【APE OUT】レビュー: ゴリラがジャズにノってバイオレンスに大脱出する、いわば前衛的な芸術作品のようなゲーム – エイプアウト

点数評価
クリア時間約3時間
プレイ状況ノーマルモードクリア
プレイ時間約3時間
発売日2019年2月28日
対応機種Switch/Xbox/Steam
プレイ機種Switch
開発元Gabe Cuzzillo
発売元Devolver Digital
ジャンルSmash-em-upゲーム
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総評/評判/感想

APE OUT(エイプアウト)は、配信タイトルでは良く見かける1500円という低価格帯のゲーム。そしてプレイ時間はクリアまで約3時間と短いためコストパフォーマンスには長けていない。ゲームとしてもドラマチックな展開がストーリーが待っている訳でも無く、革新的な技術が用いられている訳でも無い。しかし、抽象的なグラフィックと、ゴリラがジャズにノって、CERO“D”相当のバイオレンスを伴って人間を楽器にしながら檻から脱出するという特異なゲーム性から、プレイ後には前衛的な芸術作品を鑑賞したような印象を受け、最終的には文化的豊かさを向上させてくれたような満足感があった。そのため★5ではあるが、敢えて点数は付けないという評価にしている。

総合評価
 (5)
革新性
 (5)
ユーザビリティ
 (4)
ビジュアル
 (4)
サウンド
 (5)
プレイ継続性
 (5)
コストパフォーマンス
 (2.5)

APE OUT (エイプアウト)のゲーム説明を公式サイトから引用すると以下の通りだ。

原初の記憶を呼び起こす脱出劇をカラフルに描くSmash-em-upゲームだ。野性を感じるリズミカルなバイオレンスと、激しいジャズミュージック。何者にも止められない勢いを生み出し、すべてを破壊するために捕獲者を武器や盾として使え。

ゴリラが主人公のアクションゲームのはずだが、APE OUT の説明には“リズミカル”や“ジャズミュージック”などといった音楽に関する単語並ぶ。これだけであれば何をするゲームなのかさっぱり想像が付かないだろう。そして、意味が分からないのでプレイしないという判断をしてしまうと、ゲーマーとしての大きな経験値を逃すことになる。APE OUTは芸術点で勝負するタイプの神ゲーなので、方向性を理解したうえで是非プレイして欲しい。

人間を盾または遠距離武器にして戦うアクション

APE OUTは、トップビュー型のアクションゲームだ。主人公はゴリラなので理解が難しい操作は要求されておらず、“移動”、“突き飛ばし”、“掴み”の3アクションのみを行う。ゲームの目的はタイトル通りであり、ゴリラ(APE)が研究所や動物園から脱走(OUT)することを目指す。

スクリーンショットだけを見ると、上空からの視点と抽象的なグラフィックが相まって、一見どのようなゲームなのか想像が付かないかもしれないが、実際にプレイすれば特に迷うことは無いだろう。なんせ、人間から逃げてゴールに辿りつけば良いだけの単純で分かり易いゲームだ。

APE OUT スタート地点
スタートはいつも檻の中。

ゴリラの脱走は檻の中からスタートし、武装した人間が追いかけてくるので、攻撃をかわしながら出口を探して進んでいく。行く手を遮られた場合は突き飛ばして攻撃し、銃で撃たれそうな場面では人間を掴んで盾にする。ゴリラに掴まれた人間はパニックに陥り手持ちの武器を正面に発射するので、人間を遠距離武器として利用することも可能だ。

ゴリラのパワーで突き飛ばされた人間は一撃で血飛沫と共に爆散する。幸いにも抽象的なグラフィックなので、ペンキを撒いたように見えるだけで特に気持ち悪くなることは無いが、想像するとなかなかに凄惨な場面である。

APE OUT 戦闘シーン
爆散した血だまりと、ショットガンナーを捕まえた頼もしいゴリラの図。

人間は次から次へと沸いて迫って来るが、ゴリラを発見してから発砲するまでには数秒の待機時間がある。そのため、ゴリラと人間に距離があったとしても、意外と詰めて攻撃することが可能だ。どうしても間に合いそうになければどこかに隠れ、隠れることが出来なければ、捕まえた人間を盾に弾を防いでから距離を詰めて反撃あるのみだ。

