点数評価 | 75点 (ヨコオ信者なら+10点) |
プレイ状況 | 本編クリア |
プレイ時間 | 約10時間 |
発売日 | 2022年2月17日 |
対応機種 | Switch/PS4/Steam |
プレイ機種 | Switch |
開発元 | エイリム |
発売元 | スクウェア・エニックス |
ジャンル | 脳内再生 RPG ジャンルの考え方 |
Voice of Cards できそこないの巫女は、前作の悪い部分が概ね改善されていて好印象だ。テンポが良くなり、JRPGとしての面白さも格段にアップしている。5組の巫女と従者という、合計10人の登場人物を、ストレス無く管理する明確な回答が用意されていた事には驚き。しかしながら、前作の流用品であることと、4カ月という開発期間の短さ考えると3,520円という値段設定には大いに疑問が残る。第3弾が発売されたとしても、次は余程の革新的な変更が加えられない限りスルーだろう。
Voice of Cards できそこないの巫女は、世界観の全てがカードで表現され、テーブルトークRPGのようにゲームマスターのナビゲーションにより進行する、脳内再生 RPGの第2弾だ。
前作“ドラゴンの島”にて、カード表現は低予算でゲームを作るための方便であることが判明している。また、ヨコオタロウのネームバリューだけで、如何に利益を上げることが出来るか?を試す実験作でもある。
僅か4か月足らずで続編である“できそこないの巫女”が発売されたことから、その試みは大成功したのだろう。(前作の発売日は2021年10月28日)
そして本作の目的は、“前作のシステムを丸々流用して短期間で発売しても、プレイヤーに受け入れられるか?”を調査することだと思われる。
続編、Voice of Cards 囚われの魔物のレビューは以下を参照。
前作の問題点は概ね改善されている
Voice of Cards できそこないの巫女は、冒頭に記載した通り、前作のシステムを丸々流用しているため、新しく語ることはそれほど多くない。従って、システムに関する内容は、“ドラゴンの島”及び、“ドラゴンの島体験版”のレビューで殆ど事足りてしまう。同じ内容を書いても仕方がないため、当記事では前作からの変更点に焦点を当てる。
前作を既にプレイ済みであれば、そのまま読み続けてもらいたい。前作を未プレイであれば、まずは前作及び体験版のレビュー記事を参照してもらいたい。
まず、“ドラゴンの島”で良くなかった部分をおさらいすると以下の通りだ。
- 何をするにしてもテンポが悪い。
- メニュー画面の反応が悪い。
- 5人中2人が死にキャラでメンバーが固定。
- 高コスト・範囲技の価値が低い。
- 同じギャグネタの擦り続けが酷い。
結論から言うと、これらは全て解消されている。メニュー画面の反応の悪さは完全とは言えないが、前作よりはマシになっている。(と、筆者はそう感じた。)
Voice of Cardsシリーズは、ヨコオタロウ信者をターゲットにした作品であると同時に、アナログなテーブルトークRPGの雰囲気を楽しむためのゲームだ。この二つの喰い合わせ自体が悪い訳では無いが、何かをする度にカードを1枚1枚めくる演出は、“テーブルトークRPGには興味は無いが、ヨコオタロウには興味がある”という人の満足度を大きく低下させる結果を招いた。
テンポの悪さを指摘する声に対応する形で、前作は発売から約2か月経った、2021年12月22日に高速モードが追加された。“できそこないの巫女”でも、メニュー画面から-ボタンを押してゲーム設定に進めば、高速モードに設定を変更できる。これにてテンポの問題は改善された。なお、動作が不安定になると注意書きがされているが、ゲームクリアまでにゲームが強制終了するようなことは無かった。
“できそこないの巫女”は、巫女とその従者を巡る話であり、主人公達を含めて全5組の巫女と従者が登場する。即ち、全10人のプレイアブルキャラクターが用意されているのだが、今回は最終決戦を除いて、パーティ編成をすることはない。
主人公とヒロインのラティは常に固定メンバーで、訪れた島の巫女と従者がゲストとして加わって合計4人のパーティとなる。一時的にゲストが離脱した際には、マスコットキャラクター的な自称精霊のラックが加わり3人パーティとなる。
ゲームの性質上、イベントを除いて最大で3体しかモンスターが出現しないため、“ドラゴンの島”ではバッファーやタンクといった、1ターン目から火力を出さないキャラクターには出番が無かった。メニュー画面の重さも相まって、頻繁にパーティ編成することは億劫だった。
