点数評価 | 70点 |
クリア時間 | 約8時間 |
プレイ時間 | 約8時間 |
プレイ状況 | 通常難易度でクリア |
発売日 | 2022年9月22日 |
対応機種 | Steam/Switch/PS4/Xbox |
プレイ機種 | Switch |
開発元 | Draw Distance |
発売元 | ハピネット |
ジャンル | クライムアクション ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 無し |
シリアルクリーナーズは、事件現場から死体と証拠品を回収し、血痕を清掃して事件の隠蔽を図る作品だ。プレイヤーはあくまでクリーナーなので自ら手を下すことはできず、回収と隠蔽に特化したステルスゲームとなっている。アイデアだけ見ると非常に独創的で面白そうなのだが、敵となる警察官の動きが全く持って作り込まれておらず、これはステルスゲームなのか?と疑問に持つかもしれない。ヴィジュアルと音楽は最高に良いので、細かいことに目を瞑って“こういうアクションゲームだ”と納得しながら遊ぶ分には良いだろう。
4人の掃除屋で事件を隠蔽するゲーム
シリアルクリーナーズは、“掃除屋”として働く4人のキャラクターを操作し殺人現場の証拠を消し去ることを目的とした、斜め視点(クォータービュー)のアクションゲームだ。1999年の大晦日のニューヨークを舞台に、掃除屋の4人が過去の仕事の思い出を語り合うことでストーリーが進行する、オムニバス形式の作品となっている。
シリアルクリーナーズの主人公達の仕事は、凄惨な事件現場を綺麗に清掃して証拠を隠滅することだ。プレイフィールドとなる建物の中には至る所に血痕が飛び散り、息絶えた被害者が横たわっている。また、事件の証拠品もあちこちに点在している。
プレイヤーはステージ毎に異なるクリーナーを操作し、血痕をふき取り、死体を運び出して隠蔽し、証拠品を全て回収することが出来ればステージクリアとなる。
主人公たちは殺し屋ではなく、あくまでも掃除屋だ。そのため事件現場を巡回する警察官を積極的に攻撃することはできない。迫りくる警察官に対しては、大きな証拠品を投げつけたりタイミング良くドアを開閉してぶつけるなどして、一時的にスタンさせることは出来るが完全に排除する手段は持ち合わせていない。
警察官を完全に排除することはできないため、見つからないように遮蔽物に隠れて視線の掻い潜り、音を立てないよう慎重に動き、照明や音楽などで注意を逸らした隙に死体や証拠品を建物の外に運びだすことになる。
例えば、次のスクリーンショットは3人の警察官が音に誘われて画面上方に移動を開始している様子だ。警察官が気を取られている隙に、プレイヤーはパッキングした死体を引きずって外に持ち出そうとしている。白い点線で示されている円が漏れ出る音を示しており、警察官の視線が通っていなかったとしても、音を示す半径内に侵入されると遮蔽物越しに不信感を抱いた警察官が近寄ってくるので注意が必要だ。凄惨な事件現場ということもあり配置されて居る警察官は多く、迂闊な動きをすれば直ぐに見つかってしまうため大変スリリングである。
プレイヤーを見つけた警察官は一目散に駆け寄ってきて攻撃を開始する。攻撃が命中すると即ゲームオーバーとなり、セーブポイントからリトライとなる。ステージが進むにつれて警察官の装備は格上げされていき、警棒から拳銃を経てライフルへと進化するが、プレイヤーには成長要素はなく体力の設定も無いので、段々と難易度が上がって行く。そのため、如何に警察官を長時間に渡って死体から遠ざけることができるかが、クリアのカギとなっている。
任意のタイミングでクイックセーブ可能で、リスタートも一瞬なのでリトライ性は高い。
警察官に見つからないことが肝心なシリアルクリーナーズには、前述の通り4人の掃除屋が登場する。ボブ、サイコ、ラティ、ヴァイパーという4人の掃除屋は、それぞれ能力で差別化が図られている。ボブは何でも無難にこなすという位置付けで突出した能力は無いのだが、残りの3人は操作感が大きく変わってくる。
サイコは名前の通り情緒不安定のイカレ野郎であり、事件の被害者や邪魔な障害物をチェーンソーで切り刻むことができる。後始末は大変になるが、切断後のブツを警察官に投げつけたり、切断現場を警察官に見せつけて気絶させることができる。
