点数評価 | 90点 |
クリア時間 | 約5時間 |
プレイ時間 | 約10時間 |
プレイ状況 | ノーマルでクリア |
発売日 | 2023年2月1日 (アーリーアクセス) |
対応機種 | Xbox (Gamepass)/Steam PS4/PS5/Switch |
プレイ機種 | Xbox Series X |
開発元 | Yaza Games |
発売元 | Daedalic Entertainment |
ジャンル | ストラテジー ジャンルの考え方 |
Inkulinati(インクリナティ)は、gamescom awardにて、『ベスト・インディーゲーム賞』と『最優秀オリジナルゲーム賞』のダブル受賞を果たした期待のストラテジーゲームだ。中世風のイラストで描かれ、オナラ攻撃をやたらと推してくるため、奇天烈さに全振りしたような作品に見えるかもしれないが、ターン制ストラテジーに場外一発アウトというスリリングな戦闘システムを加え、更にデッキ構築型と融合させるという新たな挑戦を果たした作品だ。デッキ構築型から安定を取り払う“退屈”システムと、デッキ構築型には珍しく1回の敗北ではゲームオーバーにならないストック性の採用も上手く噛み合っており、デッキ構築型の新たな可能性が示された作品である。
一撃必殺の押し出しシステムが輝く
ランダムに提示される選択肢から手札を構築していくデッキ構築型のゲームは、Slay the Spireの登場以降に手を変え品を変え無数に増え続けている。フォロワー的な作品が多いことは結構だが、そのお陰で一気に陳腐化が進んだデッキ構築型ゲーム界隈だが、そこに颯爽と現れた期待の新作がInkulinati(インクリナティ)である。
Inkulinatiは、インクで書かれた中世の本を舞台として、Inkulinatiマスター同士が戦うストラテジーゲームだ。Inkulinatiマスターであるプレイヤーは、リソースであるインクを消費することで武器を持ったおかしな動物達を描き、戦闘用のユニットとして使役することができる。ゲームはターン制で進行し、敵対するInkulinatiマスターの体力をゼロにすることが出来ればステージクリアとなる。
まず、Inkulinatiの戦闘シーンは、ストラテジーゲームとしては実に一般的だ。プレイヤーとCPUが交互に1ターンに1体、召喚したユニットかInkulinatiマスターを動かして体力を削り合う。
それぞれのユニットには移動力が設定されており、選択時に表示される緑色か黄色のマスまで移動することができる。移動起点から近い緑色マスに移動した場合、移動後に追加で攻撃アクションを取った後にユニットは眠りに付く。一方で、移動起点から遠い黄色マスに移動した場合、ユニットは攻撃アクションを取れず、移動完了後にそのまま眠りに付く。眠りとはいわゆるターンエンドを意味しており、自軍のユニットが眠った後は相手の行動ターンとなる。
召還したユニットではなく、召喚士のポジションであるInkulinatiマスターを動かした場合は、召喚コストを意味するインク残量が許す限り、自身の周囲2マスにユニットを最大5体まで召喚することができる。インクは敵を倒したりランダムイベントにて地面に滴ってくるので、それを踏むことで回復することができる。
また、ハンドアクションという専用コマンドを発動することで、自軍ユニットの体力回復や敵軍ユニットの攻撃、ターンエンドを迎えたユニットを起こして再行動、付与されたデバフの解除などを行うことが出来る。ハンドアクションは強力だがクールタイムが設定されており連発はできず、クールタイムは敵味方が全員眠りに付いた時点でカウントが進行する。
ハンドアクションはInkulinatiマスターだけが使える精神コマンド的なもの。
ハンドアクションとは文字通り“手”で行う行為だ。この手とはInkulinatiを遊んでいるプレイヤーのものであり、ハンドアクションを発動すると、盤面外から指が現れてユニットを動かしたり、盤面を拳で殴りつけてユニットにダメージを与えたりと、メタ的な演出が挿入される。ユニットの召喚についても同様で、盤面外から羽ペンでユニットが描き入れられる。
この“手”の演出や脱力感のある中世風のイラストは、余り他のゲームで見かけることは無く、これらが組み合わさった奇妙なビジュアルは新鮮だ。ゲームの内容はともかく、このビジュアルの時点でゲームに興味を持った人も多いのではないだろうか。
特異なビジュアルや演出をウリにしたインディーゲームに外れは無いイメージ。
Inkulinatiのバトルシステム最大の特徴は、何と言っても一撃必殺の押し出しシステムだ。
