点数評価 | 85点 |
プレイ状況 | クリア トロフィー:69% |
クリア時間 | 約10時間 |
プレイ時間 | 約10時間 |
発売日 | 2021年6月11日 |
対応機種 | PS5 |
プレイ機種 | PS5 |
開発元 | インソムニアックゲームズ |
発売元 | ソニー・インタラクティブエンタテインメント |
ジャンル | アクションアドベンチャー ジャンルの考え方 |
発売から半年以上経過しても、一向にソフトが充実してこないPS5だが、ようやくプレイステーションのファーストパーティーデベロッパーであるインソムニアックゲームズから、キラータイトルである『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』が発売された。自由に切り替えれる武器を使ったシューティングアクションが秀逸で、どの武器も特徴的でかつ、どの武器を使っても楽しい。全ての武器がレギュラーであり、デュアルセンスの機能を最大限に活かした、まさに次世代のTPSである。作風からフォトモードはさほど期待していなかったが、豊富なロケーションと次元移動のお陰で想像以上に撮影も捗る。リベット可愛い。
PS5は発売以降、そのハード性能を最大限に活かせるゲームは少量しかリリースされておらず、大半のゲームはPS4/PS5の縦マルチだ。そんな嘆かわしいリリース状況の中、PS5専売のラチェット&クランク パラレル・トラブルは、PS5ユーザー期待の1本である。
筆者はラチェット&クランクシリーズを今までプレイしたことがなかったが、ファーストパーティー製のPS5専用ソフトということで当シリーズに初挑戦することになった。
当記事は、“武器が大量に出て来る”,“新キャラクターはリベット”,“次元を移動して戦う”という三つの知識だけを仕入れてプレイした、完全にシリーズ初心者目線のレビューである。
プレイ開始当初は、エイム時の感度をMAXにしても動きが遅いことに不満を覚え、ストーリーやキャラクターも海外のローティーン向けという印象で、何故このゲームが人気なのか疑問だった。
しかし、途中からはそんな些細なことは忘れて、ただひたすらにアダプティブトリガーの感触を堪能しながら、数々の銃をぶっ放して気持ち良くプレイすることができた。
グラフィックは、ピクサーの3D映画の中を自由に遊びまわっているような感覚に陥る美麗さで、一昔前の“こんなゲームがあったらな”というユーザーの願望が見事に形になっている。おまけに高性能なフォトモードまで用意されていてグラフィック面に死角は無かった。
このように、ラチェット&クランク パラレル・トラブルは、“武器”と“グラフィック”でPS5の魅力を存分に味合わせてくれるゲームだった。
極上の気持ち良さを味わえる戦闘
ラチェット&クランク パラレル・トラブルは、武器(ガラメカ)の切り替えが最高に面白いゲームだ。
ストーリーの進行に合わせて次から次へと供給される武器の種類は全20種類。似通った性能の武器は一つも無く、状況に応じてどの武器にも使い道があるため死に武器は無い。折角入手したにもかかわらず、クリアまで一回も使わなかったような武器は一つも無かった。
例えば、敵が密集した時は感電が複数の敵に伝播する“ライトニングロッド”で一網打尽。体力の多いボスにはロケットランチャーの“ウォーモンガー”で削り、接近されたくない相手には敵を植物で固めて捕縛する“グリーンスプリンクラー”を活用するなどなど、あらゆる状況で何らかの武器が活躍してくれる。考えることが面倒くさくなった時は、自動攻撃してくれるキノコやドローンを出して、自分は適当な武器で攻撃するのもありだ。
武器は十字キーに割り当てた4種のショートカットで瞬時に切り替えることのできる。また、△ボタン長押しで開くリングメニューから戦闘を中断することで、いつでもショートカットの登録を変更できる。つまり、武器の変更に一切の制限がないことから、常に全種類の武器を使えるようになっている。戦闘に入る前にセッティングを忘れたために、状況にピッタリな武器は理解しているのに使えないなんていう、アクションゲームで良くあるシーンとは完全に無縁だ。
全ての武器がレギュラーで活躍できる!
