点数評価 | 90点 |
クリア時間 | 約15時間 |
プレイ時間 | 約15時間 |
プレイ状況 | STANDARDでクリア トロフィー:30% |
発売日 | 2023年3月24日 |
対応機種 | Steam/PS5/PS4 Xbox (Gamepass) |
プレイ機種 | PS5 |
開発元 | カプコン |
発売元 | カプコン |
ジャンル | サバイバルホラー ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 無し |
バイオハザード RE:4は、戦闘シーンが非常に面白いTPS(サードパーソン・シューティングゲーム)だ。移動速度の遅さ、レティクル収束の制限、能動的に格闘や回避ができないなど、それらの制約が全て良い方向へ繋がっており、バトルスピードが絶妙で適度な緊張感が続く一人vs集団の戦闘シーンを存分に楽しむことが出来る。サバイバルホラーという割には恐怖が薄い、同伴者であるアシュリーのモードが退屈、至る所でツッコミたくなるギャグシーンが登場するなど、幾つかの不満点を考慮したとしても高評価は揺るがない、圧倒的な完成度の高さだ。恐らく人によっては神ゲーに分類するだろう。ペラペラソースを筆頭に、空耳を公式化したプロモーションも◎
【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
スローテンポと不自由さが生んだ最高級のTPS
『バイオハザード RE:4』は、2005年に発売された『バイオハザード4』のリメイク作。言わずと知れたサバイバルホラーゲーム、バイオハザードシリーズのナンバリング4作目であり、発売から約18年経ってのリメイクとなった。
バイオハザードは、ナンバリング以外の派生作品やDLCも含めると、実に30タイトル以上が発売されている人気シリーズだ。そのため、シリーズに対してどの程度入れ込んでいるかによって、本作の評価は変わる可能性がある。そのため、まずは筆者のバイオハザード歴を書いておく。
筆者がプレイしたことのあるバイオハザード関連ゲームは、第1作のDS移植版である『バイオハザード デッドリーサイレンス』と、対戦ゲームである『バイオハザード RE:バース』だけだ。ナンバリング作品は25周年で発売されたエピソードセレクションVol.1~3にて購入済みだが、結局プレイせずにバイオハザード RE:4の発売を迎えた。後は最初期のバイオハザード1及び2の発売時に、他人がプレイしている場面を見ていたことがある程度だ。プレイしようと思いつつも、他作品との兼ね合いがあり、プレイするタイミングを逃し続けて来た。
従って当レビューは、シリーズに対して何の思い入れも無い状態でプレイした目線であることを、頭の片隅に入れておいてもらいたい。
STANDARDモードにて、エイムアシスト無しでプレイ。
バイオハザード RE:4を遊んで最初に感じたことは、“戦闘シーンが多い”である。バイオハザードシリーズはジャンルとしてサバイバルホラーを謳っているため、プレイする前の段階では、敵に怯えながら物陰に隠れて、索敵をやり過ごしながら進むものだと思っていた。
しかし、実際にプレイしてみると想像とは全く異なり、ワラワラと至ることろから出現する狂った村人を相手に、1vs多数で戦い続けるシーンが圧倒的に多い。そしてなによりも、この多数の敵を相手に繰り広げられる戦闘シーンの出来栄えが素晴らしかった。
バイオハザード RE:4のバトルスピードは、一般的なTPSと比較すると遅い。主人公レオンの移動速度はこの手のTPSの中ではかなり遅い方であり、銃を構えた状態ではさらに遅くなる。また、足を完全に止めなければハンドガンのレティクルが収束しないため、敵の軍団を目の前にしても激しく動き回ることは許されない。
その一方で敵の動きも緩慢であり、プレイヤーを目の前に視認していたとしても即座に攻撃してくる訳ではなく、ネタにされがちな空耳と共に距離を詰めてから、十分な予備動作を伴って攻撃をしてくる。
また、敵の耐久力は全体的にかなり高く、序盤の敵であってもハンドガンの胴撃ちでは簡単に仕留めることはできず、時折出現する体格の良い敵の場合はショットガンの近距離射撃も複数回耐える。
弾薬制限と敵の高耐久力のお陰で、本作では冷静にヘッドショットを決めてから、ひるんだ敵にメレーコンボを決めてダメージを稼ぎ、地面にダウンした敵に対してはナイフ追撃でトドメを刺すなどして、無駄弾を撃つことを避けつつ確実に敵を一体ずつ処理することを求められる。
