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迷路探偵ピエール:ラビリンス・シティ【レビュー/評価】絵本をゲーム化することで産まれる付加価値を知り、ゲーマーとしての知見を深める

総合評価
4 / 5
  • 革新性
  • ユーザビリティ
  • ビジュアル
  • サウンド
  • プレイ継続性
  • コスパ
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総評/評判/感想

優れた子供作品は、大人が遊んでも面白い。それが良く分かる作品が迷路探偵ピエールである。★4の75点としたが、子供が遊ぶのであれば★5の90点だろう。緻密に描き込まれた、情報過多でカオスな世界は見ているだけで面白い。隠されたポイントにインタラクトすることで愉快な演出が飛び出すので、ゴールそっちのけで歩き回りたくなる。絵本のゲーム化も十分にアリだと思わされた作品。リプレイ性が高い訳では無いが、極めて満足度は高い。

点数評価 75点
子供目線なら90点
プレイ状況 クリア
☆は全取得し、収集品は8割ほど。
プレイ時間 約5時間
発売日 2021年7月15日
対応機種 Switch/Steam
プレイ機種 Switch
開発元 Darjeeling
発売元 Pixmain
ジャンル パズル
(ジャンルの考え方はコチラ)

迷路探偵ピエール:ラビリンス・シティは、日本のIC4Designが製作した絵本“迷路探偵ピエール”を元に、フランスのDarjeelingが開発した、2021年7月15日発売のSwitch向けゲーム。いわば逆輸入ゲーム。ジャンルは分類するならばパズルだろうか。

児童向け絵本をゲーム化ということで、当然ながらメインターゲットは筆者のような大人では無い。しかし、往々にして、優れた低年齢層向けの娯楽とは、大人が手に取っても楽しい。あるいは、何らかの気付きを得たり、その作りの良さに感心するものである。迷路探偵ピエールは優れた低年齢層向け作品であり、単なる子供騙しの作品とは一線を画するということが、描き込まれたアートワークを見れば直感的に伝わってくる。そんな絵本がゲームになったらどのような仕上がりになるのか?という強い好奇心で、自分はターゲット層では無いことを自覚しながらもプレイしてみた。

単にクリアするだけには意味は無く、徘徊を楽しむゲーム

まず、見て分かる通り、迷路探偵ピエールは、紛れもなく”ウォーリーを探せ”のフォロワーである。所狭しと人々が配置され、至る所でパニックが発生し、動くはずもない物が動き、ありえない場所に物が配置され、大惨事が一歩手前で踏み止まっているというアレだ。雑多で情報密度が高く、ついつい魅入ってしまうウォーリーを探せのような世界で、主人公を探す代わりにスタートからゴールに導くという迷路要素をプラスしたものが、名探偵ピエールである。

見た瞬間に、多くの人がウォーリーを思い浮かべるだろう。

また、迷路をクリアするだけではなく、星や宝箱がさりげなく風景に溶け込んでいるので、それらを見つけ出す遊びも用意されている。ウォーリーで言うところの、犬の尻尾や、カギ、スクロールなどの落とし物を探すような感覚に近い。

星は比較的見つけやすい場所に置いてある。

緑色の宝箱は意外と目に付かない。このスクショにも1個あるが直ぐに分かるだろうか?

星や宝箱の他にも、ミニゲームで手に入る景品や、ミスターXの残したメモなど、ステージ内に隠されたアイテムを見つけるべく寄り道をしながら、人々の間を抜けてゴールを目指す。

収集物はコレクションとして、トップメニューから閲覧できる。

迷路と言っても、迷路探偵ピエールの原作は低年齢層向けの絵本だ。そのため、ゲームになったとしても、大人であれば背景に隠された(といっても紫色で目立つ)矢印を辿れば即クリアできるだろう。従って、クリアそのものには意味は無く、じっくりと背景を見ながら、好きなだけ寄り道して世界観を楽しむことが主な目的となる。

分岐が多いが矢印通りに進めば直ぐにゴール出来る。

ゴールまでに出会うべきキャラクターも全て表示されている。

なお、ステージには2種類のパターンが用意されている。人でごった返しているウォーリー寄りなステージと、迷路要素が強いステージだ。迷路要素が強いステージは、子供には丁度良い難易度かもしれないが、大人にはさほど難しくも無く、目を見張るべきアートが減ってしまっただけで、少々退屈なステージとなってしまう。

ゴチャゴチャとした人混みメインのステージ。

一瞬騙し絵に見えるような迷路メインのステージ。

絵本を動かすことで産まれた付加価値

迷路探偵ピエールに登場する様々なオブジェクトには、単純な繰り返し運動が設定されている。この動きは僅かなものだが、絵本をゲーム化することで得られた最も大きな付加価値であったと言えるだろう。

前述の通り、迷路探偵ピエールはウォーリーのフォロワーであり、混沌とした絵面がウリだ。静止画でも十分に見応えがあるが、それに少しばかりの動きを加えるだけで、一気に世界観が引き立てられるのだ。

こういう発見があるから、未開拓のジャンルをプレイしたくなる!

