点数評価 | – |
クリア時間 | 約9時間 |
プレイ状況 | クリア |
プレイ時間 | 約9時間 |
発売日 | 2021年10月20日 |
対応機種 | Steam/PS4/PS5/Switch/Xbox |
プレイ機種 | Steam |
開発元 | Daniel Mullins Games |
発売元 | Devolver Digital |
ジャンル | デッキ構築型ローグライト 脱出ゲームスタイルのパズル サイコロジカルホラー ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 第3項にネタバレあり |
INSCRYPTION (インスクリプション)は、『真実は君の目で確かめてくれ』という言葉が最も相応しいゲームだ。ただし、謎解きは超高難易度であり、基本的には真実へ一人で辿り着くことは不可能。真相に迫るには、インターネット上のコミュニティの力が必要になる。殆どのプレイヤーはクリア後に他者が解いた謎解きのまとめを見ることで、ゲームの全容を把握することになるが、それでも今までにない満足感を味わえるはずだ。色んな意味で1手が重いカードゲームは、近頃流行しているデッキ構築型のゲームとしての面白さも十分。プレイする気であれば、クリアまではネタバレを見ないようにしたい。余りに独創的なゲームなので、点数評価は無しで★5に分類する。
【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
注意:第3項にネタバレを含みます。
INSCRYPTION (インスクリプション)は、Slay the Spireのようにルート分岐とデッキ構築を繰り返し、チャレンジに失敗するとスターターデッキに戻されるという、大ジャンルではローグライクに分類されるゲームだ。しかし、公式がジャンルとして示しているように、脱出ゲーム的なパズルやホラーゲームの要素も持ち合わせている。一体どのように、それらとカードゲームが関係するかは、『真実は君の目で確かめてくれ』としか言わざるを得ない。
当レビューでは、第1項はカードゲームについて、第2項はその拡張、第3項ではゲームの全体像に触れる。ネタバレ厳禁のゲームなので、ネタバレを完全に避けてプレイした人は、第1項のみに留めてもらいたい。ただし、完全なゲームのネタバレは到底個人で辿り着けるものではないので、当レビューを最後まで読んだとしても、ゲームの面白さが失われることはない。
Steam版に加えて、PS4/PS5版が2022年8月31日に発売。Switch版は2022年12月1日発売。
一手の重さを噛みしめるバトルシステム
INSCRYPTIONはネタバレ厳禁なものの、事前に開示されている情報から窺い知ることができるように、Slay the Spireのようなルート選択系のデッキ構築型カードゲームだ。分岐したマスを1歩ずつ進み、獣・虫・鳥の3タイプのカードでデッキ構築しながらバトルを続け、ステージボスを倒した後にラスボスを倒せばクリアとなる。
?の絵柄が付いたカードに止まれば手札の追加、カバンに止まればアイテム補充、ドクロに止まれば敵やエリートと戦闘など、止まったマスの効果は難解ではなくシンプルなものが多い。
焚火に止まれば、この手のデッキ構築型では定番の『カードのパワーアップ』を行うことができるのだが、INSCRYPTIONは他にもデッキ圧縮を兼ねたパワーアップ系マスが多い。純粋に1枚を削除してデッキを圧縮できるマス、1枚削除しつつカードが持つ特殊能力(印)を別のカードに移す継承マス、2枚のカードを1枚にまとめてステータスや特殊能力を合算できる合成マスが用意されている。いずれにせよ、Slay the Spireをプレイしたことがあれば一瞬でルールを理解できるだろうし、プレイしたことが無くてもルールの理解は容易である。
なお、ホラーテイストのゲームなだけあって、演出は全体的に不気味だ。デッキの圧縮であれば、生贄に差し出したカードを明確に“殺した”と表示される。カードの合成であれば、不気味な血濡れの鋸を持った男に目を逸らすように促され、カードがビリビリと破れ飛び、強化はされたが継ぎ接ぎだらけになったカードが返ってくる。
焚火におけるパワーアップもブラックな演出があり、特定の条件を満たすと圧縮にも繋がるのでお楽しみに。
さて、そんなホラーテイストのINSCRYPTIONだが、戦闘には1手が非常に重たいカードバトルが採用されている。
