点数評価 | 80点 |
プレイ状況 | クリア |
プレイ時間 | 約17時間 |
発売日 | 2021年9月16日 |
対応機種 | Switch/Steam Xbox (Gamepass) |
プレイ機種 | Switch |
開発元 | Pixpil |
発売元 | Chucklefish |
ジャンル | アクションアドベンチャー ジャンルの考え方 |
Eastward(イーストワード)は、ピクセルアートに興味があれば、その美しさだけで買いである。アクションは爽快感を求めるタイプでは無く、謎解きアクションなので好みは分かれるかもしれない。幸いにも難易度は高過ぎることはなく小気味良く進むので、幅広いプレイヤーが好感を得るだろう。ストーリーは壮大なテーマに対して、ゲーム内で語られる内容が浅く、前評判の高さが仇となる。分かり難い部分も多く、何となくの雰囲気で押しきったような印象を受けて△か。
“細部まで美しく描かれたピクセルアート”という言葉聴くと、“その評価は見飽きた”という印象を持つかもしれない。実際に、ピクセルアートの美麗さを謳い文句にしている作品は年々増え続けており、昨今では美しいだけでは最早作品の特徴とは言えなくなってきている。しかしEastward(イーストワード)のピクセルアートは、2021年の段階では群を抜いて美麗である。ピクセルアートが好きなゲーマーであれば、間違いなくEastwardを避けては通れないだろう。無口で心優しい男「ジョン」と不思議な力を秘めた少女「珊(サン)」の冒険を通して、最先端のピクセルアートに触れよう。
進化し続けるピクセルアートの世界を体感
Eastwardの魅力は何といってもピクセルアートの緻密さだ。ピクセルアートは作り方が日々進化しており、昔と比べると格段に作り易くなっている。作成方法の進化に伴って、作品の出来栄えも大きく進化しているので、最早綺麗なことは当たり前なのだが、Eastwardのピクセルアートは執念を感じる程に細かく、他の追随を許さないレベルの高さである。
Eastwardの舞台は、文明が退廃した後の、所謂ポストアポカリプス的な世界だ。訪れる町によって文明の規模は違うが、工夫溢れる人々の暮らしが見事にピクセルアートで表現されている。
例えば、主人公ジョンの家は廃バスだ。地下世界ということもあり、地上から滴って来る水を傘で受けて貯水するような仕組みが確認できる。右手に見える冷蔵庫はセーブポイントとして機能している。
ある町では、元々は湖か海だったのだろうか、朽ち果てた船舶を改築して生活している。船の屋根の上に設置した風車で発電し、電灯も灯っているようだ。
まだ文明が完全に破壊されていない町も存在するのだが、こちらもまた趣があり見応え抜群だ。何だか嘘くさいが実在しそうな日本“風”の雑多な町並みは、(主に日本人の)プレイヤーの琴線に触れるのではないだろうか。
多くのプレイヤーは、圧巻のピクセルアートを楽しむために、町の中を隅々まで歩きたくなることだろう。たとえ本作のアクションやストーリーを満足できなかったとしても、このグラフィックを堪能するだけで十分に定価分の元を取れるはずだ。
謎解き主体で、程よい難易度のアクション
Eastwardは、SFCのゼルダの伝説ような見下ろし視点タイプのアクションゲームである。主人公の装備は剣ではなくフライパンなので、攻撃の基本アクションはフライパンによる殴打だ。ストーリーが進むと、弾数制限のある銃や火炎放射器が使えるようになったり、ゼルダの伝説のように爆弾を用いて攻撃したり、壁を破壊して隠し通路を見つけることができるようになる。
Eastwardのアクションは、特に爽快感が在る訳では無く、特筆するような操作方法も無く、難易度もさほど高くない。どちらかというと、戦闘そのものでは無く、謎解きやギミックを駆使したボス戦を楽しむことがメインだ。
プレイヤーは、ジョンと珊を切り替えながら操作するのだが、ジョンは直接的な攻撃,爆弾による破壊/ギミック作動,重いオブジェクトの運搬を担当する。一方で珊は、攻撃は苦手だが不思議な力で植物を消し去ったり、離れた位置にある装置を動かすことが出来る。
ジョンと珊を使い分けた謎解きは、難し過ぎる事も、簡単過ぎる事も無く、最初から最後まで少しばかりの思考だけでテンポ良く進む。これは、ジョンと珊が言葉を交わさずとも意思疎通して軽快に障害を乗り越える様子が、操作を通じてプレイヤーに伝わってくるような絶妙なプレイフィールである。
例えば次の動画は、穴の先に扉を開く装置があるので、ジョンを操作して爆弾を投げてから、珊に操作を切り替えて植物を消してから、制限時間内に急いで廻り込む様子だ。この動画のように、一瞬だけ立ち止まることになるが、せいぜい30秒も考えれば分かるギミックが殆どだ。
