点数評価 | 90点 |
クリア時間 | 約25時間 |
プレイ状況 | 難易度ノーマルでクリア |
プレイ時間 | 約25時間 |
発売日 | 2020年11月20日 |
対応機種 | Switch |
プレイ機種 | Switch |
開発元 | コーエーテクモゲームス (オメガフォース) |
発売元 | 任天堂 |
ジャンル | アクション ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 有り |
当レビューには、『ゼルダ無双 厄災の黙示録』のネタバレを含む。プレイ前にネタバレを読んだとしても、面白さが大きく損なわれることは無いと思われるが、意外なプレイアブルキャラクターや、想像していなかった展開に出合った際の感動は薄れる可能性があるので注意してもらいたい。
『ゼルダ無双 厄災の黙示録』は、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を補完する役割を持った作品だ。ストーリー面では100年前の大厄災を補完しつつ、犠牲を払いながらも厄災を乗り越えた本編とは異なった、救いのあるIfの展開を楽しませてくれる。そのため、ゼルダの伝説BotWが気に入っているのであれば、本作は絶対にプレイしておきたい。アクション面では、無双ということで結局は草刈りゲームなのだが、ジャスト回避からのラッシュとシーカーアイテムによるカウンターシステムが面白く、クリアまでなら十分に楽しめる。
【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
ゼルダの伝説BotWの欠点である、戦闘とストーリーを補完
『ゼルダ無双 厄災の黙示録』は、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(ゼルダの伝説BotW)』で語られた100年前の大厄災の詳細を語る作品だ。オープンエアーを自称し、広大なハイラルの大地を旅する体験を提供した本編とは異なり、無双シリーズ特有の爽快感のあるアクションを楽しめるステージ制のアクションゲームとなっている。
ゼルダの伝説BotWは神ゲーだったが、評価としては歪な形をしていた。劣悪なUI,面白みの無い戦闘,多くが語られない消化不良なストーリーなどの問題点を、オープンワールド(オープンエアー)の圧倒的な面白さで捻じ伏せるという、まさに“力技”で神ゲーという栄冠を手にしており、完璧な神ゲーとは言い難い。
ゼルダ無双 厄災の黙示録は、神ゲーであるゼルダの伝説BotWが持つ幾つかの欠点の内、戦闘とストーリーを補完した作品だ。ゼルダの伝説BotWの世界観を継承しつつ、無双ベースのスピーディで大人数を薙ぎ倒す爽快な戦闘と、語られなかったストーリーの詳細を存分に楽しむことができるため、本編と無双の2本を遊んでついに完成形に至るといった所だろう。
正史を補完したうえでifを楽しめる
ゼルダの伝説BotWでは、“厄災ガノンの復活に備えはしたもののリンクや各種族の英傑たちが敗北を喫し、リンクは回生の祠で100年の時を過ごすことになり、さらにゼルダ姫はその間は一人でガノンの復活を抑え続けた”という歴史が語られた。
以下の引用は、マイニンテンドーストアから厄災の黙示録の製品説明を抜粋したものだ。
100年前何が起きていたのか、どんな戦いがあったのか。「無双」シリーズならではのアクションとともに、ドラマティックなストーリーが描かれる。
マイニンテンドーストアより
このような記載があるため、厄災の黙示録のプレイを開始した当初は、リンクと英傑達の出会いから大厄災における敗北に至る経緯が詳細に描かれるものだと思っていた。実際に、ゲーム序盤はリンクが姫付きの騎士となり、各地の英傑に神獣の繰り手となることを依頼しに行く流れとなる。それと同時に、自身の能力が目覚めないことに関するゼルダ姫の苦悩が描かれる。
メインストーリーでは、明らかに後付け設定のような未来から来た小型ガーディアンが登場したり、一部のイベントがゼルダの伝説BotWにおける説明とは異なるタイミングで発生したりと、小さな違和感が散りばめられた展開が続く。
しかし、知りたかった物語の詳細が、フルボイスのカットシーン付きで詳細に語られるためプレイしていて満足度は高く、多少の違和感については無双化するうえでの都合だと考えていた。
前述の厄災の黙示録における違和感は、狙って設定されたものである。何故なら、厄災の黙示録はゼルダの伝説BotWには繋がらない、Ifのストーリーだからだ。端的に言えば、ゼルダの伝説BotWで神獣の繰り手となった次世代の英傑達が未来から救援に駆け付けたことで、100年前の大厄災の時点で厄災ガノンを倒しきるという、完全にオリジナルのストーリーが描かれる。
