『第2回 レトロゲーム博物館計画 資料展示会』は、2023年8月1日から8月31日の会期にて特定非営利活動法人“日本レトロゲーム協会”が開催する、“日本のゲーム史を次の世代へ”をテーマにした展示イベントだ。8月の連休中に見に行ってきたので、その様子を当記事にて伝える。
会場へのアクセスが一苦労
まず、第2回 レトロゲーム博物館計画 資料展示会の会場は辺鄙な場所にある。会場は大阪府内とはいえ、大阪駅から会場最寄りの山中渓駅までは、JR紀州路快速・和歌山行にて約1時間15分かかる。山中渓駅は無人駅であり、その名が示す通り左右を山に囲まれた渓谷のような場所に位置する。アクセスが余り良くなく、自宅からの経路を調べた時点で訪問を躊躇するかもしれないが、イベント内容は見応え抜群なので、事前にしっかりと計画を立てて訪問してもらいたい。
次に、会場である阪南市立朝日小学校山中分校(廃校)までは、山中渓駅から徒歩で5分ほどだ。周りにも殆ど何も無いので、案内に従って歩けば特に迷うことは無いだろう。今となっては完全に放置されている廃校に味のある立て看板が掲げられている。
なお、会場周辺に有料駐車場が1か所だけあるものの収容台数はそれほど多く無いので、車で行く場合は朝一番で行くことを推奨する。筆者の場合はオープン時刻である11時に車で向かい、その時点では台数に余裕はあったが帰りの12時半ごろにはほぼ満車になっていた。休日に来訪するのであれば注意してもらいたい。
主催する日本レトロゲーム協会は、特定非営利活動法人なので入場は無料。
圧倒的な物量のレトロゲームに唸らされる
会場は廃校後を利用すると言いつつも学校全体が舞台になっている訳では無く、展示スペースとして利用されているのは1階部分の2部屋と廊下部分だけである。展示スペースの面積は広く無いのだが、収蔵されているゲーム機の物量は凄まじく、それらが高密度で展示されている。
あくまで、“博物館計画”の“資料展示会”なので、細かい解説が掲載されている訳では無いが、最低限の説明と共に所狭しと並べられている様は圧巻だ。多くは既存の学校の部材とプラ板を組み合わせたケース内に保存されているが、物によってはケース外に直置きされている。
レトロゲームというと一般的なイメージはファミコンだろうが、ゲームに特化した文化の保存を目的とした展示会のため、ファミコンが生まれる更に前の据え置き型ゲーム機からPS2及びXbox辺りまでが多数展示されている。そして注目すべきはその量の多さだ。全国から集められたあらゆるゲーム機がひたすら大量に展示されている。
個々のゲーム機について言及することは避けるが、ハードオフのようなリサイクルショップでは極稀にしかお目にかかれないようなレアなゲーム機の数々が圧縮陳列されている。レトロゲーム好きであればその情報量の多さから、会場に入った瞬間にテンションが爆上がりすること間違い無しだ。某パーフェクトカタログでしか見たことが無いようなハードを何十台も間近で確認することが出来るため、会場の大きさの割には長めの滞在時間になることは間違いないだろう。
撮影した写真を全て紹介しているとキリがないので、一部(といっても22枚あるが)を画像スライダーにて紹介する。
展示品は日本国内で発売されたゲーム機器に留まらず、海外で発売されたものにも及んでいる。海外のハードと言えばファミコンの海外版であるNintendo Entertainment System(NES)が有名であり当然ながら展示されているが、その他にも多種多様な海外版のゲーム機が、イベント主催者と海外の収集家の交流風景の写真と共に展示されている。
さて、ここまで掲載した写真の所々に付箋が貼ってあることに気が付いただろうか。これは当イベントの来場者が、ゲーム機にまつわる思い出を残していったものだ。付箋が用意されているので、自由に思い出を文字やイラストを綴って、展示ケースに張り付けることが出来る。このような来場者が緩く交流できるような楽しみ方は、形式張っていないイベントならではだろう。
レトロゲーム機を実体験できる
レトロゲーム博物館計画 資料展示会は、イベント名に“博物館計画”という名前が付いているものの、ショウケースに入ったレア物を眺めるだけでは無く実際に体験できるコーナーが幾つか用意されている。
例えば、次の写真は1983年10月に学習研究社から発売された家庭用ゲーム機『TVボーイ』だ。正直なところ、筆者はレトロゲームが好きだと言いつつも、このゲーム機の存在は全く知らなかった。少しばかりレトロゲームが好きな程度では、見たことも聞いたことも無いようなレアなゲーム機を、実際に触ることが出来るのは大変有り難い。
