クリア時間 | 約5時間 |
プレイ状況 | クリア |
プレイ時間 | 約6時間 |
発売日 | 2003年12月2日 |
対応機種 | GBA |
プレイ機種 | レトロフリーク |
開発元 | トレジャー |
発売元 | セガ |
ジャンル | アクション ジャンルの考え方 |
ネタバレ | あり |
トレジャーがリリースするゲームに外れ無し。
とは、レトロゲーマーが語り合うと良く口にする言葉だ。
今回レビューする「鉄腕アトム アトムハートの秘密 」は、2003年12月18日にセガから発売された、トレジャー開発のアクションゲームだ。安心と信頼のトレジャーが開発なので当然ながら面白い。
まず初めにこのゲームのパッケージを見た際に受けた印象は“子供向け”である。鉄腕アトムが題材ということで、所詮はキャラクターゲーム、内容も勧善懲悪のシンプルなものだろうと大きな期待は持っていなかった。それでも、トレジャーが開発したものなので、アクション面の楽しさだけ回収できれば良いと考えて購入した。
結果、アクションの出来は当然良かったのだが、何より驚いたのがそのストーリーの面白さだ。このパッケージから誰が濃厚な展開を想像できるのか。とても良く考えられたストーリーで、開発陣の手塚作品に対する深い愛を感じることが出来る名作だった。
当レビューではアクション要素から紹介するが、2項からはストーリーに関するネタバレを含むので注意してもらいたい。
操作のバリエーションは少ないが楽しいアクション
恐らく、このゲームの本来のターゲットは低年齢の子供だ。後述するが、開発陣がガチの手塚ファンだったため、ターゲットが途中で完全に狂ってしまったようである。ストーリーこそ手塚ファン向けに仕上がっているが、アクションのシンプルさから、初期のターゲット層を伺い知ることができる。
求められるアクションは、Aでジャンプ、ジャンプ中に方向キーで無敵ダッシュのジェット。Bでパンチ、B連打で自動4コンボ、上Bでビーム、下Bでコンボの4段目の蹴り単発。必殺技としてLで画面全体攻撃、Rで巨大ビーム。
これだけである。大量のザコ敵が次々と出てきて、簡単操作で吹っ飛ばす爽快感があるゲームだが、その裏返しとして大人が遊ぶにはシンプル過ぎるという欠点もある。
しかし、幸いにもボス戦の数が豊富な事に加えて、ボス戦には上戦と空中戦の2種類があるため、飽きることなく最後まで楽しむ事ができた。
難易度は“かんたん”と“むずかしい”が用意されており、“かんたん”は子供でも繰り返し遊べばクリアできるレベルで、“むずかしい”は完全にアクションゲーマー向けだ。多くのプレイヤーが求めるであろう、中間となる“ふつう”が無かった点は残念である。
本作はゲームタイトルに“アトムハートの秘密”とあるように、アトムと手塚キャラクターの出会いが、アトムの心(ハート)を成長させる。アトムの心が成長すると、前述のパンチやビームの攻撃性能や、最大ライフなど、好きな項目を成長させること可能となっている。
人間、悪魔、ロボット、善や悪も含めて、あらゆる出会いがアトムを成長させる。多くのキャラクターはストーリー進行で自動的に出会うことができるが、マップの様々な場所にキャラクターが隠れているので、それらを発見する楽しみもある。
キャラクターに出合う事で、後述する“増補キャラクター名鑑”が充実するのだが、このゲームの最大の目的は、実はラスボスを倒すことでは無く、キャラクター名鑑を読むことであると言っても過言では無いだろう。
なお、難易度“むずかしい”でクリアする場合には、性能の強化が難易度に直結するため隠しキャラは早めに拾って、自分のプレイスタイルからどれを優先して強化するか良く考える必要がある。
ストーリーは手塚キャラクターオールスターズのループ物
本作はプレイするまでは、子供向けだろうと高を括っていたが、その内容は滅亡する世界を救うためにアトムが火の鳥にタイムリープさせられるというまさかの展開だ。ストーリーの前半戦は特に分岐も無く、手塚作品で見かける顔のオンパレードとなっている。
しかし、ストーリーに従って一通りシナリオを進め、暴走するロボット軍団を倒すと、宇宙からデスマスクなる物体が飛来する。デスマスクによって全てのロボットは破壊され、バッドエンド風にスタッフロールが流れた所で、火の鳥がタイムリープを行って復活編が開始する。
復活編ではクリア済みのストーリーを章ごとに自由にプレイ出来るようになる。
時間を超えて、強敵と再戦しつつも会話の変化を楽しむという、まさにループ物の王道とも言える展開を手塚キャラクターで堪能できる。良く知った手塚キャラクターの総出演のループ物とは、何とも贅沢なストーリーである。確固たる地位を築いたキャラクター達によるオリジナルストーリーは続きが気になり、一気にプレイしたくなること間違いなしだ。
個人的には、簡易無菌室を展開したブラックジャックが、“今更止められるか!”と手術を続行する頭上で、アトムとアトラスが雌雄を決するシーンが最高に良かった。ブラックジャックは子供の頃に本がボロボロになるまで読んだので思い入れが強い。
途中でVガンダムのアインラッドみたいなキャラクターも出てくる。このように「お前は一体誰やねん。」とツッコミたくなるぐらいマイナーなキャラクターも出演する。
筆者は手塚作品のメジャーなものしか知らないので、見た事が無かったキャラクターも多かった。なお、知らないキャラクターも、“増補キャラクター名鑑”でしっかりと詳細な知識を手に入れることができる。
製作陣が度の過ぎた手塚治虫ファンであることが分かるキャラクター名鑑
手塚治虫と言えば、キャラクターを俳優に見立てて複数の作品で使い回す“スターシステム”が有名である。
このゲームは正に手塚治虫オールスターズとでも呼ぶべき内容であり、スターシステムをフル活用しているため、手塚治虫作品に詳しくない人でも、何となく見た事のある顔が多数登場するはずである。
ゲームを進めてキャラクターと出会う事で、“増補キャラクター名鑑”と言うキャラクター図鑑が充実していくのだが、その内容が完全にガチだ。
キャラクターの説明はスターシステム前提の内容になっており、「鉄腕アトム アトムハートの秘密 」におけるキャラクターの説明ではなく、手塚治虫作品における配役の歴史が込みで説明されている。
GBAの表示範囲の都合上、キャプチャだと2行しか表示されていないが、複数行に渡り説明が記載されており、連載誌の掲載号まで徹底して網羅されている。単行本には収録されていない話が複数存在するとか、Wikipediaの細かすぎる雑学レベルの情報まで記載されており、開発陣の本気を感じることができる。それは行き過ぎた愛と言っても過言では無いレベルだ。
なお、難易度“むずかしい”でクリアすると、“増補キャラクター名鑑”が“究極キャラクター名鑑”に進化。よって、プレイヤーの最終的なプレイ目標は、“究極キャラクター名鑑を閲覧する事”となる。
軽い気持ちでプレイした「鉄腕アトム アトムハートの秘密 」だが、期待を良い意味で大きく裏切ってくれた。また、ゲームはパッケージだけでは判断できないという事を改めて教えてくれた名作でもある。トレジャー作品が好きな人や、手塚治虫ファンはプレイして損は無いだろう。
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