一切の前情報を入れずに厄災の黙示録をプレイをしていると、リンクが支配された神獣に乗り込むとメインミッションが発生した時点で、“撤退戦の末にリンクは回生の祠に運び込まれるはずではないのか?”という疑問と共に、違和感がピークに達するだろう。流石に何かおかしいと感じながらもメインミッションをプレイすると、未来から次世代の英傑がやって来ると言う感動の展開が待っている。
つまり厄災の黙示録は、知りたかった敗北直前までの物語の詳細を補完しつつも、敗北を回避したオリジナルストーリーを堪能できるという一挙両得な作品なのである。
100年前の大厄災の詳細が語られること自体は事実なので、ストアの説明に偽りはない。オリジナルストーリーを敢えて伏せているだけで。
ゼルダの伝説BotWでは、カースガノンに敗北した英傑たちが、魂だけになって神獣の中でリンクを待ち続けるという何とも切ない設定だった。そして、事前情報を持っていないプレイヤーが、本作は敗北の結末へ向かっていく過去の出来事の補完だと思っていたところで話が一転して救いのあるストーリーが始まる。これは何とも熱い展開だ。
引用したストアの説明文は、真実でありながらもプレイヤーの想像をミスリードするための文言だ。プレイヤーはミスリードされながらプレイすることで、Ifのストーリー突入にて事前の期待を良い意味で大きく裏切られることになるのだ。この設定を語らなければレビューが成り立たないため、記事の冒頭にネタバレ注意を記載した訳である。
カウンターとジャスト回避が重要な無双
ゼルダ無双 厄災の黙示録では、並み居る敵に盾サーフィンで突っ込んでまとめて吹き飛ばしたり、敢えて囲まれてから必殺技で吹き飛ばしたりと、従来の無双シリーズで味わうことのできる爽快感がそのまま用意されている。
ゼルダの伝説BotWの戦闘には爽快感は無く、武器も頻繁に壊れるため戦闘にはのめり込めなかったプレイヤーは多いことだろう。本作では、そんなフラストレーションを吹き飛ばすかのような無双アクションを堪能できる。
しかし、無双アクションは良く言えば爽快感の塊なのだが、悪く言えばボタンを連打するだけの作業ゲームだ。ボタンを連打して戦場で棒立ちする敵を倒すというプレイフィールから“草刈りゲー”と揶揄されることから分かるように、無双シリーズのプレイフィールは決して万人に受け入れられている訳ではない。実際に筆者も、草刈りするだけのゲームは余り好きではない。
確かに、厄災の黙示録に登場するザコ敵との戦闘は草刈りそのものなのだが、名有りの武将に相当する中ボス以上は防御力が非常に高く設定されており、シーカーアイテムによるカウンターとジャスト回避のラッシュで弱点ゲージを割ってからスマッシュ攻撃に繋げなければ、ダメージが殆ど通らないように設定されている。そのため、ザコ敵相手には草刈りをしつつも、中ボス以上ではしっかりと考えて行動する必要がある。
厄災の黙示録では、ゼルダの伝説BotWでも使うことが出来た、バクダン,マグネキャッチ,ビタロック,アイスメーカーを引き続き利用することが出来る。基本的な性能に変わりは無いが、バクダンであれば4連投したり、マグネキャッチであれば周囲のザコ的な武器をまとめて取り上げるなど、無双向けにそれらの効果には派手目なアレンジが施されている。
また、未来から来たガーディアンの影響を受けて、シーカーストーンを持たない仲間達もこれらのアイテムを使うことができるようになっているのだが、キャラクターによって効果が大きく変わっている点が面白い。例えばリンクであれば4連投するバクダンだが、ダルケルであれば超大型のバクダンを2個投げ、ゼルダ姫であれば謎のバクダンロボを召喚するなど、ビジュアル的にも凝っている。
攻撃操作は弱攻撃と強攻撃派生でいつもの無双。シーカーストーンの技を誰でも使えるようにしたのは英断だ。
シーカーアイテムは敵の特定の攻撃に対してカウンター効果を持っており、的確に当てることにより敵はダウン状態になるため弱点ゲージを大きく削ることが出来る。なお、突進系であればアイスメーカー、回転攻撃であればビタロックなど、攻撃の種類によって対応するシーカーアイテムは決まっており、敵の大技の前に予告が表示されるので無駄打ちせずにチャンスを伺うことが重要となる。
次の動画はシーカーアイテムでライネルの攻撃にカウンターを決めて弱点ゲージを削り切る様子だ。この動画では、通常攻撃を当てても殆ど敵の体力を削れていないことが確認できる。これは決して武器が弱いとかレベルが低いという訳ではなく、前述の通り中ボスであるライネルの防御力が非常に高く設定されていることが原因だ。最後のスマッシュ攻撃では一気に体力が削れているので、中ボス以上を相手にする場合のダメージソースの大部分がスマッシュ攻撃となることが分かるだろう。
