【ファイナルファンタジーVII リバース】レビュー: ミニゲームと狂人によるギャグ展開の波状攻撃の狭間でシリアスを楽しむARPG – FINAL FANTASY VII REBIRTH

点数評価90点
クリア時間約58時間
プレイ状況クリア
トロフィー:61%
プレイ時間約58時間
発売日2024年2月29日
対応機種PS5
プレイ機種PS5
開発元スクウェア・エニックス
発売元スクウェア・エニックス
ジャンルアクションRPG
ジャンルの考え方
ネタバレ有り
総評/評判/感想

『ファイナルファンタジー7 リバース(FINAL FANTASY VII REBIRTH)』は、積極的に布教したいとも思わないが、間違いなく面白い不思議な作品だ。狂気に満ちた登場人物の数々と、大して面白く無いミニゲームの詰め合わせが実態であるのだが、何だかんだとオチの付け方が秀逸でありプレイを継続したくなる。戦闘に関してはまさに前作の正統進化という言葉がふさわしく不満は一切ない。漠然とビッグタイトルを求めている人には間違いなくオススメしたい。

【総合評価】
革新性
ユーザビリティ
ビジュアル
サウンド
プレイ継続性
コストパフォーマンス

注意:当レビュー記事は、ストーリーのネタバレを含みます。

『ファイナルファンタジーVII リバース(FINAL FANTASY VII REBIRTH)』は、2020年4月10日に発売された『ファイナルファンタジーVII リメイク』の約4年ぶりの続編である。舞台はエリア制の幾つかの小規模なオープンワールドとなり、前作とは異なり広い世界を自由に冒険できるようになった、同シリーズファン待望のアクションRPGである。

狂人とミニゲームのお陰でストーリーの8割がギャグ路線

狂人によって動かされるストーリー

『ファイナルファンタジーVII』は本来、シリアスな内容のRPGである。星の命ともいえる魔晄をエネルギーとして吸い上げる超巨大企業である神羅カンパニーの繁栄と、その裏で発生する凄惨な魔晄炉暴走事故や、魔晄エネルギーの枯渇による砂漠化などの自然破壊、そして星を救うことを名目に多大な犠牲を伴って引き起こされる魔晄炉爆破テロ事件など、魔晄エネルギーを巡る光と陰が描かれた作品だ。

美しくも無残に破壊された魔晄炉

『ファイナルファンタジーVII リバース』においてもその基本的な設定は変わらず、『オリジナル版ファイナルファンタジーVII』同様にシリアスなシーンが用意されている。しかし本作では、それ以上にギャグに寄せたシーンが多数用意されている。特に、異常な行動を取ったりおかしな格好をしたりと、まさに“狂人”と呼ぶにふさわしいキャラクターが頻繁に登場し、シリアスな展開が訪れたとしてもそれは長続きせずに、強引にギャグ展開に路線変更される。本作がここまでギャグとシリアスの両極端を行ったり来たりする展開になった原因は、本作の主人公であるクラウド・ストライフの性格にあるだろう。

ファイナルファンタジーVII リバース ローチェ
クラウドのことをマイフレンドと呼びながらバイクで空から降ってくる狂人。
ファイナルファンタジーVII リバース チョコボ仙人
珍妙なチョコボの服を着た狂人。

「興味ないね」とはクラウドの代名詞とも言える、厄介ごとや煩わしい人間関係を拒否する際に発せられるセリフである。『オリジナル版ファイナルファンタジーVII』でも何十回と繰り返し発せられた言葉であり、クラウドは常々クールを気取って自分からは何もしないキャラクターだ。クラウドとは、簡単に言えば中身の無いイケメンだけが取り柄のキャラクターであり、宿敵であるセフィロスからも「からっぽ人形」と告げられるように、クラウド単体では何も成し遂げることができない。

