【SANABI】レビュー: ミステリアスなストーリーの続きが気になって仕方がない、チェーンアクション特化の2Dプラットフォーマー – サンナビ

点数評価95点
クリア時間約9時間
プレイ状況ベテランモードでクリア
プレイ時間約9時間
発売日2023年11月9日
対応機種Steam/Switch
プレイ機種Switch
開発元WONDER POTION
発売元NEOWIZ
ジャンル2D「鎖アクション」アドベンチャープラットフォーマーゲーム
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総評/評判/感想

SANABI(サンナビ)は、チェーンフック操作に重点を置いたシンプルな2Dアクションゲームだ。この手の潔い操作性のアクションゲームは、触り心地に特化した結果として、それ以外がおざなりになりがちだ。しかし本作は、ミステリアスなストーリーも大きく評価したい。2Dアクションゲームでストーリーがここまで評価される作品は実に珍しい。問題視される翻訳については、理解不能なほどに崩れている訳でも無く、大きく評価を損ねることは無いだろう。むしろ、一部に場違いな超高難易度ステージが用意されていることが減点項目である。

【総合評価】
革新性
ユーザビリティ
ビジュアル
サウンド
プレイ継続性
コストパフォーマンス

SANABI(サンナビ)は、ゲームタイトルにもなっている謎の存在「SANABI」を追い求め、伝説的な退役軍人である主人公が、サイバーパンクなメガシティを一撃必殺のチェーンフックで駆け抜ける、2Dアクションゲームである。

続きが気になる秀逸なストーリー

往々にして2Dアクションゲームというと、軽快なキャラクター操作やテンポ良く敵を撃破できる戦闘など、いわゆる“触り心地”の良さによってプレイヤーを虜にするものである。しかしSANABIの場合、多くのプレイヤーはストーリーに魅せられることだろう。

まず本作は、退役軍人である主人公とその娘の、仲睦まじい交流シーンからスタートする。ほのぼのした雰囲気の中で、父親と娘の“軍人ごっこ遊び”を通じて行われる基本操作のチュートリアルは秀逸だ。ドット絵ながらも娘の細かい動きから汲み取ることができる感情や二人の微笑ましい光景によって、多くのプレイヤーが癒されることだろう。

SANABI オープニング
ほのぼのしたとしたオープニング兼チュートリアル。

本作のシンプルな操作体系を考えると、チュートリアルは丁寧過ぎるぐらいに長い。プレイヤーはチュートリアルとしては少しくどいような印象を持ちつつも、心が満たされるような幸せな光景を眺めることになる。しかし、その幸せな時間は唐突に終わりを迎える。SANABIという謎の存在によって自宅に届けられた爆弾により娘は爆死し、場面は一転して主人公によるハードな復讐劇がスタートする。

SANABI 復讐劇
SANABIに関わったであろう人物を根こそぎ始末していく主人公。

意図的に幸せなシーンを長めに見せつけてから絶望に叩き落すような急展開は映画さながらの演出であり、プレイヤーの感情を強烈に揺さぶってくる。敵も味方もSANABIに関する情報を殆ど持っておらず、闇雲にSANABIを追い求める主人公の姿がシリアスさに拍車を掛け、プレイヤーは物語に一気に引き込まれるだろう。

また、本作は単に主人公による復讐劇というだけではなく、殺された父の復讐のために超巨大企業であるマゴグループに挑もうとするハッカーの少女「マリ」の物語でもある。主人公とマリは失ったものをお互いに重ねつつも反目し、ピンチに陥ると結局は助け合うことを繰り返す。常にシリアスな雰囲気で目標に一直線な主人公と、ノリで無茶をやってしまうマリは、いわゆる凸凹コンビであり、この関係は実に王道的で安心できる作りとなっている。

