点数評価 | 85点 |
プレイ状況 | クリア 実績:530/1000 |
プレイ時間 | 約12.5時間 |
発売日 | 2022年1月18日 |
対応機種 | Switch/PS4/Steam Xbox (Gamepass) |
プレイ機種 | Xbox Series X |
開発元 | Drinkbox Studios |
発売元 | Drinkbox Studios |
ジャンル | アクションRPG ジャンルの考え方 |
Nobody Saves the Worldの世界観は間違いなく狂気だ。しかし、そんな狂った世界観とは裏腹に、アビリティの組み合わせ研究しがいがあり非常に楽しい。多数の変身フォームと、自由に付け替え可能なアビリティのお陰で遊び方の幅が広く、無数に用意されているサブクエストのお陰で組み合わせの楽しみ方を自然と学ぶこともできる。絵面で敬遠すると勿体無いアクションRPGだ。ダンジョンは見た目以外は似たような内容で単調に感じるが、アビリティの組み合わせを楽しむ場だと思えばさほど気にならないだろう。
本作は2022年1月18日に発売と同時にXbox Game Passに提供されていたが、残念ながら日本語には対応していなかった。しかし、2022年4月14日のSwitch/PS4版リリースに合わせて、全ハードで日本語に対応した。
常識から逸脱したフォームの数々と、ぶっ飛んだ世界観
Nobody Saves the World (ノーバディ セーブ ザ ワールド)は、パンツすらはいていない、何の特徴もないただのヒト(ノーバディ)が、変身能力を駆使して「カラミティ」と呼ばれる災いに立ち向かうアクションRPGだ。
RPGにおいてキャラクターを特徴付ける、職業、ジョブ、クラス、フォームなどと称される“役割り”の定番を思い浮かべよ。
このように問われた場合、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。
レジェンド級の国民的竜退治RPGであれば、屈強な戦士や髭を蓄えた魔法使いを思い浮かべるだろう。クリスタルに導かれし幻想作品であれば、ナイト,モンク,各色魔導士などが直ぐに思い浮かぶはずだ。
本作には全16種類の変身フォームが用意されており、確かに前述の作品に類するようなフォームが用意されている。しかしそれは一部であり、多くはゲーマーの常識から大きく逸脱したものとなっている。
まず、このゲームの主人公ノーバディは、冒険の開始早々に牢屋に閉じ込めらる。そこでノーバディはネズミに変身し、壁に空いた穴を通り抜けて脱獄し、噛り付き攻撃で敵を倒しながら逃亡する。つまり、最初に使えるジョブは、戦士でもナイトでもなくネズミだ。
このネズミというフォームは、牢屋から逃れるというシチュエーションを考えると“アリ”だろう。そしてネズミのまま経験値を稼いでいくと、ナイト、レンジャー(弓使い)、卵というフォームがアンロックされる。卵には首を傾げるかもしれないが、ナイトとレンジャーはRPGで定番中の定番だ。
そんな定番のレンジャーを育てると、どんな変身フォームが手に入るか想像できるだろうか?一般人の常識であれば、メイン攻撃が弓という部分に着想を得て、魔獣を使役するモンスターマスター、あるいは自然を使役するエレメント系の使い手のようなフォームを想像するのではないだろうか。
しかし、Nobody Saves the Worldにはそんな常識は通用しない。レンジャーから派生する変身フォームはナメクジとボディービルダーだ。その先には、まともなシーフを挟みつつも、牙を剥き出しにした気持ち悪いマーメイドと、布を被ったような非常にオーソドックスな見た目のゴーストが待っている。ちなみに最上位はドラゴンであり、その下はネクロマンサーとロボットが続いている。
一体誰がレンジャーからナメクジとボディービルダーを連想できるのか。この時点で何となく予想が付くかもしれないが、Nobody Saves the Worldの世界観は基本的に頭がおかしい。アメリカ合衆国の狂気系人気アニメ、スポンジ・ボブのような異常さを想像してもらえば良いだろう。
可愛げの無い絵面にはアメリカのアニメ感が満載。
本作の舞台はファンタジーなのかSFなのか良く分からない、各要素が入り混じった無秩序な世界だ。
謎のキノコ病に汚染された少々グロいエリアや奇形の敵が多く、ドラゴンや吸血鬼のようなファンタジー的な設定がある一方で、メルトダウンによる放射能汚染やテレポート装置などSF的な設定も多い。