その他にも、ゲームボーイのポケットカメラがスーパーゲームボーイと共に置いてあり、実際にカメラの映り具合を確認することができ、さらには実際の観光地でポケットカメラを使って撮影した写真が掲載されるなど魅力的な展示となっていた。
また、ゲームのプレイ体験だけでは無く、セガ・マークⅢとファンタシースターを2セット使った、通常音源とFM音源を切り替えてその場で聞き比べることができるゲームサウンドに関するコーナーもあった。このセガ・マークⅢ、一方は通常音源なのだが、もう一方は周辺機器のFMサウンドユニットがセットされており、出力を切り替えることで音源の違いを簡単に聞き比べができる。同じハードでもサウンドユニットの有無でここまで音が変わるのかと感心させられ、ゲームサウンドに関する興味が改めて湧いてきた。
ちなみに、Arcade 1Up スペースインベーダーのような比較的新しいゲーム機も置いてある。これは会場のすぐ入り口に置いてあったものだが、廃校となった山中分校の沿革の真横に設置されており、なかなかに哀愁の漂う雰囲気となっていた。
ゲーム機以外の関連アイテムも充実
レトロゲーム博物館計画 資料展示会では、ゲーム機やゲームソフト以外にも幾つかの展示が行われているので、それらも紹介しておきたい。
ファミコンの全盛期には至る所の玩具店で見ることが出来たコラボアイテムの数々。公式・非公式問わず無数に存在した訳だが、グッズも大量に展示されているので、思い出深い品に出合えるかもしれない。個人的にはゲームソフトのキャリアーが懐かしく、それらが大量に陳列されている所で心を奪われた。また、グッズではないが、サテラビューを遊ぶには必須であったアンテナまで展示されており、展示物がカバーしている範囲の広さを実感できることだろう。
レトロゲーム全般の資産的価値の向上により、近年のレトロゲーム界隈には多数の偽物が流通している。偽物の日を追うごとに精巧になり、本物と比べなければ判断が付きにくいのだが、プレミアゲームを並べて比較する難易度は高い。ケースの刻印などで真贋判定も出来るようだが、そもそもその刻印の情報自体が本物かどうかも分からないので、一般的にはシェルを割って中身の基盤を見て確認することが多い。当会場では、実際に偽物と本物が並べて展示されており、細部を確認すると確かに違いを発見できるようになっている。
また、偽物のゲームソフトと共にゲームソフトのダビング機も展示されている。雑誌の裏表紙付近というと、今も昔も怪しげな通販商品が掲載されている訳だが、ファミコン全盛期にはゲーム機をコピーすることが可能なダビング機が堂々と掲載されていた。今回の展示ではそのような商品も歴史の一部として展示されている。ディスクシステムのゲームをコピーする専用の生ディスクといった稀有なアイテムまで展示されており、当時の白熱するゲーム市場について窺い知ることが出来る良い資料である。
ゲーム機に付随する展示物として、メーカーからゲーム販売店に配布されたポスターや、昔の新聞紙に挟まっていたようなゲーム取扱店の広告チラシまで展示されている。需要はあるかはともかく、ローカル店舗のチラシは滅多に見ることができない非常に貴重なものだろう。
また、全国のゲームチェーン店にフォーカスしたユニークな展示も用意されている。日本地図と共に、全国のローカルなゲーム取扱チェーン店の分布が示されており、ファミコン全盛期に爆発的に増えたファミコンショップの生い立ちを知ることができる。また、現存するゲームチェーン店である『おじゃま館』の創業初日の写真など、当時のファミコンショップの雰囲気を知ることが出来る一風変わった資料が展示されており興味深い。
1990年代終盤、当時は見向きもされずに廃棄されるだけの大量のレトロゲーム機を回収し続けていたという、レトロゲームの収集活動に関する展示も行われている。レトロゲーム博物館計画の基礎となる部分の話なので、来場した際には必ず目を通しておこう。
多数の写真を掲載したが、これらは一部なので詳細は実際に会場へ足を運んで確認してもらいたい。会期は2023年8月1日〜8月31日と短くアクセスも悪いが、レトロゲーム好きであれば何とか時間を見つけて訪問しよう。
なお、ゲームハードに関しては、2022年7月15日に発売された『ゲームコンソール2.0 』という書籍が、フルカラーで美しい写真と簡単な説明文で1970年代から最新のPS5まで大量に収録されているのでオススメしたい。
また、メジャーな携帯ゲームハードに限定されるが、ゲーム機をバラした状態で額に入れて標本のように飾る『GRID』という製品の紹介記事があるので、興味があればそちらも参照してもらいたい。
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