次の動画は、ゲーム最序盤にクラウドが何一つ自分で動けず周りに振り回される象徴的なシーンだ。このシーンでは、エアリスが悪気の無いフリをしてクラウドにしがみ付いてティファの心を掻き毟る意地の悪さを見せつけ、ティファは露骨に眉間にシワを寄せる訳でも無く、イラつきを悟られないように僅かに目を細めるに留めて忍耐力の高さを見せる。そしてバレットだけは追われる身であることの事態の深刻さを捉えて動こうとしており、三者三様の性格がしっかりと表現されている。そしてクラウドは話題の中心にいるにもかかわらず、セリフは一切用意されておらず「あ・・・」のような小さな声を漏らすだけで、何一つ自己表現が出来ていない。

このような中身のないキャラクターを主人公に添えてストーリーを動かす場合、情報量の少ないローポリゴンの旧世代ハードであれば、戦闘とメインイベントを繰り返すだけでもクールで格好良い主人公が成立するだろう。しかし、表現豊かで美麗な3D映像を産み出せる現代ハードにて、説得力のある世界観を構築するための長尺ストーリーが必要となった場合、クラウドのような中身の無いキャラクターでは間が持たない。そのため、都合良く狂人的なキャラクターがクラウドの元に集まり、旅するメンバーの内外を問わずに狂気を与えて強引にキャラクターを動かしていくしかないのだ。

ファイナルファンタジーVII リバース ヴィンセント
棺桶で寝ていたと思ったら、奇妙な構図でカットインしてくる狂人。
ファイナルファンタジーVII リバース スラムの住人
スラム街でもハイテンションな狂人。

その最も極端な例は、ストーリーの中盤に訪れるテーマパークであるゴールドソーサーだろう。ゴールドソーサーには原作通りに数々のミニゲームが用意されており、ゴンドラにてクラウドと最も親密度の高いキャラクターとのデートイベントが発生したりと、見どころが盛り沢山のエリアだ。

このようなテーマパークを訪れた場合、クラウドの性格であれば当然ながら興味がない、あるいは無関心を装って誰かに誘われるのを待つところだ。しかしそれでは、リメイクされてPS5の性能を最大限に活かしたリッチなゴールドソーサーをプレイヤーが堪能できず、演出的に何一つ面白く無い。そのため、世界観を壊してでも展開を作るために、筋骨隆々のゴールドソーサーの園長が肉体美を見せつけながらクラウド達を出迎えて、さらには強引に対戦格闘ゲームのようなミニゲームに誘うという流れとなっている。

ファイナルファンタジーVII リバース 園長。
筋肉自慢の狂人。
ファイナルファンタジーVII リバース ミニゲーム
強引な流れでミニゲームに。

このように、中身の無いクラウドを動かすことを目的として、本作では狂人を大量投入して度が過ぎるほどにギャグシーンが続く。しかしながらこのような展開に不快感は無く、逆にこのように狂った内容でも一切妥協せずに、よくぞここまで作り込んでくれたと感心するばかりである。

例えば次の動画は、レッドXIIIが人間に変装してクラウドにカードバトルを申し込むシーンだ。イヌのような生物が神羅兵の服を着て、ムーンウォークで登場してポーズを決めるという異常なシーンに仕上がっている訳だが、動きのキレと滑稽さもさることながら、最後に子供が驚いて泣くシーンを入れるひと手間を忘れないなど実に細かい。まさに作り込みの境地であり、続編発売までに4年も掛かったことにも納得だ。

面白く無いが最終的に満足するミニゲーム

『ファイナルファンタジーVII リバース』はとにかくミニゲームまみれだ。『ファイナルファンタジーVII 』のミニゲームと言えば、オリジナル版ではゴールドソーサーで遊べるものに一定の評価があった。実際に本作でもゴールドソーサーでは様々なミニゲームを遊ぶことができ、それ以外でもカードゲームやコンドルフォートと言った本格的なミニゲームが用意されている。