一般的なカードバトルであれば構築型であろうとなかろうと、毎ターン開始時にデッキから1枚ドローでき、さらにMPやコストに相当するリソースの数値が1増えたり最大値まで回復するものが多い。しかし、INSCRYPTIONの場合は、1ドローするかリソースを1回復するかどちらかしかできない。また、ユニークなことにリソースに相当するものはリスだ。
“MP=リス”とだけ聞いても、間違いなく理解が及ばないので順を追って説明する。まず、INSCRYPTIONにてカードを場に出すには、カードの右上に書かれた血の数だけ、盤面に出ているユニットを生贄にしなければならない。生贄にされたユニットは当然ながら撃破された時と同様に盤面から退場する。
ただし、最初は盤面に何もユニットが出ていないので、生贄無しで(0コストで)盤面に出せるリスを召喚し、それを生贄にすることでユニットを展開していく訳だ。リスはデッキに含まれておらず、望んだタイミングでデッキ外から確定で補充できる。ただし、リスを補充した場合はデッキからカードを引くことはできない。0コストのユニットは、リス以外にも弱そうな小型の生物が幾つか用意されており、当然ながらそれらは様々な特殊能力を持っている。
ターンの終わりには対面するカード同士が戦闘を行い、縦のラインに相手カードが無い状態で攻撃するとデュエリスト本体にダメージがはいる。そして本体ダメージで5点リードすれば勝利となる。上で紹介したスクリーンショットであれば、3(攻撃力)/2(体力)オオカミを盤面に出すと、相手(2列目)のオオカミを倒したうえで、敵と対面していない右端の1/3オコジョが敵デュエリストに1点のダメージを与える。
なお、倒されたり生贄にされたユニットは骨を1本落とす。骨は生贄とは別管理のリソースであり、骨を消費して召喚できる生物も多数用意されている。つまりINSCRYPTIONは、食物連鎖下位の小動物の生贄に、倒れた仲間の骨を拾い集めて戦うという、なんとも血生臭いカードゲームなのである。
ダメージ計算は画面左に置かれた天秤で行われ、ダメージを与える度に天秤が傾いていくので、前述の通り5点分だけ先行した側の勝利となる。ターン開始時に“ドローかリスの補給どちらかしか選べない”という独自の仕様に慣れるまでは、リソース不足に陥って碌にユニットを展開できずに5点入れられる展開が多々あるだろう。しかし、そんなピンチの状況でも、画面右側に置かれたハサミやペンチ、ナイフなどの消費アイテムを使えば何とか切り抜けられることがある。
ハサミを使えば、相手のカード1枚を無条件に切り裂くことで脅威を除去できる。ペンチを使えば、プレイヤーは自分の歯を引き抜いて、相手側の天秤に重りとして乗せることができる。ナイフの使い方は・・・ PVでも紹介される、目玉が詰まったトランクケースから是非想像して欲しい。
このようにINSCRYPTIONは、手持ちは僅か5点と点数の動きは少ないものの、ドローまたはリソース回復の判断が難しく、一手間違えば直ぐに形勢逆転する高難易度なカードゲームである。また、か弱い生き物を生贄に捧げるという意味からも一手が重い。
なお、ゲームの難易度が高いことに対する救済も用意されている。詳細はストーリー進行に絡むので伏せるが、途中で負けてプレイヤーが殺されたとしても、ローグライクにお馴染みのパーマバフに相当する強化手段として、オリジナルカードの作成ができるので、それをうまく使えば初手で5点を入れてザコ敵なら瞬殺できるようになる。
また、ゲーム途中にヒントを得て席を立ち、デスゲームが行われている部屋を歩き回ることもできる。これがいわゆる、脱出ゲームスタイルのパズルになっており、脱出ゲーム側で謎を解く度にカードゲーム側へパーマバフが反映されていく。ネタバレ防止のために脱出ゲームパートのスクショは割愛するが、随所に気になるワードが散りばめられており、夢中でプレイを進めてしまうこと間違いなしである。
幾つもの設定を詰め込んだ贅沢なカードゲーム
当記事の第1項ではINSCRYPTIONの第1章のカードゲームについて紹介したが、カードゲームに慣れた人であれば、第1章をクリアするまで大体4~5時間だろう。続く第2章からは徐々にINSCRYPTION の本質が見えてくる展開が待っている。もちろん第2章もカードゲームが主体となるが、完全に情報をシャットダウンして遊びたい人は、当記事の閲覧はここまでにしてもらいたい。もっとも、当記事の第2項でもネタバレに直結する内容は記載しないので、カードゲームとしての全体像を把握したいだけであれば読んで頂いても構わない。
致命的なネタバレは無いので、気になる人は続きを読んでもOK!
