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【メグとばけもの】レビュー: ステータスと生活風景で、少女と化け物を対比した見せ方が素晴らしい

点数評価
クリア時間約3.5時間
プレイ時間約3.5時間
プレイ状況クリア
発売日2023年3月2日
対応機種Switch/Steam
Xbox Series/Xbox One
プレイ機種Switch
開発元Odencat
発売元Odencat
ジャンルアドベンチャーRPG
ジャンルの考え方
ネタバレ核心には触れない程度
総評/評判/感想

メグとばけものは、感動系の短編作品として良作である。魔界では最強の魔物と、魔界では最弱の少女が組み合わさるアンバランスさと、両者の成長が心に染みる作品だ。特にメッセージ性の強い数値の見せ方が秀逸であり、そのメッセージ性を評価したい。ただし、設定の掘り下げは少なくストーリーも駆け足であり、短編で終わらせてしまったことの勿体無さも感じた。インディーゲームとしては珍しくフィジカル版のサントラが発売されているので買うべし。

総合評価
 (4)
革新性
 (4)
ユーザビリティ
 (4)
ビジュアル
 (4)
サウンド
 (5)
プレイ継続性
 (4)
コストパフォーマンス
 (3)

化け物と少女の交流

メグとばけものは、魔界に住む最強の魔物『ロイ』と、魔界に迷い込んだ少女『メグ』の交流を描く、感動系の短編アドベンチャーゲームだ。魔界に落ちた人間は魔物に喰われる運命だが、とある理由から人間を捕食対象としていない魔物ロイと、“泣くと世界が終わる”という少女メグが偶然出会うことで、物語は進んでいく。

注意

メグとばけものは、サイドクエストを全てクリアしてもエンディングまで約3時間半という、短いアドベンチャーゲームだ。当レビューでは完全なネタバレは控えるものの、ゲームの規模の関係上、一部の設定については言及せざるを得ない。従って、完全に情報をシャットダウンしてプレイしたい人は注意してもらいたい。

ストーリーの舞台となる魔界とは、人間たちが都合の悪くなった物を捨て去る大穴であり、少女メグも人間界から廃棄された存在だ。

メグとばけもの 会話シーン
廃棄世界で生きる魔物たち。

ロイは当初、メグと関わることの面倒くささから“泣く間もなく始末すれば良い”などと、非常に冷酷な発言をする。しかし、同じく魔物であるゴランに諭されて、メグの面倒を見ることになり、メグの母親探しを開始する。

メグとばけものの面白さは、異常な外観をした化け物であるロイと、泣くだけで世界を滅亡させてしまうメグ少女が、価値観の壁を乗り越えて交流する奇妙な様子に他ならない。ロイは、“マジックタール”という食べ物を集めること以外に関心を持たないという、一風変わった生活を送っていたが、メグとの交流を経て徐々に周囲に関心を持ち考え方にも変化が生じる。ロイに現れた変化が最終的にどうなるかは、自分でプレイして確かめよう。

メグとばけものは、感動系の泣けるタイプのゲームとして喧伝されている。しかし、ストーリー自体は常にシリアスという訳ではなく、魔物が少女の面倒を見るという絵面や、常識の欠片も無いロイのセリフなどから、思わず笑いそうになるシーンが多いことも本作の魅力の一つだ。

メグとばけもの おうまさん
“おうまさん”を目撃してしまったゴランに対するロイのセリフは・・・
メグとばけもの 母親探し
良く分からない肉片を拾ってきて見せつける、何も考えていないロイ。

最強と最弱のコマンドバトル

体力だけでは勝てないバトル

メグとばけもののストーリーの要所では、メグを狙う魔物達を相手にコマンド式のバトルが発生する。戦闘自体はシンプルで、攻撃,ガード,回復のタイミングを計るだけなので特に難しいものではないのだが、これまでにない一風変わったシステムが採用されている。

まず、化け物と称されるロイはHP99999という尋常ではないステータスを誇っており、そこら辺の魔物の攻撃を喰らったところで何の影響もない。一部の超強敵を相手にする場合であっても、散々ため込んだマジックタールを食することでHPを6万~8万ほど回復できるため、基本的には敵の攻撃によって倒れることは無い。そして攻撃手段は3種類のパンチだけだが、その威力は圧倒的だ。

メグとばけもの 戦闘シーン
パンチ、スーパーパンチ、ウルトラパンチの3種類で攻撃。

そんな最強生物ロイだが、“メグが泣くとゲームオーバー”という制約を背負っており、さらにメグはロイに懐いて側を離れない。そのため、戦闘の最中であっても常にメグの状態をチェックしなければならない。敵から攻撃はロイが完璧に受けきるためメグに被害が及ぶことは無いのだが、メグはロイが攻撃される様子に驚いて段々と恐怖心を積み重ねていく。

ロイの99999というHPの隣に表示される小さな数字は、少女のメンタルヘルスを現わしており、ロイが敵から攻撃を受ける度に低下していく。ロイ自身は最強であり敵の攻撃など何一つ気にしていないが、幼い少女メグはロイが攻撃を受ける様を間近で見ることによって、心にダメージを負っていくのだ。

5桁カンストという最強体力と、僅か2桁の幼い心。化け物の大きな背中と、その後ろに隠れる小さな少女。攻撃モーションは無く何の派手さも無い戦闘だが、2人の数値と立ち絵は強烈なメッセージ性を持っており、しみじみと感じ入るものがある。

