【コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ】レビュー: SNSにまみれた現代社会を風刺する異種族交流カフェ

点数評価90点
クリア時間約5時間
プレイ時間約5時間
プレイ状況1週クリア
(実績:330/1000)
発売日2023年4月22日
対応機種Switch/PS4/PS5/Steam
Xbox (Gamepass)
プレイ機種Xbox Series X
開発元Toge Productions
発売元コーラス・ワールドワイド
ジャンルコーヒーをいれながら、心と心をかよわせるノベルゲーム
ジャンルの考え方
ネタバレ無し
総評/評判/感想

『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』は、前作から基本システムを大きく変えずに、テーマをSNSに絞った作品だ。SNSに対する付き合い方が対照的な二人の新キャラクターを軸にSNS全盛の現代社会を風刺しながら、前作程でもないが種族間の多様性もトッピングするような形になっている。ストーリーの出来栄えは前作から大きく向上しており、ドリンクだけではなく預かり物を返却することで分岐する仕組みもカフェらしくて面白い。BGMも前作同様に素晴らしく、ラテアートは相変わらず難しい。

総合評価
 (4.5)
革新性
 (3.5)
ユーザビリティ
 (4)
ビジュアル
 (4)
サウンド
 (5)
プレイ継続性
 (4)
コストパフォーマンス
 (3)

SNS全盛の現代社会を風刺する作品

『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』は、様々な種族の交流の場となっている隠れ家的なカフェの店主であるプレイヤーが、来訪者にドリンクを提供しながら話の行く末を見守る作品だ。

第2作目となる本作でも、“適切なドリンクを提供しながら話の聞き手に徹する”という基本的なプレイスタイルは前作から変わっていないが、種族による多様性に加えて、SNSに依存する現代社会を風刺することに重きが置かれた作品となっている。

対照的な二人の新キャラクター

コーヒートーク エピソード2登場人物は前作を踏襲しているが、新キャラクターとして半霊的な種族であるバンシーのリオナと、角が特徴的なサテュロスという種族のルーカスが追加されている。

ルーカスは如何にも“ウザイ”感じのインフルエンサーであり、それに対してリオナは、個人宅配業者のドライバーをしながらオペラ歌手を目指しつつも現代的なプロモーション手段とは距離を取る保守的なタイプだ。

コーヒートーク エピソード2 ルーカスのセルフィー
インスタ“蝿”と揶揄されるタイプの若者であるルーカス。
コーヒートーク エピソード2 激怒するリオナ
リオナはネット民の勝手なふるまいに激怒。

両者はインフルエンサーと個人宅配業者という現代的な職業に就きつつも、食っていくために自身の生活を切り取って、それをコンテンツ化してインターネット上に公開するようなルーカスと、「ネット民の振る舞いにはヘドが出る」と言い切るリオナは余りにも対照的であり、この二人が主人公のカフェを通じてどのような関係を構築していくかが本作のメインコンテンツとなる。

グッドエンディングが用意されている都合上、極端な二人が程よい着地点を見つける結末を迎えることは明白なのだが、それであったとしても種族的な特徴を交えつつも現代社会の問題点が上手く描かれており、読む価値のあるテキストが多数用意されている。

Sara
Sara

大なり小なりSNS依存している現代人には刺さるセリフが多い。

従来のキャラクターもSNSの闇に対面する

SNSの闇に対面するのは何も新キャラクターだけではなく、前作からの登場人物たちも同じだ。

前作では集合的知性を持った宇宙人を代表して地球に到来し、地球人との交配を目標に掲げるも文化の違いから上手く行かずに難儀していたニールは、シルバーと名前を変えて人間の感情を随分と理解した状態で登場する。一方で同じ宇宙人仲間のアマンダが新キャラクターとして地球に来訪するのだが、人間を深く理解したシルバーと、まだ人間を理解できていないアマンダの二人が、まさかのマッチングアプリに挑む流れは実にコミカルで面白い。