ステージが進むと人間の装備も次第に強力になってくる。最初はせいぜい単発のライフルぐらいだが、ステージが進めばショットガンやアサルトライフルを持ち出してきたり、更には火炎放射器で追い詰めてくる。最終的には着弾後に爆発するロケットランチャーまで撃って来る。

APE OUT 火炎放射の強敵
掴み時にダメージを喰らいやすい火炎放射器が厄介。

画面上にゴリラの耐久値を示すゲージは表示されていない。ゲージが表示されていないが耐久値は設定されており、一騎当千のパワーを持っているゴリラも、流石に何発か射撃を受けると死んでしまう。ゲームオーバーになると、ステージ内の進行状況とプレイヤーが通った道筋が表示される。もっとも、ステージ内のオブジェクトの配置はある程度ランダムに変化するので次のプレイの参考にはならないが、自分が逃げ惑ってウロウロした様を振り返るのも面白い。

APE OUT ゲームオーバー
参考になるようでならない軌跡。

人間は打楽器として演奏する

APE OUTは前項の通り、ゴリラに相応しい原始的なアクションのみで構成されたゲームだが、そのBGMにはリズミカルなジャズミュージックが採用されている。

まず、ステージ選択の時点から音楽的な要素が取り入れられており、ステージはレコードのジャケットで表現されている。ステージにはA面とB面、つまりレコードの表面と裏面が設定されており、レコードに収録されている音楽のトラック名がプレイエリアの名称に対応している。

次のスクリーンショットのステージであれば、A面4曲とB面4曲なので、合計8エリア逃げ切ればステージクリアとなる。ステージをクリアすると、次のレコード(ステージ)が解放される仕組みだ。A面とB面の間には、レコードの表裏を返す演出として敢えてインターバルが設定されている。レコードを知らない人に取っては、何故ゲームが一時中断するのか不思議かもしれないが、重要な演出なのである。

APE OUT レコード風ステージセレクト
何となく、曲名から敵の射撃がキツイことが想像付く。
APE OUT ディスク選択画面
レコード(=ステージ)は全部5枚用意されている。

APE OUTのなにより特徴は人間を打楽器にできることである。楽器にすると言っても特別な操作は必要なく、人間を壁に叩きつければ、ゴアに爆散するエフェクトと共に、シンバルを叩き鳴らしたようなサウンドが響き渡る。プレイヤーはゴリラを操作することで自動でセッションに参加し、BMGのドラム、人間の発砲音、人間が潰れるシンバル音が入り混じり、最高にクールなサウンドが完成するという、他のゲームでは味わうことのできない体験を得ることができる。

敵が増えれば必然的に叩きつける機会も増える。難易度が上がれば上がるほどに敵を攻撃する回数が増え、激戦に相応しくサウンドも激しさも増していくシステムだ。

なお、ステージの状態によってもBGMは変化する。時折ステージ内の電源が落ちることがあるが、その際にはBGMが控え目になり緊迫感を演出する。人間のサーチライト、傷ついたゴリラが残す血痕、僅かな障害物の陰影のみで表現されるステージ演出も秀逸だ。

APE OUT 暗いステージ
照らされない様に忍び寄って突き飛ばすのだ。

ハードモードは鬼畜難易度

クリアまでは約3時間と比較的短いゲームだが、それはノーマルモードの場合の話。

APE OUTにはハードモードも用意されており、そちらは最初のステージから異常な難易度になっている。序盤から重武装の人間が多数出現し、脱走したゴリラを本気で始末しにくる。筆者はノーマルモードでは、最初のステージの全8エリアをノーミスで踏破できたが、ハードモードでは2エリア目で倒された。ノーマルとハードの間にもう一つレベルが欲しくなるような、難易度の急上昇である。

ハードモードは完全にマゾゲーマー向けな鬼畜難易度なので、チャレンジ精神旺盛なプレイヤーには一転してハイコストパフォーマンスなゲームに早変わりするだろう。

タイトルにあるように、APE OUTはバイオレンスで前衛的な芸術作品だと理解してプレイすれば、非常に満足度の高いゲームである。今までに経験したことの無い、異質なゲームを探しているコアゲーマーや、超高難易度なゲームを探しているチャレンジャーにオススメしたい。

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