点数評価 | 100点 |
プレイ状況 | 裏ボス撃破 |
プレイ時間 | クリアまで9時間 裏ボス撃破まで13時間 |
発売日 | 2020年3月26日 |
対応機種 | Switch/PS4/Steam Xbox (Gamepass) |
プレイ機種 | Switch |
開発元 | Thomas Moon Kang |
発売元 | フライハイワークス |
ジャンル | デッキ構築&ハイスピード弾幕アクションゲーム ジャンルの考え方 |
カードゲームにローグライクをミックスして爆誕した、Slay the Spireという名作ゲームがあるが、更にそれにロックマンエグゼを追加投入し、早回しでプレイしたようなゲームがOne Step From Eden(ワンステップフロムエデン)である。異ジャンルミックスのゲームは数あれど、ここまで上手くジャンルの融合に成功したゲームは見た事が無い。ローグライクにおけるシナジー効果の妙、カードゲームにおけるデッキ構築の判断、鋭い反射神経が求められるアクションと、正に一粒で三度美味しいゲームだ。
【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
One Step From Eden(ワンステップフロムエデン)は、フィラデルフィア在住のThomas Moon Kang氏が開発した、ローグライク×カード×アクションという唯一無二の特異なジャンルのゲームだ。大ジャンルに分類すれば、このゲームはアクションゲームだろう。しかし、単にアクションゲームでは全くこのゲームは魅力は伝わらない。正確に表現するのであれば、超高速弾幕系アクションローグライクカードゲームである。
別ゲームで例えると、
ロックマンエグゼを超高速化し、Slay the Spire方式でデッキ構築するゲーム
だと想像して頂きたい。
ロックマンエグゼもSlay the Spireも、どちらもピンと来ない人は公式動画を見て頂きたい。簡単に説明すると、画面左の操作キャラクターが右に向かって攻撃を繰り出している。これはスペルと呼ばれる攻撃手段であり、自分が構築したデッキからランダムに登場する。本作はデッキを使い切ると捨て札がシャッフルされてデッキに戻るタイプのカードゲーム要素を持っており、そのデッキの構築にローグライク方式が採用されている
目が回ってくる超高速戦闘
One Step From Edenの戦闘フィールドは、自陣・敵陣合計で32マスで構成されている。プレイヤーは、ロックマンエグゼの3×3の9マスよりも一回り大きい4×4の16マスのフィールドを使って戦闘を繰り広げるのだが、そのスピードが尋常ではなく高速だ。次の動画は、とあるザコ敵との戦闘風景である。戦闘に要した時間は僅か14秒だが、目まぐるしい攻防が伝わるはずだ。
繰り返し書くが、これはザコ戦の様子である。
この動画に少し解説を入れると、左から右に攻撃している女の子が操作キャラクターで、右側の3体がザコ敵達だ。地面に無数に表示される!マークは敵からの攻撃予測を意味しており、その場に留まっていると敵の放った攻撃が到来してダメージを受ける。そのため、キャラクターを上下左右に動かして必死に安全地帯を逃げ回っている。
当然ながら、逃げ回っているだけでは勝てないので、逃げると同時にこちらも攻撃をしている。正面に高速に撃ちだしている弾は、R2ボタンでオート連射できる通常攻撃である。そして、左端縦一列に並んでいるパネルが、プレイヤーが構築したデッキのスペル(攻撃や回復などのスキル)であり、下の変動する青いバーがスペルを使用するための消費マナ(MP)を示している。
AとBボタンがデッキトップ2枚のスペルに割り振られており、所持マナが消費マナを上回っていれば、どちらか好きな方のスペルを発動可能だ。使わなかったスペルはそのまま残り、使ったスペルは消え去り、その代わりに並んでいるデッキのトップのカードが1枚補充される。
One Step From Edenはアクションゲームであると同時にデッキ構築型のカードゲームなので、カード間シナジーが重要だ。デッキ構築については後述するとして、戦闘においては縦横無尽にフィールドを駆け巡って敵の攻撃を振り切りながら、トップ2枚のスペルカードのどちらを使うかを、まだデッキに残っている他のスペルとのシナジーも考えながら決定しなければならない。
大半のスペルは使えば確実に敵に当たるという訳ではなく、その効果が及ぶ範囲は限定されている。そのため、スペルを使う前には上下のライン及び前後の位置を調整することが重要になってくる。便利な必中に近い全体攻撃も沢山用意されているが、それらは総じてマナの消費量が大きいので連打が出来ない。