ファイナルファンタジーVII リバース チョコボレース
マリオカートのようなチョコボレース。
Sara
Sara

スノーボードが無くなったのは残念だが、それなりに作り込まれたミニゲームが複数用意されている。

ゴールドソーサーやカードゲームのような元々期待されていたミニゲーム以外にも、本作では何処に行くのも何をするにも、専用のミニゲームが付いて回る。例えばメインストーリーでは、チョコボに乗るだけであっても、まずはスニーキングミッションの如く物陰に隠れてチョコボに見つからないように進むミニゲームが挿入される。また、イルカの力を借りて高台にジャンプするシーンでは、何故かジャンプ前にイルカに捕まって無駄にジェットスキーの如く波乗りをしたりと、目的が良く分からないミニゲームを強制される。

ファイナルファンタジーVII リバース チョコボステルス
チョコボは可愛いが、一切面白く無いミニゲーム。

このようなミニゲームはサイドクエストでも散見され、中には「一体何をやらされているのだ・・・」と、プレイヤーが混乱してしまいそうな意味の分からないミニゲームも存在する。例えば、次の動画は空き缶を引っ張ってニワトリの気を引いて、飼い主の老婆のところへ誘うミニゲームだ。ニワトリが反応すると空き缶を引っ張るだけであり、何を楽しめば良いのか全く分からない虚無感の溢れるミニゲームである。

メインストーリーにしろサイドクエストにしろ、大して面白く無いミニゲームのオンパレードであり、正直なところストレスに感じることも多い。しかしそれでも、最終的にはミニゲームを通じて「プレイして良かった」と感じられる結末が設けられている点は素晴らしいの一言である。

Sara
Sara

ニワトリの件のオチはギャグ路線だが、何ともシュールなので是非体験してもらいたい。

ちなみに、従来のクラウドのイメージであれば、このようなミニゲームに遭遇しても「興味ないね」で簡単に済ませそうな気がするが、本作では思わず本心が飛び出してくることがある。例えば、コンドルフォートのミニゲームでローポリゴン人間に変身した際には、その姿に対して「悪くない」と評してみたり、モーグリの子供たちを追いかけるミニゲームでは、自身もモーグリに変身して満面の笑みを浮かべて空を飛びまわったりと、何らかのフィルターを介することでクールを装って隠していた感情が発露するシーンが幾つも用意されている。

ファイナルファンタジーVII リバース コンドルフォート
ローポリゴンのダンベル腕のどこが悪く無いのかは分からない。
ファイナルファンタジーVII リバース モーグリ
モーグリに変身したことで満面の笑みを浮かべるクラウド。

以上のように、狂人とミニゲームによってギャグが8割を占めるにもかかわらず、最終的にはプレイヤーに高い満足度を与える本作のストーリーは、奇跡のバランスであると言えるだろう。ただし、このような手法が通じるのは1回だけである。完結編となる次回作ではどのような手法を取るのか今から楽しみだ。

バトル関係は文句の付けようが無い

仲間との連携で深化した戦闘

『ファイナルファンタジーVII リバース』の戦闘システムは、『ファイナルファンタジーVII リメイク』を踏襲しており目新しさは無いものの、新しく追加された要素である連携アクションと連携アビリティのお陰で、前作の時点で高評価であった戦闘が更に深みを増している。

まず、連携アクションについてだが、こちらはガード状態から特定のボタンを押すことで、リソース無しで仲間と一緒に通常攻撃とは異なったアクションを取ることができるシステムだ。例えば近接戦闘が得意なティファであれば、近接攻撃が強力ではあるものの空中に飛んでいるモンスターに対する攻撃手段に乏しく、前作であればそのようなモンスターに対してはATBゲージを消費して魔法を撃つなどする必要があった。しかし本作では連携アクションの「摩天翔」を使えば、仲間の力を使って空中に撃ちあげてもらうことで容易に空中戦へ移行することができるようになっている。

その他にも、遠距離攻撃,ガード,カウンターなど、仲間同士の組み合わせで連携アクションが豊富に用意されている。慣れるまでは連携アクションを使わずに「たたかう」コマンドを連打してしまいがちだが、連携アクションを使いこなせるようになってくると一気に戦い方の幅が広がり、前作からの正統進化した戦闘を楽しむことができるだろう。

次に、連携アビリティは、ATBを消費してアビリティを発動することで貯まる、ATBとは別の専用のゲージを消費して発動できる必殺技のようなものである。連携アビリティはATBの貯まり具合とは無関係に、任意のタイミングで発動できるものの、連携の名の通り専用のゲージを二人分貯める必要がある。