また、敵を倒すと村人の中から寄生虫であるプラーガの一部が飛び出し、大幅に戦闘力が上昇した状態で復活して襲ってくることがある。この状態であっても敵に予備動作が多めなことには変わりないが、一撃必殺となる攻撃が多数存在するため、素早く他の敵を倒して安全地帯を確保しながら距離を取って戦うことが重要となる。また、そのような状況では温存してきた武器を切るタイミングの判断力が試されることになる。
このような一連の戦闘シーンには、TPSとしての派手さや爽快感は伴わない。昨今のバトルスピードが早いゲームに慣れているプレイヤーの場合、最初はもどかしさを感じる可能性が高いだろう。
しかし、じわじわと狭められる包囲網を、正確なエイムと判断力で切り抜ける必要がある戦闘シーンは手に汗握る緊張感があり、的確に有効打を与えながら窮地を切り抜けられると大きな達成感を得られる。
また、狂気を孕んだ形相の村人や、見た目も実際の攻撃も凶悪な寄生虫に数で押されるシーンでは、プレイヤーは非常に大きなプレッシャーを感じることになる。前述の通り敵の攻撃速度は決して早くなく、熟練すれば焦らなければ余裕をもって対処できるようになるのだが、初回プレイにおいてはプレイヤーに与えられる心理的な負荷は大きく、まさに期待していたサバイバルホラー体験を得ることが出来る。
いわゆる、適度なストレス。猛攻を耐えきった際の解放感をしっかりと味わいたい。
バイオハザード RE:4のレオンは射撃によって怯んでいる敵に対して、強烈なキックを繰り出すことが出来る。蹴られた敵は大きく吹き飛び、他の敵を巻き込んで派手に転倒する。また、こちらを見失っている敵に対しては、後ろからナイフによる致命打を与えることが出来る。
射撃以外の近接戦闘もスペシャリストなレオンだが、敵がひるまない限りは得意のキックを繰り出すことはできない。ナイフによる攻撃は、致命打以外では大したダメージを与えられないうえに、耐久値が設定されているために直ぐに使えなくなってしまう。また、緊急回避はプレイヤーの意思で発動することはできず、特定の攻撃に対してのみボタンが表示される仕様となっている。
圧倒的な身体能力を誇るレオンが、近接攻撃と緊急回避を自らの意思で使用できない理由は特に無く、単純にゲーム性を優先した制約であり、プレイ途中に違和感を覚えたプレイヤーも多いだろう。しかし、これらの能動的なアクションが制限されていることにより、位置取りや最適な武器選択など、プレイヤーのゲームに対する理解度の重要性が増しており、本作の面白さに直結している。
次の動画は、狭所で多数の敵に取り囲まれるも武器と格闘を使い分けて切り抜けるという、上記で説明したような面白い体験が凝縮された、筆者がお気に入りのシーンだ。敵が次から次へと押し寄せてきて非常に圧迫感を覚えて緊張するシーンなのだが、虎の子の閃光手榴弾を使うタイミングを計りながら武器を切り替えて応戦し、上手く脱出できた際の達成感は非常に大きかった。
ストーリー的には1作目しか把握していないため、一部の会話は理解できないこともあったが、そのようなことは些細に感じるほどに戦闘が楽しい。
バイオハザード RE:4は入手できる弾数に制限があり、近接格闘を意識せずに適当に射撃していると弾不足に陥ってしまう。しかしながら、少なくともSTANDARDの難易度においては詰むことは無い。
操作に慣れないうちは弾が枯渇気味で、チャプターのボスに辿り着いたころには弾数が心許ないという状況も多いのだが、ボス戦では親切にも弾入りの木箱や樽が置いてある。しかも分かりやすいように黄色いペンキも付着しており見逃すことも無い。
また、ボス戦の途中で弾切れになって手詰まりにならないように、木箱以外にも何らかのオブジェクトから弾が時折出現する。クリア不能にならないようにアイテムが供給される仕様は、シリーズ初心者からすれば嬉しい配慮だ。
アシュリーパートはイマイチ
バイオハザード RE:4には、レオンが救出目標にしているアシュリーを操作するパートが用意されている。一般人であるアシュリーは銃やナイフによる攻撃を行うことが出来ずに、逃げるだけの展開となる。
武器が使えずに逃げるという展開も、本作はホラーゲームに分類されるため大歓迎だ。しかし、その内容は単純に走り回って逃げるか、広い所におびき寄せて回避するだけとなっている。代わりに謎解きの難易度がアップする訳でも無く、単に武器が使えなくなったという状況でしかなく、アシュリーパートの攻略によって達成感を得ることは無いだろう。