基本的に二人で行動して、必要に応じて操作キャラクターを切り替えるのだが、時には完全に別ルートを進みお互いの閉ざされた道をフォローしながら開通させるような仕掛けもある。次の動画では単純に壁を破壊したり、インタラクトするだけだが、ストーリーが進むにつれてパズル要素が高まったり、制限時間が付いたりして少しばかり難易度が上昇する。
また、ボス戦は力推しでクリアするようなものは少なく、何らかのギミック駆使して戦う物が多く、反射神経で勝負するようなバトルは用意されていない。
最終盤になると、流石に敵の数も増えてギミックの有無に関わらず戦闘の難易度は上がって来るが、ゲームオーバーになった際には同じエリアからリトライ可能なので安心だ。
尖ったアクション要素は無いが、多くのプレイヤーに受け入れられるギミック系のアクションゲーム。
説明不足なストーリーはやや難あり
Eastwardの、ピクセルアートとテンポ良く進む謎解きアクションは高く評価したいが、個人的にはストーリー面では説明の足りなさを感じた。
フライパン片手に戦うというコミカルな見た目に反して、ベースとなる物語はタタリに襲われて世界が破滅していくという重めな設定が用意されている。ダークで退廃的な世界において、幼い振る舞いからトラブルを起こす珊と、それを言葉を発さずともしっかりフォローするジョンのコンビは、一種の癒しのような物であり世界観とのギャップを楽しむことが出来るだろう。ただし、ギャグ路線で進み続けるイベントが多く、テンションの落差が気になる人からすると、全体的に茶番に見えるかもしれない。
また、筆者の場合は、取りこぼしのアイテムなどに拘らずプレイするので、クリアまで約17時間だったが、隅々まで徹底的に調べ廻った場合は25時間程度になると予想する。このプレイ時間から分かるように、Eastwardはインディーゲームとしてはボリュームは大きい方だ。しかし、これだけ尺を取っているにも関わらず、ストーリー展開は常に飛ばし気味で、プレイヤーが感情移入する前に次の展開に進むことが多い。
例えば主人公ジョンは、最初の村で住人達の信頼を得ているようだが、ジョンは何故喋らないのか?喋らないのに何故周囲の信頼を得ているのか?などの掘り下げが無いのは残念だ。これは訪れる町で絡むNPC全てに共通しており、もう少しプレイヤーに情報を提供して欲しいと感じた。
町を一つ削る、或いはもっと尺を長く取って、深く掘り下げた方が満足度は高かったはず。
NPC以外にも、町からもっと多くの情報を引き出せそうだがそれもない。例えば、Eastwardの世界観設定は、以下の通りである。
あらゆる物を崩壊させる「タタリ」と呼ばれる瘴気が世界中に広がり、生き残った人々は地下に村を作りながら生活をしていた。
この設定があるものの、実際にプレイできる地下世界は最初の村だけであり、滞在時間も村の中では一番短い。村の支配者の存在や、村の子供達の間のイジメなど、イベントとして上手く使えそうな設定が多いものの、活かしきれずに村を去ることになる。
総評にも書いたように、雰囲気で押しきったような展開が多い。
全体的に設定の掘り下げが甘く、例え細部はプレイヤー想像力に任せるタイプのゲームであったとしても、情報不足感は否めない。
ストーリー以外の不満点としては、イベントの度に必要以上に歩かされることだろうか。イベントでワープしてくれても良さそうなシーンでも意味なく歩かされる場面が多く、ダッシュも無いので面倒くささを感じることが多かった。最大の評価点がピクセルアートであるゲームなので、景観を眺めながら移動することにも意味はあるのだが、何度も繰り返していると流石に不満になってくる。
また、前述の通り展開が飛ばし気味なので、次に何処に行くか会話だけでは分かり難いことがある。幸いにもマップを見れば旗を持った人が表示されるので、迷子になることは無いが不親切なシーンが多い。
Eastwardは、前評判の高さから期待し過ぎると、ストーリー面では不満は残る。しかし、進化し続けるピクセルアートの最前線を体験することが出来て、程良い難易度の謎解きアクションを楽しむことが出来る良作である。サウンドは美麗なピクセルアートが生み出す情景に絶妙にマッチしており、各シーンを大いに盛り上げてくれることだろう。筆者的にはフィギュアは不要だったが、限定版を購入してサントラを入手したことは正解だった。
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