点数評価 | 90点 |
プレイ状況 | ノーマルエンドまで |
プレイ時間 | 約10時間 |
発売日 | 2017年12月21日 |
対応機種 | Switch/PS4/Steam Xbox (Gamepass) |
プレイ機種 | Switch (2020年4月23日発売のパッケージ版) |
開発元 | Dodge Roll |
発売元 | Devolver Digital |
ジャンル | 弾幕シューティング系ダンジョン探索 ジャンルの考え方 |
Enter The Gungeon (エンター・ザ・ガンジョン)は、パッケージで損をしているが、ローグライクゲーム好きなら必ずプレイしたい。ローグライクゲームに縦スクロールシューティングのような弾幕を混ぜ込むという常識を逸した発想は、舌の肥えたローグライクゲーマーに新たな感動を与えてくれるだろう。弾幕の見た目だけでは無く、抱え落ち厳禁のボムシステムが採用されている点もシューティングに寄せており面白い。ローグライクとしてのアイテム間シナジーも豊富。
【総合評価】 | |
革新性 | |
ユーザビリティ | |
ビジュアル | |
サウンド | |
プレイ継続性 | |
コストパフォーマンス |
Enter The Gungeonは、究極の秘宝「過去を始末する銃」を手に入れるためダンジョンに挑戦する、ツインスティックシュータータイプのローグライクアクションゲームだ。本作のパッケージ版は、DL版の配信開始から約2年半遅れて発売されている。後からパッケージ版が発売されるゲームは良作であると相場は決まっており、加えて筆者はローグライクゲームが大好きにもかかわらず今まで遊んでいなかったことには理由がある。何故かというとパッケージアートが、黄色の下地にタイトルロゴと顔っぽく丸二つと半円一つが並べられているだけであり、何一つゲーム内容が伝わってこないからだ。
このパッケージの顔は、恐らくゲーム内に出て来るザコ敵“バレット族”を表しているのだが、誰がこれを見てローグライクのツインスティックシューターで、怒首領蜂や東方みたいな弾幕避けを強いられるなどと想像できるだろうか。本作は、手を抜いたパッケージとは裏腹に、無数に存在するローグライクアクションの中でも強烈な個性を持った異端作なのだが、情報が全く伝わってこないので他のゲームを優先して後回しにしていた。いざプレイしたところ、低価格ながらボリュームは申し分なく、もっと有名になって欲しいと切に願う名作であった。
オーソドックスなローグライクに弾幕避けをぶち込む
当記事のタイトルや冒頭に書いてあるように、本作は弾幕シューティングゲームのように敵の弾が飛んでくる。スクリーンショットを見てもらえば理解が早いので、まずは“ゲーム開始直後”と“ゲームクリア直前”の2枚を紹介しよう。
左下で銃を構えているのが本作の主人公だ。右上の青い頭をした弾丸を模した形状の敵キャラが、扇状に弾を撒いている状況であり、序盤かそれなりに攻撃による圧を感じるだろう。
次に、こちらはゲームクリア直前のボスが放ってくる弾幕だ。安全地帯を除いて殆どが敵の弾で埋め尽くされており、パターンを覚えなければ被弾は絶対に避けられないという状況である。
この2枚のスクリーンショットでお分かり頂けたと思うが、Enter The Gungeonは非常に高難易度だ。完全に“縦シューティングゲーム”と言いたくなるような弾幕がプレイヤーを待ち構えおり、プレイヤーの心を折ろうとしてくるだろう。勿論、最終ステージだけが難しい訳では無く、最初のボスから全力でプレイヤーを弾幕の海に沈めようとして来る。具体的には次の動画を見て頂きたい。
さて、Enter The Gungeonにおけるプレイヤーの目的は、記事冒頭に記載の通り「過去を始末する銃」を手に入れるため、ランダム生成される全5層の迷宮“ガンジョン”に潜ることだ。分かり易くシンプルな目的が与えられ、簡単なチュートリアルが終わると即座にゲームがスタートする。この手のローグライクアクションとしてはありがちだ。
探索方法もオーソドックスなつくりとなっており、通路と幾つかの分岐を持つ部屋で構成されるフロアを探検し、ボス部屋を見つけてボスを倒せば次のフロアへ進むことが出来る。さっさとボスを倒しても良いし、体力に余裕があればアイテムや資金を集めるべく、隈なくフロアを探索してショップで買い物しても良い。
