【スーパーマリオブラザーズ ワンダー】レビュー: ワンダーな体験の提供及びライブゴーストの導入は大成功。ただし、コンテンツの消費速度が著しく早く物足りなさを感じる

点数評価90点
クリア時間約10時間
プレイ状況本編とSPクリア
プレイ時間約12時間
発売日2023年10月20日
対応機種Switch
プレイ機種Switch
開発元任天堂
発売元任天堂
ジャンルアクション
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総評/評判/感想

スーパーマリオブラザーズ ワンダーは、2Dマリオシリーズの最高傑作になりえた作品だ。一期一会のワンダーな体験が詰め込まれたステージを、ライブゴーストと共におしゃべりフラワーの実況を交えてクリアする楽しさは間違いなく極上だ。しかし、ライブゴーストを導入したことでコンテンツの消費速度が著しく早くなり、さらにワンダーな体験を優先するためには、ギミックの使い回しでステージを水増しできないため、ボリューム不足や遊び足りなさを感じることがあるだろう。コンテンツの消化速度を早めることで得ることができる楽しさや、ワンダーな体験を追求することによる制約は、ゲームボリュームの問題と二律背反の関係にあり、これらを両立させることは非常に難しい。

【総合評価】
革新性
ユーザビリティ
ビジュアル
サウンド
プレイ継続性
コストパフォーマンス

何もかも新鮮でワンダーなマリオ

『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』は、実に約11年ぶりとなる2Dマリオシリーズ新作である。WiiUにて2012年12月8日に『New スーパーマリオブラザーズ U』が発売されて以降、2Dマリオシリーズはプレイヤーが自身でステージを製作する『マリオメーカー』シリーズに舵を切っており、2015年9月10日にマリオメーカー1作目、2019年6月28日にマリオメーカー2作目が発売されている。

スーパーマリオブラザーズ ワンダーは、長い沈黙を破ってようやく発売された2Dマリオシリーズ期待の新作な訳だが、ユーザーから無数のアイデアが際限なく投稿され続けるマリオメーカーシリーズが台頭したことにより、本作をプレイして新鮮さを味わうことができるか正直なところ不安だった。

しかし、スーパーマリオブラザーズ ワンダーのワールド1を遊んだ瞬間に、そのような杞憂は消し飛んだ。ゲームタイトルに含まれるように、本作は“wonder”な体験を重視した作品だ。“wonder”とは、“驚異”や“驚嘆”といった驚きを示す英単語だが、まさにその言葉の通りに、本作は何もかもが驚きに満ちた内容となっていた。

本作の舞台はクッパに乗っ取られた「フラワー王国」だ。ゲーム内容は従来通りに2Dプラットフォーマーであり、各ステージを攻略しながらクッパに辿り着くという基本は同じだが、舞台となる王国が変わったことでゲーム内容には様々な変化が表れている。

全マリオファンが納得するステージギミック

本作にはワンダーフラワーというアイテムが登場し、それを取得することでステージがダイナミックに変化する。発売前から情報が出ていた尺取り虫のように動く土管の他にも、画面が傾いたかと思えば画面が泡で包まれたり、パックンフラワーが自由気ままに歩き回り、トワイライトな影絵の世界で何故かマリオ達の胴体が長く伸びたりと、今まで誰も見たことの無い驚きのワンダーな世界がプレイヤーを待ち受けている。マリオメーカーでお手製のステージを遊び尽くしたという人であっても、全てが新鮮で未知なるマリオに触れることができて、絶対に満足することだろう。

Sara
Sara

RPGが得意な人も満足させたり、SFCを4000円引きにしてくれそうな、歌い踊るパックンフラワー。

これらのワンダーな変化はステージだけに留まらない。発売前からパワーアップアイテムでマリオ達がゾウに変身することが話題になっていたが、ワンダーな世界においてはマリオ達が敵キャラクターの姿へ変身する機会が設けられている。良く分からない塀のような姿になったり、戦闘能力が著しく低下したクリボーの姿になって敵からひたすらに逃げ回ったりと、普段とは全く異なる操作感の変身マリオで遊ぶことができる。

これらの大きな変化はワンダーフラワーを取得することで発生するが、何もワンダーな体験だけが本作の面白さだけでは無い。幾つかのステージには従来のシリーズと同様に、通常のゴールとは別にアナザーゴールが設定されている。それを探し回る楽しさも用意されており、ワンダーな体験に一辺倒という訳でも無いので従来のシリーズファンも安心だ。

