点数評価 | 75点 |
クリア時間 | 約17時間 |
プレイ状況 | 難易度“拮抗”でクリア |
プレイ時間 | 約17時間 |
発売日 | 2019年8月30日 |
対応機種 | Switch |
プレイ機種 | Switch |
開発元 | プラチナゲームズ |
発売元 | 任天堂 |
ジャンル | アクション ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 無し |
【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
ASTRAL CHAIN(アストラル チェイン)は、主人公とレギオンと呼ばれる兵器が連携して戦う“デュアルアクション”がウリの3Dアクションゲームだ。スタイリッシュで爽快感抜群なデュアルアクションの出来栄えは素晴らしく、最初から最後まで流れるような戦闘を気持ち良く楽しむ事ができた。一方で、戦闘パート以外は全体的にレベルが低く、特にストーリーは救いようの無い出来栄えである。高レベルな戦闘と低レベルなストーリーが織り成す品質の高低差により、満足度の振れ幅の大きい作品である。
大満足のスタイリッシュなデュアルアクション
ASTRAL CHAINの主人公は、3種類の武器(弱攻撃,強攻撃,銃)と5種類のレギオンと呼ばれる兵器を駆使して華麗に戦う。この武器とレギオンを組み合わせた戦闘は、他のアクションゲームの追随を許さない面白さだ。本作で使用できるレギオンには、それぞれに以下のような特徴がある。
- ソード:
最初に手に入るオーソドックスな近接戦闘タイプ。 - アロー:
遠距離攻撃や空中の敵を担当する。足が早く敵にチェインを巻き付けて捕縛しやすい。 - アーム:
オブジェクトを投げることが可能。パワータイプで足が遅いため、使い道は限定的。 - アックス:
バリアを張ることができる。アームと同じく足が遅いので必要な場面のみ使用。
本作は主人公とレギオンの“デュアルアクション”を推しているだけあり、2者の連携がアクションパートの要だ。レギオンはオートで近い敵を攻撃してくれるのだが、立ち位置はプレイヤーが細かく調整できる。また、主人公とレギオンは鎖で繋がれており、左スティックで主人公を動かしている最中でも右スティックを動かせば、鎖の長さの範囲内でレギオンを自由に動かすことができる。
そして、プレイヤーとレギオンを繋ぐ鎖を敵に巻き付けることで、敵を捕縛する事が可能となっている。捕縛された敵は一時的に行動不能になる。敵を捕縛して行動不能にする以外にも、突進してくる敵を鎖に引っ掛けて跳ね返すことができたり、主人公が警察官ということもあり捜査パートでは逃げる犯罪者の確保にも使える。
鎖は使役するレギオンとの主従を表現していたり、逮捕のシンボルであったりと、鎖からの警察官という職業の連想がしっかりとアクションパートに反映されており好印象だ。
プレイヤーは戦闘中、武器とレギオンを敵に合わせて切り替えながら、2本のスティックでプレイヤーとレギオンを同時に別々に動かすことになる。敵によってレギオンを的確に動かし、各個撃破や集中攻撃と臨機応変に作戦を変える必要があるので、その独特な操作に慣れないうちは主人公とレギオンの位置調整が上手くいかず、思い通りのアクションが出来ない事が多いだろう。
しかし本作はコントローラーの入力が暴発し、プレイヤーの想いとは異なるアクションが出てしまっても、結果として割と見栄えの良いアクションが出るようになっている。次の動画は、主人公が銃を装備してアローレギオンを使っている様子だ。銃+アローなので完全に遠距離戦仕様なのだが、ボスが接近してきても気にせずに、武器もレギオンも切り替えずに雑に戦っている。しかしそれでも格好良くコンボが決まりまくっている。
絶妙なカメラワークも相まって、勝手に魅せる動きになるという感じだろうか。戦闘中に操作キャラが一瞬だけスローで光るので、その瞬間に合わせてボタンを押すだけで派生技が出る点もお手軽だ。次の動画はボスを捕縛してからフィニッシュ演出を出した様子だ。
ボスに対してコアを抜き取るフィニッシュ攻撃が決まると達成感が大きい。フィニッシュ攻撃も特に難しいことは無く、ボタンを押すように促されたらそれに従うだけである。入力が遅いとフィニッシュのタイミングは逃すが、その場合も特にペナルティがある訳でも無く攻撃は繋がっていくので安心だ。
このように、適当な操作や操作ミスをしても自然とスタイリッシュに戦えるので、常にプレイヤーを気分良くしてくれる。このプレイ感がアストラルチェインの全てと言っても過言ではないだろう。
使い分けることができるレギオンが5種類もあって操作習熟の難易度が高いと思うかもしれないが、動きが鈍重で捕縛に時間が掛かるアームレギオンとアックスレギオンは、やや使い辛いため殆ど出番は無い。使い分けるレギオンは実質3種類だけで良い。戦闘ではソード,アロー,ビーストを使い分けて、その他レギオンは捜査パートで対応したオブジェクトを作動させる際に出すだけに留めても一切問題ない。
近距離(ソード)、遠距離(アロー)、範囲攻撃(ビースト)とだけ覚えておけば、何も難しい事はない。
酷過ぎる世界観と蛇足な別ジャンルゲーム
ASTRAL CHAINのデュアルアクションシステムは100点満点の出来栄えだが、そんな神アクションを取り巻く世界観とストーリーは0点だと断言したい。
アストラルチェインのストーリーは、全体的に設定が練り込まれておらず薄っぺらい。そして急にアニメ『エヴァンゲリオン』のような展開が始まる。劣化版ゲンドウのような指揮官的なポジションのヨゼフが、ゼーレのモノリスを白色にしたような連中と話すシーンを見てエヴァを連想しない人は居るだろうか?
