【HUMANITY】レビュー: 本編では良質で知的な3Dパズルを堪能でき、クリア後は『スーパー柴犬3Dパズルメーカー』が始まる – ヒューマニティ

点数評価90点
クリア時間約9時間
プレイ状況クリア
トロフィー:54%
プレイ時間約10時間
発売日2023年5月16日
対応機種PS4/PS5/Steam
プレイ機種PS5
開発元tha ltd., Enhance
発売元Enhance
ジャンルパズルとアクションを融合させたゲーム
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総評/評判/感想

HUMANITY(ヒューマニティ)は、柴犬を操作してローポリゴン人間を誘導するパズルゲームということで、かなり緩そうな作品に見えるだろう。実際にクリアだけであればイメージ通り“何となく”でプレイしても問題ないが、収集要素である“GOLDY”を全て自力で達成しようと思うと、かなり骨太な内容になっておりパズルゲーム好きであれば満足度は高いはずだ。そして何よりも嬉しいのは“STAGE CREATOR”モードである。本編はクリアまで10時間程度と、もう少し遊びたい余韻を残して終わってしまうのだが、世界中のユーザーがステージを作って投稿できるため無限に遊び続けることが出来る。このモードが無ければ“尖ったパズルゲーム”として★4で終わっていたところだが、このモードのお陰で本作は★5になった。

【総合評価】
革新性
ユーザビリティ
ビジュアル
サウンド
プレイ継続性
コストパフォーマンス

何故か柴犬でローポリゴン人間を導くパズル

HUMANITYは、人類が消え去った遠い未来で、人類再生の実験を繰り返すAI“CORE”によって作り出された心を持たない人間を、光り輝く柴犬となって導くパズルゲームだ。

Humanity 唐突な柴犬
唐突な柴犬。

HUMANITYの主人公は柴犬である。突拍子もないことだが、それについてはあまり深く考えなくて良い。光の扉から無限に生成され続け、自我を持たずに指示されない限りは直進を続ける“ローポリゴン人間”を上手く誘導し、一定人数をゴールに導くことが出来ればステージクリアとなる。

Humanity ゴールのシーン
目的にローポリゴン人間を導けばゴール。非常にシンプル。

地面に指示を設置して人間を導く

柴犬がどのように人間を導くかというと、その基本は矢印の設置だ。光の扉から無限に湧いてくる人間達は、一切の意思を持っていない。そのため人間達は、壁にぶつかっても延々と前に進み続けようとするし、高い絶壁であっても無謀にも飛び降りてしまう。そこでプレイヤーは柴犬を操作し、何も考えることのできない人間達の列を先回りし、行き先を示した矢印を設置することで誘導を図る。

Sara
Sara

進行方向に向かって“ワン”と鳴けば、矢印が設置される。

なお、崖から落ちて消滅した人間達は再び光の扉から復活する。そのため、人間達の隊列が膨れ上がって進行の邪魔になる場合は、意図的に崖下に落とす或いはブロックで潰すなど、何らかの方法で間引くことで隊列を整えてゴールへ誘導することになる。

Humanity 落下する人間達。
ローポリゴン人間達は消滅した瞬間に新たに生まれて来る。

ローポリゴンで表現された進行方向に進むだけの人間達からは生気を感じられないため、間引いたとしても特に罪悪感が湧いてくることは無い。しかし、このような行為に苦手意識を覚える場合は、人間達の見た目は変更すると良いだろう。モノリス,球体,英字の“THEY”など、非人間の見た目も複数用意されている。

誘導方法は進行方向の変更だけではなく、ジャンプ台で谷を越えさせたり、高所から落下しても生き残るように重力操作したりと様々だ。いずれも矢印と同様にアイテムを床に設置し、人間達に踏ませることで効果を発揮する。なお、設置できるアイテムはステージよって異なっており、ステージ形状の特色を活かせるものだけが使用可能となっている。