ファイナルファンタジーVII リバース 連携アビリティ
連携アビリティはリミットブレイクと通常アビリティの中間のような位置付け。

効率良く連携アビリティの専用ゲージを貯めて、モンスターに対して大ダメージを与えたいのであれば、積極的な操作キャラクターの切り替えが求められる。そのため、連携アビリティの仕組みによって、各キャラクターを満遍なく切り替えながら使うという良い動機付けになっている。バランスの良いクラウドや、属性攻撃を自在に操れるユフィの使用率が過度に高くなり過ぎないようにする施策だと言えるだろう。

Sara
Sara

仲間にATBを自動で消費してアビリティを発動してくれるマテリアを付けて、連携アビリティの専用ゲージを貯めても良い。

どうしても連携システムに馴染めなかったり、キャラクターの使い分けが面倒だという場合は、スキルツリーから連携アクションや連携アビリティを積極的に習得しないという選択も用意されている。それらの代わりに、最大HPや属性ダメージなどを上昇させるパッシブ系のスキルを習得することでも、キャラクターの強化を図ることができる配慮が嬉しい。

ファイナルファンタジーVII リバース 好感度アップ
連携アビリティを使うことで仲間との好感度に変化が現れる。

ちなみに、連携アビリティを使うことで仲間との好感度に変化が現れるのだが、好感度はゴールドソーザーにおけるデートイベントに影響を及ぼす重要なステータスだ。デートイベントは原作から大幅にパワーアップしており、参加型VR演劇からのゴンドラへの流れは間違いなく本作屈指の名シーンである。そのような名イベントを、好みではないキャラクターと迎えてしまうと勿体ないため、出来る限り連携システムを使って好感度を調整した方が良いだろう。

ファイナルファンタジーVII リバース VR演劇
QTEを織り交ぜたVR演劇は見事。

説得力の産まれた召喚獣とのバトル

『ファイナルファンタジーVII リメイク』における召喚獣は、『オリジナル版ファイナルファンタジーVII』とは異なり、バーチャル空間で召喚獣と戦って勝利することで、対応するマテリアが生成される仕様だった。この仕様は、従来のファイナルファンタジーシリーズにおける召喚獣の立ち位置を考えると、余りにも趣に欠けると言わざるを得なかった。

『ファイナルファンタジーVII リバース』においても、このバーチャル空間で戦ってマテリアを生成するという工程そのものには変化は無い。しかし、本作においては、オープンワールドを巡って召喚獣の遺跡を発見し、それを解析することで召喚獣に関する知識を入手することで、バーチャル空間で対戦可能になるというひと手間が加えられている。

ファイナルファンタジーVII リバース 召喚獣解析
解析作業そのものは、面白く無いミニゲームだが結果はやはり満足できる。

マテリア生成の道程にそれなりの説得力が生まれたこと以外にも、遺跡の解析具合によって召喚獣とのバトルが3段階の難易度で変化するというオマケも用意されている。特に最高難易度の召喚獣との戦闘は、生半可な戦闘能力では太刀打ちできないやり込み要素となっている点も嬉しい仕様変更だ。

カードバトルも面白い

バトルと言えば直接的なモンスターとの戦闘では無いが、行く先々で息抜きとして遊べるカードバトルゲーム「クイーンズブラッド」も難易度はそれほど高く無いものの、気分転換程度に頭を使えて面白い。3ライン制のシンプルな陣取りカードゲームでありながら、幾つかの構築軸に沿って使用するデッキの中身を考える楽しさは、単なるミニゲームとして片付けてしまうには勿体ないぐらいの仕上がりだ。対人戦を意識して作り込んで、「クイーンズブラッド」だけをスピンオフ作品としてリリースして貰いたいところである。

ファイナルファンタジーVII リバース クイーンズブラッド
対戦時に流れるスイングジャズもクールで良い。
Sara
Sara

CPU相手では、バフシナジーデッキに上書きカードを幾つか追加するだけで勝ててしまう。もっと各構築軸のバランスを取ってBO3にするなどすれば、スピンオフ作品としても通用するはず。

