【十三機兵防衛圏】レビュー: 早くも今世紀最高傑作で間違い無しのSF青春群像劇。SF好きにとっては義務教育レベル

点数評価
プレイ時間約45時間
プレイ状況クリア
(崩壊編はハードモード)
トロフィー:100%
発売日2019年11月28日
対応機種PS4/Switch
プレイ機種PS4
開発元ヴァニラウェア
発売元アトラス
ジャンルドラマチックアドベンチャー
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総合評価
 (5)
革新性
 (5)
ユーザビリティ
 (5)
ビジュアル
 (5)
サウンド
 (4)
プレイ継続性
 (5)
コストパフォーマンス
 (5)

十三機兵防衛圏は各方面で絶大的な支持を得ており、間違いなく神ゲーなのだが、初報のプレスリリースからの動きは余り良く無く、以下の3点が原因で不安が大きかった。

悪かった初期の印象
  • 遅れに遅れた発売日の発表
  • Vita版の開発中止及びPS4版の発売延期
  • 3000円オーバーのプロローグ版を急遽リリースして資金調達

上記の理由により不穏なニュースが度々流れ、発売前は“このゲーム大丈夫か・・・”と不安で仕方なかった。しかし、いざ発売されると絶賛の嵐。購入者満足度99%を謳ったWEB CMまで追加公開されるレベルの評価の高さである。

実際にプレイした感想としては月並みな言葉になるが“神ゲー”としか言いようが無いし、“プロット考えたヤツの脳はどうにかしてる”と思わせる複雑で多重構造なストーリーが魅力的だった。このゲームに満足しないのは1000人に一人ぐらいだろうう。“満足度99.9%と書いても良かったんじゃないか?”と言いたくなるぐらいの神ゲーである。

十三機兵防衛圏は、シナリオパートの“追想編”、バトルパートの“崩壊編”、データベースの“究明編”に分かれている。究明編は簡単に言うとゲームのまとめなので、追想編と崩壊編をクリアすることでストーリーの真相に迫ることになる。

【追想編】人類史におけるSF作品の最高到達点

追想編は簡単に言うと、

生活する年代が異なる13人の主人公達が時代を超えて巡り合い、世界の崩壊を乗り切るための最終決戦に参戦するまでの物語

である。

後述するバトルパートの崩壊編は全て最終決戦の話であり、シナリオパートの追想編ではプレイヤーは13人のキャラクターから好きに選んで、最終決戦までの話を追って確認することになる。

どのキャラクターのストーリーも1話10分程度であり、複数話で構成されている。それを13人分プレイすればクリアとなる。各キャラクター同士は当然ながら交流があるので、キャラクターを変えても同じイベントを度々プレイすることになる。同じイベントであっても、キャラクターが変われば視点が変わることで見え方が異なり、イベントの直前直後で何があったのかが徐々に明らかになって行き、物語の真相が段々と見えてくるわけだ。

追想編では、どのキャラクター遊ぶかはプレイヤーに委ねられている。つまり、人によってストーリーの体験順番が異なり、ゲーム内の時系列通りに体験するとも限らない訳。(ただし、一部のキャラクターのキーとなるストーリーはロックされており、連動するイベントを発生させなければ解放されない。)

13人の関係が複雑に混ざり合い、次々と明らかになる新事実や溢れ出る疑問により、プレイヤーはミスリードされ続ける。怒涛の展開に翻弄され続けながらも、最終的には全ての真実に辿り付くことできるようになっている。

Sara
Sara

プロットを考えた人は頭おかしい!(褒め言葉)

キャラクターが13人も用意されているにもかかわらず、プレイヤーが好き勝手にストーリーを選んだとしても、話が破綻しないように調整されていることには本当に驚きだ。一体どうやってプロットを管理したのだろうか。プレイしている途中で、こんな複雑な構造していたら、“アドベンチャーゲームなのに開発に5年以上も時間を要して当たり前だ。”と、妙に納得させられた。

十三機兵防衛圏の最大の魅力は、異なる年代のキャラクターに意外な接点が見つかった際の、“ピースが繋ぎ合わさった”感である。これを味わったが最後、“余り好きじゃないから後回しで良いか・・・”と思っていたはずのキャラクターのストーリーを、夢中で進めてしまう自分がそこに居るはずだ。幾重にも重なった真実を掘り下げる手を止めることが出来ず、気が付けば朝なんていう人も多いはずだ。

なお、追想編はネタバレすることは許されないので詳細を説明することは出来ない。SFタイムスリップ物が好きな人は何も余計な情報を仕入れずに遊んでもらいたい。

ちなみに、アドベンチャーパートにおける、操作キャラクターのサイドビューの移動画面は美しいの一言。まさにヴァニラウェアが得意とするグラフィック技術の正当進化版。複数の年代が混在するゲームだが、どの年代でも芸術の域まで高められたグラフィックを堪能することが出来る。ついつい無駄に歩き回って景色を見てしまうこと間違い無しだろう。