ローグライクなので、倒された場合には当然ながら全てを失って最初から再スタートする。しかし、“ヘゲモニークレジット”というロストしない特殊な通貨だけは繰り越されるので、それを拠点に設置された専用のショップで消費して強力なアイテムをアンロックしていく。死に戻りしつつも、新アイテムをアンロックすることでビルドの幅が広がり、新たな装備間シナジーを獲得して行くという、最早ローグライクの定番中の定番だ。
近年のローグライクゲームが好きなら一瞬でシステムを理解できる。
使用できる武器は極一部を除いて、銃を筆頭に遠距離攻撃武器ばかりだ。手に入る武器はAK-47やRPGというお馴染みの近代兵器から、未来的なビーム兵器,炎を飛ばすファンタジー的な魔法の杖,投げれば武器になるということで“枕”や,何となく形が銃に似ているという理由からアルファベットの“小文字のr”や“バナナ”まで、ジャンル問わずギャグアイテムも含めて大量に用意されている。迷宮の名前はガン+ダンジョンでガンジョンを名乗っているのは伊達では無く、近接攻撃が可能な武器は入手すると呪われるという徹底っぷりだ。
敵の攻撃手段も当然ながら遠距離攻撃に限定されている。宝箱に擬態したミミックですら、研ぎ澄まされたキバは見せつけるだけで、箱の中から生やした手で銃を撃って来る。
また、武器以外にも、様々なパッシブ(常時発動効果)を持ったアイテムが手に入るので、武器とのシナジー効果を考えてアイテムを厳選していく。これまたお馴染みのシステムだが、Enter The Gungeonでは、特定の武器と特定のアイテムを組み合わせることでセット効果が発動して武器が大幅に強化される。なお、一般的なローグライクゲームでは、武器やアイテムの効果的な組み合わせで“シナジーを発揮する”と呼ぶことが多いが、本作ではこのセット効果のことをシナジーと呼んでいるので間違いないように注意したい。
本作におけるシナジーは、ビュータイプこそトップとサイドで違うが、ダングリードに出てくるセット効果に近いだろう。また、射撃主体のローグライクというとネオンアビスがある。あちらも武器の種類が多かったが、さらに3倍ほどに武器を増やしてペットの変わりにセット効果を取り入れて、ブレイジングビークスのようなトップビュータイプに変更したゲームと表現すれば、様々なローグライクゲームをプレイしているローグライク狂には伝わりやすいだろうか。
Enter The Gungeonには、200種類を越える武器と、同じく200種類を超えるアイテムが用意されており、さらに100を超えるセット効果が隠れているので、組み合わせは無限大だ。同じ組み合わせに巡り合う事はまず無いので、プレイするたびに必ず驚きの発見がある事だろう。
ダンジョンを再現するシードシステムは採用されていないので、完全に一期一会。
クリアまでに1度しか出会わなかったが、変わった性能で面白かった武器の動画を参考に二つ紹介しておこう。本作はこのように素直な性能の武器の方が少なくバラエティに富んでいる。ただし、すべての武器に弾数が決められているので、余り試し撃ちは出来ないので、強力な武器を手に入れたら慎重に取り扱おう。
抱え落ち厳禁なブランクシステム
さて、銃に特化し幾らその選択肢が多くても、フロアを探索して拾ったアイテムでビルドを考えながらダンジョンを攻略するだけであれば、在り来たりなローグライクアクションゲームの域を出ない。しかし、Enter The Gungeonには、弾幕意外にも“縦シューティング”を意識した作りが用意されていることで、他の作品と差別化を図っている。
縦シューティングの多くは、敵が放つ大量の弾を根性で避け続けるゲームだ。大抵の弾幕ゲームには、どうしても避けきれない時の為に、敵の弾を全消ししたうえで周囲の敵全てに敵にダメージを与える“ボム”が用意されている。そして本作にも“ボム”に似た“ブランク”というアイテムが登場する。ブランクはゲームスタート時に2個渡されて、フロアを進む度に使った分だけ補給される。
縦シューティングをプレイしたことがある人なら誰もが経験し、繰り返したくない失敗No.1は、ボムをケチって使わずに被弾してしまう“抱え落ち”である。Enter The Gungeonにも抱え落ちがしっかりと取り入れられている。Enter The Gungeonは、全5体のボスを倒せば、ひとまずはエンドロールに到達できるのだが、ラスト5体目以外をノーダメージで倒すことが重要なゲームだ。なぜなら、各層のボスをノーダメージで倒すことが出来れば、最大ライフが1増えるアイテムが手に入るからだ。最初は3しかないライフだが、パッシブアイテムによる強化を除けば、ノーダメージでボスを倒すことで、ラスボスまでに最大で7まで上げることが出来る。