神ゲーには至らない不満点の存在

概ね満足度の高い本作だが、以下の3点が明確な不満点であり、残念ながら神ゲーの評価にはならなかった。

ザックス関連の展開はありがちで期待外れ

『ファイナルファンタジーVII リバース』では、『オリジナル版ファイナルファンタジーVII』にて回想シーンにしか登場しないザックスを操作可能だ。ストーリーがある程度進む毎に、回想シーンでは無くプレイヤーと同じ時系列のザックスの操作パートが挿入される。

元々ザックスは、『ファイナルファンタジーVII』の前日譚である『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』にて詳細に描かれるように、神羅の追手との戦いの果てに死亡している。その遺志を継ぐ形でザックスのバスターソードを手にしたクラウドが『ファイナルファンタジーVII』本編へと至った訳だが、前作『ファイナルファンタジーVII リメイク』のエンディングでは、その時系列に矛盾が生じる演出が用意されていた。

そのため、『ファイナルファンタジーVII リバース』では、一体どのような新解釈が生まれるのだろうかと、様々な憶測が飛び交いリメイクならではの展開に大きな期待がされていた。しかし蓋を開けてみると、単にザックスが生き延びた並行世界が描かれていただけであり、驚きに満ちた展開は用意されていなかった。

『オリジナル版ファイナルファンタジーVII』同様に、『ファイナルファンタジーVII リバース』においても、ジェノバ細胞の再結合の現象を現わす「リユニオン」という言葉が度々登場する。そして『ファイナルファンタジーVII リバース』においては、数多に分岐した並行世界を含めた全てがリユニオンされるという設定が追加されており、その影響で最終決戦にて並行世界のザックスが加勢してくるという演出が用意されている。

ファイナルファンタジーVII リバース ザックスとクラウド
共闘シーンだけを切り取って見ると心躍るが・・・

また、最終決戦の連戦では、ザックスが1人でセフィロスと相対するシーンがあるのだが、その際には一人で連携アビリティを発動でき、連携する相手として何処からともなく登場したクラウドと共に技を放つことになる。これは、異次元からパワーを引き出したり、自由自在に並行世界から助力を得るような、マルチバース物にありがちな演出である。

このようなマルチバース物の演出は絵面だけで見ると豪華なのだが、ここ15年ぐらいのゲーム,映画,マンガなどの界隈では散々多用されて来たものである。例え見慣れた演出であったとしても、最後の最後だけはこのような手法でお祭り感を出して盛り上げるのはありだろう。しかし、メインストーリーにてそれなりの時間を掛けてザックスパートを描いたにもかかわらず、このような驚きの無い在り来たりな展開で終わってしまったのでは、発売まで前作から4年も掛かったことも相まって肩透かしを食らったような印象を受けて評価を下げることになった。

ゴンガガとコスモキャニオンの探索が苦痛

次の問題点は、一部のエリアの出来の悪さだ。エリア制のオープンワールドが採用されている『ファイナルファンタジーVII リバース』だが、入り組んで分かりにくいゴンガガとコスモキャニオンの探索が単純に苦痛だ。

ゴンガガエリアはキノコで大ジャンプする山チョコボ、コスモキャニオンでは空を滑空できる空チョコボが登場するのだが、それらのギミックを活用させることを最優先にした結果、“プレイヤー目線で楽しい探索”という概念が完全に忘れられたようなエリア構造になってしまっている。

ファイナルファンタジーVII リバース 空チョコボ
空チョコボは滑空中に右スティックで視点を動かさせて欲しい。急降下せずに下を見たい。

グラスランド、ジュノン、コスタ・デル・ソルと順番に、狂人とミニゲームの祭典をコンプリートする程に楽しんできたが、続くゴンガガとコスモキャニオンでは探索を断念するほどにエリアの出来が悪い。探索はストレスを貯めない範囲で行うことをモットーにプレイしているため、筆者はゴンガガとコスモキャニオンは半分程度しか探索せずに終わることになってしまった。