Humanity ステージクリアの様子。
中央下段から登場した人間達が、ジャンプを繰り返して左上のゴールに向かっている様子。

難易度は程よく、解けない場合は迂回も出来る

パズルゲームとなると気になるのは難易度だが、HUMANITYの難易度は絶妙だ。多くのステージは、“何となく”でクリア可能となっており、人間達を行ったり来たりさせながら試行錯誤していればその内にクリアできるだろう。しかし、特定のステージではアイテムを設置できる回数が制限され、無計画に人間達を徘徊させるとクリアできず、効率的な誘導を求められることがある。

今まで好き勝手に誘導していたところで急に手数を制限されると、不意を突かれた形となり難しく感じる。ただし激ムズという訳ではなく、“何となく”ではクリアできないだけで、“それなりに考える”ことを要求されるイメージだ。簡単過ぎず、難し過ぎず、程良い思考から生まれる心地良いレベルのストレスを感じることだろう。

ただし、ステージ内に隠された“GOLDY”という金色の巨人を手に入れるとなると話は変わってくる。GOLDYは何れのステージにも必ず隠されており、人間達を触れさせることで大群の一員に加えることが出来る。GOLDYは人間達とは違って崖から転落すると永久的にロストしてしまうので、常に正確に誘導しなければならず一気に難易度が上がる。

Humanity GOLDYのゴール。
列に加わって歩くGOLDYの様子。集めることで人間の見た目アイテムも手に入る。

GOLDYを人間の列に加えてゴールに連れて行くだけのように見えるが意外と難しく、頭の中では分かっていても実際に行動に移そうとすると些細なミスで落下が続出する。プレイヤーのちょっとした不注意、例えば曲がり角で矢印を置き忘れたり、ジャンプ台の位置が一マスだけズレていたりするなど、しっかりと確認しておけば回避できるようなミスでGOLDYを失ってしまうことが多い。ステージによってはGOLDYを2,3人と同時に運ぶことになるので、1人に注視していると気が付いた時には残りが落下しているなどと言う事態は頻出するだろう。

ゲームのクリアには一定数のGOLDYの回収ノルマが設定されているものの、クリアに必要な分だけを達成するのであればそれほど難しくは無い。幾つかのステージは選択式になっているので、苦手なステージがあった場合はGOLDYの取得は迂回して、得意なステージだけを遊ぶこともできる。

しかし、全GOLDYを回収してトロフィーコンプリートを狙うとなると当然ながら苦手なステージも遊ぶ必要があり、中にはかなり頭を使うチャレンジングな難易度のGOLDYも存在する。特に、アイテムの使用数に制限が課せられたステージでGOLDYの取得しようとすると、“それなりに考える”ではクリアできず“しっかりと考える”必要がありやり応えは抜群だ。

なお、この手のパズルゲームを失敗する度に最初からやり直すとなると面倒に感じるが、幸いにも本作は地面に設置したアイテムを維持したままリトライが可能になっている。また、早送り機能も用意されているのでリトライ性は高く、試行錯誤しやすい工夫がされている。

徐々に増えていくギミックや制約

HUMANITYはステージを幾つかクリアする度に、COREと柴犬が人類に関する会話をおこない、その後に新たなエリアが登場する。次のスクリーンショットは、CHOICEという2個目のエリアが現れたシーンだ。これに記載された情報からは、全10ステージ構成で、GOLDYが21体隠されていることが分かるだろう。

Humanity 新しいエリア。
ステージ数は意外と多い。

また、人間がブロックを押しているようなオブジェから分かるように、このエリアでは押すことで移動させることが出来るブロックが新しいギミックとして加わる。最初のエリアであれば、人間の列が乱れても放っておけば良かったが、ここからは放置した人間が勝手にブロックを押してしまうことがある。そのため、人間達が邪魔な場合は安置で滞留させておいたり、一旦は崖の下へ落として間引いておくなどの対策が必要となり、難易度が一段階上がるという訳である。