本作をプレイしていると、どの武器を使ってもクリア出来るようなイージーなシーンでも、ついついリングメニューを開いたまま長考することが多々ある。無制限に武器を選べる状況においては、“最善の選択をしたという満足感”は、効率を度外視できるほどに大きいのだ。
これはノーマルな難易度で遊んだ場合の話だが、どの武器も割と頻繁に弾切れする。特にボス戦や体力の多い敵が大量に投入される場面では、手持ち武器の大半が弾切れになるシーンが多い。弾が切れる度に最善から次善へ武器の切り替えを強制されるのもまた、自分の対応能力が試されているようで面白かった。
本作では武器毎に調整された、DualSenseのアダプティブトリガーとハプティックフィードバックの機能が秀逸だ。戦闘中は弾切れによって武器を遺憾ながら切り替えるシーンが多いが、渋々使った武器の感触が意外と気に入るという珍事も良く発生する。弾数の制限を上手く利用して武器の切り替えを促し、ハード面の性能も味わう方向に誘導されているような印象も受けた。
武器使用時の気持ちの良いDualSenseの感触と、最善手を選ぶことの楽しさを知ってしまうと、緊急回避のファントムダッシュやハンマーを使った近接攻撃なんて存在を忘れ、多様性のある射撃に限界まで夢中になってしまう。
また、射撃武器の感触以外にも、投擲系の武器でもハードの進化を感じることが出来る。今までのゲームであれば、L2で投擲軌道を表示してR2で投げていたところを、R2半押しで投擲軌道を表示してR2全押しで投擲と、R2だけで一連の作業を完結させている。デュアルセンスは、明確に全押し半押しを使い分けられるので、事実上ボタンが増えたようなものである。そして片方のトリガーだけで完結すると操作がより直感的になり遊びやすい。
なお、気に入った武器は使い込むことによってレベルアップし、特性が変化してより強くなる。ショップでは道中で手に入れた強化アイテム(ラリタニウム)を消費することで、性能のアップグレードも可能だ。アップグレードはスキルパネル方式なので、強化の方向性を自分で選べるのも嬉しい。
ちなみに、武器は購入時の解説も気合の入った作りになっている。武器の解説動画が、完全に悪人向けの通販番組のようなノリに仕上がっており、ラチェット&クランクのビジュアルにミスマッチなのがこれまた良い。
全部の武器解説を最後まで見たゲームは本作が初めて。細かい部分までこだわった作り込み。
ラチェット&クランク パラレル・トラブルは、このような最高の射撃体験を提供してくれるのだが、ゲームをクリアした時点では、“撃ち足りない”という感想を覚えた。
本作は、目に付いた寄り道は一通りこなしたとしても、クリアまでは約10時間のボリュームだ。まだまだ武器を切り替えながら、更に難易度の高い戦闘に身を置きたいという感情が沸いてくる。
クリア後にはチャレンジモードが用意されているのでそちらを遊べば良いのだが、折角バトルに特化したアリーナが用意されているので、アリーナを充実させてリスタートせずともやり込める要素が用意されていると嬉しかった。腹8分目とは行かず、6割ほどの満足感でストーリーは終わってしまうので、1周で武器を味わい尽くしたい人はプレイ開始時に高めの難易度を選択した方が良いだろう。
射撃以外のアクションにも触れておくと、障害物を避けながらウォールライドしたり、電脳空間で重力制御のパズルをやったり、多脚戦車(グリッチ)を天地反転させながら操作したりと、程よい量のサブアクション要素が用意されている。これがまた絶妙で、メインストーリーで射撃戦闘ばかりが続いて疲れた頃に現れ、適度に気分転換できるアクセントとなっている。
なお、グリッチのガトリングガンは、DualSenseの寿命が心配になるぐらいのリアルな連射感覚を返してくれるので、PS5を持っているなら絶対に体験してもらいたい。
豊富なロケーションと次元移動
ラチェット&クランク パラレル・トラブルは、超高性能なフォトモードが話題になったMarvel’s Spider-Manと同じく、インソムニアックゲームズ開発のゲームだ。そのため、Marvel’s Spider-Manに搭載されていたフォトモードが、ほぼそのまま流用されている。
本作は、様相の全く異なる星々やパラレルワールドを行き来する作品なので、魅力的なロケーションが次々と溢れ出てくる。そのため、Marvel’s Spider-Man並みに、行く先々で頻繁にフォトモードを起動したくなる。まさかこのゲームでもフォトモード沼にハマるとは想像もしていなかった。
Marvel’s Spider-Manと同様に、フィルターやフレームが大量に用意されているので、適当なシーンでストップをかけて僅かばかりエフェクトを触ってフレームを付けるだけで、実に満足度の高いスクリーンショットが完成する。また、手を加えなくてもグラフィックが超美麗なゲームなので、素撮りしてもそれなりに“映える”スクリーンショットが手に入るのも嬉しい。
完全新規IPのアクションゲームでも良かった
ラチェット&クランク パラレル・トラブルは、シリーズ物の最新作(ナンバリング15作目)だが、何一つ前情報を持っていなくても問題も無く楽しむことが出来るシューティングアクションゲームだ。しかし、シリーズを初プレイでキャラクターに思い入れの無い筆者としては、可愛いだけでは無く皇帝に反逆するレジスタンスとして勇ましく活動するリベットと比較して、常に締まりのない顔をしているラチェットにはさほど愛着は湧かなかった。
幸い、アーマーを装着すると見た目はそれに準じたものになるので、お気楽な雰囲気の顔がフォトモードの邪魔になることは無いが、ラチェットパートが始まるとさっさと終わらせてリベットパートをプレイしたいという気持ちが強くなった。
なお、自動進行のイベントシーンでも装備したアーマーは反映されるが、ヘルメットだけは自動で脱いでくれることは嬉しい配慮だ。プレイシーンとイベントシーンは一切の読み込みがなくシームレスに繋がるが、ヘルメットは如何にもSF作品っぽく自動でアーマーに収納されていき、イベントが終わると違和感なく展開・装着される。これも次世代機の魅せる技だ。
次に、ラチェットに対するリベットのように、ロボットのパートナーであるクランクの対の存在として、キットというロボットについても触れておく。結論から言うと、筆者はキットを最後の最後まで好きになれなかった。ウジウジとした見ていて鬱陶しい性格に加えて、ローカライズ&ボイスが如何にもオタク男性をターゲットにしたもので、非常に完成度の高いこのゲームには不適に感じた。
冒頭にも書いた通り、本作はキャラクターもストーリーもローティーン向けだが、アクション面は完全に大人向けだ。ビジュアルとストーリーのターゲットと、シューティングアクションゲームとしてのターゲットがマッチしていない。(難易度も超簡単なモードが用意されているので、下方には互換はあるが)
そのため、シリーズ初経験者としては、“ラチェット&クランク新作”ではなく、シューティングアクションゲームとしての面白さはそのままに、PS5の購買層に合わせた大人向けな新規IP立ち上げても良かったのでは?という率直な意見を持った。
往年のファンであれば文句なしで★5の100点になるような気がするが、新規参入者の目線で見ると、一部理解できない部分が残るので、評価としては★4の85点を付けた。2021年7月現在、PS5を既に持っているなら間違いなく買いであることには変わりない。
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