クラフト素材の分母子が逆転

『ファイナルファンタジーVII リバース』では、同じくスクウェア・エニックスから2023年1月24日に発売された『FORSPOKEN』で問題になったように、分数の表記の分母子が逆転するという現象が発生している。

『ファイナルファンタジーVII リバース』ではフィールド上で集めた素材を使いアイテムを生成するクラフト要素が追加されており、回復アイテムを生成できるほか、オープンワールドの探索を通じて防具の改造キットを発見して生成レシピを発見することで、戦闘を優位に進めることができる。

ファイナルファンタジーVII リバース チョコボの発掘
サブクエストを進めることで、レシピが埋まったランドマークの情報が得られる。

このクラフト要素では、同社から発売された『FORSPOKEN』と同様に、「所持数/消費数」と書くべきところを「消費数/所持数」と逆に書く現象が発生している。クラフトで素材を消費すればするほどに、分数の分母側に表示された素材の所持数が減っていき、最終的には分母が0になってしまうという、数学的に有り得ない表記になっている。

次に掲載するスクリーンショットであれば、ポーションを作るためにセージと星の恵みという素材を5個消費することを示している。消費数が5なので素材を1つも持っていない場合は「0/5=0」であれば成り立つが、その逆である「5/0」などという数式は成立しない。分母に0が来ることは数学的に有り得なのだ。

ファイナルファンタジーVII リバース クラフト画面
見た瞬間に気持ち悪さが漂ってくるクラフト画面。
Sara
Sara

説明するまでも無いと思うが、如何なる場合もゼロは分母に来ない。全世界共通のルールである。

このような指摘をすると、「/に意味は無い」だとか「西暦/月/日と区切りと同じ」といった、苦し紛れで数学的表記の不備から論点をずらした擁護を行う輩が登場する。しかし良く考えてもらいたい。この手のクラフト画面ではプレイヤーは、事前に手持ちの素材から何個の消費アイテムを生成できるか計算することが一般的だ。その時に使われる計算は割り算、つまりは分数だ。西暦や月日は四則演算して何かを得る訳ではないので、その場合は「ただの区切り」として認知・機能するが、このクラフト画面では明確に頭の中で割り算を行っているのだ。そのような状況においても「/がただの区切り」と認識できるというのは無理筋である。

ちなみに、『ファイナルファンタジー16』やスマートフォン向けゲームである『ファイナルファンタジーVII エバークライシス』においては、「所持数/消費数」という正しい表示が行われている。『ファイナルファンタジーVII リバース』が間違って採用している「消費数/所持数」という表記が正しいと主張する場合、これらの作品が間違っているとして否定することになるので注意した方が良いだろう。単にスクウェア・エニックスの開発陣の中に、分数を理解できない人間が一定数紛れ込んでいるというだけの話であり、これらの不整合に対して理に適った説明は困難である。

『FORSPOKEN』のレビューにも同様の記載をしたが、あらゆるシーンにおいて分母子の関係が入れ替わることはあってはならない。分母子の関係以外にも四則演算や微積分を筆頭に、数式とは全世界の共通言語に近いものだからだ。言葉が通じない世界でも数式は通じるのであり、それを勝手に変更することは許されない。

細部まで拘って作られた作品にもかかわらず、このような初歩的な部分を詰め切れておらず点数を下げるのは勿体ない。しかも、直近で発売された他の『ファイナルファンタジーシリーズ』という知的財産の範囲でも統一されていない点も残念である。

評価ポイントのまとめ

『ファイナルファンタジーVII リバース』は、狂気を高いレベルで面白さに昇華させたARPGであり、一部は不満点はあるものの、トータルで見れば非常に満足度の高い作品である。

長所

  • ギャグとシリアスの奇跡のバランス
  • 膨大なミニゲーム
  • 正統進化した戦闘

短所

  • ザックス関連の処理が時間を掛けた割にありきたり
  • ゴンガガとコスモキャニオンの探索性の悪さ
  • クラフト素材の分母子が逆転している
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