SANABI 反目する二人
反目し合う主人公とマリ。
SANABI 自信満々なマリ
ピンチに駆けつけて自信満々なマリ。

なお、本作の舞台はSANABIの痕跡が確認された、300万の人口を抱えるマゴグループが支配する巨大都市だ。いざ巨大都市に潜入してみると300万人もの人間が争いの痕跡を一切残さず消え去っており、主人公とマリの二人のハードで時にコミカルな復讐劇というだけではなく、謎の集団失踪と巨大都市を牛耳るマゴグループの真相に迫るというミステリー仕立てにもなっている。ネタバレになるため真相を記載することは伏せるが、物語は二転三転し、衝撃の結末がプレイヤーを待ち受けている。主人公とマリが辿り着く真実については、実際にプレイして確かめてもらいたい。

2Dアクションゲームというジャンルで、これほどまでに深くストーリーが作り込まれることは稀有である。その出来栄えの良さから、本作を原作としたアクション映画を作っても良いのではないかと思えるぐらいだ。

Sara
Sara

一部の翻訳がおかしい部分もあるが、意味が通らないことは無いので許容範囲内。翻訳修正のアップデートも2024年中に予定されている。

シンプル操作のチェーンアクション

次にサンナビのアクション面に目を向けよう。本作は、チェーンフックを駆使したパルクールで限られた足場を踏破していく、いわゆるプラットフォーマー系の2Dアクションゲームだ。

本作は一本道のステージクリア型であるため、進行において何処に行くか迷うことは無い。しかし、本作は足場が極端に少ないため、足を踏み出すことに躊躇する場面は多いだろう。幸いにも主人公のチェーンフックは至る所に引っ掛かるため、フックの巻き上げ機能を使って位置を調整したり、ラインに沿って移動する輸送機にぶら下がって移動したりと、工夫をしながら進んでいくことになる。

サイバーパンク都市
輸送機にぶら下がって移動。赤いエリアに触れると不可避の迎撃用のビームが飛んでくる。

足場から足場へ飛び移るアクションは難しく見えるかもしれないが、チェーンフックの射程は相当に長いため簡単には落下しない。また、ぶらさがる度に1回だけ、慣性を無視して任意の方向にスイングを加速できるため、思い通りの操作をしやすくなっている。フックアクションの自由度は高く、想像以上に無茶な動きを通せるため、プレイヤーは心地良くステージを攻略可能だ。

次の動画は、触れるとダメージを受けてノックバックするレーザー地帯を、流れて来るリフトを盾に進むシーンだ。テクニカルに見えるかもしれないが、初見で適当に操作しているだけである。チェーンフックの長さと任意方向のスイングのお陰で、このように失敗することを余り恐れずにパルクールを楽しむことができる。とはいえ、落下するとチェックポイントからやり直しとなる緊張感も少なからず存在するため、操作の楽しさと失敗に対する緊張感のバランスが絶妙だ。

なお、チェックポイントの度に最大で3回まで被弾が許されており、被弾時には足場の有無に関係なく任意の方向にダッシュを発動可能だ。この仕様のお陰で、難しいギミックに直面したとしても、被弾を逆手に取って有利に進めることができる場所さえ把握すれば、多少は強引に突破できるのも面白い。

Sara
Sara

スピードランモードも用意されているので、やり込み好きならば研究し甲斐があるはず。

また、道中には行く手を阻むロボット兵士が無数に配置されており、一定の範囲内の敵を全滅させなければならない強制戦闘も多発する。本作には戦闘用の特別なアクションは用意されておらず、チェーンフックによる移動が攻撃を兼ねている。特殊な場面を除いて、壁に貼り付く移動と同様にチェーンフックを伸ばして飛び付くことが唯一の攻撃手段となっている。

SANABI ザコ敵との戦闘
絵面は地味だがスピード感のある戦闘は楽しい。

チェーンフックで飛び付いた後は、被弾時と同様にもう一度その場で任意の方向にダッシュできるので、ひたすらに飛び付きを繰り返して全滅させていく。シンプルながらも極まった動きで敵を殲滅していくスタイルは、ハードなストーリー展開にも合致していると言えるだろう。

ちなみに、初期設定のままでもエイムアシストが強めに設定されているので、ゲーム開始直後から次の動画のようにノンストップで戦闘エリア内を駆け回るようなアクションが可能となっている。

