点数評価 | – |
クリア時間 | 約3時間 |
プレイ状況 | 別条件も含め全クリア |
プレイ時間 | 約3時間 |
発売日 | 2023年3月24日 |
対応機種 | Switch/Steam |
プレイ機種 | Switch |
開発元 | Daniel Benmergui |
発売元 | Annapurna Interactive |
ジャンル | 反応型のパズルゲーム ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 幾つかの問題の解法に言及 |
Storyteller(ストーリーテラー)は、プレイヤーが作った物語に従って登場するキャラクターの反応が変わっていく新しいタイプのパズルゲームだ。今までにないタイプのパズルゲームなので、パズルゲーム好きであればとりあえず遊んでみると良いだろう。ただし、パズルゲームとしては面白いものの、ステージ数は少なくクリアまで3時間程度の内容となっていることが悔やまれる。もっと遊びたいと思わされることから良作には違いないのだろうが、パズルゲームは答えが分かると終わりなのでリプレイ性は低く、コストパフォーマンス面では敬遠されるかもしれない。
【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
キャラクターとシーンで物語を完成させるパズル
Storyteller(ストーリーテラー)は、プレイヤーがとある本の作者として、キャラクターやシーンを設定することで物語を完成させるパズルゲームだ。各ページには予め完成させるべきお題と、お題に沿った状況をストーリー仕立てで再現するためのパーツ(キャラクターとシーン)が用意されているので、プレイヤーはパーツを組み合わせてお題をクリアしていく。
“お題に沿ったストーリーを再現する”とだけ聞くと、何やら難しそうに感じるかもしれない。しかし本作は、最低3コマから最高8コマまでのnコママンガを作るような要領で、シーンとキャラクターを設置するだけなので操作は簡単だ。
例えば、次のスクリーンショットであれば、お題は“癒される心の傷”でありコマ数は3つだ。結婚式場と墓場がシーンとして用意されているので、誰かが結婚した後にパートナーと死別し、新たなパートナーと再婚して心が癒されるシーンを、3コママンガで表現できればクリアできることは容易に想像が付くだろう。
Storytellerの面白い所は、お題によっては別解が用意されているところだ。前スクリーンショットの解法ではイゾベルというキャラクターが不自然に余ってしまったことから、全キャラクターを活用する別解が用意されていることが想像できるだろう。“心の傷”というお題に含まれた文言と、墓場というシーンが用意されていることに引っ張られて、プレイヤーは誰かが死ぬストーリーを作りがちなのだが、何も墓場を使う必要は無い。お題の下の“追加条件”に示されるように、余ったイゾベルを使うことで誰も死なないストーリーを作ることが出来る。単純に、墓場のシーンを失恋シーンに変えて、その後に失恋した(心に傷を負った)キャラクターを余ったイゾベルと結婚させることでクリアとなる。
このように、Storytellerは与えられたキャラクターとシーンを使って、お題に沿った数コマのマンガを作成し、可能であれば別解を導き出すというパズルゲームだ。
本作はステージを進めると、コマ数や使えるシーンとキャラクターが増えていき、段々と難易度が上がって行く。またそれ以外にも、シーンの前後関係の理解を求められたり、意味の受け取り方を間違えると解けないステージも登場する。
次のスクリーンショットは、“父親を殺し、母親と結婚するおこりん”というステージだ。何やら物騒なステージ名だが、一番気になるのは“母親と結婚する”という不可解な部分だろう。“家系”というシーンを使うことでキャラクターに家族関係を作ることが出来るのだが、この場合は“おこりん”というキャラクターを母親と結婚させなければならない。母親と子供を結婚式のシーンに登場させたとしても、その家族関係から結婚式は発生しないので、父親と子供で女性を巡るトラブルを発生させ、結婚式の後に実はその女性が母親だったという、衝撃の事実発覚のような展開にする必要がある。そのため、シーンの並びが重要となる。
また、“自らの妻を殺すエドガー”というステージでは、毒や毒を入れるワインのシーンが用意されているので、エドガーが妻を毒殺するように設定すれば良いのだが、動機が無ければ毒殺は発生しない。そのため、前妻が後妻に毒殺されたという設定を入れてから、前妻の幽霊による密告を経て後妻を毒殺するという展開にすれば、前後関係なく“妻”という大分類で“殺すエドガー”が成立してクリアとなる。