ライフアップは最も効果的な強化要素なので、ゲームクリアを目指してガンジョンに潜るのであれば、ザコ戦ではブランクを温存し、ボスの攻撃を攻撃パターンをしっかり覚えて、苦手なパターンが来たらブランクを切るというプレイスタイルが必須となる。
さらに、ボス戦でブランクを使い切ることなく温存できれば、余ったブランクを使って隠し通路を開き、幾つかのアイテムを入手可能だ。そのため、自分の腕を過信して、比較的楽な1層や2層のボスでブランクを温存しすぎて被弾することもあるだろう。この瞬間、まさに縦シューティングで“抱え落ち”した時のような落胆を感じるはずだ。
無敵時間は短く、ボスの猛攻は止まらない。被弾した際には直ぐに気持ちを切り替える必要あり。
当然ながら、道中のザコ戦でも厳しい戦いが多々あるので、必要があればブランクを惜しみなく使わなければならない。“ザコで使うのは勿体無い・・・”と、ケチると体力の最大値を上げる以前に、道中でゲームオーバーになることもある。また、被弾が増えれば、手に入れた資金を回復アイテムの購入に当てることになり、武器やパッシブアイテムが揃わなくなり、ライフアップが出来ない以上のデメリットを背負うこともある。
また、プレイヤーには弾の回避手段として、弾を消すことは出来ないが一定距離を無敵で移動できて、何度でも使える“ドッジロール”が用意されている。ブランクは限界まで温存して、極力ドッジロールで避けていくことが基本となるが、その限界の見極めがまた難しいのは言うまでもない。
苛烈なボスの攻撃を目の前に、画面全体を俯瞰しつつも自機に弾が迫ればしっかりと隙間を縫って移動し、限界まで我慢してからボムを放つというアクションを繰り返していると、視野が拡張されて神経が研ぎ澄まされていくという、シューティングゲームで得られるあの感覚を味わえる。
一部のボスは縦シューティング風な画面構成になる。
ちなみに、ボス戦の前にはカットインの演出があり、それがなんともシュールだ。
名作だが、弾幕ゲームが苦手な人には向かない
ローグライクと弾幕ゲームが見事に融合したEnter The Gungeonは、ローグライクアクションの中でも名作の部類だ。
筆者の場合、ノーマルエンド到達までに10時間程度のプレイ時間を要した。クリア後に非公式Wikiを見たところ、全実績のクリアには100時間は掛かりそうなボリュームだった。未到達の隠しフロアや隠しボスが用意されているし、半分にも満たない武器にしか出会えていないので、これからも間違いなく長く遊べそうだ。
概ね満足度は高いのだが、不満な点を挙げるとすれば武器の性能が分かり辛いことだろう。武器が大量に出てくるが、簡単な説明とオートやバーストなど射撃種類しか分からず、その威力やDPSが定量的に明記されていない。ザコ敵相手に撃ち比べて調べる必要がある一方で、弾数制限もあるので気楽に調べることも出来ない。また、セット効果も発動したことは表示されるが、どのような効果が出ているのかゲーム内で明記されていない。効果を確認できるほどの耐久力を持ったザコ敵は、ザコとは呼べないほどの弾幕を展開してくるので、性能を確認する余裕も無い。アイテム図鑑やアイテム説明欄をもっと充実してもらいたいたかった。
また、高い難易度に対して救済措置が用意されていないので、人によってはクリアが難しいだろう。本作には難易度設定は無いので、全プレイヤーが上記の動画のような弾幕ゲーに挑む必要がある。弾幕ゲームが苦手な場合、幾ら強いアイテムをアンロックしても、どうにもならない可能性が高い。また前述の通り、武器性能やセット効果が開示されていないので、超強力な組み合わせを見落とすことも多く、クリア率は低そうである。
最近のローグライクゲームには、クリア実績にはカウントされないが、再現性のあるダンジョンに潜ることが出来るシードとという機能が搭載されていることが多い。しかし本作にはそれも用意されておらず、完全に実力勝負となる点には注意してもらいたい。
一般的な縦シューティングのノーマルクリアぐらいの難易度。
後、Switch版特有の難点としてロードの遅さが挙げられる。これについてはいつもの事かもしれないが、一体何を読み込んでいるのか?と疑問になる遅さを感じることだろう。せっかくパッケージ版が後追いで発売されて、最近のゲームとしては珍しく取説まで完備し、更にオマケでステッカーとサントラDLコードまで封入されていて嬉しいのだが、各種アイテムに拘らないのであれば、PS4かXboxで遊んだ方が快適だろう。
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