【Voice of Cards 囚われの魔物】レビュー: JRPGとしては手堅い作りだが、重めなゲーム動作と魔物捕獲システムが絶望的なまでに相性が悪い

点数評価65点
(ヨコオ信者なら+10点)
プレイ状況クリア
プレイ時間約10時間
発売日2022年9月13日
対応機種Switch/PS4/Steam
プレイ機種Switch
開発元エイリム
発売元スクウェア・エニックス
ジャンル脳内再生 RPG
ジャンルの考え方
総評/評判/感想

“囚われの魔物”は、前作“できそこないの巫女”と同じくマジメ路線であり、前々作“ドラゴンの島”のようなお巫山戯は無い。ヨコオタロウの世界観が好きであればプレイすれば良いだろう。バトルはスキル設定の自由度が高く、JRPGの数値遊びとしての面白さを堪能できるが、魔物集めとカード演出が絶望的なまでにマッチしておらず、テンポの悪さになかなかのストレスを感じる。決してクソゲーという訳ではないが、信者向けのお布施作品に近い。魔物を捕まえて自由にスキル設定できると言う設定だけを活かして、HD-2Dで何か完全新作のJRPGを出してくれた方が嬉しい。

総合評価
 (3)
革新性
 (1.5)
ユーザビリティ
 (2.5)
ビジュアル
 (4)
サウンド
 (4)
プレイ継続性
 (2)
コストパフォーマンス
 (1)

Voice of Cards 囚われの魔物は、世界観の全てがカードで表現され、テーブルトークRPGのようにゲームマスターのナビゲーションにより進行する、脳内再生 RPGの第3弾。

脳内再生RPGとは良く言ったもので、実際のところは低予算でゲームを作るための方便であることは、第1弾と第2弾のレビューに記載した通りだ。第1弾から第2弾は、僅か4か月足らずの発売スパンだったが、第2弾から第3弾は約7か月空けての登場となっている。とはいえ、2021年10月28日のドラゴンの島、2022年2月17日のできそこないの巫女、2022年9月13日の囚われの魔物と、1年で使いまわし3連発となっている。

Voice of Cardsシリーズは、基本的にシステムを使いまわして作られたゲームなので、まずは前作・前々作のレビューを読んでもらいたい。当レビューでは3作目における変更点や気付きについて記載する。

JRPGとして自由度が高くも手堅い作り

自由度の高いスキル付け替えシステム

囚われの魔物は、前作、前々作に引き続いてターン制のJRPGだ。キャラクターが行動権を得る度にリソースとしてジェムが一つ溜まり、そのジェムを消費して攻撃を繰り出すという基本システムは、過去2作品を踏襲している。一方で本作では、各キャラクターが使用するスキルを、プレイヤーが好みで組み替えできるようになっている。

“囚われの魔物”というタイトルの通り、プレイヤーは道中で出会ったモンスターをカードに封印することで、戦闘中に召喚して使役する。各キャラクターはコスト0の通常攻撃、ジェム生成、防御以外に行動する術を持っていない。そのため、好きなモンスターカードをセットすることで、初めて属性攻撃やダイス勝負といった付加価値を持った行動を取ることが出来るようになる。

囚われの魔物 スキルセット画面
各モンスターはパーティで1体のみセット可能。

ゲーム内に登場するモンスターは全て捉えることが出来る。捉えると言っても、何かしらの手順が必要なわけではなく、戦闘終了後に一定確率で出現する宝箱から、モンスターが封印されたカードを入手することが出来る。ドラゴンクエストでいうところの、倒した仲間が起き上がるようなイメージだ。

囚われの魔物 ドラクエネタ
例によってドラゴンクエストネタが仕込まれている。

キャラクターの個性は失われたが数値遊びが楽しい

スキル付け替えの自由度が高いということは、その裏返しとしてキャラクターとしての個性が失われていることを意味する。装備品のステータス差や、属性や状態異常に対する耐性などの特性が設定されているものの、誰もが自由に魔物をスキルとして使えるため、固有スキルによる特徴付けは無くなっている。ただしこれについては、没個性的と捉えるよりも、過去2回とは別の体験を用意してくれていると、前向きに捉えたいと個人的には考えている。

ターン制JRPGの戦闘は数値遊びである。素早さ・攻撃力・防御力などから行動順番とダメージを把握・調整し、最大効率で敵の撃破を狙う遊びだ。Voice of Cardsの場合、更にリソースはMPではなく行動ごとに付与されるジェムなので、行動順番とステータス、ジェムの貯まり具合、出現するモンスターの傾向から、スキル構成を考える遊びだと捉えるとバトルをより楽しめるだろう。

過去2作では、イベント戦を除いて敵が同時に4体出現することはなったが、今作では道中のザコ戦でも敵が4体出現するようになった。そのお陰で、全体攻撃スキルの価値が、2作目よりも更に向上している点は評価したい。

囚われの魔物 戦闘シーン

全体攻撃スキルは当然ながら大量のジェムを消費する。大きなリターンを得るには行動順番とスキル構成の最適化は必須である。JRPGファンであれば、この手の調整作業は間違いなく大好物だろう。この戦闘前の段取りの重要さが、実にJRPGらしく手堅い面白さを感じることが出来た。