第1項で説明した通り、INSCRYPTIONではリスを生贄に食物連鎖上位の生物を召喚するカードゲームを楽しむことができるが、それは第1章のラスボスをクリアするまでの話であり、第2章で新たなカードゲームが始まる。PVでも紹介されている、ロウソクの不完全燃焼のオレンジ色に包まれた空間でのカードバトルは、あくまで第1章だけの話だ。
第1章ではスターターデッキを持ってスタートし、途中でデッキを拡張させていくSlay the Spire方式のゲームだった。しかし第2章からは、カードパックから得たカードを用いて事前にデッキを構築し、マップ上に点在するデュエリストとカードバトルを行いストーリーを進めるという、一般的なカードゲームが始まる。
盤面に出したユニットが対面で勝負し、相手よりも5点先行すれば勝ちというゲームの基本は変わらないが、リソースには血と骨以外にもジェムとエネルギーが加わる。一気にリソースが4つに増えたことで、デッキの構築は非常に複雑化している。
リスもデッキ構築対象となり、デッキまたはリスというドローの選択肢も無くなっている。
リソースが増えデッキを事前構築可能になったことにより、第2章をクリアするには、如何にカード間のシナジー効果を準備できるかが重要となる。ただし、事前にデッキを組めるということは、デッキ構築に関するランダム性を排除できるということなので、カードゲームに慣れている人にとっては1章よりも簡単なはずだ。
簡単に第2章について説明を行ったが、INSCRYPTIONは全部で4章構成となっている。第4章は結末へ続くオマケのようなものなので、実質第3章がラストなのだが、第3章にも新しいカードゲームが用意されている。
第3章では、再びカードゲームの途中に席を立って脱出ゲーム的パズルを行ったりと、雰囲気は第1章に近い。しかし、見た目は全く異なっており、デジタルで近未来的な内容になっている。登場するユニットも全てロボットだ。
カードバトルのルールとしては、第2章に用意されていたデッキの構築は再び無くなったものの、任意のタイミングでカードの圧縮、追加、合体などが可能となっており、第1章と第2章の中間のような設定だ。リソースとしての血と骨は無くなり、代わりに毎ターンエネルギーというリソースが回復する。ロボットばかり出現するので、当然ながら生贄システムも無くなっている。そして、リスの代わりに壁として利用できる空き容器というカードがデッキ外に用意され、望めばデッキからドローする代わりに手札に加えることができる。また、戦闘レーンは4列から5列に拡張されており、バトル難易度が上昇している。しかし、バトルに負けたとしても第1章のように最初からやり直しにはならないので、リトライ性は高い。
なお、脱出ゲームパートも近代的になっており、ロジック的な足し算パズルや、セキュリティ認証でロボットでないことを示すための画像クリックなどが用意されている。
以上のようにINSCRYPTIONは、基本は同じだが細かい仕様が異なる3つのカードゲームを遊ぶことができるゲームなのだ。当レビュー第2項のサブタイトルにて、INSCRYPTIONを“贅沢なカードゲーム”と評した理由はそのためである。クリアまで決して長いゲームではないが、短い期間にアイデアを出し惜しみせずに詰め込んだという印象を受ける。試行錯誤が完全に終わる前に次の章へ進むため、飽きを感じることは無く、もう少し遊びたかったという余韻を残しつつゲームは進行するだろう。
