点数評価 | 90点 |
クリア時間 | 約3時間 (標準モード,ニナ) |
プレイ状況 | エントロピー3まで |
プレイ時間 | 約6時間 |
発売日 | 2023年8月10日 |
対応機種 | Steam/Switch |
プレイ機種 | Steam |
開発元 | Batterystaple Games |
発売元 | Batterystaple Games |
ジャンル | ローグライトなアクション・プラットフォームゲーム ジャンルの考え方 |
ネタバレ | 無し |
30XXは、ロックマンXにローグライク要素を組み込んだ2Dアクションゲームだ。見た目と操作感は完全にロックマンXシリーズそのものであり、それをしっかりとローグライクゲームとして落とし込んでいる。ショットのカスタマイズや特殊武器の合成などオリジナル要素を駆使して高難易度に挑むゲームスタイルであり、長く遊ぶことが出来るだろう。もろ手を挙げて絶賛したいところだが、残念ながら日本語翻訳の質は低く、効果の良く分からないアイテムや意味の通らない説明文に難儀することもある。
【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
ローグライクとして進化したロックマンX風アクションゲーム
30XXは見た目からも分かる通り、レジェンド2Dアクションゲームである『ロックマンX』の明確なフォロワーである。チャージ可能なバスター,ダッシュと壁蹴りを駆使した高速機動,8体+αの特徴的なボス達,倒したボスの特殊武器をラーニング可能など、ゲームの基本的な仕様は本家『ロックマンX』を踏襲している。
実際にプレイしてもらえれば分かるのだが、バスターやダッシュなどのアクション面の操作感はロックマンXを完全に再現しており、ロックマンXを遊んだことがあれば何の違和感もなく受け入れることが出来るだろう。ロックマンXシリーズはというと、ロックマンX4を最後にファンを満足させることが出来る作品を発売できておらず、リメイクに関しても1作目しかされていない。そのため、ロックマンXの新作に飢えているアクションゲーマーが30XXをプレイすれば、その再現度の高さから感動を覚えることは間違いないだろう。
プレイアブルキャラクターとしては、バスターで遠距離攻撃を行う“ニナ”の他にも、セイバーによる近接戦闘を得意とする“エース”が用意されている。つまり、本家ロックマンXで言うところの“エックス”と“ゼロ”の関係である。ゼロに相当するエースの使用感に関しても全くの違和感は無く、気持ち良く斬撃を連続して繰り出せるようになっている。
さて、30XXはロックマンXフォロワーであることは上記の通りだが、本作の何よりの特徴はローグライク要素が組み込まれていることである。倒されると永続的なバフを除いて全てを失うパーマデスが採用され、ランダム提示される能力の取得しながら、ランダムに選択・生成されるステージを攻略するロックマンXだと認識すれば良いだろう。
つまり30XXとは、残機ゼロかつステージの選択権を奪われた状態で、オープニングからラスボスまで通しで遊ぶ、ランダム性の高くなったロックマンXなのである。このようにローグライク要素を誇張して表現すると、ローグライクゲームの初心者や、ローグライク要素を好まない層に敬遠されてしまいそうだが安心して欲しい。
本作には“メガモード”と呼ばれる、ローグライク要素を軽減したモードも用意されている。記事の冒頭に掲載したステージの選択画面はメガモードのものだ。このモードであればプレイヤーはステージを選択可能であり、途中で倒れても進行状況が失われることは無く、ボスの選択画面から再スタートすることができる。
メガモードであっても、アイテムの出現とステージの内部構造にはランダム性あり。ローグライクから要素を幾つか削いで、ローグライトになるとイメージすれば分かりやすいだろう。ジャンルの定義についてはコチラの記事を参照。
ローグライトな“メガモード”に対して、ローグライクな“標準モード”ではステージの選択は出来ず、ランダムに選ばれるステージに挑むことになる。ランダム生成されるステージはデッドセルに似ており、幾つかの区画がランダムに組み合わされ、そのなかで強化アイテムの配置が変わっていくイメージだ。また、後から選ばれるステージになるほど、その組み合わせ内容が高難易度になり、ダメージ床や敵の数も増えていくといった具合だ。
ステージはランダム生成だが、区画の組み合わせが変わるだけなので、何回かやっていれば何処に行けばアイテムがあるか大体分かってくる。