囚われの魔物 ボス戦
ボスは適当なスキル構成だと苦戦する。しっかり弱点スキルを用意したい。

なお、Voice of Cardsシリーズは、高速モードが用意されてはいるものの、全体的に挙動はやや重めだ。如何に相手に行動させずにクリアするかという点も相まって、効率良く戦闘を進めることに心血を注ぐことになる。ゲームとして良くない部分も、可能な限り遊びに昇華したい。

魔物捕獲システムはVoCシリーズと相性が悪い

さて、そんなJRPGとしての面白さを引き出してくれる魔物捕獲システムだが、実際のところは大きな問題を抱えている。前項でも少し触れたとおり、Voice of Cardsシリーズは動作が遅い。高速モードが用意されているが、世界を全てカードで構成するという、演出上の制約もあるので大して早くない。

Sara
Sara

通常モード:非常に遅い/高速モード:遅い

高速とはあくまで自身との相対評価。

問題は実にシンプルだ。カードという鈍重な演出が、繰り返し戦い続けて魔物を集めるという作業にマッチしていない。

カードを入手できなければスキルを使えず話にならないので、繰り返し戦闘を行うことになるが、運が悪いと宝箱をドロップしないし、宝箱をドロップしても魔物が入っているとは限らない。また、魔物は1回手に入れると終わりではなく、それぞれにランクが設定されている。ランクが高い場合は当然ながらスキル使用時に得られる効果が上昇するので、攻撃や回復の要となるスキルの幾つかは、ランクの高いものを入手しておきたい。

囚われの魔物 レアリティアップ
ランクが上がると古いものは破棄される。

つまり、狙ったスキルを手に入れるために、延々と歩き回ってエンカウントを繰り返す訳だが、それがとにかく苦行だ。Voice of Cardsシリーズは、フィールド上を自由に動き回れるRPGとは異なり、スティックか十字キーを1マス毎に入力しなければ動けない。キー入力から遅延してコマが動く様子も、演出だと思えば何とか受け入れられる。しかし、特定のモンスターにエンカウントするために、同じ場所を往復するとなると、この仕様は一気にストレスに変貌する。

旅の途中で指定されたランクのモンスターを捕まえてくるサブイベントが発生するのだが、筆者の場合はランク2のガーゴイルの入手に大苦戦し約1時間を要した。同じ1時間でもストレスフリーにマップを移動しているのであれば耐えられるが、同じ場所を往復するために、何百回と十字キーを入力をしたのか分からない。サブイベントには続きがあったが、耐えきれずにギブアップした。

囚われの魔物 サブクエスト
イベントには続きがあったが諦めた。

魔物を捉えて自由にスキルとして使うというアイデアは良いものの、その過程が基幹システムと全くマッチングしていない。製作陣はテストプレイ時に何か感じなかったのだろうか。更に高速化することが難しいのであれば、動かずともエンカウントできる仕組みを用意するなどの配慮が必要だったと言えるだろう。

Sara
Sara

散々ドラクエネタを入れるんだから、ショートカット一つで、“口笛”的なアクションを出せるようにしておいて欲しかった。

追記:エンカウントについて

送りボタンを何度も押し続けることで、そのうちにエンカウントする仕様の模様。エンカウントが必要な場合は、動かずに送りボタンを活用しよう。

3,520円という価格設定は高過ぎる

前作できそこないの巫女のレビューでも全く同じ見出しを付けたが、本作囚われの魔物でも異常な価格設定については言及せざるを得ない。

ストーリーや世界観はそれぞれ3作品で異なっているものの、カードで構築された世界の演出、登場人物、モンスターなど、全体の6~7割ぐらいは使いまわしである。これだけ使いまわして3,520円という価格は受け入れ難い。

囚われの魔物 使いまわしのキャラクター
フレーバーテキストこそ変わっているが、多くのモブキャラは見た目同じ。

また、メニュー画面を開く動作を筆頭に、カード演出以外でも動作が鈍い問題は相変わらず改善していない。強気な値段設定の割に、静的なJRPGすらまともに動かせない点には呆れるしかない。一体何がそこまでスクエニを強気にさせるのだろうか?

前2回のレビューに書いた通り、Voice of Cardsシリーズはヨコオタロウのネームバリューで如何に楽に稼ぐかの試験作なので、信仰心が試されていることは間違いない。それでも流石に、プレイヤーの快適性に関与する部分については、見直してくれても良かったのではないだろうか。

評価ポイントのまとめ

Voice of Cardsのプレイ時間は、1作品あたり約10時間だ。短編3本で30時間遊べて、3,520円×3=10,560円がアリだと思うのであれば、購入しても良いだろう。スクエニはいつまで信頼と引き換えに金を稼ぎ続けるのか、今後も見守っていきたい。

長所

  • JRPGらしいターン制バトル
  • スキル付け替えの面白さ

短所

  • 相変わらずのテンポの悪さが、魔物捕獲システムと相性最悪
  • 使いまわしなのに強気すぎる値段設定
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