武器が使えないことによって恐怖感が増していることもなく、アシュリーパートで登場する敵は見た目がグロテスクではなく、逆に恐怖感は大きく軽減されている。レオンパートとは一転して、最大限にホラー演出を強化して欲しかったところである。
非現実的な展開が多い
バイオハザード RE:4は、戦闘シーンが圧倒的に面白い作品なのだが、『いや、そうはならんやろ…』とツッコミを入れたくなる非現実的なシーンが点在しており、何度か興覚めしてしまうことがあった。
プレイして気になるシーンはゲーム開始早々にやってくる。ハンドガンしか使えない状態のレオンに対して、高耐久な覆面男が一撃必殺のチェーンソーを振り回して迫ってくるのだが、移動を封じるトラバサミが多数地面に設置されていたりと、操作のおぼつかない最序盤であることも相まって、本作を代表するホラーなシーンとなっている。
そんな重要なホラーシーンにも関わらず、あろうことかチェーンソーをナイフでパリィ出来てしまう。そのため、折角のホラーシーンが失笑を誘うギャグシーンに変わってしまう。
一部の攻撃をナイフでパリィできることは結構だが、流石にチェーンソーともなれば、咄嗟に表示されるQTEを成功させることで特殊な回避演出が入り、自慢の蹴りをお見舞いして距離を取るようなアクションにするべきだっただろう。実際に、一部のボス戦ではそのような演出が用意されている。
高耐久な敵を相手にシビアな弾数管理を繰り返してきたはずが、池に住む怪物を相手にするシーンでは急に、弾数が無限に設定されたモリを投擲可能になる。揺れるボートの上からは水中の敵を正確に狙うことは難いため、モリを何十発と投げ続けるという、何とも滑稽なシーンが続くことになる。
このような場面であれば、例えば、一発当てればクリアとなるが用意されたモリは5本だけであり、レオン自身は攻撃を回避できてもボートの耐久値が削られるので時間も掛けられないという設定にすれば、極限状態でも冷静に狙いを定める力を求められる遊びに出来たはずだ。それを活かせず雑にモリを投げ続けて終わってしまうのは何とも勿体ない。
バイオハザード RE:4では、チャプターが切り替わる度に行商人が現れて大量の武器を販売し、武器の強化もしてくれる。一体どういう設定なのか何の説明もなく、当作品の世界の理から完全に逸脱してしまっている。
また、通貨による売買や強化を成立させるために、あらゆる敵が通貨をドロップする点も不可解だ。狂った村人が金を落とすことは理解できるが、犬やカラスまで通貨をドロップする必要があったのだろうか。通貨を集める手段を設定するのであれば、通貨のドロップは人間タイプの敵に限定し、屋内にインタラクト出来るオブジェクトを増やすか、貴重品の買取価格を高く設定すれば良かったはずだ。
カラスが低確率で宝石をドロップするぐらいならまだ分かるが、弾も通貨もドロップする。
さらにショップには小綺麗なエレベーターが設置されており、それに乗って降りると地下射的屋が絶賛営業中だ。射的屋は武器性能に関するチュートリアルを兼ねているため重要なことは分かるが、流石に射的屋は世界観に完全にミスマッチである。
他にも、アイテム関連には違和感を覚えるシーンが多い。生魚や生卵、死んだ蛇をそのまま食して体力を回復できるのだが、これらはハーブや緊急スプレーを使い切ってしまった状況を想定した救済用の回復アイテムなのだろう。そうだとしても、生魚や蛇をそのまま消費するのはおかしいので、所持アイテムに応じてショップで販売されるアイテムが変わったり、ゲームオーバーのリトライ時には回復アイテム入りの樽が設置されるなど、もう少し自然な形にして欲しかった。
このように、サバイバルホラーのはずが、所々でギャグのような設定が出て来るのは、リメイク前のバイオハザード4をリスペクトしてのことなのだろうか?せっかく最新機種でリメイクするのであれば、リアル寄りに設定を詰めた方がさらに満足度が高くなったのではないかと考える。
評価ポイントのまとめ
バイオハザード RE:4は、戦闘面で完璧な仕上がりを見せるTPSだ。シリーズ作品に触れていなくても遊ぶ価値があるだろう。アシュリーパートの満足度の低さと、一部の演出には不満があるが、圧倒的に面白い戦闘がそれを十分に補っている。オリジナル版からカットされたエイダ編の追加配信にも期待したい。
長所
- 最高に楽しい戦闘
- 魅力的なキャラクター
- 至る所から聞こえて来る不気味なスペイン語
- 空耳を公式化するような思考の柔軟性
短所
- アシュリーパートの退屈さ
- 唐突に挿入される非現実的なシーン
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