数コマだけの物語なので、ゲームシステムとしては単純なものの意外と考えさせられることは多く、解き応えのあるパズルが用意されている。また、割と緩めのゲームだと思いきや、愛憎から殺人といった人の生死にかかわる内容が多く、少々ブラックな内容となっている。そのため、クリアに関係がなくとも前後関係を色々と入れ替えて、特定の状況におけるキャラクターの反応を見て楽しみたくなるだろう。
終盤は難易度が一気に上昇する
Storytellerはステージが進むにつれて難易度が上昇していく訳だが、ゲームの終盤はその上昇具合が急激になる。折角なので高難易度のステージの例を紹介しておく。なお、情報を仕入れずにパズルを楽しみたい人は、ここまでで切り上げてもらって構わない。シンプルなゲームなので、第1項だけで作品の概要は十分に伝わっているはずだ。
プレイヤーの発想力によって差は出るだろうが、プレイ時間の多くは終盤のステージに偏っている。
本作は特定のキャラクターが誰かを殺害する状況を作ることが多いのだが、単純に殺人現場となる崖のシーンにキャラクターを配置しただけでは事件は発生せず、前のコマで何らかの殺人に至る動機付けが必要になる。しかしその動機付けの方法が隠されており、気が付くまでに時間が掛かることもある。
例えば、“全員を殺し独裁者となる男爵”というステージでは、独裁を狙う男爵からすると王や女王は権力者であり独裁の障害物となるので、崖のシーンに連れて行けば簡単に転落死させることができる。しかし、“独裁者”になるには権力が必要であり、そのためには女王と結婚するしかないが、王が死んだだけでは女王は結婚してくれない。また、“全員を殺し”という条件を達成するにしても、男爵にはメイドを殺す動機が無いので、崖のシーンに男爵とメイドを配置しても事件は発生しない。
しかしここで、男爵とメイドを結婚式場に置いた1コマ目に注目すると、メイドが王に好意を持っていることが分かる。そこで、男爵が王より先に女王始末することで、女王が不在となったために王がメイドと再婚する。その後、男爵が王を始末すれば、王との結婚で権力を持っていた(頭に王冠が乗った)メイドは男爵と再婚することになる。そうなると、権力者が男爵とメイドの2人になり、独裁を目指す男爵にメイドを殺す動機が発生したため、崖のシーンに男爵とメイドを配置すると事件が発生しクリアとなる。
このステージの場合、1コマ目が無かったとしてもお題は成立するので5コマでクリア可能だ。しかし、1コマ目を入れることで初めてメイドが王に好意を持っているという情報を得ることが出来るので、権力をメイド経由で男爵に移せば良いという発想が生まれてくる。このように、キャラクター同士の関係性を確認するために、クリアに必要のないコマを作ることが重要になることもある。
終盤になると前述の“家系図”というシーンの使い方が複雑になってくる。誰々の父親または母親という設定が生み出される家系図だが、生み出された家系はゲーム内で表示されていなくても内部データとして生きており、子供や叔父・叔母といった親戚の関係も維持される。
次のスクリーンショットは、“父親のかたき討ちで叔父を殺すちびりん”というステージのものだ。ここではお題に“父親”と“叔父”というワードが入っているため、多くのプレイヤーは家系図のシーンを使うことで、いずれかのキャラクターに“私はあなたの叔父だ”と喋らせようとするだろう。しかしその必要は無く、むしろそれを喋らせることでコマ数が足りなくなるというトラップが仕掛けられている。つまりこれは男爵の独裁とは逆に、不要なシーンを減らしてコマ数を削らなければクリアできないステージだ。
高難易度の例として紹介したこれらのステージも、答えだけを見ると簡単に解けると思うかもしれない。しかし、何も配置されていない状態から限られたコマ数で、殺人の動機付けや人間関係の構築までを行おうとすると、それなりの試行錯誤が必要となり難しい。
評価ポイントのまとめ
Storytellerは新しい切り口のパズルゲームであり、パズルゲーム好きであればプレイするべき作品だろう。ただし、3時間ほどでクリアでき、リプレイ性も無いのでコストパフォーマンスは悪い。
長所
- 新しいパズルゲームの形
短所
- 価格の割に短い
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