動画でも分かるように、敵味方合わせて高々32マスしか見なくて良いゲームにも関わらず、認識するべき情報は滝のように流れてくる。はっきり言って最初の内は脳の疲労感が半端では無く、これはクリア出来るのだろうか?と不安を覚えた。しかし繰り返し挑戦していくうちに、次第に視野が広がって全体を俯瞰できるようになる。さらに攻撃予測を認知しながら、デッキシナジーを考えたり、攻撃のためのライン取りが出来るようになってくる。ボスをスムーズに倒すことができた際には、確かな腕前の上達を実感できるはずだ。
繰り返し遊ぶ内に、膨大な情報を並列して処理できる頭が出来上がっている。
ラスボスは3体(ここでは便宜上ノーマル・真・裏と呼ぶ)用意されており、筆者の場合は約9時間プレイして真ボス(スタッフロール)撃破後に裏ボスまで到達できた。そこから練習を重ねて、合計約13時間のプレイで裏ボスに至った。裏ボスは到達からクリアまで約4時間も掛かっているが、上達したつもりが圧倒的な弾幕に打ち負かされて絶望するのはお約束だろう。
ボスのHPの多さも相まって負けた際には途方に暮れるかもしれないが、負けた際にはキャラクター操作とデッキ構築どちらに問題があったか振り返り、トライ&エラーを繰り返せば勝機が見えてくる。振り返りと繰り返しが重要なのはSlay the Spireと同じだが、ワンステップフロムエデンはキャラクター操作も重要なので、まずは似たようなデッキを繰り返し作って操作の上達に専念し、そこからデッキを調整していった方が良いだろう。何故なら、デッキを大きく変えると、操作も大きく変わって上達速度が遅れることになるからだ。
次の動画は倒してもスタッフロールが流れない、ノーマルのラスボス戦である。ラスボス戦では、自陣半分を埋めるぐらいの極太ビームや、必死に逃げる必要のある追跡型ビーム、安置見極めが必要な広範囲の爆破などなど、その弾幕に呆然とするかもしれない。しかし、何度も挑戦するうちに、膨大な情報による頭の混乱も、情報を捌ききったと言う快感に変わってくる。この快感はアクションゲーマーであれば全員が味わってもらいたい。まさに俗にいう“脳汁が出る”という感覚を経験できるはずだ。
豊富なプレイアブルキャラとデッキ構築で遊び方無限大
One Step From Edenには、9人のプレイアブルキャラクターが用意されており、更に各キャラクターには全くプレイスタイルの異なる派生タイプも用意されている。最初から全てを利用できる訳ではないが、プレイを進めて特定の条件を満たすことでアンロックされていくので、まずはフルオートで前方に射撃しつつ、各種攻撃系のスペルを使いこなす“サフロン”を利用して経験を積んでもらいたい。
次のスクリーンショットで紹介する騎士風なキャラクター“レヴァ”は、シールダーとでも言うべきな防御特化型のキャラクターだ。レヴァはシールド系スペルを繰り返し使うことで、シールド値を高めて耐えながら戦うスタイルである。ひたすら避け続けるサフロンとは違い、余裕をもって構えていられるのでゲームスピードは遅めに感じるだろう。ただし、防御が主体なので長期戦になりやすく、スペルの選択ミスなどでシールドを切らすと手詰まりになってしまう、中級~上級者向けのキャラクターだ。
派生タイプにも触れておくと、初期キャラクターのサフロンには“クロノ”という派生タイプが用意されている。デフォルトのサフロンはR2ボタンがフルオート射撃だったが、派生タイプのクロノではそれが廃されており、代わりにマナを消費して2秒間だけ時の流れを遅くする“リストウォッチ”が追加されている。また、初期スペルも全て違うものに変更されている。詳細は次の動画を見て欲しい。
他にも、自動攻撃タレットを設置したり、相手のパネルを破壊して移動を阻害したりと、操作キャラクターとタイプによってプレイ感は千差万別だ。色々と試して自分に合ったキャラクターを探すのも楽しいだろう。なお、操作キャラクターに選ばなかったプレイアブルキャラクターは、ステージボスとして登場するため、敵として戦ってキツかったボスを操作キャラクターに選んで遊んでみれば弱点が見えてきて克服できることもあるので、操作もデッキも煮詰まってきたがクリア出来ない場合にはキャラクターを変えてみよう。
デッキ構築はまさにSlay the Spire
One Step From Edenの大ジャンルはアクションゲームなのでアクション面から先に触れたが、デッキ構築に関してもカードゲームの魅力を100%引き出していると思って頂きたい。なんせ、デッキ構築を含めたステージ進行は、殆ど“Slay the Spire”と同じだからだ。独自要素はあるものの、Slay the Spireが面白いので、当然ながらワンステップフロムエデンもカードゲームとして面白い。
ステージの進行は左から右に枝分かれしたスゴロク状のマップで行われる。自身の現在ステータスと相談して、ザコ敵とバトルをする,報酬目当てに強敵が出現する危険エリア(ハザード)に行く,ショップで買い物する,キャンプでHPを回復するなどから、分岐を好きに選んで進んでいく。どのルートを通っても最終的には同じボスに辿り付くので、ボスを倒すことができれば次のステージに進むことができる。
