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【Voice of Cards ドラゴンの島 体験版】レビュー: カードゲームでは無く、コマンド式JRPGをカードで表現した低工数作品。全てはヨコオワールド頼みか

注意:この記事は体験版のレビューである。

本編のレビューは別記事として投稿済み。体験版のレビューを踏まえたうえで、本編のレビューを参照してもらいたい。

以下は、体験版のレビュー。

Voice of Cards(ボイス オブ カード) ドラゴンの島は2021年10月28日に発売予定の、構成する世界観全てをカードで表現したスクウェア・エニックス発のRPGだ。「NieR」シリーズや「ドラッグ オン ドラグーン」シリーズにて、陰鬱な展開でプレイヤーの感情を揺さぶる独自の世界観が高い評価を得た“ヨコオタロウ”をクリエイティブ・ディレクターに据えた期待の新作である。2021年9月24日に体験版が配信されたので、早速プレイしてみた。

体験版は本編の前日譚らしいが、内容としてはシンプルだ。魔物から盗まれたらとある薬を、魔物の住処となっている洞窟から取り返してくるだけの話である。ストーリーと遊技場(ミニゲーム)を全てプレイしても、1時間半もあれば十分クリアできる内容となっている。

如何に金を掛けずに話題作を送り出せるかという試験作

ドラゴンの島は、“剣と魔法の世界を、全て「カード」で表現したRPG”とアピールしている通り、戦闘、探索、会話、買い物というJRPGを構成するあらゆる要素がカードで表現されている。

フィールドマップは伏せられたカードで構成されており、プレイヤーが移動すると伏せられたカードが反転して絵柄が開示される。絵柄の大半は地形だが、偶には宝箱が出現したり、侵入不可能な険しい山なども存在する。ランダムでイベントも発生するようである。

踏破した地形であれば、どこからでも好きな場所へワープ移動出来て便利だ。効率厨の筆者としては、如何に最短ルートでマップを全て埋めることが出来るか?という思考が働き、ピンを動かしているだけでも結構楽しかった。

ドラゴンの島 体験版 フィールドの移動
プレイヤーはピンを動かして、伏せられたカードを表に向けていく。

RPGなのでフィールドを歩いていれば当然ながらモンスターとエンカウントする。エンカウントすればプレイヤーのパーティが下に、モンスターのカードが上に表示される。左上の宝石のような物はマジックポイント的なポジションであるジェムだ。ジェムは仲間にターンが回ってくるたびに一つ増え、消費すれば強力な魔法を繰り出すことが可能。ジェムはそれぞれのキャラクターに設定されている訳では無く、パーティ内で共有される。

ドラゴンの島 体験版 戦闘風景
下が味方上が敵。左下はアイテム。全てカードだ。

見た目はカードだが、戦闘内容は一般的なターンベースのコマンド式RPGと大差はない。素早さに応じてターンが回ってくるので、順番が来たキャラクターはカードで表示されたスキルを選んで敵を攻撃する。なお、スキルはカードで表示されているだけで、デッキからランダムに手札に加えるという仕様では無い。あくまでカードで表現しているだけだ。

ドラゴンの島 体験版 全てをカードで表現
毎回必ず同じスキルが表示されるのでランダム性がある訳では無い。

戦闘を終えると、経験値と資金を手に入れ、経験値が一定数貯まるとキャラクターはレベルアップする。レベルアップすれば各種ステータスが上昇し、新しくスキルを覚える。

ドラゴンの島 体験版 レベルアップ
体験版はレベル7あれば十分クリア可能。

つまり、ドラゴンの島は、全てをカードで表現したヴィジュアルこそ独特だが、内容としては殆ど新しい試みは無いコマンド式JRPGだ。

ドラゴンの島 体験版 会話の選択肢
会話はカードが捲られて進み、カードで選択肢が出る。
ドラゴンの島 体験版 道具屋
店の選択肢も全てカード。道具屋が可愛い。
ドラゴンの島 体験版 漁師
村人との会話も、1枚絵とカードに表示されたメッセージで進む。

全てがカードで表現されているため、見た目的にはプレイヤーに新鮮さを与えることに成功しているが、実際のところはカード化することで、キャラクターのモーションやマップ作りなど、ゲーム開発のあらゆる方面で徹敵的に工数を削る事に挑戦しているのだと推測する。立ち絵とテキストさえあれば、後はカードの並べ方や演出だけでゲームの大部分を作れるので、開発の規模も小さいだろう。

つまり、低コスト開発ながらも一発勝負のヴィジュアルで目を引きつつ、ヨコオタロウを前面に押し出して注目を集めて稼ぐという算段だ。“スマホゲーでも別に良かった”という発言からも、試験的な取り組みであることが伺い知ることが出来る。

MP相当のジェムの管理が少々特殊だが、ベタなコマンド式JRPGをカードゲーム風にアレンジしただけなので、製品版でどれだけヨコオ節が炸裂するかで評価が決まるはずだ。

Sara
Sara

ヨコオタロウのネームバリューを利用して、どれだけ効率よく稼げるかの挑戦と考えて良いだろう。

開発コストを抑えて、それなりに稼げる物を出したいという試みは大いに結構なのだが、せめてカードの絵柄ぐらいは動かして欲しかった。カードゲームで絵柄が動くと言えば、グウェント ウィッチャー カードゲームが真っ先に頭に浮かぶ。グウェントのように、カードの枠内でキャラクターが、所狭しとイキイキと動いてくれというのは贅沢だろう。しかし、せめて同じくスクエニから配信されていた今は亡きカードゲーム、DQライバルズのプレミアムカードでやっていたように、体の一部パーツの上下運動や、背景スクロール程度の動きは付けられなかったものか。