Humanity ブロックを押すギミック。
GOLDYが乗ったブロックを下に落とそうとしている様子。
Sara
Sara

一度解放されたギミックは今後のエリアでも出続ける。

また、ステージ上にギミックが追加される以外にも、柴犬の行動に制約が加わるパターンも用意されている。多くのステージでは柴犬は自由に人間達を誘導可能だが、特定のステージでは人間達が歩き出す前にスタートからゴールまでの全てのアクションの設置しておき、人間が動き出した後はアクションを追加できない。つまり一発勝負で、一筆書きのように人間達を澱みなくスタートからゴールまで導かなければならない制約が課せられる。

基本的なルールこそ同じだが、人間達や各種ギミックの動きをプレイヤーが頭の中でシミュレートする必要があり難易度が高い。だからこそ、GOLDYの取得を含めて全てを読み切れた際の達成感は大きく、パズル好きのゲーマーを満足させることだろう。

Humanity 事前配置。
ブロックでレーザートラップを遮ってゴールまで到達する動きを、最初から最後まで想像。

矢印による誘導の難易度を上げ続けるだけではない

HUMANITYの前半は、障害物を避けながら人間を誘導するだけのパズルゲームだったが、後半からは“OTHERS”と呼ばれる敵対勢力が登場して戦闘要素が加わる。

OTHERS達はライトセーバーのような武器で攻撃してくるため、武器を持たない人間達は次々に倒されてしまい、幾ら光の扉から人間を補充しても一向にゴールに辿り着けなくなる。そのためプレイヤーは、人間達を無駄なく最短ルートで移動させて追撃を撒いたり、OTHERSの進行ルートにブロックを設置して妨害したりしなければならない。前半のステージであれば、じっくりと時間を掛けて人間達を誘導すれば良かった、時間経過による妨害行為が加わるため素早い誘導を求められて難易度が上がるという訳だ。

Humanity 逃げる人間達。
急いで崖の上に人間達を逃がす様子。OTHERSは崖を登れない。

HUMANITYはパズルゲームながらストーリーが用意されており、人間の進化の歴史をなぞりながらパズルを解いていくという流れがあるため、OTHERS達が攻撃手段を持ったのであれば、次は人間達にも攻撃手段が用意され全面戦争となる。また、近接武器の次は遠距離武器が登場し、最終的には自動攻撃のタレットまで登場し、SF映画さながらの大規模な戦闘が繰り広げられる。

Humanity 戦う人間達。
正面からぶつかって戦う人間達とOTHERS

ただし、戦闘と言っても人間達は機械的に自分たちの近くの敵を攻撃するだけであり、プレイヤーが技術的な介入をすることはなく、自動化された戦闘を見守るだけである。また、人間達は幾ら戦闘に巻き込まれようと、近くのOTHERSを攻撃しつつも隊列を乱すことは無く、柴犬によって地面に書かれた誘導指示は絶対に順守する。そのため、陣形を組んで指示通りの布陣で待ち構えることに優れており、圧倒的な戦力差に陥っている状態から人間達の配置の工夫で挽回を計るという戦闘が多数用意されている。

Humanity 陣形。
正面から迫りくるOTHERSの軍団を蛇行する分厚い陣形で押し留め、左から別動隊が裏取りして撃破した様子。

スクリーンショットから分かるように、このような陣形を考えて敵を迎撃するという戦闘においても、矢印の設置による人間達の誘導という基本動作は変わっていない。最終盤では“Follow”というアクションで、自由に人間を連れて歩いて戦闘するシーンも存在するが、そこでもやはり基本は矢印による誘導だ。人間達を連れ歩く柴犬はあくまで別動隊のよう位置付けであり、矢印に沿って動く人間達の本体を臨機応変に援護することになる。つまりHUMANITYは、矢印で誘導するという遊びの難易度を上げ続けるパズルゲームではなく、基本を押さえつつも次々と現れる新しいギミックに対する対応力が試されるパズルゲームなのである。