道中とのザコ敵との戦闘は、スピード感に特化したシンプルで直感的なものとなっているが、ボス戦は全く趣の異なるパズル的な戦闘が用意されている。爽快感を重視したザコ戦、少し工夫が必要なボス戦と、緩急を付けて楽しむことができるので、シンプルながらもゲームクリアまで飽きることは無いはずだ。

SANABI 掘削機ボス戦
巨大な掘削機のようなボス戦。
SANABI 飛行機ボス戦
空中で飛行貨物をグラップリングしながら戦うボス戦。

一部のステージの難易度調整に難あり

重厚かつミステリアスなストーリー及び、シンプル操作でスピード感を味わえるパルクール系の戦闘によって満足度の高いSANABIだが、残念ながら一部のステージの難易度調整には問題を抱えている。

まず、本作のプレイ開始時には、イージー,ノーマル,ベテランの3つから難易度を選択可能だ。説明を見る限りでは、無敵になるイージーモードは何発攻撃を喰らっても主人公が倒れることは無くなり、落下に対する救済は無いものの前述の被弾後のダッシュを存分に活用できるようになるため、なりふり構わずストーリーを最後まで楽しみたい人に向けたものだ。

次にノーマルモードは時間経過で体力が最大値まで回復するので、窮地に陥っても安置に逃げて時間を稼げばリカバリーが可能になっており、アクションゲームは苦手なものの工夫しながらクリアしたい人向けとなっている。

SANABI 難易度選択
2Dアクションゲームが好きな人は、その説明からベテランを選ぶはず。

このように、イージーとノーマルは救済要素が追加されたモードであるため、この手の2Dアクションゲームを買うようなプレイヤーの多くは、必然的にベテランモードを選ぶことになるだろう。

Sara
Sara

ゲームをクリアすると、全ての攻撃で一撃死するレジェンドモードが解禁される。

このベテランモードでプレイした場合、多くのステージは程良い手応えの難易度になっており、難しい場所であってもアクションゲームの経験が豊富であれば数回のリトライで突破できるだろう。しかし、ゲーム中盤に訪れる巨大工場を舞台にしたステージだけは、難易度調整を間違っているとしか言いようのない超高難易度となっている。

巨大工場ステージでは途中から、“監督官”と呼ばれる巨大ロボが背景から一定時間ごとに即死攻撃を放ってくるのだが、この“一定時間”の猶予が余りにも少ない。次の動画は、リトライポイントから攻撃を避ける安置まで移動する約10秒の動画だ。この動画で確認できるアクションは、このエリアにおいて最適に近い動作だと思われるが、少しでも操作入力を失敗すると縦に流れる黄色いビームの突破がワンテンポ遅れてしまい、即死攻撃が飛んでくるまでに安置に到着できなくなる。

チェックポイントを挟みつつも即死エリアが長々と続く巨大工場ステージは、即死系パルクールアクションゲームとして有名な『ゴーストランナー』のような鬼畜難易度だ。唐突に異質な難易度が挿入されるため、人によってはクリアを諦めることになってしまうだろう。

SANABI 即死レーザー
左右から即死レーザーが迫ってくるエリアも難しい。

なお、難易度はいつでも設定画面から変更できる。クリア後に検証したところ、難易度を下げることで即死攻撃が飛んでくるまでの猶予時間を延長できることを確認した。ベテランモードでスタートして行き詰った際には難易度を下げることを推奨したい。

Sara
Sara

超高難易度のステージは、元からそれをテーマにした作品で楽しめば良い。

評価ポイントのまとめ

SANABIは、2Dアクションゲームながらもストーリーの出来栄えが素晴らしい作品だ。勿論、アクション面もシンプルながら爽快で飽きの来ない仕上がりとなっている。ベテランモードにおける一部の難易度には首を傾げることもあるが、2Dアクションゲーム好きならば必ずプレイしたい逸品。

長所

  • 復讐を軸に据えたミステリアスで重厚なストーリー
  • チェーンフック操作に特化した爽快なアクション

短所

  • 一部のステージの難易度が異常に高い
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