点数評価 | 75点 |
プレイ状況 | 1周クリア |
クリア時間 | 約6時間 |
プレイ時間 | 約6時間 |
発売日 | 家庭用機:2022年12月1日 Steam:2018年7月13日 |
対応機種 | Switch/PS4/PS5/Steam Xbox One |
プレイ機種 | Steam |
開発元 | O.T.K Games |
発売元 | 家庭用機:レイニーフロッグ Steam:SakuraGame |
ジャンル | 2D横スクロールアクションRPG ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 無し |
ソード オブ ザ バークラント (SWORD OF THE VAGRANT)は、今にも零れ落ちそうなボディラインと爽快感のある戦闘シーンは、説明されなければヴァニラウェアの新作と勘違いする作品だ。アクションのバリエーションが少ないため雑魚戦はやや飽きてくるものの、各ボスの動きはどれもユニークで、緊急回避から連撃を叩き込む軽快なアクションは最後まで楽しい2DアクションRPGだ。ストーリー面では、世界観自体は悪くないと思うが、サブキャラクターの扱いがイマイチに感じた。とはいえ、470円という値段でヴァニラウェアのようなグラフィックを楽しめるゲームと考えれば破格だろう。筆者はSteamセールにて82円で購入しており十分過ぎる満足感を得ることが出来た。
ソード オブ ザ バークラント (SWORD OF THE VAGRANT)は、ヴァニラウェアを彷彿させるグラフィックがウリのサイドビュー型アクションゲーム。Steam版はザ バークラント (The Vagrant)として発売されていたが、2022年12月1日に家庭用機向けに移植されるにあたり、ソード オブ ザ バークラントとして改題されている。
あ、野生のヴァニラウェアが飛び出してきた!
ソード オブ ザ バークラントは、まずその見た目からしてヴァニラウェアの新作だと勘違いする人が続出しそうなゲームだ。
ヴァニラウェアと言えば、色彩豊かで厚塗りな手描き風のグラフィックが特徴的だ。今回レビューする、中国のデベロッパーO.T.K Gamesが開発したソード オブ ザ バークラントは、その特徴を完璧なまでに倣っている。
ショップに陳列された商品の数々、所狭しと並べられたポーションの瓶、鬱蒼と生い茂った草木などなど、見事に作り込まれた背景のアートワークは本家に負けず劣らず素晴らしい。
倣っているのは塗りだけでは無く、キャラクターデザインも見事に再現されている。主人公ヴィヴィアンを始め、登場するキャラクター達は、後数ミリでもズレると服から中身が零れ落ちそうな、度の過ぎるグラマラスな体形を披露してくれる。朧村正の紺菊や、ドラゴンズクラウンのソーサレスに代表される、単純に紳士向けに強調されているだけでは無く、一種のアートとして極まったような、ヴァニラウェアが得意とするボディラインのデザインが踏襲されているのだ。
何も知らない人に、ヴァニラウェア新作だと言って見せれば間違いなく信じるレベルのグラフィック!
次にヴァニラウェアの拘りと言えば、ゲーム内に登場する美味しそうな料理の数々だ。特に朧村正においては、プルンプルンと弾力たっぷりに揺れ動く和菓子が話題になったことを記憶している人も居るだろう。ソード オブ ザ バークラントにも、食べることでバフ効果を得ることができる料理が多数登場し、食事に伴う揺れ動きこそ実装されていないが、料理の1枚絵は本家同様に見事な仕上がりとなっている。
このように、ソード オブ ザ バークラントは、“野生のヴァニラウェア”という表現がしっくりくるビジュアルを持った作品だ。
アクションゲームとしては平凡
強烈なまでにヴァニラウェアのグラフィックをリスペクトを発揮しているソード オブ ザ バークラントのゲームジャンルは、やはり同社が得意とする2DアクションRPGだ。しかし残念なことに、2Dアクションゲームとしては特筆するべき特徴は持ち合わせていない。クリアまで約6時間の小振りなインディーゲームなので、多くを求めることは酷なのだが、やや平凡と言わざるを得ない。
まず、プレイアブルキャラクターは主人公ヴィヴィアンだけだ。そしてヴィヴィアンが使用する武器種はロングソードで固定されている。攻撃力や属性が異なる武器が複数用意されているものの、攻撃モーションは全て共通である。
攻撃手段には弱攻撃、強攻撃、レイジ攻撃(ゲージ消費の必殺技)の3種類が用意されており、弱・強で回転斬り、弱・弱・強で打ち上げ、弱・弱・弱・強で突きが発動する。一定距離を移動する度に、閉じた狭い範囲内で強制戦闘が始まるタイプのアクションゲームなので、各種攻撃と緊急回避で立ち回り、敵をまとめてから必殺技を当てるという戦い方が基本となる。
