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総評/評判/感想
Ghostwire:Tokyo (ゴーストワイヤー トウキョウ)は惜しい作品である。もっとジックリと開発期間を設けて、メインストーリーを拡張すれば良作に成り得たかもしれない。幾ら街の作り込みが良くて、サイドミッションや収集アイテムが充実していたとしてもメインストーリーの満足度が低ければ、それらの努力は水の泡である。間違ってもDLCで補完はしないで欲しい。それをやってしまうと、欠けたピースのパズルに例えられる不完全版商法となり、評価を1段階下げることになってしまう。
点数評価 | 70点 |
プレイ状況 | ノーマルでクリア |
プレイ時間 | 約10時間 |
発売日 | 2022年3月25日 |
対応機種 | PS5 |
プレイ機種 | PS5 |
開発元 | Tango Gameworks |
発売元 | ベセスダ・ソフトワークス |
ジャンル | アクションアドベンチャー (ジャンルの考え方はコチラ) |
Ghostwire:Tokyo (ゴーストワイヤー トウキョウ)は、『サイコブレイク』シリーズを制作したTango Gameworks発のアクションアドベンチャーゲーム。謎の般若面の男が発生された霧により人々が完全に消え去り、代わりに魑魅魍魎が跋扈する現在の東京渋谷を舞台に、主人公“伊月暁人”とその肉体に乗り移った“KK”の戦いが描かれる。
メインストーリーが圧倒的にボリューム不足
Ghostwire:Tokyoの最大の特徴は、高密度で雑多な都市型の小規模オープンワールドだ。筆者は渋谷に何一つ思い入れは無いが、煌びやかな高層建築や猥雑な路地の出来栄えには惚れ惚れした。また、オカルト話や妖怪伝承がサブクエストとしてふんだんに散りばめられているので、寄り道を通じて作り込まれた街を堪能できる。探索の途中に手に入る収集物の解説文は読み応えがあるし、怪異と出会えば銃火器の代わりに印を切ったり手から属性弾を飛ばす陰陽師FPSとでも言うような戦闘が始まり、そのダサ格好良さはなんとも新鮮だ。
このようにGhostwire:Tokyoは、フィールド,世界観の設定,戦闘表現などは良い。しかし、何とも言ってもそれらを活かすためのメインストーリーが余りにも短く底が浅い。殆どの人間が霧で消滅したため登場人物は限定的にもかかわらず、それらの掘り下げが余り行われておらず物足りなさも感じる。Ghostwire:Tokyoは王道少年漫画のようなストーリーなのだが、長期連載作品では無く“読み切り”作品的な展開だ。限定的なページ数で、あらゆる設定を置き去りに一気に駆け抜けたようなプレイフィールだった。
起承転結の“承転”が無さ過ぎる
順を追って説明すると、まず、Ghostwire:Tokyoは何と言っても黒い涙を流すような般若面の不気味なビジュアルが目を引く。そして、ゲームオリジナルの首なし幽霊を筆頭に、昭和時代の都市伝説の定番である口裂け女や、河童や天狗のような妖怪まで、大分類で言う所の“オカルト”に属するものが多数登場する作品だ。
タイトルそのものに“ゴースト”とついており、Ghostwire:Tokyoのジャンルは“ホラーゲーム”かと思うかもしれないが、実際にプレイするとその印象は大きく変わるだ。
ゲームは主人公“伊月暁人”が渋谷で事故を起こして瀕死の状態に陥っている場面から始まる。そんな“暁人”に対して肉体を失って彷徨っている“KK”が乗り移ったことで、“暁人”は一命をとりとめ、一つの体に二つの魂という奇妙な共存関係が産まれる。体の主導権を巡って時には対立しつつも、異常事態に陥った東京を、ひいては世界を危機から救うという共通目標に向かい、互いに理解を深めていくという展開は正に王道の少年漫画そのものだ。