これらの世界観に関する説明は一切用意されていないので、変身フォームと同様にカオスなものだと割り切って遊ぶ方が良いだろう。世界観の意味不明さや絵面から脱落しそうになるかもしれないが、Nobody Saves the Worldはそれらを我慢してプレイするだけの魅力を秘めているのだ。
研究しがいのあるアビリティのシナジー効果
とにかく狂気の世界観をプッシュしてくるNobody Saves the Worldだが、世界観とは打って変わってアクション部分は実に真面目に作られている。
まず、ゲーム自体はトップダウンビュー型のアクションで、プレイフィールドは切り替え方式のエリア制になっている。各エリアにはダンジョンが用意されており、メインストーリーに関するダンジョンをクリアすることで物語が進行する。
フィールドやダンジョンには多数のモンスターが設置されているので、プレイヤーは変身フォームに設定されたアクティブアビリティを駆使して敵を倒していくのだが、このアビリティこそがNobody Saves the World最大の魅力であり、アビリティの組み合わせと使い分けがゲームの面白さの9割を占めていると言っても過言では無いだろう。
各変身フォームには、攻撃用に使う4種類のアクティブアビリティが用意されている。その内の3種類は自由に変更可能であり、アンロックした他の変身フォームのアクティブアビリティをセットすることが出来る。また、各アクティブアビリティにはクールタイムが設定されているのだが、変更できない固有のアビリティはクールタイムが短く連続して使用でき、アビリティを当てることでマナ(MP)の回復もできる。一方で、変更できるアビリティは強力だがクールタイムが長く、マナを消費するため連発は出来ない。
下の動画は、高威力・広範囲にベンチプレスで攻撃出来るが、発生が遅く立ち回りに難があるボディービルダーに、無敵で敵をすり抜けつつダメージを与えるレンジャーの回避アビリディを付けた様子である。本来は鈍重なボディービルダーの弱点を補い、効率良く立ち回れるようになっている。このようなアビリティの付け替えによるフォームのカスタマイズが、Nobody Saves the Worldの最大の特徴だ。
もちろん他のアクションRPGでも、重装タイプのジョブが高速移動系のアビリティを駆使して大剣やハンマーなどを振り回す戦闘シーンを見たことが在るだろう。しかし、前項で紹介した通り、Nobody Saves the Worldの変身フォームは度が過ぎる程にユニークだ。そのため、他のゲームで似たような組み合わせを見たことがあったとしても、新鮮味を感じることは間違いないはずだ。実際に、良くあるパワータイプであっても、ボディービルダーと言われるとインパクトは大きい。
もっとも、上記の高速移動するボディービルダーはシンプルな組み合わせの一例であり、Nobody Saves the Worldのアビリティカスタマイズは奥が深い。アビリティには常時効果を発揮するパッシブタイプも用意されており、前述のマナを消費して使用するアクティブタイプのアビリティと同様に、4枠中の3枠にはアンロック済みの好きな変身フォームのものを設定可能だ。蓄積型の状態異常、アイテムを拾ってクールタイム短縮、被ダメージでマナ回復、攻撃にドレイン効果を追加などなど、様々なタイプが用意されている。
各フォームの固有アビリティ(メイン攻撃)と相談しながら、パッシブとアクティブのアビリティの組み合わせを試行錯誤し、効果的なシナジーを発見できた際には大きな達成感を味わうことが出来るだろう。
例えば、高威力タイプのボディービルダーとは正反対の、低威力だが手数で攻めることが出来るシーフであれば、毒、怯え、気絶といった蓄積で状態異常を引き起こすパッシブが効果的だ。ステータス異常を3枠に積んでも良いし、2枠だけに積んで残り1枠はナメクジの状態異常の敵にクリティカルダメージ1.25倍のような攻撃系パッシブを積んでも良い。このようなアビリティの調整作業は、自分好みのカスタマイズを発見することに喜びを感じる人であれば間違いなく楽しめるはずだ。
ちなみに、一部のアビリティの組み合わせはシナジー効果が大きすぎて、画面全体がダメージ表示で埋め尽くされることも。何をやっているのか分からなくなるので、程々にするべき組み合わせも存在する。
次の動画は、モンクの被ダメージと回復で敵に雷を落とす天罰と、ゾンビのドレイン攻撃のパッシブを付けた状態で、全体攻撃のアビリティを使った瞬間だ。攻撃とHP吸収が重なり過ぎて最早訳が分からない。