下の動画は、一番最初の博物館のステージだ。静止画でも、映画“ナイトミュージアム”の如く展示物が好き勝手に動き回る大惨事が予想できて心躍るのだが、そこに動きが追加されたことで、カオスが一気に加速して面白味が増している。右上では鎧武者が刀を振り、中央のキャンバスでは絵が動き回り、左下ではファラオの首がクシャミをし、さらには巨大なゼウスは向かってくるアシュラに雷を落とすという情報量の多さ。

後半の化け物屋敷のステージも、元からカオスなので動くことで更に見応えが。

また、迷路のクリアや収集物に一切関係の無いインタラクト対象にも動きが組み込まれており、意外な場面で楽しませてくれる。下の動画は、シャンパンタワーを作っている人にインタラクトした時の様子。インタラクト出来ると分かった瞬間に、“倒れるだろうな・・・。”と何となく結末は想像付くのだが、実際にタワーが崩壊する様を見ると失笑してしまうことは間違いない。

多くのインタラクト対象は、箱が開いたり水が出たりと単純なものが多いが、時々不意打ちで笑えるアクションが飛び出してくる。この手の面白さにハマってくると、分岐の正解を示す矢印を見つけても、まずは間違った分岐に進んで隅々まで調べたくなるだろう。

箱の中に箱が大量に入っているだけで、意味の無い物もあったり・・・

 3.所々に大人向けなネタが仕込まれている

迷路探偵ピエール:ラビリンス・シティは、前述の通り子供向けのゲームだが、所々に明らかに子供には理解出来ないようなサブカルネタが仕込まれている。有名どころを挙げると、スターウォーズやドラゴンボールだ。

意味ありげなボタンを押すと、穴の中からミレニアムファルコンとタイファイターっぽいもの出現し飛び去る。

宝箱の中身は、どう見てもドラゴンボールの四星球。

また、飛び出すオブジェクトや、宝箱のアイテム以外に、人々との会話にもネタが仕込まれている。下の動画は、Z指定ゲームのスカイリムに登場し、“行動を起こすことに腰が重い様子の表現”として、インターネット・ミームの定番になった名言“膝の矢を受ける”が登場するシーンだ。

これらの収集品や会話のサブカルネタは、ゲーム内で何らかの場所をインタラクトすることによって発生する。そのため、原作の迷路探偵には無い、ゲームオリジナルのものだろう。ゲーム化するにあたって、子供以外も遊ぶことを見越して大人向けにもネタを仕込んできたのだと思われる。サブカルネタは刺さる人には刺さってSNSで拡散されるため、この手の試みは製作者の趣味以外にも、セールスの戦略としても優秀である。

迷路探偵ピエール:ラビリンス・シティは、難易度が高いゲームを日々プレイしている大人であっても、偶にはノンビリと息抜きするゲームとして最適な作品である。クリア後には、童心に帰ってウォーリーを探せを真面目に1冊読み終えたような気分になるはずだ。

筆者はクリア時のアイテム収集率は8割程度だった。もう一周して探索をやり残した分岐を辿れば100%コンプリート出来るだろうが、そこまでやるとなると面倒に感じる。かといって、ネットで答えを探して収集アイテムを埋めるような行為に意味は無いゲームなので、大人にとってはリプレイ制は低いだろう。

一方で、この手の探索をムキになってやり込むような小学生の子供にとっては、確実に優秀な暇つぶしアイテムになるはずだ。また、原作の迷宮探偵を1冊与えようと思っているのであれば、Switchの迷路探偵ピエール:ラビリンス・シティを与えた方が良いだろう。値段は本よりも安く、迷路の絵を見るだけでは無くキャラクター操作で楽しむことができ、色々な場所にインタラクト出来て、動きもあって見応えがあるので付加価値が高い。

唯一、残念な点を挙げるとすれば、ステージとステージの間に挿入される、お話の字幕の漢字にルビが付いていないことだ。音声は英語オンリーで、難しい内容を話している訳では無いが、ターゲットである大半の子供達は字幕を読むことになる。しかし、字幕にルビが無いので、漢字を読めない可能性が高い。ローカライズにあたって、漢字にルビを振ることの必要性に気が付いていないのは、パブリッシャーであるPixmainの失態。アップデートで早々に対応して欲しい。ルビさえあれば、大人向けには★4の75点でも、子供向けには★5の100点になるはずだ。

お話の演出そのものは良く、ルビが無いことが実に勿体ない。

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