ドラゴンの島 体験版 カードが動く
絵柄は動かない代わりに、カードその物がエフェクトと共に動く。

コマンド式JPRGが好きでもテンポに難を感じる

ドラゴンの島の体験版をプレイして最も気になったことは、テンポの悪さだ。

移動,買い物,戦闘など、何をするにしても全てにおいてカードに細かな演出が入る。最初は物珍しさから見ていて面白いが、体験版をクリアした段階で早くも演出が鬱陶しく感じるようになった。製品版では特定のボタンを押し続けることで、ゲーム内のスピードが1.5倍になるような機能が欲しい。ダラダラと時間を掛けて遊ぶのもJRPGとしてはまた一興かもしれないが、速度の選択肢はあるに越したことはない。

また、戦闘時にはダイスを頻繁に振ることになるので、ボタンを押した瞬間にダイスの目が決まるモードの実装も期待したい。ドラゴンの島の戦闘では、一般的なRPGにおける、乱数によるダメージ振れ幅や、確率系の追加効果に相当する部分が、ダイス勝負に置き換えられている。これも演出としては面白いのだが、何百回とザコ敵と戦闘を繰り返すJRPGでは演出を飛ばしたくなるはずだ。

なお、敵から逃げようとした場合にもダイスを振って、出目によって逃走出来るか否か決まる。非電源のTRPG(テーブルトークRPG)のように見せるために、乱数発生装置としてダイスを使用しているのだろう。

ショップ関連のUI関連は我慢出来るにしても、フィールドにおける未踏破地形の移動速度アップ、ダイス演出のカットなどが実装されないのであれば、製品版は途中からダレてくるのではないかと懸念している。

ミニゲームはオンライン対戦が出来れば人気が出るか?

ドラゴンの島の体験版には、ゲーム内で遊ぶことが出来る遊技場(ミニゲーム)も実装されている。体験版では簡易ルールでしか遊べないが、完全版をオンライン対人戦で遊ぶことが出来れば盛り上がりそうである。

ミニゲームは2~4人で対戦でき、体験版ではNPCが相手をしてくれる。ゲーム参加者は順番に山から2枚ずつモンスターの絵が描かれたトランプを引き、手札と共用捨て札から、同じ絵柄か3つ連続する数字の組み合わせを作り点数を稼ぐ。

ドラゴンの島 体験版 ミニゲーム
カードに書かれた数字の数だけ点数が貰える。

同じ絵柄をそろえた場合には様々な追加効果が発動するので、それを活用してライバルを妨害可能。妨害を駆使しながら、山札が無くなるまでに自分の点数を1位にキープ出来れば優勝となる。

ドラゴンの島 体験版 追加効果
対戦相手全員の手札ドローを弱める効果。
ドラゴンの島 体験版 一回休み
ダイスを振って運が悪いと1回休み。

体験版で遊べたのは簡易ルール版なので、最終的にどの様な仕様になるか分からないが、対人戦になれば妨害や捨て札の読み合いで盛り上がりそうなので期待したい。

Sara
Sara

勿論、このミニゲームもテンポの改善は必須だ。

以上のように、ドラゴンの島の体験版をプレイした感想としては、コマンド式JRPG好きなら楽しめそうだが、テンポの悪さが気になる。体験版を遊んだだけでは、製品版は★3の65~70点程度の、クソゲーではないが率先して遊ぶ程に面白くは無い凡ゲー、もしくは、つまらない・退屈なJRPGもどきという評価になりそうな気がする。しかし、そこに対してヨコオタロウの世界観が、どのように補正を掛けてくるかは全くの未知数と言ったところだろう。少しでも気になったら、過去の実績を信じて製品版をプレイするしかないので、結局は“ヨコオタロウというブランディングは成功していると言えるのだ。

【追記】応援イラストとキャッチコピーキャンペーン開始

Voice of Cards ドラゴンの島は、試験的な取り組みの作品だと前述したが、宣伝方法でも新しい試みを行っているようだ。

2021年9月28日から公式ツイッターにて、応援イラスト&キャッチコピーキャンペーンが告知された。

“新カテゴリ過ぎて宣伝が難しい”などとと言っているが、結局はこれも如何に予算を掛けずに宣伝するための手法である。単純に低工数でカード表現にしたJRPGなので、カテゴリはJRPGに他ならないことは、スクエニが一番理解しているはずだ。

販売元からのTVCMやWebCMによる一方的な宣伝では無く、Pixivを経由したイラストと、誰でも簡単に応募できるツイッターを通じて、ファーストインプレッションで好印象を持ったユーザーが約1か月でどこまで拡散してくれるか?という試験的な取り組みだろう。

優秀作品にはエミールヘッドを模した実際に被れるマスクがプレゼントされる。これはヨコオタロウとお揃いであり、しかもプレゼントは5名とこの手の優秀賞にしては人数が多い。ヨコオタオウのファンであれ“喉から手が出るほどに欲しいアイテムな上に、5名という頑張れば手が届きそうな数字をちらつかせているので、イラスト及びキャッチコピーの募集には渾身の作品が数多く投稿されるはずだ。

“売れるかどうか心配”、“宣伝方法で困っている”という雰囲気を出しているが、実際にはヨコオタロウの影響力を完全に把握し、打算的に低コストで高い効果を確信したキャンペーンを仕掛けているという印象を受けた。このキャンペーンは高確率で成功し、絶大な宣伝効果を発揮することが予想されるので、本編のダウンロード数がどの程度になるか結果が楽しみだ。

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