全ての召喚ユニットには、オブジェクトを1マス動かす“押し出し”能力が備えられており、攻撃の代わりに発動することが出来る。また、Inkulinatiマスターもハンドスキルで毎ターン左右に1回ずつオブジェクトを移動させることができる。ここでいうオブジェクトとは、ユニット、Inkulinatiマスター、画面上の設置物を指しており、押し出しに対する耐性を得ていないオブジェクトは問答無用で強制移動させられる。そして、移動先に床が存在しなかった場合、どれだけHPが残っていたとしてもオブジェクトは即死し、それはInkulinatiマスターとて例外ではない。
なお、押し出し先に他のオブジェクトが既に置かれていた場合でも、押し出しは実行可能だ。その場合は、障害物を避けて更にもう1マス先まで移動することになる。また、敵味方を問わず押し出し対象に出来るので、故意に仲間を押すことで盤面上に渋滞を作り出し、その上を滑って一気に複数マスを移動することもできる。
ゲームの後半になると、“移動する地獄の口”というターンエンドに乗っているオブジェクトを即死させる地形が出現する。この地形は毎ターンプレイヤーの近くに移動してくるのだが、Inkulinatiマスターは毎ターン左右にどちらかに1マスしか動かすことが出来ないので、逃げ場がない状態で2マス連続で並ばれると詰みになる。そのため、盤面を渋滞させて移動するテクニックの活用は必須となり、オブジェクトの配置一つでも色々と考えさせられて何とも奥深いゲーム性となっている。
また、次のスクリーンショットのように、攻撃によるノックバックが発生することがある。安全地帯で攻撃を受けたつもりが、一気に移動させられて思い掛けない隊列になり、ピンチに陥ることもある。逆に攻撃と押し出しを兼ねて有利な隊列を作っていけば、少ない手数で一気にクリアすることも可能だ。
Inkulinatiは、このような押し出しの特性を活かしたユニットの撃破と効率的な移動が重要で、ユニットの配置に頭を悩まされ続ける作品だ。例えイージーモードであったとしても、対戦相手であるCPUはプレイヤーが迂闊な配置をしたと見るや、全力で押し出しによる即死を狙ってくるので難易度は高くなっている。
幸いにもInkulinatiにはストック性が採用されているので、1回の判断ミスからの落下でゲームオーバーになり最初からという展開はない。しかしながら、序盤から何度も落とされているようでは、イージーモードでもクリアが難しいだろう。
デッキ構築型の作品だが、公式はローグライクをジャンルに入れていない。その理由はストック性を採用しているからかもしれない。
このように、プレイ毎にデッキをスターターから構築していくスタイル自体に目新しさは無いものの、相撲的な押し出し合いが勝負を決する戦闘スタイルは、ストラテジーゲームとして格別の面白さだ。敵の射程やオブジェクトの動きを読んで地道に詰めていくプレイフィールは、詰将棋に近いものを感じるかもしれない。CPUはこちらが見落とした致命的な配置を的確に突いてくるので、“してやられた”という経験を何度も味わうことになり、悔しさをバネに繰り返し遊びたくなるだろう。
なお、フルリリースされた暁にはオンラインマルチプレイヤーモードが実装されるとのことなので、この押し出しバトルを対人戦で楽しむことができる見込みだ。非常に知的な対戦ツールとして人気を博すること間違いなしだ。
“退屈”をコントロールしながら戦う
Inkulinatiはデッキ構築型の基本通りに、簡単な分岐を伴ったマップ上を進んでいく。分岐先によって、戦闘が発生して新たなユニットを手に入れたり、イベントによるステータスの底上げが行われる。そして、出来上がったデッキとステータスを鑑みて報酬目的にエリートに挑むという、デッキ構築型ではお馴染みのスタイルで遊ぶことになる。
道中で手に入るハンドアクションや追加のユニットは、ランダムに提示される3択から選ぶことになる。この3択もデッキ構築型では定番であり、過去にデッキ構築型ゲームを遊んだことがある人であれば、構築に関する部分は特に悩むことは無いだろう。
ただし、Inkulinatiは選択した要素同士のシナジーはさほど強く設定されていない。完全に無視できるという訳ではないが、少なくとも従来のデッキ構築型ゲーム程に、ビルドに頭を悩ませることは無いだろう。
シナジー効果が強いゲームの場合、序盤で上振れしてデッキが盤石になった場合はクリアが容易になる。しかしInkulinatiの場合、各ユニットに“退屈ステータス”というデバフが用意されており、その効果を受けることで特定のユニットを連続で使用することが難しい。そのため、幾ら強いユニットを手に入れたとしてもクリア確定とはならない。
Inkulinatiにおける“退屈”とは、簡単に言うとユニットの召喚コストに対するデバフである。Inkulinatiマスターは同じ絵を描き続けると飽きてきて、インク消費量が増えて来るという性質を持っている。そのため、インクの消費が増えるとインクが足りず、満足な召喚が出来なくなり、繰り返し同じ戦法を取ることは出来ない。
