点数評価 | 90点 |
プレイ状況 | クリア (トロフィー:36%) |
クリア時間 | 約4時間 |
プレイ時間 | 約4時間 |
発売日 | 2022年7月19日 |
対応機種 | PS4/PS5/Steam |
プレイ機種 | PS5 |
開発元 | BlueTwelve Studio |
発売元 | Annapurna Interactive |
ジャンル | アドベンチャー ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 無し |
Stray(ストレイ)は、良質なインディーゲームを数多く発掘してきたAnnapurna Interactiveがパブリッシングを担当するということで、発売前から大きな期待が寄せられていた。程良い謎解きと、不思議な機械人間の街の探索は、アドベンチャーゲームとして期待通りの面白さだ。また、猫を飼ったことが無くても、ゲームの作り手の尋常ならざる猫への愛を感じることが出来る、猫愛に溢れた作品だ。アップデートでフォトモードが追加されれば評価を神ゲーにランクアップさせたい。
PlayStation Plusにて、エクストラまたはプレミアムのサービスに加入していれば、発売日から遊び放題として提供されている。
自由には動けないが、自由度が高いと錯覚させるデザイン
Stray (ストレイ)は、プレイヤーが1匹の猫となり、ロボット人間が住まう衰退したサイバーシティを歩き回り、世界の真相へ迫って行くアドベンチャーゲームだ。クリエイターの人数よりも、よりも飼っている猫の方が多いというチームが手掛けたオリジナルタイトルということで、猫の視点や猫の特性がふんだんに盛り込まれた今までに無いプレイフィールに仕上がっている。
Strayの主人公は猫であるため、筆者はStrayを実際にプレイするまでは、猫を操作出来るのだから、あらゆる場所へ自由自在にジャンプして移動ができる、3Dプラットフォーマー系のアクションゲームだと思い込んでいた。しかし実際には、街中を自由に散策は出来るものの、好きなタイミングで猫をジャンプさせることはできず、オブジェクトにインタラクトすることで予め設定されたアクションが発生するタイプのアクションアドベンチャーゲームだった。
例えば、猫がエアコンの室外機を足場に登って行くシーンであれば、足場に近付けば自動的に✕ボタンを押すように促される。それに従ってボタンさえ押せば、自動的にジャンプをしてくれるので、失敗することなく確実に高台に移動できるし、足場を踏み外して落ちることもない。
人間の主人公を操作し、インタラクト出来るオブジェクトを探し出してストーリーを進める手法は、3Dアクションアドベンチャーゲームでは王道だ。しかし主人公が猫になると、同じようなインタラクトを繰り返すゲームでもプレイフィールは大きく変わって来る。
何よりも特徴的なのは、猫の圧倒的な運動能力の高さだ。猫は当然ながら人間よりも機敏に動き、人間であれば尻込みするような高低差であっても難なく移動する。従来の人間視点のゲームの感覚でプレイしていると“行き詰った”と錯覚するシーンでも、実際には猫の運動神経なら余裕で移動できることが多々ある。従って、Strayをプレイするにあたっては、まずは自分は猫であるということをしっかり認識し、人間の運動神経の限界と言う固定観念を捨て去らなければならない。一方で、台座を動かしたりスイッチを作動させるようなシーンであれば、人間の腕力なら容易であっても非力な猫では思い通りに事は進まない。そのような時は、体が小さいというメリットを活かして道を切り開かなければならず、その試行錯誤を要する場面が程良いパズルとして提供されている。
Strayのプレイフィールドはそれほど広くないが、前述の通り猫は高低差のある移動に融通が利くので、目的地までの移動ルート設計の自由度は高い。恐らく人間で同じことをやると、退屈なインタラクトを繰り返すだけの既視感溢れるゲームが出来上がりそうだが、視点が猫になるだけで全く得られる体験が異なってくる。高台を途中まで登った後に別の場所が気になるということは良くあるが、そのような時はStrayなら道なき道を飛び降り、勝手気ままに移動ルートを変更できる。この自由度の高さがまさに猫体験に他ならない。
自由度が高いと聴くと、サイバーシティで迷い猫になってしまうことを心配する人も居るだろう。特に猫は好きだが3Dゲームは苦手だという人にとっては、自由度の高さというものはゲーム体験の質を高めると同時に、迷子になってゲームが進まないという諸刃の剣でもある。しかし、Staryはプレイヤーの誘導についてしっかりと配慮されており、迷ったとしても大体は看板や派手な明かりを目指せば事なきを得る。テクノロジーが発達した未来だが退廃的で、そこまで煌びやかではない世界なので、部分的に生き残ったネオンサインが世界観を壊すこと無く進行方向の目印として機能する。世界観と調和した実に優れたデザインの誘導システムだと言えるだろう。
一方で、目的にばかり向かって進むのは勿体なく、猫らしく自由に寄り道も楽しみたい。何故なら、壁画や過去の遺物から、不完全ながらも崩壊した人間文明に関する情報を手に入れることができるからだ。また、思い掛けないアイテムを入手できることもあり、それらを特定のロボット人間に持っていけば、クリアには関係ないがサブクエスト的な展開を楽しむこともできる。
このようにStrayは、視点を変えるだけで在り来たりなアクションアドベンチャーゲームに、新たな価値を生まれさせた作品である。
あらゆる描写から猫への強いこだわりを感じる
Strayは猫好きのこだわりが詰まったゲームだ。思わず愛でたくなる様な仕草、堂々と人間の邪魔をする不遜な態度、好奇心から行動が引き起こす大トラブルなど、猫を実際に飼っていなくても想像が付きそうなシーンが至る所に盛り込まれている。
ロボット人間の胸元に飛び乗ったり、足元に寄り添って愛嬌を振りまいても良いし、好き勝手にテーブルの上に飛び乗って、生活用品をなぎ倒しても良い。猫になり切って仕草を堪能すると良いだろう。
(トリが言うのもなんだが)ネコロールプレイを堪能しろ!