本作はローグライクゲームの例に漏れず、初回クリアからが本番となっている。初回クリアの難易度は低く、ロックマンXシリーズの経験者であれば難なくクリアできるだろう。実際にロックマンXシリーズの経験者(X1~5,X7)である筆者の場合は、初回プレイでラスボスまで到達することができ、2回目のプレイでクリアとなった。
初回クリア後には、ローグライクゲームでは定番となっている、任意デメリットをトッピングして難易度を上昇させていく“エントロピー”というシステムが用意されている。従ってクリア後は、“エントロピーのレベルをどこまで上げることが出来るか”というやり込みプレイに興じることになるだろう。
“エントロピー”システムでは、体力の回復量の低下や、ショップで売られるアイテムの価格上昇など最大で30段階まで難易度を上昇させることができるので、やり込み要素としては申し分ない。なお、攻撃的な地形から受けるダメージを増加させる項目を最大レベルまで強化すると、ロックマンシリーズと同様にトゲに触れると一撃死することになる。
残機の概念が無い本作においては、ランダム生成ステージ+トゲで即死の組み合わせが恐らく最難関。
ロックマンシリーズであれば、クリア後はボス戦における動きの最適化やアイテム回収の効率を上げるルート構築、あるいは通常ショットのみの縛りプレイなど、自分なりに工夫して遊ぶしかなかった。しかし本作の場合は、クリア後も様々なチャレンジ要素が用意されており、クリア後も公式に用意された遊びを存分に堪能することが出来る。
プレイヤーの特性変化や特殊武器の融合が楽しい
30XXは前項で説明した通り、ローグライク要素を備えたロックマンX風のアクションゲームだ。ゲームを進めていくと、特定のタイミングにて“オーグ”と呼ばれるパワーアップアイテムが出現するので、それらを提示された候補の中から取捨選択していくことになる。
オーグの効果は実に様々で、単純にHPやエネルギーの最大値をアップさせるものもあれば、プレイヤーの周囲に展開して自動攻撃してくれるドローンのようなものもある。他にも、プレイヤーのダッシュに反応して前方にシードを展開するものなどもあり、非常にバラエティに富んでいる。このようなオーグの中でも特に“コア”に分類されるものは、設定されたコストの範囲内で任意に組み替えることで、ショットやプレイヤーの移動能力の特性を変化させることができ、大変奥深いシステムとなっている。
例えば次の動画は、“通常の状態”⇒“チャージを1段階上げる”⇒“次のショットもチャージショットになる”⇒“ショットが3方向に出る”⇒“壁にぶつかると跳弾”という順番に、コアのオーグを装備してチャージショットを試し撃ちした様子だ。この動画のようにシナジー効果の高いショット強化のオーグが揃うことは稀だが、出現するオーグが上振れした場合はチャージショットが恐ろしい程の性能を持つようになる。チャージショットひとつでもここまで性能が変わるのが、30XXの面白い所だ。
動画では3発目までチャージショットになっている。それは、次のショット(2発目)もチャージショットになる”オーグが、腕パーツのコアを全て強化する別のオーグの効果で進化し、次の次(3発目)までチャージ対象となったからである。
なお、この動画では分かりやすく腕パーツの強化について紹介したが、脚パーツであればロックマンXシリーズでは定番のエアダッシュが出来るようになったり、2段ジャンプや一定時間のホバリングも可能になる。これらのオーグを複数個装備して探索性能を一気に強化すれば、長い間の対空が可能となりステージによってはギミックを大幅にカットすることも可能だ。コアのオーグは、コスト内であればいつでも自由に付け替えることが出来るので、状況に合わせて最適な組み合わせに切り替えていくという楽しみ方も出来る。
ロックマンシリーズの醍醐味と言えば、倒したボスからラーニングした特殊武器の活用だ。しかし30XXの場合、ステージがランダムに出現するため、特定のボスに対して特定の特殊武器で大ダメージを狙うという遊び方はできない。その代わり、ボスの特殊武器と特殊武器を掛け合わせて、新たな効果の特殊武器を作り出すフュージョンというシステムが用意されている。