オマージュというものは、オリジナル設定が完璧に作り込まれているところに足されるから機能するのであって、基礎が出来ていない作品にこのようにインパクトのあるもの乗せられると、全部そっちに引っ張られてしまう。どうせエヴァの人類補完計画みたいなことを急にやりだすんだろう?と、思ってプレイを進めると案の定、箱舟計画なるものが始まってレギオンと融合して人類を超越するみたいな展開が始まる。ストーリーは何一つ面白くない。
また、ゲーム開始時に操作キャラクターとして選ばなかった方の主人公は、最初から最後まで頻繁にストーリーに関わるものの、基本的には豆腐メンタルの役に立たずで見ていてイライラする。裏切りそうに見えて最後まで裏切らないのだが、自分のクローンと出会った際には、情緒不安定になって何故か主人公に襲い掛かってくる。そして、主人公に負けるとその場で直ちに精神の安定を取り戻すという切り替えの早さだ。
ASTRAL CHAINのキャラクターデザインは桂正和が担当しており、つまりは本作のメインターゲットは“大きなお友達”だ。露骨に女主人公のヒップラインを見せつけて来ることから、桂正和のマンガをジャンプで読んでいたような層がターゲットだと思われる。つまり、ある程度は歳を取って目の肥えた年齢層がターゲットと思うのだが、ストーリーの舞台となる人工島アークは、全大陸が崩壊したという世界の割には妙に小綺麗で、警察が広報マスコットキャラを活動させるほどには余力があったりと、人類は絶滅の危機に瀕しているはずにもかかわらずそのリアリティが皆無だ。カジュアルな路線を目指すのであれば、それに合ったキャラクターデザインと世界観にして欲しかったところである。
ASTRAL CHAINの主人公は警察官なので、その設定を活かすために度々別ゲーが挿入される。その最もたるものが、敵に見つからないように尾行する潜入捜査だ。これが劣化版メタルギアのようなモードで何も楽しくなく、ストーリー進行のテンポを悪くするだけで完全に蛇足となっている。
また、無駄に長いバイク戦闘シーンは、本作と同じくプラチナゲームズが開発したニーアオートマタのシューティングパートに通じるものがある。ニーア オートマタはアクションゲームを買ったはずなのにシューティングゲームを強制させられるという点で不満が多かったが、ASTRAL CHAINでも全く同じことが起きている。
“デュアルアクション”をウリとして宣伝しており、プレイヤーもそれを楽しみに購入したのだから、素直にその部分に開発リソースを全力投入してもらいたいところである。メタルギアやMotoGPをやりたい訳では無いので、別ゲーのブチ込みがプラチナゲームズの悪い伝統にならないことを祈る。
ASTRAL CHAINはSwitch独占販売であることが実に悔やまれる作品だ。低性能なSwitchではリッチな3Dゲームを成立させることができないのは周知の事実だが、本作も残念ながらグラフィック面での不満が大きい。ストーリー中で動いているキャラクターを見る分には、光源で上手く誤魔化されているのでグラフィックの悪さはさほど気にならない。(髪が塊になっている部分は不自然に感じるが)
しかし、いざフォトモードを起動すると低品質なグラフィックが目に付く。折角フォトモードが搭載されていても、満足な写真を撮る事が出来ないのであれば意味が無い。いっそフォトモードは無くても良かったのではないだろうか。
グラフィックの向上に反比例する形で、意図的に顔面偏差値を下げ続ける傾向にある洋ゲーとは違い、和ゲーは美人キャラクターが多いので、和ゲーこそグラフィックの美しさとフォトモードに力を入れるべきなのだが残念である。従って、○○チェインという名称で、本作の世界観は受け継がずにアクション面だけを継承した新作をPS5で出して欲しい。
いわゆる精神的続編をPS5で出せば爆売れ間違い無し。
このように何かと課題は多いのだが、“デュアルアクションシステム”だけに言及すれば間違いなく神ゲーだ。アクションゲーマーを名乗るのであれば、本作には絶対に触れておくべきだろう。
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