個人的に一番気に入った猫ロールプレイは、麻雀を邪魔するシーンだ。対戦中の卓上に飛び乗って牌を撒き散らせば、一方のロボット人間は失われた試合に頭を抱え、もう一方は腰に手を当てて怒りを露にする。このような邪魔される側のリアクションも含めて、猫を飼っていると経験するような光景なのだろう。
また、謎解きシーンでも猫らしいリアクションが用意されている。例に挙げる下の動画は、壁に掛けられたフォトフレームの裏側に隠されたアクセス端末を発見するシーンだ。この手シーンはアクションアドベンチャーゲームでは使い古されたシーンであり、人間が主人公のゲームであれば、敵の隠れ家に侵入して片っ端から家探しをして、『ない・・・ない・・・、よし、見つけたぞ!』といった展開だろうか。それが猫になると、好奇心からの悪戯を経て自業自得な結末に驚いて飛び上るという、動物のおもしろ動画で見かけるような光景に早変わりする。
さらに、デュアルセンスのアダプティブトリガーとハプティックフィードバックも猫の表現に活用されている。特定のポイントではL2とR2を交互に押すことで爪とぎアクションが用意されており、カーペットやシェード、時には電気配線をガリガリとすれば、アダプティブトリガーを通じて両前足のストロークに応じた抵抗を感じることができるだろう。筆者は猫を飼ったことが無いので理解できなかったが、ハプティックフィードバック機能による、寝ている猫が発する振動の再現が実にリアルだとSNS上では話題だ。
探索,謎解き,ステルスと遊びの幅が広く密度も高い
さて、ゲームデザインに優れ、猫愛に溢れたStrayだが、適度に探索する程度で素直に進めばクリアまでは約4時間ほどだ。“出来が良いが小振りなインディーゲーム”という、如何にもアンナプルナ インタラクティブが好んでパブリッシングしそうな作品と言えるだろう。
この約4時間というプレイ時間は短いながらも、猫愛やロボット人間との交流以外にも、謎解き,ステルス,探索といった要素が所狭しと詰め込まれており、スタートからクリアまでのプレイヤーの体験は実に濃密で、非常に高い満足感を得ることができるだろう。
謎解きの難易度は決して高過ぎることは無く、ステルスも失敗後のリトライが容易で大きく戻されることもない。かと言って、何も考えずにクリアできるほど低難易度でもなく、探索時のパズル要素と共に、緩い猫ゲーが時々引き締められるぐらいの難易度だと考えれば良いだろう。
フォトモードがあれば神ゲー
Strayは実に満足度の高いゲームだが、神ゲーには後一歩だ。理由はシンプルで、フォトモードが無いことである。4Kで表現される美しき退廃世界を、可愛らしい猫で歩き回れるにもかかわらず、フォトモードが用意されていないとは余りにも残酷だ。
それでも何とか良いスクリーンショットを撮れないものかと工夫するが、インタラクト出来る箇所が多いため×ボタンの表示が入り込んでしまいがちで雰囲気を損ねる。風景以外にも、魅力的なロボット人間が多数登場するので、彼らにフォーカスした写真を撮りたい衝動に駆られる場面に何度も遭遇した。アップデートでフォトモードが追加されることを祈るばかりである。
過去最高にフォトモードが欲しかったゲーム!
以上のように、Strayは神ゲーに近い猫ゲーだ。猫がそこまで好きで無くても、アクションアドベンチャーゲームの新しい在り方の一つとして楽しめるだろう。
Strayは元々DL専用ゲームとして開発されていたが、iam8bit限定商品としてパッケージ版とサントラLPレコードの発売が決定しており、日本支店でも取り扱いされるようだ。後追いでパッケージ版が発売されるということは、名作であることの証左なので、プレイするかどうか迷っている人は安心して遊んでもらいたい。
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