それに対して“できそこないの巫女”では、固定2人+ゲスト2人の構成が、ストーリー進行に合わせて違和感なく続く。ゲストの装備はアクセサリーしか変更できないので、装備変更の煩わしさからも解放される。この規模のゲームで仲間が10人も居ると、装備関連が煩雑になるのではないかと心配していたが、非常に上手くまとまっている。なお、ゲストはアクセサリー以外の装備を変更できず、レベルアップもしないが、巫女の武器だけはストーリーの進行に合わせて成長する。
島の巫女と従者は、レベルアップしないのでスキルを新しく覚えることは無い。しかし、全キャラ共通のチャージを除いて、5種類のスキルを最初から習得しているので、物足りなさを感じることは無かった。
4人中2人は常にステータスが固定なので、パーティ全体の強さの成長速度は緩やかだ。そのため、“ドラゴンの島”と比較して戦闘の難易度はやや上がっている。
“レベル上げをしていないのに簡単過ぎる”ボス戦は無くなった。
また、“ドラゴンの島”では、敵が1体か2体の時だけ戦って1ターンキルすることが正解だったが、“できそこないの巫女”では3体出現することが非常に多い。
この難易度の上昇と3体出現によって、高コスト技や範囲攻撃にも価値が産まれており、多少の利便性の差はあれど、全く使い所の無いような技は存在しなくなった。また今回から追加された、連携スキルはコストが5や6で非常に重いが、それに見合った効果を発揮するため使う機会は多い。
最終盤では、主人公とラティが外れて、ゲスト4人で戦うシーンも用意されている。ネタバレになるため詳細を語ることは控えるが、不意に今までに無い組み合わせで始まる戦闘には心が躍るだろう。
“ドラゴンの島”で賛否両論だったのは、何と言っても筋肉ネタの擦り続けだろう。あの手法は刺さらなかった人には非常に評判が悪かったので、“できそこないの巫女”では、諸刃の剣に成り得るネタは仕込まれていない。
ゲームの序盤から、巫女の儀式とは、島を守るために巫女の命を犠牲にする伝統行事であることが明かされるシリアス展開だ。また、声を失ったラティの精神世界に入り込み、その原因となった心の傷と向かい合うシーンが繰り返し訪れる。
なお、多少は面白い展開も用意されているが、それらは奇妙な見た目のラックを通じて展開される。この手のシーンの起点が、マスコットキャラクターに集約されることで、他のキャラクターのイメージを壊すことは無かった。
前作の反省が活きて好印象。
今回もドラクエネタが仕込まれている
“ドラゴンの島”では、余りに異様なドラゴンクエスト6のネタが仕込まれていた。(前作のレビュー参照)
前述の通り、“できそこないの巫女”はシリアス路線なので、あれ程までに凝ったネタは用意されていない。しかし、“罪を償う”と主張する盗賊に対して、“いいえ”相当を選択すると、何回も同じ選択肢が出て来て、“はい”相当を選択するまでループが抜けないという、ドラゴンクエスト3のカンダタネタが用意されていた。
このような控え目な仕込みからも、前作でやり過ぎたことに対する反省の色が見える。
3,520円という価格設定は高過ぎる
上記の通り、“できそこないの巫女”は、前作の反省が活きており比較的好印象なゲームだ。しかしながら、3,520円という価格設定には疑問が残るので、総合評価は★3.5とした。個別項目では、ユーザビリティは向上したが、前作から目玉となる新しいことはないので革新性は下げた。
記事の冒頭に記載した通り、当作品は“ドラゴンの島”のシステムを丸々流用して作られている。僅か4カ月しか発売期間が空いていないので、開発チームもそのままに、スタートアップの手間を掛けずに連続して作られたはずだ。
それでありながら、ダウンロードタイトルで3,520円という設定は、常識から逸脱していると言える。
“できそこないの巫女”のプレイヤーの多くは、“ドラゴンの島”をプレイしているだろう。果たしてこの2本のプレイバリューは、AAA級ビッグタイトルの水準に近い、7,040円(3,520円×2)に届いているだろうか?
“できそこないの巫女”と“ドラゴンの島”は、時系列に前後関係がある同じ世界の物語なので、開発期間を考えると最初から2作品出すことは確定していたはずだ。それであれば、1作目と2作目共に2,500円程度が妥当である。勿論、流用素材にも一部手を加えている部分があり、全くの手抜き作品という訳では無い。しかし、前作と本作の売り方及び価格設定は、ヨコオタロウのネームバリューと、スクエニのブランドイメージで稼いでやろうという魂胆が透けて見えてくるので、印象が悪いとしか言いようがない。
短スパンでの発売が、プレイヤーに受け入れられるかどうか?については恐らく、“2作目までは受け入れられる”が答えだろう。Voice of Cardsの第3弾が立て続けに発売されるかもしれないが、少なくとも筆者は、余程大きな変更点が無い限り付き合おうとは思わない。せめて遊技場がオンライン対戦に対応すれば良いのだが・・・。
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