Humanity タレット運用。
人間達と三角形のタレットを連れ回し、人間達の隊列を守る柴犬。
Sara
Sara

もちろん、矢印による誘導の難易度も上がって行くが、その傾斜は比較的緩やか。追加されるギミックによる環境変化のインパクトが強い。

ステージエディット機能で無限に遊べる

本編の名残惜しさは即座に解消できる

HUMANITYは前述の通り非常に優れたパズルゲームだが、クリアまでは10時間も掛からない。全ステージをクリアしても12時間ほどだろう。パズルゲームという特性上、トロフィーをコンプリートするまで遊ぶ場合は、解法を閃くまでの個人差が大きいので時間の変動が激しくなるが、それでも20時間程度だろう。

Sara
Sara

1時間も解法が出て来なければ、答えを調べるとした場合の推測。

いずれにせよ、チャレンジングなGoldyの収集に拘らなければ直ぐにクリアしてしまい、非常に名残惜しい気分になる。高難易度の問題を、一切の情報を仕入れずにクリアすることも達成感はあるのだが、適度な難易度の問題を次々に解きたいという需要は一定数存在するはずだ。

幸いにもHUMANITYには、ステージを自作し、それをインターネット上に公開する機能である“STAGE CREATOR”モードが用意されている。他のユーザーが投稿したステージは無料で自由にプレイできるため、幾らでも無限に遊び続けることが出来るだろう。

Humanity ステージセレクト。
用意されたリストから選択するほか、難易度やテーマで絞り込み検索可能。

他のユーザーの投稿から何らか着想を得たら、次は自分でステージを作ってみよう。本格的な高難易度のパズルから、自動でゴールまで進んでいくような一発ネタまで、既に相当数のステージが投稿されているので、

情報が充実しており、好みのステージを探しやすい

往々にして、この手の投稿作品は難易度が高くなり過ぎる傾向にあるが、投稿されたステージに付属する情報が充実しているため、クリエイターとプレイヤーの思惑のミスマッチは発生しにくくなっている。

まず、クリエイターの自己申告になるが、難易度はEasy,Noraml,Hard,Expartの4段階を設定できる。そして、ステージを遊んだ人数とクリアした人数からクリア率が計算されて開示されており、さらにクリアした人はステージで5段階で評価できる。お気に入り数とプレイ人数に加えて、自己申告,クリア率,クリア者の評価という3種類の査定が用意されているため、プレイヤーは過度に期待から外れたステージを遊ぶことはまずないだろう。

Humanity ステージ評価。
クリア率が40%もあればかなり簡単な作品。

また、タグ付け機能が用意されている点も嬉しい。一通り本編をクリアしたのであれば、“Goldy”や“Follow”などタグとステージ外観を見ればどのようなギミックなのか、何となく想像が付くはずだ。自分の好みのステージを提供してくれるクリエイターが見つかれば、クリエイターで絞り込んで片っ端からプレイすると良いだろう。

この手のステージクリエイトが活発な作品と言えば、スーパーマリオメーカーシリーズが直ぐに思い浮かぶだろう。マリオメーカーシリーズをプレイしたことがあれば、あれを3Dパズル特化で大人向けな雰囲気にしたようなものが、HUMANITYのステージクリエイトモードだと想像すると分かりやすいだろう。

評価ポイントのまとめ

HUMANITYは決して派手なゲームでは無くジャンルもパズルということで、爆発的な大ヒット作品になることは無いだろうが、パズルゲーム好きの間では、カルトな人気で後世まで隠れた名作として語らるような作品だろう。パズルゲーム好きなら必ず遊んでおきたい。

長所

  • 良質なパズルと音楽
  • ステージ毎に変わるパズルの方向性
  • ステージを自作・配信できる

短所

無し

なお、配信初日からPlayStation Plusのゲームカタログで遊び放題となっている。加入者は絶対に遊んでもらいたい。

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