【ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―】工芸はポケモンにとっての新しいリージョンフォーム

ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―は、2023年3月21日から6月11日の会期にて、“ポケモンと工芸、正面切って出会わせたとしたらどんな 「 かがく反応 」 が起きるだろう”をテーマに、石川県金沢市の国立工芸館にて開催されている企画展である。

当企画展では、“すがた ~迫る!~”,“ものがたり ~浸る!~”,“くらし ~愛でる!~”という3つの展示構成にて、総勢20名が約70品が展示されている。

一般的な美術館では展示物の写真撮影が禁止されていることが多いが、当特別展では写真撮影が許可されている。工芸技術で再現されたポケモン達はどれも素晴らしく、夢中で写真を撮ったので当記事で紹介したい。

Sara
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全てを紹介することは叶わないので、特に気になったものだけをピックアップ。

なお、当サイトでアップしている写真はWEBサイト用に圧縮して軽量化をしている。従って、掲載している写真ではポケモン×工芸展の素晴らしさを完全に紹介することはできないので、もし興味を持ったのであれば可能な限りは現地に足を運んで現物を堪能してもらいたい。また、写真撮影が可能ということで、ついついスマホを向けることに夢中になりがちだが、実物を細部までしっかりと見ることに注力してもらいたい。

また、各作品の技法の詳細については、ミュージアムショップで販売されている公式図録に記載されているので、視覚で楽しむ以外にも詳細を知りたい人は手に取ってみると良いだろう。

“すがた ~迫る!~からのピックアップ

最初のコーナー、“すがた ~迫る!~”では、「工芸のわざがポケモンたちを思いがけない物質のなかから呼び起こした」として、金属、土、木などでポケモンを表現している。

元々ポケモンには全18種類のタイプが用意されているが、素材を強調したこのコーナーでは、独自の素材使いによって新たなタイプで再構成されたようなポケモンの姿を見ることが出来る。

特別展の会場で最初に出会うポケモンは、吉田泰一朗が製作したイーブイとその進化系、シャワーズ、サンダース、ブースターだ。これらの作品は色こそ違うがいずれにも銅が利用されている。銅、つまり金属素材が使われているということで、本家ポケモンのタイプに当てはめると「はがねタイプ」だろう。

イーブイは“ノーマル+はがね”、シャワーズは“みず+はがね”、サンダースは“でんき+はがね”、ブースターは“ほのお+はがね”と言った具合で、当記事のタイトルにも書いたように、工芸という領域が見せるリージョンフォームのような表現を楽しませてくれる。

Sara
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念のため書いておくと、銅Cuと鋼(=鉄)Feは全く別物。あくまでポケモンの“はがね”というひらがな表記のタイプの話。

また、今井定眞が粘土をベースに製作したポケモン達は、ダイナミックで野性的なアレンジが効いており強烈な存在感を放っている。一部の地方で、より強力に成長したポケモンというイメージだろうか。

口を開いた何とも言えない表情のコイキング、牙を向いて鋭い眼光を向けるフシギバナ、少し宇宙人のような顔をしたゼニガメ、細かな金彩によって更に触れ難い雰囲気が現れたアーボック、浮き球との一体感に現実味があるキングラーと、いずれも一目見ると忘れられない仕上がりだ。

“ものがたり ~浸る!~からのピックアップ

二つ目のコーナー“ものがたり ~浸る!~”は、ポケモンの世界観を工芸で表現した作品が展示されている。

このコーナーで個人的に一番面白かった作品は、坪島悠貴が製作した「可変金物 ココガラ/アーマーガア」だ。進化をテーマにしたこの作品は、文字通りに可変機構が搭載されており、ココガラが“変形して”アーマーガアに進化する。

次の写真で焦点を当てている、中央の首が取れたようなココガラは中間形態だ。ここから変形が進むとココガラの可愛い顔が腹部に収納されて、中から凛々しいアーマーガアの顔が登場する。このようにして、手のひらサイズの小さな作品の中で、見事に進化が表現されている。

Sara
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公式図録には詳細な変形過程が掲載されている。

他にも、ソード・シールドの旅立ちや殿堂を独特の画風でガラスに現わした作品や、モンスターボールを箱として再構築して電子的な表現を施した作品、アローラ地方のポケモンを沖縄の染め物に現わした作品などが展示されている。