前項で紹介したナメクジが、一体どの様に戦うのか気になるかもしれないので紹介しておこう。ナメクジは遠距離攻撃タイプであり、自身の足跡を敵に踏ませて鈍足のデバフを付与し、安全な位置から一方的に攻撃する戦法を取る。ナメクジは足が遅いイメージだが、大量の粘液を撒き散らしながらスライド移動できるので、意外にも高速移動が可能でありコミカルだ。
最後まで飽きさせないRPG的な育成要素
新しい変身フォームやアビリティを解放して組み合わせの妙を存分に楽しむには、RPGの例に漏れず経験値を積んでレベルアップする必要がある。経験値を積むことで成長していくシステムはRPGなら一般的な仕様だが、育成嫌いなプレイヤーには疎まれることもあるだろう。
しかし、Nobody Saves the Worldには育成を飽きさせない工夫が用意されている。まず、このゲームは単純に敵を倒しただけでは経験値を得ることは出来ず、各フォームに設定されたサブクエストをクリアしなければ経験値を得ることは出来ない。
単純にサブクエストをクリアと聞くと、更に面倒に感じるかもしれないが、サブクエストの内容は各フォームとアビリティのシナジー体験を兼ねている。そのため経験値を稼ごうとすると、必然的に今まで使ったことのないアビリティの組み合わせを試すことになり、プレイヤーは新しいシナジーに気が付くことになる。気付きを得ることが出来ると、サブクエストを消化する以外にもシナジーを探すことが楽しくなり、一方でサブクエストもクリアしたいという思いもあり、試したいアビリティの組み合わせが渋滞してくると言う、何とも贅沢な状態になるのだ。
サブクエストは完全に自動で受注され、フォームを変更すれば進行中のサブクエストも自動で切り替わるので、サブクエストを管理するという煩わしさは一切ない。また、サブクエストの種類は非常に豊富で、条件を達成する度にすぐさま新しいサブクエストが自動受注される。次から次へとサブクエストが始まるので探求が止まらない。
サブクエストを通じて、自然とシナジー効果を探す楽しさに触れさせる素晴らしい仕組み。
なお、ストーリーボスが待ち構えるダンジョンに入ると、サブクエストの進行状況はロックされて条件を達成できなくなる。そのため、今までに育てて来たフォームの中から最適な組み合わせを選んで挑戦することになる。組み合わせの探求を怠っていると、特定の属性アビリティを当てなければ破れない属性バリアを持つ敵が出現した際に苦戦を強いられることになるので注意したい。
サブクエストをクリアすればフォームの成長と共に、基礎ステータスに影響するプレイヤーレベルも上がって行く。サブクエストは複数個を同時進行可能なので、上手くプレイすればあっと言う間に経験値が貯まりレベルアップする。そのため、強敵に行き詰ったとしても、少しの稼ぎで簡単に強くなれる点も嬉しい。
また、サブクエストが進行しないアビリティの組み合わせになっている場合には、画面上に警告を出して教えてくれる機能も用意されている。プレイヤーが快適にプレイできるように、隅々まで配慮が行き届いた作品と言えるだろう。
自動受注するサブクエスト以外にも、村人から話を聞いて受注するようなサブクエストもあり、受注するとマップ上に!で行先が表示される。受注上限などは特になく、足を踏み入れたことの無い場所でも、サブクエストの目的地が表示されるので便利だ。受注型のサブクエストは大量の敵と戦ったり、ちょっとしたミニゲーム方式のものある。
アクションRPGとしては非常に高評価なNobody Saves the Worldだが、残念ながらダンジョンの作りはさほど凝ったものでは無く、背景が変わるだけでどれも似たような内容だ。しかし幸いにも、ダンジョンによっては一定時間でバリア回復や、被ダメージで自動反撃などのバフが敵に付与されるなど、難易度のオプションも様々なので直ちに飽きることは無いはずだ。
クリアまでは10数時間程度の、インディーゲームに良くあるボリュームなので、変化に乏しいダンジョンに飽きる前に、あるいは完全にアビリティの組み合わせを遊び尽す前に、程良く余韻を残してクリアとなる。もう一回りスケールが大きくても良かった気もしたが、これぐらいがバランス良いのだろう。
以上のように、Nobody Saves the Worldは、不真面目な世界観と真面目なアクションRPGが組み合わさった、両極端なゲームである。アクションRPGが好きであれば、海外アニメ風の独特な見た目で敬遠せずに遊んで貰いたい。
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