次の動画は、竜巻,歯車,稲妻という3種類の特殊武器に対して、ブラックホールの特殊武器をフュージョンした様子だ。最初にそれぞれを単体で使い、その後に融合後の特殊武器を使っている。稲妻は単体だったものがブラックホールから複数出現するようになり、歯車は投げつける代わりにプレイヤー自身が突撃するようになり、竜巻は効果範囲とダメージが大幅に大きくなっていることが分かるだろう。特殊武器はボス戦で使うよりも、道中の状況に合わせて使いやすい組み合わせを探すという使い方がメインとなる。組み合わせた場合は単体よりも消費エネルギーも増えるため、エネルギーの成長具合によっては単体で使い続けるという判断も重要となる。
また、特殊武器を“敢えて習得しない”という判断を下すことも可能な仕様も面白い。特殊武器はボス撃破と同時に習得する訳では無く、ボス撃破後に選択式で取得するかどうかを選ぶことが出来る。取得しなかった場合は、既に取得済みの特殊武器の強化できるほか、その周回で出現するショップで使える通貨を取得することも可能となる。
プレイヤーにとって使い勝手が悪い特殊武器はスルーできるほか、バスター特化型の育成で通貨ばかり取得するという選択もできる。このような仕様から、ローグライク的な遊びの幅広さを、上手くロックマンX風の2Dアクションの落とし込めていると感じられるだろう。
30XXはロックマンXの挙動が再現されているだけでも嬉しいことに加えて、ローグライクゲームの面白さも兼ね備えており大変満足度の高い作品に仕上がっている。
なお、本作ではロックマンXとは異なり、ボスから習得した特殊武器は3つのボタンに割り振ることができ、切り替え無しで瞬時に発動することが出来る。加えて、エネルギーのリソースは全て統一されているため、煩わしい個別のリソース管理は不要となっている。ちなみに、エースは特殊武器の合成は出来ないが、3つのボタンと入力方向を組み合わせることで、8体のボス全ての特殊武器を切り替え無しに発動可能となっている。
ロックマンXというと、特定のステージに隠されたパーツカプセルに入ることで、バスターやダッシュ性能を大きく強化することが出来た。本作の場合はステージの選択及び構成がランダムなので、ロックマンXのように凝った隠され方はしていないが、パーツカプセル“風”のシステムが用意されている。
ステージ内にランダムに設置されているカプセルに入ることで、難易度が高い特殊ステージ,ザコ敵との連戦,中ボスとの戦闘などに挑戦することができ、それをクリアすることで新たにオーグを手に入れることができる。特に中ボスを撃破出来たり、被ダメージを規定回数まで抑えることが出来れば、ロックマンXでいうところのパーツカプセル並みの強い効果を発揮するオーグを手に入れることが出来るという仕組みだ。
残念ながら翻訳の精度は低い
エックスとゼロの挙動を完璧に再現し、ロックマンXをローグライクゲームとして見事に再構築した本作だが、残念ながら翻訳の精度は低い。拠点における仲間との会話がぎこちないだけであれば問題ないのだが、ゲーム内に登場するアイテムの説明が軒並み難解で、中には全く意味が分からない物も存在する。
例えば、次のスクリーンショットは“環境コンフィグレーター”という、拠点でメモリアという通貨を消費して交換できる永続的なバフアイテムである。その説明によると、“ステージタイプを選択して、ゲームラウンドの早い段階でそれが出現する可能性を高めます”とあるが、そもそもステージタイプとは何なのか説明が無く、ゲームラウンドとはその周回の事なのか各ステージのことなのかも分からない。典型的な機械翻訳に突っ込んだ結果を貼り付けているだけのテキストとなっており、さらに改行後のテキストが中央揃えになっているため読む気が失せて来ることは間違いないだろう。
意味の良く分からないアイテムを無視したとしても、十分過ぎるほどにロックマンX風の体験を出来るため満足度は高いのだが、堂々とロックマンXを模倣した作品であることを宣言しているのであれば、そこはロックマンXが開発された日本をリスペクトして、もう少しまともな日本語を用意して欲しかったところである。
パブリッシャーが付いていない(開発元と発売元が同じ)インディーゲームにありがちな、最低限の言語対応だと認識しよう。
評価ポイントのまとめ
翻訳の精度の低さからスコアを落とすことになったが、新作の発売が絶望的なロックマンXの代替品としての価値は非常に高い。ロックマンXシリーズが好きだったアクションゲーマーは絶対にプレイにして欲しい。
長所
- 完全にロックマンXを再現
- ローグライクゲームとして長く遊べる
- ローグライク初心者向けのメガモードあり
- チップチューン調のBGM
短所
- 日本語翻訳の精度の低さ
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