ラティは本来アーティストであり、持参したスプレー缶で地面に絵を描いて警官の気を引くことができる。警察官を地面に釘付けにしている間に、視線を避けて行動可能だ。また、軽快な身のこなしで、フェンスやカウンターなどを飛び超えて逃げることも特徴だ。
ヴァイパーは小柄な体格なため死体を担いで移動することができない。運搬作業に大きなハンデを背負っているが、逆に小さな体格を活かして排気口に潜入することが出来る。また、ハッキングスキルによって遠隔で電子機器を操作可能となっている。
任意にクリーナーを交代しながら進めるステージも用意されており、難易度が上がってくるとしっかりとキャラクターの使い分けを要求される。このように、キャラクター毎の特性を使いこなして危機を回避するアクションシーンは、程良く頭を使える楽しい仕上がりになっている。こちらから積極的に攻撃できないという制約も、適度なストレスとして面白さに貢献している。
ステルスゲームだと思わない方が楽しめる
前項だけを見ると、シリアルクリーナーズは斬新なアイデアのステルスゲームに見えるだろうが、実際にはステルスゲームとしては大雑把であり出来が良いとは言えない。
その最たる理由は警察官の行動パターンだ。このゲームに出て来る警察官は、血痕が綺麗さっぱりなくなっても、被害者や遺留品が突然消え去ったとしても、頭に?を浮かべるだけで何かアクションを取る訳でも無く、定例の巡回コースに戻ってしまう。巡回中に不審者を見つけて発砲するだけが自分の仕事であり、それ以外には何が発生したとしても我関せずと言った態度だ。また、明らかに視線が通っているにも関わらず、こちらを認識するまでに一定の時間を要するシーンは非常に不自然だ。その他におかしな動きは山ほどあるのだが、とにかく敵となる警察官の動きが全く作り込まれておらず、ステルスゲームと言われても首を傾げてしまうような酷い挙動となっている。
前項に記載した通り、能力を駆使して危機を回避すること自体は楽しく、フィールドからオブジェクトを盗み出すというゲームデザインや、徐々に建物の階層と配置される敵が増えて難しくなるレベルデザイン自体は素晴らしい。しかし、“事件現場の掃除屋”という設定をステルスアクションゲームとして完全に落とし込めておらず、面白いのは“敵に見つかるまで”であり、“敵に見つかった後”は何一つ面白く無い。
これが警察官相手のステルスアクションではなく、ファンタジー世界で頭の悪いゴブリンの巣穴からアイテムを盗み出すゲームだとすれば秀逸なのだろうが、これはあくまで事件の掃除屋のゲームだ。警察官がこちらを見つけたり、事件現場の変化に異常を感じた際のアクションがしっかりと作り込まれていない点は非常に勿体なく感じた。
敵の挙動をもっと作り込んで、こちらの撹乱手段も増やせば、変わり種なメタルギアみたいになって、もっと面白くなりそうな気がする。
アートワークや音楽の出来は非常に良い
シリアルクリーナーズのヴィジュアルや音楽の出来栄えは大変良く、登場人物の救済も物語の山場も無く、特に大きなオチも付けずに淡々と話が進む様子からは、会話は最低限ながらも雰囲気で勝負した渋いマフィア映画のような印象を受けた。パッケージ版には購入特典としてサウンドトラックが付属しているため、プレイを検討しているのであればそちらも入手した方が良いだろう。
また、抽象的な絵柄とセンス溢れる色使いで表現した1990年代のニューヨークのヴィジュアルや、ロード中に差し込まれるモダンなスプレーアートのようなグラフィティなど、そのヴィジュアルアートに惹かれる人も多いだろう。
評価ポイントのまとめ
事件の掃除屋というアイデアをステルスゲームに落とし込めていないが、そこを割り切ってアクションゲームとして楽しめるならありだろう。ヴィジュアルと音楽が気になり、細かいことを気にしないならプレイしても良い。
長所
- 事件の掃除屋というアイデア
- 雰囲気の良い音楽
- モダンなグラフィティ
短所
- ステルスゲームにしては間抜け過ぎる敵の行動
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