【崩壊編】新感覚ロボット物タワーディフェンス系、リアルタイム戦略ゲーム

崩壊編は前述の通り、十三人の主人公達の最終決戦が描かれる。追想編、崩壊編どちらを先に遊んでも問題は無いが、タワーディフェンスゲームである崩壊編の途中でも会話パートが用意されているので、物語の真相に触れる会話が発生するステージまで進むと、追想編の進行度合いによってロックされてプレイ出来なくなる。

登場する十三の機兵にはそれぞれ特徴があり、大まかには4タイプに分かれている。

第1世代:近接格闘型(EMPによる妨害、ヘイトコントロールも可)
第2世代:バランス型(デコイやガンターレットを設置可)
第3世代:遠距離型(長距離/広範囲の高威力攻撃)
第4世代:飛行支援型(設置型兵器やディフェンス)

さらに、キャラクター毎にステータスの差異があり、育成方針で得意不得意を差別化が出来る。そのため、出撃前の情報を基に、そのステージで優位に戦える出撃メンバーを選んで戦闘を開始するという調整も必要となる。また、同じキャラクターが連戦していると、“脳負荷”というパラメーターが高まって行き、高くなり過ぎると休憩が必要となり出撃が1回休みになる。そのため、編成に偏りが出ないようにバランス良く出撃させるなどの工夫も求められる。

例えば、EMPを使える第1世代が全員ダウンしてしまった状態で敵に飛行ユニットが多いステージが始まると、敵機の移動妨害を誰も出来ないので苦戦必至となる。このように、戦闘メンバーの編成である程度考えさせられるため、ストラテジーゲームとしても十分に面白い。

そして、十三機兵防衛圏の戦闘は、何千という敵機体を相手にするリアルタイムバトルのタワーディフェンスゲームだ。敵はMAP中心部のターミナルと呼ばれる施設に迫ってくるので、ターミナルの耐久値が無くなる前に敵のWaveを凌ぎきればステージクリアとなる。

戦闘の基本スタイルは、敵の出現予測を見ながらヘイトコントロールが得意な第1世代機体で誘導/妨害し、他世代が効率良く撃破となる。目まぐるしく状況変化する戦場で、EP(機兵の行動用ポイント)を管理しながら、迫りくる圧倒的な物量を上手く捌けると、何とも言えない達成感がある。

また、十三機兵防衛圏には様々な能力を持った敵機体が出て来るが、そのビジュアルは意図的に簡略化されている。そのため、プレイヤーが必要最小限の情報だけに意識を向けて、敵を捌く作業に没頭できるようになっている。また、ビジュアル簡略化することで、何千という無数に重なり合う大群を視覚的に違和感なく表現できているため、この手法は正に英断と言えるだろう。

ちなみに、難易度はノーマルでもやや簡単に調整されている。タワーディフェンス系に慣れた人だとハードモードで遊ぶことを推奨したい。

戦闘の様子は公式動画の1分過ぎから確認できる。色々な動画が動画サイトにアップされているが、このゲームはネタバレ踏むと価値が激減するため、公式動画だけを見るに留めてもらいたい。

プレイしないなんてありえない

十三機兵防衛圏は、これから10年や20年ぐらいでは、ここまでの傑作に出会えないのではないか?と思う位の作品である。SF好きがプレイしなかったら絶対に人生を損している。

追想編の説明にも書いたが、一話10分程度のボリュームなのでキリの良いところで中断しやすく、忙しい人でもプレイしやすい。ただし、ストーリーを進めれば進めるほどに続きが気になって仕方がないので、時間が無いのであれば自制が効く人にオススメしたい。

ちなみに、高騰してしまっているがプレミアムボックスという限定版も同時販売されている。

同梱物はペーパークラフトとファンブックなので、“クラフトは要らんなぁ。”と思いつつも、念のためにファンブック目当てに買ったが大正解だった。ファンブックは間違いなくファン必携の内容だ。設定資料から裏話まで様々な情報が載っているのだが、ヴァニラウェアは販売元のアトラスから、“開発遅延を解消するために、キャラクターを5人削れ”と言われたエピソードが興味深かった。本当に削らなくて良かった。最も、途中からキャラクターを削った場合、シナリオを辻褄が合うように再構築する必要があるため更なる延期に陥っただろう。なお、ペーパークラフトも余白にチビキャラが沢山書かれた遊び心がある代物なので勿体無くてとても作れない。

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