだ。

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