スーパーマリオブラザーズ ワンダー コースセレクト
クリアしたステージに旗が立っていなければ、アナザーゴールあり。
スーパーマリオブラザーズ ワンダー 画面手前
画面手前に移動して、ゴールポールを通り過ぎる様子。遠近が変わる演出もあり。

アクションをカスタマイズできるバッジ

本作にはプレイアブルキャラクターが複数用意されているが、初心者向けの救済キャラクターであるヨッシーとトッテン以外に性能差は設けられていない。従来のシリーズであれば、ルイージであれば滑るがジャンプ力が高いとか、ピーチであれば一定時間浮遊できると言った特殊能力を期待できたが、今回はどのキャラクターでも動きは同じである。

キャラクターによる個性は失われているものの、今回はバッジを装備することによって自由にアクションを付け替え可能だ。アクションバッジには帽子をグライダー代わりに滑空したり、つるを伸ばして壁に貼り付いたりと、全部で9種類が用意されている。ステージによって有効なバッジが異なり、特定のバッジの性能を活かしたチャレンジステージなども用意されていることから、最適なバッジ探しが遊び方の一つとして用意されている。

スーパーマリオブラザーズ ワンダー バッジの選択
どれを付けるか悩むが、それもまた楽しい。

ただし、バッジについては手放しで褒められる訳では無く、コインを吸い寄せたり特定のパワーアップアイテムばかりが出るようになる効果を持った、パワーアップバッジの出番が殆ど無い点は残念だ。移動性能を大きく向上させるアクションバッジを外してまで付けたいと思える効果がパワーアップバッジには無いので、アクションバッジとパワーアップバッジは併用できるようにした方が良かっただろう。

Sara
Sara

いっそのこと、パワーアップバッジは無くしても良かった。

なお、達人バッジはその名前の通り、達人並みにプレイスキルがある人向けの縛りプレイ専用のバッジだ。次の動画は、少しの間は空中を走れるようになり、さらに空中ジャンプができるようになるジェットランバッジを付けた様子である。動画はバッジの試運転用のステージなので綺麗に移動できているが、このバッジを付けると常に走り続けるというデメリットが生じて、繊細な動作が求められるステージでは全く利用できない。RTAのようなイベントにおける活用が期待されるバッジである。

実況のようなおしゃべりフラワー

本作が発売された2023年10月現在は動画配信の全盛期であり、ゲームの実況が非常に活発だ。ゲームを黙々とプレイするのではなく、ゲームプレイに対する誰かの反応が楽しみという人も多いだろう。そのような情勢を反映してか、本作ではステージ内の至る所におしゃべりフラワーという、プレイヤーの行動に反応して話しかけてくるキャラクターが設置されている。

すれ違う度に何かしらのセリフを発し行動に応じてセリフ内容も変化するので、実況という文化に慣れ親しんだプレイヤーの受けは良いはずだ。おしゃべりフラワーの声質と喋る内容は、“ややウザイ”雰囲気を絶妙に醸し出しているので、おしゃべりフラワーを見かける度に、次は何を喋ってくれるのかと期待して近づいてしまうこと間違い無しだ。

また、“ややウザイ”おしゃべりフラワーの発言に対して、動画配信者が気の利いた返しをしたり、悪態を付いて会話を成立させるという面白い使い方も期待できそうである。なお、このフラワーの存在理由については、最初から最後まで何一つ触れられることは無いのだが、舞台となっているフラワー王国では当たり前の存在なのだろう。

Sara
Sara

おしゃべりフラワーに喋らせたところで特に何かプレイが有利になることはないが、それでも喋らせたくなる魅力を持っている。

次の動画は、恐らくおしゃべりフラワーが“一番鬱陶しい”ボーナスステージにおける合いの手だ。このような演出を不快に感じる場合は、設定からおしゃべりフラワーをOFFにすることができるので、そちらで対応すると良いだろう。

ライブゴーストによる緩い繋がり

スーパーマリオブラザーズ ワンダーには新要素として、オンライン状態で遊ぶことで他のプレイヤーと緩く繋がることができる、ライブゴースト機能が追加されている。オンライン状態で遊ぶことで、某高難易度3Dアクションゲームと同じように、同じステージを遊んでいる他のプレイヤーが半透明状態で映し出される。