“くらし ~愛でる!~からのピックアップ

最後のコーナー“くらし ~愛でる!~”では、生活の中で使う道具の中にポケモンを落とし込んだ作品が展示されている。

このコーナーで最も目を引いたのは、何と言っても植葉香澄が製作した「羊歯唐草文シェイミ」という、シェイミを模した花器だ。シェイミの愛らしいフォルムと唐草文の融合は只々美しく、その場に釘付けにされるような魅力を備え持っている。

また、シェイミ以外にも、ポケモンソード・シールド御三家であるヒバニー,メッソン,サルノリに加えてグラードンも製作されており、それぞれが自身のタイプを象徴するような文様が描かれている。ポケモンスカーレット・バイオレットでは、ポケモンがクリスタル化するテラスタルというシステムがあったが、これはまさにポケモンの身体に現れる文様化とでも呼びたくなる変化のような着想であり、完全に一つの新しい世界観が出来上がっている。

また、田口義明が製作した“乾漆蒔絵螺鈿蓋物「遊」”も目を奪われるような美しさを持った作品だ。無数のタッツーを連れて泳ぐようなシードラが印象的で、煌めく青色をバックに、黒色で金色で枠取りされた色彩のポケモン達からは神秘性を感じることだろう。作品と同時に製作道具も展示されており興味深かった。

次に、桝本佳子が製作した信楽壺や染付皿は、“器と装飾の主従関係を壊す”をテーマに制作されている。主従関係を壊すということで、器を引き立てるはずの装飾が主張しすぎているという作風だ。壺や皿と融合したようなポケモンのその見た目にはインパクトがあるので、ゲーム本編にも道具と融合したようなフォルムのポケモンが出てきても面白いかもしれない。

訪問時には出来る限りWEB予約を取ろう

『ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―』は、大盛況の展示である。特に休日は大混雑しており、事前に入場予約せずに当日分で入ろうとすると、数時間待ちとなる可能性が非常に高い。

実際に筆者は特に予約せずに昼過ぎに訪問したのだが、余りの待機列の長さに一旦は諦めた。そして、周囲の兼六園や美術館を見学してから再度訪問したところ、15:00過ぎの時点で当日分の入場は終了と案内が出ていた。そのため、翌日の朝8:30頃に出直して開園の9:30ぐらいまで並んで入場した。

せっかく遠方から訪問して入館できない場合はショックが大きいので、可能な限り事前予約してから訪問しよう。特に会期終了間際になると更なる混雑が予想される。6月2日~4日及び9日~11日は通常9:30~17:30までのところを、20:00まで開園時間を延ばすようなので、遅い時間であれば比較的空いているかもしれない。従って、しっかりと予定を立てて訪問したい。無計画に訪問するとポケモンマンホールこと“ポケふた”だけを見て帰ることになる可能性あるので注意が必要だ。

なお、金沢駅向かいの金沢フォーラス 5Fに入店しているポケモンセンターカナザワには、大きなミロカロスが鎮座しており迫力満点だ。工芸館を訪れたついでに、ポケモンセンターにも足を運ぶことをお勧めしたい。

Sara
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ブラッキーも隠れて居るので、上手く両ポケモンを写真に収めることができるポイントを探してみると良いだろう。

【追記】2024年から国内で巡回展示が決定

公式サイトによると、2024年3月30日の滋賀を皮切りに、2025年11月30日まで掛けて全国6か所で巡回展示が行われるようである。工芸の知識が無くても、ポケモンをたくさん知らなくても、感動できること間違いなしの展示なので可能な限り足を運んでみて欲しい。

・滋賀会場
 会期 2024年3月30日(土) ~ 6月9日(日)
 会場 佐川美術館(滋賀県守山市)

・静岡会場
 会期 2024年7月6日(土) ~ 9月9日(月)
 会場 MOA美術館(静岡県熱海市)

・東京会場
 会期 2024年11月1日(金) ~ 2025年1月27日(月)(予定)
 会場 順次公表

・愛知会場
 会期 2025年4月26日(土) ~ 6月15日(日)(予定)
 会場 松坂屋美術館(愛知県名古屋市)

・青森会場
 会期 2025年6月28日(土) ~ 8月31日(日)
 会場 八戸市美術館(青森県八戸市)

・長崎会場
 会期 2025年9月12日(金) ~ 11月30日(日)(予定)
 会場 長崎歴史文化博物館(長崎県長崎市)

公式サイトより

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