メグとばけもの ザコ敵戦
戦闘シーン1枚だけで、怪物に芽生えた優しさを感じることが出来る。

遊んでメンタルを回復せよ

メグとばけものの戦闘では、ロイが実質無傷に近かったとしても、メグが怖がって泣けばゲームオーバーになる。そのため、プレイヤーは必要に応じて少女のメンタルヘルスを回復しなければならない。魔界は人間たちの破棄場であることから、ストーリー進行に応じて幾つかの玩具を入手することができ、戦闘にそれらを使うことでメグのメンタルヘルスを回復することが出来る。

つまり、玩具が一般的なRPGにおける薬草やポーションの役割を兼ねているのだが、それを使用した際に挿入されるアニメーションがなんともシュールであり、ぎこちないながらも化け物なりに子供をあやす姿が何とも感動的だ。

次の動画は、ロイの体力は99800以上残っているものの、メグが泣きそうになったのでロケットの玩具で機嫌を取るシーンだ。“一体何が楽しいんだ?”とでも言いたそうに口を結んで険しい表情をしたロイが、手に持ったロケットを上下させながら、目でその動きをしっかりと追っている動作が印象的である。超美麗で精彩なドット絵をウリにしたゲームでは無いが、少ない情報量でもしっかりと感情が伝わってくる、演出の素晴らしさを感じることが出来るだろう。

戦闘はイベント限定

コマンド式バトル型のRPGの体裁をしているメグとばけものだが、ランダムやシンボルで敵とエンカウントすることは無く、戦闘はイベントのみで発生する。そのため、戦闘途中でも幾つかのセリフが表示され、ストーリーが進行していく。

メグとばけもの 会話シーン
戦闘では必ず何らかの会話が発生。

なお、戦闘に勝利することによって、一般的なRPGと同様にロイもメグもステータスが上昇していく。戦闘終了後にロイは攻撃力と防御力が上昇するが、元々のステータスが異常に高いので、ステータスアップは誤差程度であり意味を持たない。一方で、メグは戦闘を重ねる度にメンタルの最大値が大きく増進していく。イベント戦闘しか発生しない作品なので、ステータス値には何の意味も無いのだが、ロイとメグの成長という演出上は非常に大きな意味を持っている。

ロイのステータスの微増は、戦闘を通じて得るものが無いことを意味しており、メグのメンタルヘルスの大きな増進は、ロイと行動を共にしたことによる心理的な成長を現わしている。一方で戦闘が終わり、生活パートに入れば2人の成長関係は逆転する。化け物にも懐き魔界に順応するメグの生活力の高さは、仮に数値化すれば実質的にはカンストしていると言えるだろう。そんなメグと嫌々ながらも触れ合うことで、“マジックタール以外に興味を示さない”という、余りにも低かったロイの生活力は大きく向上していく。

怪物が持つ99999という大きな数字に目が行きがちだが、少女が持つ二桁の小さな数字や、無駄に上昇しているように見えるステータスも意味を持っており、更には数値化できない生活パートにおける少女と化け物の関係にまで波及している。立ち絵と同じく、このようなメッセージ性を持った演出を好むか否かで、当作品に対する評価は大きく変わるだろう。

設定の掘り下げは無く、ストーリーも短い

少女と化け物の奇妙な関係を上手く描いた当作品だが、難点はクリアまでが短すぎることだろう。サイドクエストを全部クリアしたとしても、エンディングまでは3時間半ぐらいで到達できる。途中、エンディングと見せかけてから続く展開もあるが、クリア後には“話をさらにもう一転させて続けて欲しかった”という思いが芽生えた。

魔界は人間たちの廃棄場であり、ロイがマジックタールに固執するという流れから、ロイは人間にとって邪魔な存在であるマジックタール(デブリ)を除去するために人工的に作られたという設定には早々に辿り着くだろう。そこまでは良いのだが、マジックタールの詳細や、ロイの製造秘話などが詳しく語られることは無く残念だ。

Sara
Sara

せめて廃棄物を調べること、世界観を考察できるアイテムを拾えれば良かった。

また、ストーリーが進むと、ロイの部屋には机が増えたり、メグが寝るためのマットが持ち込まれたりするが、その過程が描かれることはない。玩具に関してもロケットを拾いに行くシーンこそあるが、その他の玩具についてはいつの間にか部屋に用意されている。ロイとメグの関係性を楽しむ作品であるため、何らかのきっかけを通じてそれらを探しに行く展開はメインクエストに盛り込んで欲しかったところだ。

設定の掘り下げの無さと、ストーリーの短さが難点だが、メグとばけものは決して悪い作品ではない。しかし、大きな伸び代を持っているが、それを温存したまま最後まで使わずに小さく収まってしまっている。

ロイの頑丈さにおんぶにだっこで進むシーンや、ロイの体力,ゴランの知識,メグの身軽さという、それぞれの得意分野を発揮して難関を通り抜けるシーンなど、戦闘以外の見せ場もあるがそれらは限定的だ。ストーリーの根幹部分は現状のままで良いが、もっと枝葉の部分を肉付けをして設定を活かした遊びを作り込めば、神ゲーを狙えただけに勿体ないという印象を受けた。次回作では自信をもって、長編作品に挑んでもらいたい。

メグとばけもの 崖登り
自慢の体力で二人を一気に運ぶロイ。
メグとばけもの レーザーパズル
ロイが体でレーザーを受け止めて、他の二人を先に活かせるシーン。

評価ポイントのまとめ

メグとばけものは、細かい設定を気にせずに素朴な感動系の物語を楽しみたい人にお勧めしたい。

なお、サウンドトラックがAmazonMusicなどで配信中だ。初回限定ポスタージャケット仕様のフィジカル版も発売中。

長所

  • 化け物が少女を守るという面白い構図
  • 感動のストーリー
  • 良質なサウンドトラック

短所

  • ストーリーが短い
  • 設定について解説無し
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