スーパーマリオブラザーズ ワンダー  ゴールシーン
ライブゴーストと一緒にゴールすることで妙な仲間意識が生まれる。

半透明になっている他のプレイヤーを見ていると、急に何もない空中で浮かんだり、明らかにジャンプでは到達できない場所に看板を設置していることがある。そのような現象に遭遇した場合は、高確率で近場に隠しブロックや登れる蔦が隠されていることを意味している。また、沢山土管が並んだ場所でゴーストがしゃがんでいるが何も起こらなかった場面に遭遇したのであれば、わざわざその土管を自分で調べなくても入れないことは確実だ。

スーパーマリオブラザーズ ワンダー 看板の入手
設置できる看板はフラワーコインを消費して入手可能。

このように他人のゴーストや看板が隠されたアイテムや探索のヒントになる体験は、今までのマリオでは味わえなかったものなので非常に新鮮だ。また、高速でステージを駆け抜ける頼もしいゴーストに付いていったところ、ゴーストが不意に穴に落下し、それに釣られて自身も後追いで穴に落ちてミスになってしまうこともある。そのような間抜けな展開もまた一興だ。

Sara
Sara

ソウルシリーズで通った道をまさかマリオで体験できるとは思わなかった。

ただし、そのようなにミスをした場合でも、オンライン状態であれば直ちにステージをやり直しになる訳では無く、“タマシイ”の姿になってステージを彷徨い、他のプレイヤーのライブゴーストか看板に接触することでステージ内に復帰することができる。ギリギリでジャンプするつもりが早過ぎたり遅過ぎたりしてミスすることは、2Dプラットフォーマーゲームではありがちだが、このタマシイ化するシステムのお陰で本作ではミスをして慙愧を失う回数が極端に少なくなっている。

スーパーマリオブラザーズ ワンダー タマシイ状態
制限時間5秒以内に、他のプレイヤーに触れることができれば復帰可能。

オンラインで他人からヒントが得られたり助けてもらえると聞くと、まずはオフラインで一人で遊んでから、攻略に詰まったらオンラインで遊ぼうと考えるかもしれないが、その考えは悪手である。本作は絶対に最初から全力でオンラインを楽しんだ方がいいと断言する。なぜなら前項で紹介した通り、本作はギミックや敵キャラクターの使い回しを極端に減らした、驚きの体験に特化した作りであり、プレイヤーが段階を踏んで上手くなる過程を楽しむ作品ではないのだ。

従来のシリーズであれば、ワールドの特徴やギミックを練習するステージを経た後に、砦や館といった中ボス的な位置付けのステージを抜け、その後はやや難易度の上がった応用ステージを抜けてからボスが待ち受ける城ステージに向かうという構成になっていた。そして、ワールドが進みプレイヤーの腕前が上がるにつれて、ステージの難易度も増していったが、今回はそのような構成にはなっていない。一期一会の不思議な体験こそが本作の最大目的なので、いわゆる“初見”の状態でライブゴースト達とワイワイ戯れることを楽しんだ方が良いだろう。

Sara
Sara

初見の体験重視についても、ゲーム配信全盛期という現状に対応した結果。

次の動画は、隠しブロックや移動できる土管を駆使して隠されたコインを探し出すステージにて、オンラインでマッチングしたプレイヤーを助けている様子だ。迷っているルイージに対してメガホンのアイコンを連打するとこちらに来てくれたので、土管を移動させるべき場所で待ったうえで隠しブロックの上に看板を立てたことで、無事にルイージをコインまで誘導できている。単に高難易度のアクションステージで協力するだけでは無く、オンライン協力前提の謎解きステージが用意されている点も評価が高い。

なお、一部の超高難易度ステージではライブゴーストが役に立たないことを補足しておく。次の動画は下から毒沼が上昇してくる中を、消える足場を伝っていくステージだ。このような足場が限定されるステージでは、タマシイになった後に復帰したとしても、即座に落下してミスになってしまうので、完全にプレイヤーの実力が試されることになる。

ワンダーな体験とライブゴーストが作品寿命を縮める

何もかもがワンダーなステージ構成と、緩い繋がりを感じながら助け合いができるライブゴースト機能は間違いなく素晴らしい。ワールド1をクリアした時点では、スーパーマリオブラザーズ ワンダーが2Dマリオシリーズの最高傑作では無いかと考えたぐらいだ。しかし、最終ステージとスペシャルワールドまでクリアしたところ、残念ながら評価は高いものの最高傑作には届かなかったと判断する。