例えばゲーム序盤であれば、敵が大して強くなく地形にも制限が少ないため、体力が低いながらもダメージ型のArea of Effect (範囲への効果)である“矢の嵐”が使える、犬やキツネの弓兵が活躍する。序盤は弓兵で無双したいところだが、同じユニットを出せば出すほどに退屈のデバフが上昇していくので、次の戦闘では使い物にならなくなる。
退屈のデバフを解消する方法は幾つか用意されているものの、基本的には退屈のデバフが積み上がったユニットを休ませることになる。出撃ユニットは事前に最大5体まで登録できるので、ユニットのスペックに見合わない程にコストが増大したユニットが補欠と交代し、ローテーションしていくイメージだ。
いわゆるロースターを毎回変える必要があり、何を出撃させるかに頭を悩ませる。
この退屈システムのお陰で安定したデッキによる勝利は保証されず、事前に開示されているステージの形状と、敵の布陣との相性をしっかりと考えながら出撃ユニットを選択しなければならない。シナジーが薄い代わりに出撃ユニットのやりくりを課せられており、ユニットが変われば有効なハンドスキルも変わってくるため、そちらも一緒に考えなければならない。
ルートの取り方によるInkulinatiマスターの成長方針は、体力を上げる、初期インク量を上げる、ユニットを増やすの3種類だ。体力を上げる場合は、Inkulinatiマスターが耐えながらインクの回復を待つか、Inkulinatiマスターを囮に押し出しを狙いに行くことになる。インク量を上げる場合は、退屈を直接カバーすることなり、ユニットを沢山取得すれば頻繁にローテーションが可能となる。どのスタイルで行くかはプレイヤー次第だが、避けられないエリートマスやボス戦を見据えて、退屈の蓄積を調整することが重要だ。
なお、時にはInkulinatiマスターが不在となり、ユニットの追加召喚が出来ない特殊戦闘が発生する。召喚が出来ない代わりに、最初から5体が並んで登場する総力戦のようなスタイルだ。押し出しで即死を狙えるシステムなので、低コストのユニットを連続で展開する方が有利に見えるゲームだが、このような特殊戦闘ではインク量に関係なく出撃できるので、高コストユニットを沢山持っている方が有利になる。全てが考えられた作品なのだ。
UI関連は改善の余地あり
Inkulinatiは非常に優れたストラテジーゲームだが、情報量が多く全容を把握するまでは戸惑うことが多い。そして、その把握するべき情報を確認するためのUIが、致命的ではないものの使い難く欠点となっている。
次のスクリーンショットはあるユニットの特殊攻撃の説明欄を開いたものだ。中央の枠内が特殊攻撃に関連する効果説明であり、右上が効果説明に出て来る用語の解説だ。見ての通り、小さめのフォントでびっしりと記載されており、読もうとすると少々身構えてしまう。PCでプレイする場合であれば、画面とプレイヤーの距離関係からこれでも問題ないのかもしれないが、テレビで遊ぶような距離の場合には視認性が少々悪い。
変わった能力を持っていたり、変則的な射程の能力が多いので、慣れるまでは頻繁に情報を確認することになる。プレイを継続するか否かは、最初にユーザーフレンドリーと感じるかどうかに寄るところも大きいので、正式リリース時には読みやすくしてもらいたい。
また、現状のUIはマウス操作がベースになっており、完全にコントローラーには最適化されていない。特に、ツールチップモードという、カーソルを動かして説明を表示するモードでは、カーソルの動きが遅くモヤモヤさせられる。Inkulinatiはデッキ構築型なので、プレイを重ねる度に新しいユニットやハンドアクションなどがアンロックされていく。その度にカーソルが遅いのは困りもの。
あくまで現在はアーリーアクセス版(ゲームプレビュー)なので、この辺りが詰め切れていないのは仕方がないのだろう。正式リリース時にユーザビリティが向上していれば、その際には評価を改めて神ゲーにランクアップさせるかもしれない。
評価ポイントのまとめ
Inkulinatiはストラテジーゲームが好きであればプレイしてもらいたい。デッキ構築型だがローグライク要素は薄く、ストック性なので、普段はローグライク要素を敬遠している人でも手を出しやすいだろう。(公式はローグライクを名乗っていないが、記事のタグ付けとしてはローグライクを採用)
長所
- 面白いビジュアル
- デッキ構築型の新たな側面
- 押し出しシステムの面白さ
- 高難易度に対応したストック性
短所
- コントローラーに最適化されていない、マウス前提の操作体系
2023年現在はXbox Game Passのゲームプレビューとして、Steamではアーリーアクセス版として配信されている。約1年間の試用期間が続くようなので、Steam版で遊ぶのであれば早期価格で手に入れておいた方が良いだろう。正式配信のフルバージョンにはマルチプレイヤーモードも実装されるようなので大きく盛り上がりそうだ。
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