特に、アマンダが熱心にマッチングアプリについて研究する様子は表現がセンシティブであるのだが、CERO“B”相当からレーティングを上げることなく、比喩的表現で上手く逃げ切ってローカライズされており一読の価値ありだ。

コーヒートーク エピソード2 マッチングアプリ
この前後の会話が一番の名(迷?)シーン。海外版の言い回しも気になる!
Sara
Sara

最終的なマッチングアプリの攻略方法の結論付けも、何とも的を得ており面白い。

宇宙人以外にも、ヴァンパイア,エルフ,サキュバスといった人間からしてみれば悠久の時を生きるようにも見える長寿命な種族が、SNSの一瞬の出来事に振り回され続ける様子が描かれている。

人気モデルのヴァンパイアであるハイドは、ファッションがSNSを起点に短いサイクルで使い捨てられることを憂い、結婚を控えたエルフのベイリースとサキュバスのルアは、SNS上の膨大な情報が目に入る度に結婚式の内容を二転三転させてしまい、お互いに考えがまとまり切らない。

コーヒートーク エピソード2 ファッション業界
コーヒートーク エピソード2 結婚式の事情

このように、前作は種族間の多様性が重要視された作品で在ったが、本作では種族に関係なく大きな悪影響を与えるSNSの問題点がベースとなっており、その上に種族の価値観がプラスされる形となっている。

発売前までは前作と似たような作品になるのではないかと懸念していたが、蓋を開けてみるとこのように、SNSに依存し続ける現代社会を風刺することを重視した内容となっており、実に満足度の高いストーリーに仕上がっていた

Sara
Sara

前作を真エンディングまで遊んだ前提で話は進んでいくので、必ず前作をプレイしてから本作をプレイしてもらいたい。

新システムの預かり物SNS

預かり物をドリンクに添えて出せる

前作では来店者に対してはドリンクを出すだけしかできなかったが、本作からはドリンクに預かり物を添えることが出来るようになった。特定の個人に宛てた手紙を渡したり、退店時の忘れ物を返却したりするなど、場面に合わせたドリンクを提供する以外にも、決まったタイミングで預かり物を渡すことでストーリーが分岐する。主に常連客を相手にしているカフェに似合ったシステムと言えるだろう。

コーヒートーク エピソード2 預かり物
預かり物はいつまでもあるとは限らず、何故かなくなることも・・・

なお、ドリンクと預かり物の両方を、1週目からパーフェクトに提供することは非常に難易度が高い。預かり物を渡し忘れた実績も用意されているので、1週目は余り深く考えずにプレイすることを推奨したい。

tomodachiというSNSを閲覧できる

コーヒートーク エピソード2には、“tomodachi”というゲーム内のSNSが用意されており、それを閲覧することで常連客の動向を窺い知ることが出来る。新着の投稿は画面左下に溜まっていき、放置していると未読数が大きくなっていく。特にSNSを見なかったとしても問題は無いのだが、未読数が多くなると気になってしまうプレイヤーも多いだろう。

次のスクリーンショットは、客が来店したタイミングでSNSを開いたシーンだ。“こんばんは”と言いつつも、左に手前にスマホの画面が表示されており、スマホを片手間に来客対応しているように見えてしまう。来客時や会話の途中にSNSを見たところで何のペナルティも無いが、この“作業の片手間にスマホを開いているように見えるUI”は狙って作られたものなのかもしれない。このように来客時にSNSを開くと、常に情報を貪っているようなSNS中毒者のような雰囲気が出てしまい罪悪感を覚えてしまう。

コーヒートーク エピソード2 SNS画面
絶妙なSNSの位置!