その理由はボリュームの少なさだ。厳密に言うと本作のボリュームは従来作品と同じようなものだろう。全6ワールドに加えて、各ワールドを繋ぐフラワー諸島,最終のクッパ城,スペシャルワールドで実質的には全9ワールドだ。それに加えて、幾つものアナザーゴール,バッジチャレンジ,コロシアム,謎解きなども考慮すると十分な量が用意されている。にもかかわらず、多くのプレイヤーは本作に対してボリューム不足を感じるはずだ。何故なら、今回はコンテンツの消化速度が圧倒的に早いからだ。

前項に記載した通り、今回は最初からオンラインを解禁して遊ぶことが推奨されており、使い回しの無いギミックを初見でライブゴースト達と助け合いながら遊ぶことが何よりも楽しい。隠しブロックを見つけて仲間たちに報告したり、凡ミスをして急いで仲間に近づいていったり、逆に助けに来た仲間が落下して一緒にミスしたりと、今までのマリオには無い遊び方であり新鮮さの塊だ。しかし、このようなオンライン協力プレイは、新しい楽しさを提供すると同時にステージのクリア速度を大きく加速させるという側面も持っている。

ライブゴーストのお陰で、ステージを何度も周回して隠しブロックを見つける必要はなく、凡ミスで最初からやり直しになることも無いので、各ステージのクリア速度は過去最速である。そのため、適正なステージ数にもかかわらず、ボリューム不足に感じてしまうのだろう。さらには、本作は殆ど使い回しの無いワンダーな体験を重視しなければならない製作上の制約があるため、ボリューム不足に感じる問題を解決するために安易にステージを増やすことができない状況にある。とはいえ、オンライン協力プレイが面白い以上は、それを利用しないなどと言う判断はあり得ない。ソロで遊んでしまえば本作の楽しさは半減とは言わないが3割減ぐらいだろう。ライブゴーストとの戯れを楽しめないぐらいであれば、ボリューム不足を感じた方が幾分かマシである。

さらには、一部のステージは決して出来栄えが悪くないにもかかわらず劣って見えてしまうという問題もある。具体的に言うと、飛行船とクッパJr.戦のステージだ。これらのボス戦は残念ながら殆どワンダーを感じない内容となっている。従来のマリオシリーズと比較すると妥当な水準だと思うが、本作においては他のステージの作りが良過ぎるために平凡で場違いな印象を受けてしまう。

スーパーマリオブラザーズ ワンダー クッパJr.戦
ワンダーさが足りないクッパJr.戦。もっと変化できたのではないだろうか。

ステージ毎の最適なバッジを探すという遊び方についても、オンラインでゴリ押しのようなクリアをしてしまい機能しないことも多い。オンライン協力プレイが面白いので、最適なバッジ探しは完全に放棄しても問題ないと考えるが、それであれば前項で例に挙げたような完全に実力を試されるような、オンラインが機能しないステージの数を増やした方が良かっただろう。

また、人によって好みは違うが、マリオシリーズを遊ぶプレイヤーは何らかのお気に入りのステージギミックがあるはずだ。気に入ったステージギミックに出合えば、後半のワールドにてそれを応用したような体験に期待するものだが、ワンダーな体験を提供することを目的に作られた本作ではそれは叶わない。筆者の場合、前項で紹介した謎解き系のステージを大変気に入っているので、似たような内容でも良かったので各ワールドに欲しかったところだが、たった3回しか遊べない。また、敵についても1回か2回しか登場しないものも多く、コンテンツの消化速度と相まって勿体無さを感じてしまうはずだ。

スーパーマリオブラザーズ ワンダー ロングキラーステージ
使い回さないことは良いことだが名残惜しさも・・・

評価ポイントのまとめ

スーパーマリオブラザーズ ワンダーは素晴らしい作品だが、コンテンツの消化速度を早めることで得ることができるオンライン協力プレイの楽しさや、ワンダーな体験を追求することによる製作上の制約により、ゲームボリュームの問題が発生してしまっている惜しい作品だ。これはもう、全力でギミックを使い回したDLCを出してもらうしか無い。ソロプレイの高難易度に特化したり、協力プレイの謎解きに特化したDLCも面白いかもしれない。

長所

  • まさしくワンダーな体験
  • ライブゴーストによる新たな面白さの発見

短所

  • コンテンツの消費速度が速い
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