ゲームの目的は般若面の男を倒すこと。ストーリーは極めてシンプルで意外な展開というものは一切用意されていない。体をシェアしている“暁人”と“KK”が反目と理解を繰り返すような展開を期待したが、二人は比較的すんなりと打ち解けて、憎まれ口は叩くものの壊滅的に仲違いすることは無い。また中間的な目標は、幾つかの“暁人”と“KK”の過去を知ることと、霧を突破するために“KK”の仲間が作ったバイクを手に入れる程度しかない。中ボス的存在も数えるほどしかおらず、般若面の男に迫るために伝説の妖怪と戦ったり、メジャーなオカルト現象を利用するような意外な展開も無い。起承転結でいうところの、物語の発展である“承”と、急展開や視点が変わるような“転”に相当する展開が余りにも少なく、紙面の制限のお陰で勢いに任せて展開する“読み切り”少年漫画のような印象を受けた。
筆者の場合はクリアまで9時間50分だったが、メインストーリーだけを追えば、5時間程でクリア出来るのではないだろうか。ちなみに、アイテムや妖怪などの総合的な回収率は4割ぐらいでこの時間だ。オープンワールドゲームは探索効率が命なので、意図的に多くの回収物を後回しにしていたところ「この先は戻れない」と言われ、その章の間の話かと思いきや、まさかのエンディング突入で不本意ながら終わってしまったという感じだ。
また、“読み切り”と称した由縁はもう一つある。それは膨大な設定の数々だ。“読み切り”少年漫画は往々にして、尺に反して作者が無駄に意気込んで本筋に関係ない設定を詰め込むものだが、Ghostwire:Tokyoにも同様の傾向が確認できる。例えばその一つはデータベースだ。データベースでは登場人物や消費アイテムを確認することが出来るのだが、多くの項目に解説文が詰め込まれている。メインストーリーで制約を受けた分だけ、これでもかと設定を詰め込んだのだろうか。妖怪の解説ならいざ知らず、和菓子1つでも長々と解説が載っている。
また、フィールド上にはストーリー進行には関係の無い収集物が多数用意されている。下の画像はマップのスクショだが、黄色い円が収集物の存在を示している。メインストーリーを進めるよりもこれらを集める方が時間を要するぐらいだ。これらの収集物にもしっかりと解説文が用意されている。
メインストーリー以外に力を入れることは大いに結構だが、やはりそれが意味を為すのはメインストーリーが十分なクオリティを持っている場合だけだろう。メインストーリーが何故こんなに短くなってしまったのか不明だが、それを補うために大量の収集アイテムと長文の解説で必至誤魔化しているような印象を受けてイメージが悪い。
忘れた頃にゾッとさせられるが、もっとホラーに寄せるべき
さて、少年漫画のようで意外と怖くないGhostwire:Tokyoだが、忘れた頃にホラーな演出が登場して驚かされる。例えば、カサカサと動き回り行く手を阻む、呪詛を感じるようなチラシには嫌悪感を覚えたし、暗がりにたたずむ巨大なマスクをした招き猫には、何とも不気味で不安な気持ちにさせられた。
想像よりも怖くないゲームなんだけど、時々不意打ちで驚かされる。 #PS5Share, #GhostwireTokyo pic.twitter.com/hOouwecCQy
— Sara@ゲームの話が7割ぐらい (@mig60_net) March 26, 2022
Ghostwire:Tokyoの方向性としては、次世代機のマシンスペックを活かした恐怖路線で攻めた方が良かったのではないだろうか。忘れた頃に脅かされる程度ではホラーゲームとしては物足りないし、前述の通り読み切り漫画のような展開も良くない。ストーリーを補完するために、前日譚を描くビジュアルノベルが公開されているが、それであればKKを操作キャラに過去編をプレイさせてくれた方がよっぽど嬉しい。
このように、Ghostwire:Tokyoはホラーゲームとしては中途半端だし、王道少年漫画風ストーリーとしても残念な出来栄えで、クリアした際の満足度は低めである。
単調で飽きが早く戦略性に乏しい戦闘
Ghostwire:Tokyoの戦闘は自身の手元が見えているタイプのFPSだ。ただし、銃火器の代わりに風・水・火の三属性のショットを使い分け、ダメージを負った敵からコアが露出すれば、ワイヤーアクションで引き抜いてトドメを刺す。その様子は陰陽師FPSとでも言ったところだろうか。