Slay the Spireと同様にHPの回復手段が限定的なので、強敵と戦ってレアスペルを手に入れるか、HPを温存するかの判断が重要。
戦闘マスを選んでクリアした際には、ランダムに提示される3種類のスペルから1枚を取得してデッキに加えることができる。また、経験値を得てレベルアップすれば、Slay the Spirのレリックに相当するアーティファクトと呼ばれるアイテムも3択で取得できる。これにより、マナの最大値アップや特定の攻撃の追加効果などのバフ効果を得ることが出来る。
スペルにはビーム,シールド,毒と言った、大まかな系統が設定されており、フォーカスという機能で特定系統のスペルの出現率を上昇させることができる。そのため、序盤に手に入れたスペルとアーティファクトを見て、シナジーを得られそうなスペルが属する系統をフォーカスしていけば、デッキ構築が上手くいく可能性が高まる。つまり、デッキ構築はある程度は運が絡むが決して完全な運任せではなく、プレイヤーの判断力によって一定のコントロールが可能となっている。
また、スペルは強化可能であり、Slay the Spireでは強化結果が固定だったが、本作では教科内容もランダムに提示される3種類から選択することになる。次のスクリーンショットでは、2秒間動けなくなる代わりにシールド80を得る“フドウノマモリ”をダブルキャスト(2回発動)化しようとしている様子だ。シールド160を得て4秒移動不可になるため、超高速アクションゲームで4秒待機は死も同然に思うかもしれないが、防御特化のレヴァならマナを消費して敵の攻撃を反射するシールドを張ることができるので、デメリットを補うことができる。キャラクターの特性に合わせて教科内容を吟味していこう。
ちなみに、ショップに入れば、スペルやアーティファクトを購入したり不要なスペルを削除してデッキ圧縮も可能となっている。この辺りはデッキ構築型のローグライクゲームを遊んだことがあれば理解は早いだろう。
なお、セラキャノンという所持金分だけ丸々ダメージを与えるスペルがあるため、敢えてショップに立ち寄らないという選択肢を取っても良い。デッキの圧縮やスペルの強化は進まないが、移動制限系スペルと絡めて一撃必殺の攻撃を確実に当てていくといった、かなり特殊な構築も可能となっている。
なお、1回のプレイでクリア,ゲームオーバーに関わらず、進行度合いに応じてポイントが貯まる。ポイントが貯まるとゲーム内に出現するスペルが増えて行くので、繰り返し遊ぶことでデッキ構築の幅が広がっていく。
このようにOne Step From Edenは、アクション以外の要素が、Slay the Spireと実に似通っている。Slay the Spireをプレイしたことがあれば、何も迷うことなく受け入れる事が出来るだろう。決定的に違う点は、どれだけ完璧にデッキを作れたところで、一定以上の反射神経が無いとクリア出来ないということだ。被弾後に一定時間は無敵になるような仕様は無いので、デッキ構築に任せて火力でゴリ押しはできない。逆に、少々デッキが上手く作れなかったとしても、超絶な反射神経を持っていれば何とかクリア可能でもある。
また本作は、廃棄を除く捨て札をデッキに戻すシャッフル行為を、デッキを掘り切らなくても任意のタイミングで実行できる点が面白い。使ったカードをしっかり把握しておけば、シナジーに重要なキーカードを使い切った段階で積極的にシャッフルしていけばダメージ効率を大幅に上げることができる。そのため、生粋のカードゲーマーであれば、デッキ構築の下振れや、反射神経の足りなさを判断力が補うことが可能だ。
なお、裏ボスまで全部倒したら終わりという訳ではなく、Slay the Spireの登塔モードに相当するヘルモードがレベル14まで用意されている。つまり、クリアしてからが本番だ。全キャラで完全クリアを目指せば余裕で数百時間のプレイが必要になるはずだ。
以上のようにOne Step From Edenは、ロックマンエグゼとSlay the Spireが化学反応し、高次元でまとまったような奇跡の神ゲーであると言える。アクションゲーム、あるいはカードゲームが好きであれば絶対に遊んでもらいたい逸品だ。
【追記】続編にてまさかの対戦ゲーム化
2022年2月8日、デッキ構築オンライン対戦ゲーム『Duelists of Eden』が発表された。『One Step From Eden』のその後の世界が舞台となり、基本システムは継承しつつもオンライン対戦に特化した続編となる模様。(チュートリアルやトレーニングは用意される)
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