ルーンストーンというシステムで、武器と防具にそれぞれ最大4つのサブ効果を付与して性能を好きにカスタマイズできるのだが、元々の攻撃手段のバリエーションが少ないため、強化したところで立ち回りそのものに影響を及ぼさず、後から手に入れた強いルーンストーンを順次付け替えていくだけのシステムになっている。戦い方の幅を広げるために用意されたシステムのはずだが、単純な性能アップの機能にしか使えない点は残念だ。
このように、攻撃バリエーションの少なさや、カスタマイズ性の低さから、ザコ敵との戦いは最初こそ面白いものの、中盤からは少々飽きてくる。
ゲームの進行にはステージ制が採用されており、ステージは分岐を含む多数の小部屋にて構成されている。移動可能な場所に移動すると主人公の頭の上に“GO”の文字が表示されるので、そこから他の部屋に移動できる仕組みだ。
各ステージにはボスが用意されており、倒せば封鎖されていた通路が解放されて次のステージに進めるようになる。ボス戦も道中の戦闘と同じく、ひたすら避けて攻撃するだけのシンプルなものとなっている。しかし、各ボスはいずれもユニークな攻撃をしてくるので、それを上手く見切って連撃を叩き込む立ち回りが重要になり、プレイヤーの対応力が試される。そのため、最後まで飽きずに楽しむことが出来るだろう。
公式の情報によると、ボスは主人公の状態に応じて行動パターンを変えるAIを搭載しているらしく、アクションゲームが得意なプレイヤーでも満足できる高難易度の戦いをウリにしているようだ。筆者は1週目は通常難易度で遊んだため、そこまで難しさを感じることは無かったが、4段階の難易度が用意されていることから、高難易度においては相当に苛烈な戦闘が待ち構えていることが推測できる。
なお、ステージ間はファストトラベルを利用して自由に行き来することができるので、ボスを倒した後でもステージの未踏破部分を探索可能だ。また、ステージクリア後に倒したボスの元を訪れることで、強化されたボスとの再戦も用意されている。
再戦ボスは通常難易度でもかなり難しい。最高難易度では一筋縄ではいかない。
ソード オブ ザ バークラントは、マップだけを見ると探索型ゲーム(所謂メトロイドヴァニア)だと思うかもしれないが、移動系スキルを手に入れながら道を切り開くタイプの遊びは用意されていない。経験値を消費することで任意にステータスを伸ばすことがスキルツリーが用意されており、その中で移動に使える空中ジャンプや空中回避を習得できるが、これらはクリアに必須という訳ではない。
ステージ内に用意された分岐は、一方がボスに向かう正規ルートで、もう一方にはスキルやスキルツリー解放のためのアイテムが用意されているパターンが殆どだ。これらのアイテムを取得しない限りは主人公の成長が頭打ちとなってしまうので、結局は全ての分岐を回ることになる。そのため、ステージ構成の割にはプレイの自由度は低く、せっかく多数の分岐を用意するのであれば、何かもう一工夫して遊びを用意して欲しいと感じた。
ストーリーはサブキャラクターの描写が足りない
ソード オブ ザ バークラントは、ヴァニラウェアに迫るような質の高いグラフィックや、ゲーム規模相応のアクションは十分に評価できるのだが、ストーリー面では設定をやや活かしきれていない。
核心的なネタバレは伏せるが、ソード オブ ザ バークラントは主人公ヴィヴィアンが、アカデミーと呼ばれる組織と戦いながら、旅の中で一族の秘密を明らかにするストーリーだ。要所では魅力的な1枚絵が差し込まれストーリーを盛り上げようとし、テキスト量もそれなりに多い。
しかしながら、意味ありげに登場するものの直ぐに退場してしまうキャラクターや、最初から最後まで登場するものの見せ場が無いキャラクターなど、主人公ヴィヴィアン以外のキャラクターの扱いはさほど作り込まれていない。それであればストーリーは徹底的に淡泊にして、バトルに集中させても良かっただろう。
ローカライズの限界か、吹き出しサイズに対して文字数が多すぎて読みにくいこともある。
評価ポイントのまとめ
幾ばくかの不満は残るものの、提供価格を考える十分なクオリティである。むしろこの値段で、ヴァニラウェア感を経験させてもらえたことに感謝したい。グラフィックを堪能しながらサクっとシンプルなアクションを遊びたい人は購入すると良いだろう。
長所
- ヴァニラウェア風のグラフィック
- 軽快なアクション
- 圧倒的な低価格(Steam)
短所
- サブキャラクターの見せ方
- マップ構造とアイテムの関係性
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