動きが早い敵には連射の効く風属性、傘でガードしてくる敵にはガードを切り裂く水属性、敵が密集していたり的が大きければ高威力で爆発する炎属性と、属性の使い分けが想定されているようだが、そもそも敵の種類自体が少ないため、試行錯誤は一瞬で終わって飽きは早い。また、何故この3属性なのか、何故幽霊にコアがあり露出するのか、何故コアをワイヤーで引き抜く戦い方が編み出されたのかなどを、ストーリーに絡めて掘り下げれそうなのだが、そういう設定が語られることも無い。
そもそも、範囲内の敵を麻痺させる札が強く、麻痺させてバックスタブ(即浄)を決めた方が圧倒的に効率が良いので、属性弾など使っていられない。麻痺札自体はコンビニでいつでも補充出来るうえに、対価として支払う冥貨(妖怪相手のお金)は幾らでも手に入り余りがちなので、麻痺札を補充出来なくなることも無い。
また、敵を倒すことで経験値を得てレベルアップすることが出来るが、敵を倒すよりも至る所に漂っている魂を依代に吸収して、電話ボックスから転送した方がよっぽど経験値の効率は良い。戦闘に飽きたら最後、殆どのザコ敵は無視することになるだろう。
陰陽師風FPSというアイデアは面白かったが、戦闘は単調でそれを取り巻く設定の詰めも甘いため、メインストーリーと同様に底の浅さが目立つ結果となってしまった。
なお、隠れている妖怪を見つけて勾玉を集めることでスキルツリーを解放したり、地蔵に拝むことで属性弾の所持数を増やすことが出来る。しかし、前述の通り大半の敵は麻痺札でどうにかなるので、これらを集める恩恵は少ない。麻痺札が効かない場合でも、回復アイテムは無尽蔵に手に入るので、ノーマル難易度であれば戦闘で負けることは一度も無かった。
渋谷の街の作り込みは評価大
Ghostwire:Tokyoの風景は、在り来たりな日本の商業施設、オフィスビル、繁華街などであり、普段から都市部にアクセスする機会が多い人にとっては見飽きたものだろう。また都市部に縁が無かったとしてもあらゆる分野で目にしそうな、何の変哲もない日本の都市風景だ。一見、価値の無さそうな風景だが、屋上で鳥居が光を放っているビル、混雑しているはずが無人になった通り、普段はマジマジと見ることが困難な施設などを、改めて見ると以外と楽しい。
また、街中の至る所には、消えてしまった人々の服や所持品が落ちているので、それらから消失事件が発生する直前の状況を推測できる。
人が消え去ったとしても、残された情報から状況を手に取るように想像できるのは面白い体験だ。一つ例に挙げると、下のスクショは恐らく女子高生がたむろしていたであろう場所だ。コンビニで買ったお菓子を片手にだべっていたのだろうか。妙にリアリティーがある汚さだ。
以上のように、Ghostwire:Tokyoはディティールに凝りまくった渋谷の街や、“メインストーリー以外”の散りばめられた情報は評価に値するのだが、メインストーリーの物足りなさは致命的である。“サイドミッションや収集アイテムが充実しているから良作だ”という擁護が出て来そうだが、そういう人たちには“それらを目的にゲームを買いましたか?”と問いたい。当然ながら、当初はメインストーリーを楽しみたくて買っていることだろう。 素晴らしい街の作り込みにしても、それはメインを引き立てるためのものだ。街単体で評価するのであれば技術デモで十分だ。戦闘もすぐ飽きるので、Ghostwire:Tokyoは定価で買えば間違いなく割高である。オープンワールド化された現代日本の都市部が気になる程度であれば、値段が下がってから買えば良いだろう。
>サイドミッションや収集アイテムが充実しているから良作だ”という擁護が出て来そうだが、そういう人たちには“それらを目的にゲームを買いましたか?”と問いたい。
私にとって、ゲームとは要は「どれだけ楽しい思いをさせてくれたか」が重要なので、それがメインだろうがサイドだろうがどちらでも良い、と私の場合は思いますね(メインも良いに越したことは無いんですけど)。
何を求めるかは人それぞれなので、その考えもありだと思います!
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