点数評価 | 80点 |
クリア時間 | 約22時間 |
プレイ状況 | クリア トロフィー:100% |
プレイ時間 | 約24時間 |
発売日 | 2023年10月20日 |
対応機種 | PS5 |
プレイ機種 | PS5 |
開発元 | Insomniac Games |
発売元 | ソニー・インタラクティブエンタテインメント |
ジャンル | アクション ジャンルの考え方 |
ネタバレ | あり |
神ゲーの続編は往々にして神ゲーにならない。『Marvel’s Spider-Man』シリーズも、流石にシリーズ3作目となるとアクションには飽きを感じるし、そう何度もスイング移動から大きな感動を得ることはできない。しかしそれでも、プレイヤーを飽きさせないための努力は感じられるし、ゲームオリジナルのストーリーの出来栄えには大変満足する。また、前作同様に圧倒的なクオリティのグラフィックと、豊富なフォトモードの設定から写真を撮り出したら止まらない。神ゲーでは無いものの非常に良質なオープンワールド式の3Dアクションゲームであることは間違いない。ただし、ゲーム内におけるポリコレ教育の頻度が高過ぎるウンザリする点には注意したい。
頻度【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
注意:当レビュー記事は、ストーリーのネタバレを含みます。
圧倒的満足度!オリジナルストーリーが秀逸
『Marvel’s Spider-Man 2』は、マーベル作品におけるアース1048のニューヨークを舞台にしたオープンワールド式の3Dアクションゲームだ。『Marvel’s Spider-Man』,『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』に続くシリーズ3作目となる。
発売前に告知されていた通り、本作では遂に宇宙から飛来した寄生生物であるシンビオートが登場し、マーベル作品屈指の人気ヴィランであるヴェノムがラスボスに据えられる。多くのマーベル作品において、ヴェノムは新聞記者であるエディ・ブロックにシンビオートが寄生したことで生まれるヴィランだが、本作においては前作にも登場していたスパイダーマン(=ピーター・パーカー)の親友であるハリー・オズボーンに寄生することで顕現するという、ゲームのオリジナル設定が採用されている。
ハリー・オズボーンと言えば、何らかの形でヴィランであるグリーンゴブリンと化すことが定番であり、前作に登場した段階で病に臥せっている事実が描かれていた。そのため、『Marvel’s Spider-Man』シリーズにおいても同様の展開になるだろう思われていたが、本作ではシンビートを治療に使った結果として最終的にヴェノムに至ることになる。
これだけでも中々にインパクトのある設定だが、本作においてはハリー・オズボーンがいきなりヴェノムになる訳では無く、まずは理性を保った状態でスパイダーマンを真似たようなスーツを形成する。そしてニューヒーローとして、スパイダーマンと共に確固たる信頼と友情の元に戦うという流れは、全く想像し得なかっただけに驚きだ。
この展開を見た瞬間に、事前の予告に登場したシンビオートによって凶暴性が増したブラックスパイダーマンはどのように登場するのか気になってくるだろう。それについては、ヴェノムと同様に『Marvel’s Spider-Man』シリーズ初登場となるヴィラン、クレイヴン・ザ・ハンターとの戦いによって瀕死の重傷を負ったピーター・パーカーを助ける形で、ハリー・オズボーンからピーター・パーカーにシンビートが移ることになる。ブラックスパイダーマンと化した後については、原作や映画などと同様に凶暴性が増して傲慢になっていくというお馴染みの闇落ちパートが待ち受けている。
本作におけるシンビオートは、ヒーローとしてのハリー・オズボーンから始まり、ブラックスパイダーマンを経て、再びハリー・オズボーンに戻りヴェノムへと至る。
なお、ブラックスパイダーマンからの脱却については、新米スパイダーマンであるマイルス・モラレスが大きく関与することになる。マイルスに関しては、改心したミスターネガティブと対峙するも、父の仇として復讐を果たすのではなく過去と決別して成長する様子が描かれることになる。また、本作ではマイルスがピーターを手助けするような描写が多く、更にはエンディングでピーターがスパイダーマンからの引退を示唆するなど、スパイダーマンの世代交代を意識したストーリーになっているのも本作の注目ポイントだ。
クレイヴン・ザ・ハンターについては、同キャラクターが主人公の映画の公開が2024年に控えていることから強引にねじ込まれた感が拭えないが、自身の死に場所を求めて強敵を求めるという設定が本作では上手くはまっている。前作『Marvel’s Spider-Man』において有名なヴィラン達が軒並み投獄済みになっているが、本作ではクレイヴンによって狩りの獲物として脱獄させられることになるので、マイルスとミスターネガティブの邂逅などで上手くヴィラン達の再利用ができているのだ。