SNSは来客の前にチェックする、ベイリースとルアのカップルが甘い話を始めたら呆れてSNSチェックに逃げる、レシピ確認のついでにSNSを見るなどなど、SNSを開くタイミングを意識したロールプレイしてみても面白いかもしれない。

なおSNSの内容は、インフルエンサーとして何気ない投稿でも膨大な“いいね”を集める者が居れば、誰に当てたのか分からない内容をポツポツと投稿して“いいね”を全く得ないが、特に気にする様子が無い者も居たり、何となくリアリティのあるタイムラインとなっている。物語を補完するためにも、しっかりと内容を確認していきたい。

コーヒートーク エピソード2 いいね誘い
リオナのSNSは義理の“いいね”を誘ってくる。
Sara
Sara

個人的にはマートルのVR批判が一番面白かった。

難し過ぎるラテアートとノーヒントのドリンクは健在

難易度の高過ぎるラテアート

コーヒートーク エピソード2は、前述の通り前作からシステムが大きく変わっていない。そのため、ラテアートは前作同様に尋常ではない難易度だ。

ラテアートはコップを回しながらミルクを注ぎ込み、エッチングをするだけの作業だが何回やっても上手く描けない。幸いなことに、どれだけ下手くそなラテアートを作ったとしてもストーリーの進行には関係ない。しかし、LoFi(ローファイ)で落ち着いたサウンドをバックに、社会風刺や種族を超えた人生の価値観を語り合うような、やや高尚な内容のゲームの半ばで子供の落書きのようなラテアートを提供してしまうことは心苦しい。

コーヒートーク エピソード2 ラテアート
葉っぱを描いたつもり!

従って、自動で綺麗なラテアートを作成する機能が用意されていたり、あるいはラテアートを上手く作るコツが説明されれば良かったのだが、そのようなものは無かった。

Sara
Sara

インフルエンサーのルーカスは、バリスタが用意したラテアートの出来栄えなど気にせず、写真を取ってSNSにアップしてしまう・・・。

ブレンドが分からないドリンク

全体的に高評価な前作でも一部不評だったのが、ヒントが少なすぎるドリンクだ。

来店客からの注文には明確に商品名やブレンド内容を指定されないドリンクが頻出するものの、多くは何らかのヒントが伴っている。例えば、次のスクリーンショットであれば、常連が好んで注文するガラハッドという紅茶の変わり種を要求されたシーンだ。この場合はあれば、「青い花で入れてみたらどうか?」と提案されているので、レシピをを開いてベースを紅茶からブルーピーに変えるだけで解決する。

コーヒートーク エピソード2 アレンジドリンク
アレンジドリンクは分かりやすい場合が殆ど。

しかし、エピソード2でも相変わらず作り方が分からないドリンクが唐突に求められる。次のスクリーンショットはパンプキンラテ風の飲み物を作って欲しいと言われたシーンだ。ラテならばミルクが入ることは確かだろうが、ベース及びサブ材料がノーヒントなので非常に難しい。確定のミルクを除いて、6種類のベースと5種類のサブ材料で合計30通りの組み合わせから一体何を混ぜればパンプキンの味がでるのか。特にサブ材料として用意されているものは、しょうが,ミント,レモン,はちみつ,シナモンであり、これらのパンプキン風味への繋がりが見当もつかない。

コーヒートーク エピソード2 パンプキンラテ風
味のパラメーターヒントすら無し。

見当が付かない場合、適当にブレンドしたドリンクを提供するしかなく、上記であれば1/30の確率となるので当然のことながら高確率で提供ミスとなりイベント進行に悪影響を与えてしまう。折角SNS機能が追加されたので、その中にヒントを散りばめるなどしても良かっただろう。

コーヒートーク エピソード2 注文間違い
注文と違うと言われても分からない。

評価ポイントのまとめ

コーヒートーク エピソード2はシステムこそ前作と同じだが、SNSにまみれた現代社会を風刺することに重きを置いた作品に生まれ変わっている。雰囲気抜群のサウンドと共に、プレイヤーもSNSとの付き合い方を考えてみると良いだろう。相変わらずラテアートが難しく、ノーヒントのドリンクも何回か出てくる点だけが惜しい。

Xbox Game Passにてリリース初日から遊び放題に追加されているが、パッケージ版にはサントラが付いているので、出来る限りそちらを確保したい。デジタル版サウンドトラックの配信は2023年4月28日から。

長所

  • SNS社会を風刺した内容
  • 最高級のRo-Fiサウンド

短所

  • ラテアート難し過ぎる
  • ノーヒントのドリンク
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