ゼルダの伝説BotWでも強敵を相手にする際にはお世話になったラッシュ攻撃が、厄災の黙示録にも用意されている。ラッシュ攻撃については仕様は変わっておらず、敵の攻撃をジャスト回避できた際にスローモーション演出が発生するので、それに合わせて攻撃ボタンを押すだけだ。シーカーアイテムと異なりラッシュにクールタイムは無いので、敵が大振りの攻撃のモーションに入れば、しっかりとジャスト回避を狙っていきたい。
ラッシュやカウンターでゲージを削ることが基本となるが、弱点ゲージが後少しで割れそうな状況であれば、カウンターを待たずともバクダンを当てたり、敵の攻撃後の隙に僅かばかり弱点ゲージが表示された際にビタロックで止めて削り切ったりと、臨機応変に対応することで効率良くダメージを重ねることが出来る。
このように、単純な草刈りゲームを繰り返す訳ではなく、ザコ敵と中ボス以上で異なるスタイルが要求されるため、メリハリの利いた戦闘を楽しむことができる。そのため、無双シリーズはいつも途中で飽きてしまっていた筆者だが、珍しくクリアまで飽きることは無かった。
意外過ぎる戦闘スタイルとプレイアブルキャラクター達
ゼルダの伝説BotW及び厄災の黙示録では、みんなの役に立つために古代遺物の研究に取り組むゼルダ姫と、それを良しとせず封印の巫女としての修業に専念することを要求するハイラル王が反目し合うシーンが度々描かれる。厄災の黙示録のIfストーリーでは最終的にハイラル王は助かり、ゼルダ姫に理解を示す展開が用意されているのだが、ゼルダ姫の戦闘スタイルを見ると流石にハイラル王に同情したくなる。
次の動画はゼルダ姫が巨大ヒノックスを相手に大立ち回りを演じるシーンだ。姫ともあろうものが鉄塊を振り回し、良く分からない乗り物を滅茶苦茶に操縦し、最終的には爆弾を投げつけるという奇天烈な戦い方を披露する。厄災の黙示録が幾らIfの世界とはいえ、まさかこのような戦闘スタイルが出て来るとは想像できなかった。
印象が強いスマブラにおけるゼルダ姫の戦い方のことは一旦忘れよう。
無双シリーズの醍醐味といえば豊富なプレイアブルキャラクターだ。新旧英傑揃い踏みとはいえ、リンクとゼルダに加えて8人の英傑を加えた10人だけでは物足りない。しかし、厄災の黙示録には意外なプレイアブルキャラクターとして参戦するため、余ほどのやり込みプレイをしない限りは十分な人数が用意されている。
まず、ゼルダの伝説BotWでは老婆として登場したインパが全盛期の姿で参戦する。あらゆる作品の過去編に在りがちな、老人の過去の姿を美男・美少女にて描く手法だ。
また厄災の黙示録では、Ifストーリーの定番中の定番である“敵勢力との和解ルート”が採用されている。従って、イーガ団のコーガ様がストーリー終盤からプレイアブルキャラクターとして参戦する。敵キャラクターが使えるようになる展開は、如何なるゲームにおいてもファンサービスの鉄板だ。
さらには、明らかに戦闘向きではない妖精のボックリンや、派手な風貌でゴージャスな雰囲気を振りまく大妖精4姉妹、謎の老人形態と王様形態を使い分けるハイラル王、試練の祠で散々お世話になった導師ミィズ・キョシアなど、意外なキャラクターもプレイアブル化されている。
このように、美少女化や敵勢力との和解などの定番を抑えつつも、使えそうなキャラクターは何でもプレイアブル化されているので、無双本家と比べれば少ないもののクリアだけであれば十分過ぎる充実具合だろう。
全盛期プルアは残念ながらDLCにて配信。任天堂はどこで金を取れるか良く理解している。
評価ポイントのまとめ
『ゼルダ無双 厄災の黙示録』は、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を補完しつつも、救いのあるIfストーリーを楽しめる作品だ。ラッシュとシーカーストーンで突破する硬めの中ボスのお陰で、無双アクションの割には飽きが来るのは遅い。全ステージを網羅しようと思うと流石に作業感が出て来るが、プレイアブルも予想以上に豊富なので、普通にプレイしている分には問題ないだろう。
長所
- 本編を補完できるストーリー
- 救いのあるIfストーリー
- 意外なキャラクターを操作できる
- ラッシュとシーカーストーンを用いたゲージ削り
短所
- サブクエストやクリア後も拾うとなると作業感が大きい
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