発売前は、ラスボスとしてヴェノムが控えているにもかかわらず、単に肉体を強化しただけのクレイヴンがPVで大きく扱われており不安があったが、ストーリーに関しては一切不満の無い仕上がりになっていた。特にゲーム冒頭の巨大なサンドマンや河や下水道でリザードが大暴れするシーンでは、今更になって中堅ヴィランが単体で暴れるだけでは説得力がない所だが、クレイヴンに対抗するためであったり強制されているという大義名分が得られたことで、ストーリー的に違和感の無い仕上がっている点は素晴らしい。
クレイヴンはハンター集団という特性から手下が多く近未来的な装備も多いので、それらを活用したサイドクエストの生成にも大きく貢献している。
どうやら『Marvel’s Spider-Man』シリーズは本作では終わらず、少なくとも後1作品は続くようである。ヴェノムから解放されたハリー・オズボーンに対してG血清の投与が指示されるシーンがあることから、結局のところハリーが宿敵であるグリーンゴブリン化する運命は避けられないようだ。
その他にも、最後まで破壊されなかったシンビオート(カーネイジ),力を失っていたためクレイヴンの狩りの対象にならなかったため生き残り、獄中でスパイダーマンに対する復讐を計画するドクター・オクトパス,クレイヴンから逃げきったカメレオン,マルチバースのスパイダーボット収集にて言及されるスパイダーマン2099ことミゲル,シルクとして次回作で活躍するであろうシンディの登場など、多数の伏線が用意されており次回作は確定的だ。
ピーターの引退に絡めて、オクトパスがスーペリアスパイダーマンになっても面白い。また、2099やシルクが出るということで、スパイダーバース絡みでインヘリターズがでてくるかもなど想像が膨らむ。
飽きさせないための努力を感じられるアクション
結論から先に言うと、『Marvel’s Spider-Man 2』のアクションパートは飽きて来る。本作は良く言えば『Marvel’s Spider-Man』,『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』の正統進化だろう。しかし驚きに満ちた内容とは言えず、舞台となるニューヨークもブルックリンとクイーンズという区画が追加されて広がったものの、半分は前作と同じ舞台でありどうしてもマンネリを感じてしまうことは避けられないだろう。しかしそれでも、プレイヤーを飽きさせないための努力を感じることができた。
移動がメインコンテンツとなり得る前代未聞のオープンワールドゲームとして脚光を浴びた『Marvel’s Spider-Man』シリーズだが、流石に3作目となるとウェブ・スイングによる移動は、ゲーム開始直後は“ニューヨークに帰ってきた!”という感激はあるものの早々に飽きて来る。その回答として用意されたのが、“ウェブ・ウィング”による飛行だ。スパイダーマンの腕と腹部の間に膜のような翼を展開することで、長時間高度を維持したまま滑空することができ、さらには高層ビルの間などにできた風洞に入ることで、高度を下げずに高速で移動可能になっている。
初めてスイングを体験した時の驚きには明確に劣るものの、都会を高速で飛行するという遊びとしては一定の評価を得ることができるだろう。
本作ではファストトラベルが更に進化し、俯瞰視点のマップからリニアにゲームプレイに戻るという驚きの技術が採用されている。しかし、ウィングによる飛行が思いのほか快適なので、ファストトラベルを多用することは無かった。
また、通常のウェブ・スイングに対するテコ入れも行われている。前作同様に本作でも、街中で強盗や傷害などの事件が発生するので、現場に向かい暴漢たちとのバトルに勝利すれば経験値を稼ぐことができる。そして本作からは暴漢たちを倒して終わりでは無く、事件に巻き込まれて負傷した市民を担いで病院や救急車まで運ぶというミッションも追加で発生するようになっている。担いでいる状態ではウイングを展開して飛行することは出来ずスイングだけで移動することになるのだが、その際には如何にもスパイダーマンらしいジョークを交えたフレンドリーな会話を楽しむことができる。しかし、快適な飛行を制限されることが結構なストレスなので、何回かケガ人を運んだ後は、会話の楽しさを運ぶことの面倒臭さが上回ってきてしまう点が残念だ。
『Marvel’s Spider-Man』シリーズの戦闘は、縦横無尽にフィールド上を跳ね回って相手を翻弄し、多彩なフィニッシュブローと現代的なガシェットを活用するという、どこを切り取っても絵になる素晴らしい体験だ。
ゲーム序盤は今までの慣れ親しんだ戦闘が繰り広げられ、途中からはブラックスパイダーマンとして暴力的なシンビオートのパワーとテクニカルなギアの組み合わせたハイブリッドな戦闘に変化する。スパイダーマンの背面に装着されたエキストラアームで戦う一方で、シンビオートの力によってスーツを触手のように伸ばして叩き付けるといった、科学力と原始的な生命力のような相反する要素が組み合わされた戦闘となっており印象的だ。そして最終的には、アンチ・シンビオートの力を手にした新しいスキル体系のスパイダーマンを操作することができる。
ゲームの進行に合わせてスキルが変化し、異なった体験を用意してくれていることは大変ありがたい。しかしながら、それだけで最初から最後まで新鮮な気分で遊べるかというとそうではなく、終盤になるとどうしてもマンネリを感じてしまうことは避けられない。また、戦闘をサポートするウェブ・シューター関連のガジェットが4種類用意されているが、敵を大きくノックバックさせるコンカッション・バースト以外の3種類が没個性的で、取り合えず雑に発動しておけば機能する程度になっており、使い分けの楽しさを感じられない無い点も残念である。