何故、似て非なるカードゲームを3回遊ぶのか?という部分が正にストーリーの核心なので、それに関しては『真実は君の目で確かめてくれ』としか言えない。
『真実は君の目で確かめてくれ』と言いたくなる神ゲー
さて、ここからはINSCRYPTIONのメタ的な部分について紹介する。あくまで“紹介する”だけである。このゲームの完全なネタバレは個人では不可能なレベルの難易度であり、インターネット上のコミュニティで協力して暗号解読を行うことが前提となっている。
つまりINSCRYPTIONは、純粋にカードゲームを3種類楽しんだうえで、メタ的な謎解きをみんなで協力して行うゲームなのだ。
ゲーム内で示された暗号の解読に始まり、全く別のゲームの中でヒントを得たり、ゲーム内で示されたGPSの座標に赴いて山の中で地面を発掘するなど、リアルでの作業も含まれている。そのため、完全なネタバレについては、海外のコミュニティが解き明かした内容をまとめたサイトを参照することになる。
従って、当レビューの第3項を読んだだけでは完全ネタバレとはならない。しかし、プレイするのであれば、これ以上は情報を仕入れない方が良いだろう。
ここでは、メタ的な要素についての簡単な解説に留める。
まず、INSCRYPTIONのプレイヤー(我々)は、ルーク・カーダーというYouTuberが残した、
“小屋に閉じ込められ、死のカードゲームを繰り返している”
という設定の、デジタル版INSCRYPTIONのプレイ動画を見ているというポジション設定だ。プレイヤーのゲーム内での悪戦苦闘は、デジタル版INSCRYPTIONを遊ぶルーク・カーダーのプレイ体験そのものであり、実際に死のカードゲームに閉じ込められている訳ではない。
INSCRYPTIONは本来、第2章がオリジナルのゲームである。4人のスクライブという意思を持ったゲーム内の登場人物のうち、誰が主導権を握るかでゲームの様相が変化している。第1章ではレシーという人物が主導権を握った結果、INSCRYPTIONは獣性に特化した血と骨をリソースにしたカードゲームに変貌している。レシーが倒された結果オリジナルゲームが現れ、第2章ではそれを遊んでいる。第3章ではP03という機械に特化した人物が主導権を握ったため、エネルギーをリソースにしたロボットメインのカードゲームに変貌したという設定だ。
なお、核心に迫るための動画は全部で24本残されており、デジタル版INSCRYPTIONの謎を解こうとする様子や、デジタル版INSCRYPTIONが収納されたフロッピーを巡る恐怖体験が収められている。
最終的に、INSCRYPTIONがインターネットに繋がり世界中に拡散された(Steamでダウンロード販売された)というオチなのだが、一体誰が何のために、そのようなことを行ったかについては詳細な考察サイトを見ると良いだろう。
以上のように、INSCRYPTIONは3種類のカードゲームのアイデアを惜しげもなく使い、脱出ゲーム的なパズルも楽しめて、メタ的な視点のホラーとリアル謎解きまでが用意された、驚異的な完成度のインディーゲームだ。クリアと同時に考察を漁りたくなるストーリーは素晴らしく、クリア後にはカードが拡張され、難易度も上昇した第1章を繰り返し遊ぶモードも解禁される。そのため、1回クリアしたら終わりという訳でもなく、繰り返し遊ぶことも可能。まさに神ゲーである。
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