ステルスにおいてはウェブ・ラインという、好きな方向にウェブで道を作ることができるスキルが追加されたことで、死角からの攻撃性能が圧倒的に向上している。ただし、結局は過去作品と同じことの繰り返しなので、時短になっただけというイメージだ。
このように3作目ともなると、戦闘は正統進化はしているものの飽きて来る。その一方で標準難易度でも敵の体力は高めで、ボス戦ともなるとかなりの長期戦となり、早く戦闘が終わって欲しいという感情が芽生えて来ることが多かった。戦闘からのQTEへの流れは相変わらずドラマチックで見事なので、プレイヤーが操作する戦闘シーンをもっと短くしてQTEを増やした方が満足度が向上しただろう。
前項に記載した通り、様々な伏線が残されたままになっているので次回作は確定している。親愛なる隣人スパイダーマンが題材である以上、舞台を大きく変えることが難しいので次回作でも新鮮さを演出することには相当苦労することだろうが、その辺りは世代交代が上手く作用することに期待したい。
行き過ぎたポリコレ教育の数々
ポリティカル・コレクトネス、通常ポリコレとは、各種の偏見や差別を含まない表現や用語を使用することを意味する言葉だ。何事に対しても偏見や差別は行われるべきではなく、この概念自体は重要なことではあるが、『Marvel’s Spider-Man 2』はポリコレ教育に力を入れ過ぎた代償として、やや歪な作品に仕上がっている。
その最たるものが、“女性は守られる存在ではない”ということを主張するための強い女性の演出だ。本作にはピーター・パーカーの恋人であるメリー・ジェーン・ワトソンを操作する場面が度々登場するが、単なる新聞記者にもかかわらず彼女の戦闘能力が余りにも高過ぎて不自然だ。前作では一切の戦闘能力を持たず、見つかるとゲームオーバーとなる潜入パートがあったが、今回ではウェブ・シューター搭載型のスタンガンを片手に、スパイダーマン以上の見事なステルスコンバットを披露する。“セーブルから護身術を習った”との方便も用意されているが、百戦錬磨のハンター軍団を壊滅させる立ち回りには違和感しかない。
MJがシンビーオートでスクリーム化した際のシーンでは、男には影響を受けたりコントロールされたくないという内容を延々と叫び続けるだけで余りにも露骨。
また本作の中盤では、聴覚障害者を操作して無音の中で壁にスプレーアートを描くというパートが唐突に挿入される。最早これは、アクションゲームでもなく何を楽しめば良いのか理解できない。“障害者であっても一流のアーティストになれる”という事実の流布自体は高尚であるとは思うが、本作のプレイヤーはスパイダーマンというスーパーヒーローを操作することを目的としているので、用意された聴覚障害者パートは本作の購入目的に完全にミスマッチだ。購入目的とは異なる体験を無理やりねじ込んでしまうと、それはポリコレ教育としては機能せず、逆にポリコレに対する反感を抱くだけである。
そもそも障害者を操作させたいのであれば、昼間は盲目の弁護士として働き、夜になるとレーダーセンスを駆使して悪を裁く、デアデビルというマーベルヒーローが存在する。実際に本作においてもデアデビルであろう弁護士に言及するシーンがあるので、それであれば本作にデアデビルを登場させればポリコレ教育とアクション性を兼ねたヒーロー体験となったはずだ。
その他にも、本作の登場人物の顔面偏差値は全体的に低めに設定されており、美男美女が一切登場しないニューヨークは逆に多様性が失われてしまった街となっている。ちなみに、美女であることが推測されるブラックキャットもクレイヴンの標的として登場するが、魅惑のボディラインこそ強調するもののマスクの下の素顔が明かされることは無い。加えて、ブラックキャットに同性愛者という属性が付与され、ストーリー体験に関係の無い改変が行われている点も残念である。(多数ある原作設定の中でも比較的新しい物には、既にそのような設定が生まれているかもしれないが)
次回作ではエンディングにて名前だけが出てきたシンディが、『Marvel’s Spider-Man』シリーズにおける第3のスパイダーマン“シルク”として活躍する可能性が濃厚だ。こちらも原作で美女な設定のため、次回作で大きな改悪を受けた場合は発売前から炎上することだろう。次回作ではどのような方向に向かうか見守りたい。
評価ポイントのまとめ
前作越えを果たすことは出来なかったが、それでもMarvel’s Spider-Man 2は良作だ。あくまで驚きという部分で劣るだけであり、ストーリーに関しては間違いなく極上。前作,前々作とストーリーがしっかりと繋がっているので、過去作品を未プレイであれば、必ずそちらもプレイしておいた方が良いだろう。
長所
- ゲームオリジナルの素晴らしいストーリー
- 飽きさせないようとする努力が見られる
- フォトモード沼は健在
短所
- アクションが飽きて来る
- 広くなったとはいえ舞台の半分は同じ
- 過度なポリコレ教育
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